角の二等分線で開くいろいろな平均 札幌旭丘高校中村文則 0. 数直線上に現れるいろいろな平均下図は 数 (, ) の調和平均 相乗平均 相加平均 二乗平均を数直線上に置いたものである, とし 直径 中心 である円を用いていろいろな平均の大小関係を表現するもっとも美しい配置方法であり その証明も容易である Q D E F < 相加平均 > (0), ( ), ( とすると 線分 ) の中点 の座標はである < 相乗平均 > 点 から円に接線を引くとき その接点を とする 方べきの定理より これより これを直線 上に移せばよい < 調和平均 > つの直角三角形である D と は を共有するので相似である よって D : : D < 二乗平均 > Q は円の直径 に垂直な半径である Q 直角三角形 Q において 三平方の定理より Q Q Q の長さを直線 上に移せばよい これらの平均は直線上に長さ, である点, を用意すればすべて作図が可能である 例えば 点 Q は線分 の垂直二等分線と を半径とする円との交点である また点 は を直径とする円と を直径とする円との交点である ここでは 同様に数直線上にいろいろな平均が配置できないか考察してみよう ge
. 角の二等分線と調和平均 平面上に点 を端点とする線分 と を重ならないようにとる, とし とする の二等分線が線分 と交わる点を とし 点 から に垂直に引いた直線が線分 と交わる点 とする 線分 の長さを求めてみよう 点 から に垂直な直線と および との交点をそれぞれ, Dとする つの直角三角形 と は であるから相似である よって D : : (*) また D // より D であるから D : : 角の二等分線の性質より : : : よって : ( ) : であるから D : ( ) : 三角形 D は D である二等辺三角形より点 は D の中点である : D : ( ) : (*) より : ( ) : 以上より すなわち の長さは ( D) と の調和平均でありその大きさを線分 上に置くことができる 同様に 他の平均についても角の二等分線に垂直な直線を用いて表すことができないか調べてみよう. 角の二等分線と相加平均 線分 の中点を E とし 点 E を通り 角の二等分線 に垂直な直線が線分 と交わる点を Q とする D // EQ であるから D EQ よって Q : D E : : Q D これから Q Q D ( ) 以上より Q は と の相加平均である このように 相加平均と調和平均は線分 上の点で表現でき同様に相乗平均も予想できるがもっと一般的な加重平均の位置を調べてみよう D E Q 3. 角の二等分線と加重平均 線分 上に点 F を F : F m: のようにとる 点 F を通り角の二等分線に垂直な直線が と交わる点を X とする D // FX より D FX よって X: D F : F:( m) X D ( ) m m これから m X X ( ) m m 以上より 線分 上に と の加重平均を置くことができる D F X ge
ここで F : F : とすると X 相乗平均の位置が得られる この分点を 上にとることは難しい しかし 数直線上に相乗平均の値は方べ きの定理を利用すると置くことはできるので 逆に : の比を取ることはできることになる このように線分 を一定の比に分ける点を角の二等分線により線分 上に移すことで 数, のいろいろな平均が求められる : t : ( t) とするときの平均値を x とすると x ( t) t すなわち x t ( ) であるから : t :( t) ( x ) :( x) これから内分点 が得られる x のときは : : : : x のときは : : : : x のときは ( ) ( ) : : : : 相加平均 相乗平均 調和平均の分点の位置が確認できる では 二乗平均の分点の位置はどこにあるだろう x より : : : それほど美しい比とはならない 二乗平均は加重平均には馴染まないようである 4. 相加 相乗 調和平均を含む平均 のとき のとき は 数, の 乗 ( 次 ) 平均といい この平均は相加 相乗 調和平均を含んである である 相乗平均は 0 相加平均 調和平均 のときであり これは極限 lim 0 より得られる に対数をとった極限は不定形であるからロピタルの定理を用いると l log log log log lim log log lim log 0 0 以上より lim 0 ge 3
しかし二乗平均は加重平均の分点としてはいいバランスとはいえない そこで二乗平均と同様に相加 相乗 調和平均を含む加重平均を他に考えてみよう 上に点 を : : となるようにとる このときの平均 x は x である この平均は のときは 上の分点をみると中点より点 寄りにある したがって また ( ) ( ) 0 ( ) ( ) よって のとき べき比平均は二乗平均より値の大きな平均である このとき 上の分点は 点 に重み 点 に重み を乗せた加重平均である そこで 点 に重み 点 に重み を乗せた加重平均を考えてみよう 分点を とす ると : : であるから加重平均の値 p は p とすると より : : 指数関数 f( ) は単調増加であるから m のとき である よって m であることより p m p である このような線分 の両端に, の大きさの 乗の重みを乗せた平均 p を 次のべき比平均 とよぶことにする べき比平均 ( 以下 次の場合をべき比平均という ) は 相加 相乗 調和平均を含んでいる 0 のとき p 0 0 0 相加平均 p 0 0 のとき p 調和平均 なお これらは分点 の比をみるとさらに明らかである のとき 0 0 0: 0 : : : : : : : : : : さらに : : のとき p : : のとき p 3 3 ge 4 D p ( ) m ( ) 相乗平均
また : : : のとき p ここで 4 ( ) 4( ) 4 0 これから のとき p p 0 である 二乗平均のおおよその大きさが分かる また とすると p ( s ) 同様に とすると p である p は単調増加であることから p p p p p p p 0 3 3 よって 以上より 数直線 上にいろいろな平均が配置できるのである 三角形 において, ( ) とする 角 の二等分線をとする 線分 上に : : となる点 をとる 直線に垂直で点 を通る直線が線 分 と交わる点の原点 からの距離を p とすると p ( 次のべき比平均 ) このとき の範囲で数直線上にいろいろな平均が配置できる 0 調和相乗相加二乗べき比 3 3 ge 5
5. べき比平均の間の関係式 ( 補足 ) p p これより p p (*) (*) において とすると p これから p 0 より p p また (*) の両辺の平方根を考えると すなわち p p は, の相乗平均であることが分かる 数 p と p の相乗平均は 数, の相乗平均に等しい 例えば とすると p は調和平均 p 0 は相加平均であるから 調和平均と相加平均の相乗平均はもとの 数の相乗平均 である 次に (*) の性質を用いると ( ) p p p p p p p これより p 0 0 p は 数, の相加平均であるから 0 数 p と p の相加平均は 数, の相加平均に等しい とすると p p は 数, のそれぞれ調和平均 べき比平均であることより 調和平均とべき比平均の相加平均は 数, の相加平均 である そしてこのことは線分 上にべき比平均の作図が可能であることを示す p0 である点を中心として半径 ( p0 p ) の円と線分 との交点が p を表す点である Q ge 6
6. べき比平均と 乗平均の関係 ( 補足 ) x x x x x f( x) gx ( ) x x とする べき比平均を表す関数 f( x) は p と p の相加平均が, の相加平均に等しいことから 点 0, に関して対称であることが予想される これを確認してみよう x x x x x x x x x x x x ( ) ( ) x x x x x x x x x x x x x x これから x x x x よって f ( x) f (0) f ( x) f (0) f (0) これより f( x) は点 (0, f (0)) に関して対称な関数である 直線 y, y が漸近線であることは明らかである 以上より関数 f( x) の概形は下図のようになる なお関数 gx ( ) のグラフは x 軸方向に平行移動すると f( x) に類 似した曲線になる 曲線の交点は, の値に無関係に唯一 x のときであり これも興味深い また 図をみると p p p であることから 0 f f( ) g( ) は二乗平均に近づく値であることが分かる p p0 p p0 p p0 p さらに p 0 p p とすると 以上より p p p p p p p p p 二乗平均はべき比平均と深い関わりがあるようである べき比平均にはこのように面白い性質が潜んでいる また 3 変数のべき比平均の定義といった発展性も考察することができるだろう 角の二等分線によって開かれた平均への興味は尽きないのである y x x f( x) y x x gx ( ) x x x y ge 7 x