Vol.041 きおろしかい竹村和紀先生 三角和雄先生 ( 社会医療法人木下会千葉西総合病院 ) GuideLiner の使用と DES 留置のノウハウについて はじめに PCIの標的病変 ( 血管 ) の中で屈曲の強い病変 ( 血管 ) は いわゆるchallenging caseであり バルーンが通過しても 単独のGWを用いてDES 等のdeviceを持ち込むのに難渋することが少なくない 石灰化が強い場合は Rotablatorを用いて病変をdebulkすることにより この問題の解決がなされることが多い しかしながら Rotablator 後でバルーンやIVUSが通過できるようになっても ある程度長い病変で屈曲を伴う場合 特に長いDESが病変にengageできないことも しばしば経験される また 屈曲が高度であれば 石灰化病変であってもロータブレーター自体施行し難いことも多い このような症例では いわゆる子カテを用いることが多い 従来の子カテは全てOTW(over the wire) タイプであり 止血弁が新たに必要で 300cm 長のGWを要し 手順が煩雑で オペレーター 1 人では手技を施行しづらい面があった また airの引き込み ステントの位置決めの際の造影不良も無視できない問題点であった GuideLinerは その手技をより効率的に行うための初めてのRxタイプの子カテであり 既存の止血弁 通常の長さのGW でPCIが可能である またその先端構造は 25cm 長のシリコンコーティングが施してあり 非常に柔軟である 一方 Inner Diameter は 0.056 inch(1.42mm) の広さをもっている このRxタイプのGuideLinerを用いれば より簡便に 短時間で子カテとして病変部を通過させることが可能で 従来のOTWタイプの子カテに比し 手技の効率化は明らかである またairの引き込みや 造影不良といった問題点もほぼ解消され より安全な手技が行えるものと期待される 一方 モノレール カラー部分で弯曲した場合 GWの微妙なbiasによりDES 等のdeviceが この部分で不通過となる例が報告されている せっかく子カテが病変を通過しても 肝心のDESが不通過となるのは 従来のOTWタイプの子カテでは想定できないことであり そのような事態に陥ると 患者や術者にかなりの身体的 精神的負担を強いることになる 今回我々は このような想定外の状況においてトラブル シューティングとして 有効な解決策を見出したので 報告する 64 歳の男性 2 か月前に LAD 閉塞に伴う STEMI あり他院で PCI を施行された その際 RCA にも有意狭窄を認めたが 高度の石灰化 屈曲あり POBA のみ施行されていた 今回 労作性狭心症の出現 悪化のため当科紹介となった CAG では LAD に再狭窄ないものの RCA に複数の屈曲 石灰化を伴う高度狭窄 (90% 以上 ) を認めた (Fig. 1-a, 1-b) Fig. 1-a Pre-PCI(LAO view) Fig. 1-b Pre-PCI(RAO view) 1
手技内容右鼠径部アプローチ (7F) にて 7F FR-4/SH Mach -1 ガイディング カテーテル (Boston Scientific) を使用した 0.014 Sion Blue GW(Asahi Intecc) にて病変を通過させ Mizuki-fx(Kaneka Medical) を用いて Floppy Rotawireに交換した 1.5mm burr 次いで1.75mm burrにてrotablator(boston Scientific) を施行 途中 burr を進めるにあたり slow burping technique sliding sheath techniqueを用い 最遠位部病変まで 回転数の低下が 1,000 以下になるまで 十分に切削した (Fig.2) Rotablator 後 Mizuki-fxを用いて よりサポート性能の高い0.014 Star GW(Japan Lifeline) に交換し Sion Blueも挿入して double GWとした Trek 2.5mm x 15mmバルーン (Abbot Vascular) を用い全病変を拡張した (Fig. 3) IVUS(Terumo) にて病変を確認後 Star GWのみでXience Expedition (2.5mm x 18mm) をまず遠位部に留置した (Fig. 4) 次に Xience Expedition(3.0mm x 23mm) をより近位部に留置しようとしたが 不通過のため Trek 2.5mm x 15mmバルーンを用いて GuideLinerを進め 近位部病変を通過させた 再度 Xience Expedition (3.0mm x 23mm) を進めたが 途中でモノレール カラーの部分で引っ掛かった このため Sion Blueを再びdouble wireとして挿入し GuideLinerのlumenに Star GW Sion Blueを両方通すこととした 再びStar GWにXience Expeditionをのせて進めたところ スムーズに病変まで到達でき 12 気圧で拡張 (Fig. 5) 残存狭窄 0% となり IVUS 上も十分な内腔の確保を確認して手技を終了した (Fig. 6, Fig. 7) Fig. 2 Rotablator Fig. 3 POBA Fig. 4 STENT Fig. 5 STENT Fig. 6 Post-PCI(LAO view) Fig. 7 Post-PCI(RAO view) 2
2 73 歳の女性 高血圧 脂質異常症の既往あり 典型的な不安定狭心症 (CCS Ⅲ 度 ) にて入院した 手技内容 LCX 遠位部のOM PLに各々 90% 狭窄を認めた (Fig. 1) 6F FL-3.5/SH Mach-1ガイディング カテーテル (Boston Scientific) をLt-TRIにて使用した 0.014 inch Sion Blue GW(Asahi Intecc) をOMに 0.014 inch Joker GW(Japan Lifeline) をPLに進め PLにOzma 1.5mm x 20mmバルーン (Nipro) OMにRaiden (2.25mm x 15mm バルーン (Kaneka Medical) を進めて拡張した(Fig. 2, Fig. 3) LCX 近位部に90 近い屈曲があり 単独ではステント留置困難であったため GuideLinerを使用した OMにXience Expedition 2.25mm x 8mm(Abbot Vascular) PLにPromus Premier 2.25mm x 28mm(Boston Scientific) を各々 GWを2 本 GuideLinerのlumenに2 本通して留置する方法で病変まで進め 前者 10 気圧 後者 11 気圧で拡張した (Fig. 4, Fig. 5) ところ 残存狭窄 0% となって 手技を終了した (Fig. 6) Fig. 1 Pre-PCI Fig. 2 POBA Fig. 3 POBA Fig. 4 STENT Fig. 5 STENT Fig. 6 Post-PCI 3
3 76 歳の男性 労作性狭心症の増悪にて来院した 屈曲を伴う RCA に石灰化を伴う びまん性の有意狭窄を認めた (Fig. 1) Fig. 1 Pre-PCI 手技内容 7FAL-1/SH Mach-1ガイディング カテーテル (Boston Scientific) を右鼠径部アプローチにて使用し Floppy Rotawire 1.5mm burrにてrotablator(boston Scientific) を施行した (Fig. 2) 0.014 inch Sion Blue GW (Asahi Intecc) を使用しTrek 2.5mm x 15mmバルーン (Abbot Vascular)8 気圧で病変を拡張 (Fig. 3) Nobori 2.75mm x 28mm(Terumo) を留置しようとしたが 屈曲のため病変まで到達させることができなかった そこで GuideLinerを使用し Trek 2.5mm x 15mmバルーンを先進させたところ GuideLinerが病変部を通過した その後 Nobori 2.75mm x 28mmを進めたが GuideLinerのモノレール カラーの部分で通過困難となった そのためGuide Linerをいったん抜去し 0.014 inch Joker GW(Japan Lifeline) を2 本目のGWとして 病変を通過させた そこで これら2 本のGWをいずれもGuideLinerの内腔に通し GuideLinerをガイディング カテーテルの先端まで進めた Trek 2.5mm x 15mmバルーンを最初から病変に通してあるSion Blueに通し このバルーンを用いて 順序拡張させながら GuideLinerを進め病変部まで通過させた Nobori 2.75mm x 28mmを このSionBlueに通したところ 今度はモノレール カラーをスムーズに通過し 病変部まで到達させることができた 2 本目のGW (Joker) を抜き GuideLinerを手元の方向に引き Nobori 2.75mm x 28mmを十分に拡張 (Fig. 4) さらに同様の方法でPromus Premier3.0mm x 28mm (Boston Scientific) をNoboriの近位部に2mm 程度 overlapさせ留置 (13 気圧 ) した (Fig. 5) 残存狭窄 0%(Fig. 6) となって IVUS 上も十分な内腔の確保を確認し 手技を終了した Fig. 2 Rotablator Fig. 3 POBA Fig. 4 STENT Fig. 5 STENT Fig. 6 Post-PCI 4
4 72 歳の男性 労作性狭心症の悪化 (CCS Ⅲ 度 ) を主訴に来院した 2 年前から歩行時に前胸 Vol.000 部圧迫感が出現するようになり 次第に増悪した 他院で 運動負荷心筋シンチを施行され 前壁 下壁の虚血を認めた 精査目的に PCI 目的に当科へ紹介され 冠動脈 CT を施行したところ 石灰化の著明な三枝病変が疑われた 既往歴としては 19 年前に腎移植を施行され 現在血清クレアチニン 1.27mg/dl egfr=35ml/hr である 手技内容 LADにびまん性の最大 75% 狭窄を認め LCXにも75% の限局性狭窄を認めた RCAはdominantで 近位部に強い石灰化と屈曲があり 近位部に50-75% 狭窄 #4AVに90% 狭窄を2か所 #4PDに 75-90% 狭窄を2か所認めた 全体に石灰化が強く 腎移植前の血液透析が関与していたことが示唆された (Fig.1-a, 1-b) 心筋シンチでは 前壁 下壁いずれも虚血を示したが 狭窄のより高度な病変の多いRCAをまずPCI targetとした 7F AL-1/SH Mach-1ガイディング カテーテル (Boston Scientific) を右鼠径部アプローチにて使用した まず #4AV 側に0.014 inch Sion Blue GW(Asahi Intecc) #4PD 側に0.014 inch Joker GW(Japan Lifeline) を通した IVUS (Terumo) を使用しようとしたが RCA 近位部の石灰化を伴う屈曲にて通過せず まずSapphire 1.25mm x 10mmバルーン (Obus Neich) にて #4AVの2 病変 #4PDの2 病変を拡張 (6 気圧 ) した (Fig.2, Fig.3) Xience Expedition 2.5mm x 12mm (Abbot Vascular) を #4AVの遠位部に留置するために進めたが RCA 近位部の石灰化を伴う屈曲のため 不通過であった このためGuide Liner(Japan Lifeline) の内腔にこれら2 本のGWを通す形で使用し Sapphire 2.5mm x 15mmバルーンを用いて RCAの近位部の石灰化を伴う屈曲を越えるまで進めた そこで2 本のGW を残したまま #4AV 遠位部に Xience Expedition 2.5mmx 12mm 同じく近位部にXience Expedition 3.0mm x 12mmを留置した (10 気圧 )(Fig.4, Fig.5) Fig. 1-a Pre-PCI(LAO view) Fig. 1-b Pre-PCI(RAO view) Fig. 2 POBA STENT Fig. 3 POBA Fig. 4 Fig. 5 STENT 5
次いで #4PD 方向には 遠位部にXience Expedition 2.25mm x 12mm 近位部にXience Expedition 2.5mm x 18mmを留置した (Fig. 6) RCA 近位部に解離を認めたため #4AVに入れたSion Blueのみを引き抜き Xience Expedition 3.5mm x 15mmをGuideLinerを通して進め 留置 (15 気圧 ) した (Fig. 7) 残存狭窄はいずれも0-25% となって手技を成功した (Fig. 8) この症例は RCAの石灰化を伴う ほぼ180 の高度屈曲病変を伴っていたため Rotablatorを使用し難く GuideLinerを二段ロケットの如く第二のガイディング カテーテルとして用い PCIに成功した一例である Fig. 6 STENT Fig. 7 STENT Fig. 8 Post-PCI 6
結語 モノレール タイプの子カテである GuideLiner は OTW タイプの子カテに比べて非常に handy で 術者一人でも十分に操作 Vol.000 が可能である また 先端が非常に柔らかく バルーンを先進させた後病変を通過させるのも容易であることが多い さらに 造影が容易でステント等の位置確認もしやすい 反面 せっかく病変を通過してもモノレール カラーの部分で 肝心のステントやDEBなどがひっかかり不通過となることが多い その原因はGWのモノレール カラーの部分でのbiasと考えられる そこで GWを2 本 double wireとして挿入し 2 本ともGuideLiner 内を通すことによって ほぼその問題点は解決できる 当院では 2014 年 4 月以来 六か月間で約 150 本の GuideLinerを用いているが 現在ほぼ全例でこの方法を採用しており 100% の手技成功率を達成している 一般的な子カテの条件として 1 先端が柔らかく 通過性が良いこと 2マーカーが見やすいこと 3 操作性が良いことが挙げられるが GuideLinerはこれら三条件をいずれも十分に満たしている また 意図的に手元のシャフトをやや扁平に太くしてあり 通常のGWとの差がよく視認され 使用 GWが2 本になっても 混乱することなく使用できるのも利点の一つである 最後に GuideLinerは現在使用できるモノレールタイプの子カテとして 最も汎用性が高いが 唯一の弱点は モノレール カラーの部分でのdeviceの不通過である DESがモノレール カラー部分でstuckし しかも抜去困難に陥る事例が報告されている もしDESがモノレール カラーで通過し難いことが判明した場合 2 本目のGWをbuddy wireとして進め GuideLiner の内腔に2 本とも通すと まず不通過は解消される しかし 3.25mm 径のXienceまではこの方法で可能だが 3.5mm 径のものはprofileが大きく GW2 本を通したのでは不通過となる しかし 現実問題として 3.5mm 径のXienceを冠動脈遠位部までもっていくことは少ないため 臨床上支障をきたすことはまずない 最近では さらに新世代のモノレールタイプであるV3も導入されている 参考文献 Mamas MA, et al. Distal Stent Delivery With GuideLiner Catheter. Catheter Cardiovasc. Interv. 2010; 76(1)102-111. Kovacic JC, et al. GuideLiner Mother and Child Guide Catheter Extension: A Simple Adjunctive Tool in PCI for Balloon Uncrossable Chronic Total Occlusions. J. Int. Cardiol. 2013; 26 (4)343-350 De Man FHAF, et al. Usefulness and safety of the GuideLiner catheter to enhance intubation and support of guide catheters: insights from the Twente GuideLiner registry. EuroIntervention 2012;8:336-344 術者紹介 社会医療法人木下会千葉西総合病院循環器内科医師竹村和紀先生 2012 年秋田大学医学部卒千葉西総合病院循環器内科入職 術者紹介 社会医療法人木下会千葉西総合病院院長心臓病センター長三角和雄先生 1982 年東京医科歯科大学医学部卒 1982 年東京医科歯科大学医学部第三内科入局 1985 年渡米 イリノイ大学シカゴ校にて心臓血管病理を研究後 ニューヨーク医科大学 カリフォルニア大学 ピッツバーグ大学にて内科レジデント研修 循環器臨床フェロー研修終了 UCLA グッド サマリタン病院にて 2 年半の心血管カテーテル治療専門フェロー研修終了 カリフォルニア州 ハワイ州医師免許取得 アメリカ心臓学会 内科学会専門医 正会員 (F.A.C.C., F.A.C.P.) アメリカ胸部疾患学会正会員 (F.A.C.C.P.) 医学博士 1996 年ハワイ大学臨床助教授 1998 年千葉西総合病院心臓センター長 研修委員長 2000 年千葉西総合病院副院長 2003 年東京医科歯科大学臨床教授 2004 年千葉西総合病院院長 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会専門医 日本心血管カテーテル治療学会専門医 日本老年医学会専門医 日本医師会産業医 7
2015-05-05-02