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研究成果報告書


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高泌乳牛の移行期の栄養管理 と周産期病の予防 2 京都大学大学院農学研究科 久米新一

動物の恒常性と適応 1) 動物の恒常性維持機能 : 動物は常に変動する体外からの情報を受け取り それに適切に対応しながら 体内の生理機能を常に一定の範囲内に維持して 健康を保っている 2) 適応の重要性 : 外部環境あるいは体内の変化に対して 神経系 内分泌系 免疫系などの機能を高めて 体内の変化を最小限にする

図 環境の変化に対する動物の適応 環境ー動物 -- 分娩時の生理的適応は? 環境の変化 体内平衡の乱れ センサー 神経系など 体内の変化 体内平衡の回復 体内代謝の反応 中枢神経系 神経 内分泌 免疫系 適応栄養素

図 アルファルファ区 ( ) とク ラス区 ( ) の血漿中 Ca 濃度と副甲状腺ホルモン (PTH) PTH(pg/ml) Ca(mg/dl) 11 10 9 Alfalfa Grass 1000 800 600 400 200 Alfalfa Grass 8-14 0 14 28 42 56 ª Ø O ã i ú j 0-14 -7 0 7 ª Ø O ã i ú j 乳牛は分娩前後の生理的危機を常に正常化するように機能する ( 栄養管理はそれを助けることが必要 )

良質粗飼料を活用した エネルギー代謝の改善 移行期には良質粗飼料の給与が重要 : 栄養価が高く 乾物摂取量が増加する 高泌乳牛は飼料の利用効率 ( 吸収率 代謝率 ) が向上 -- 乳量増加につながる

総エネルギー (GE) 飼料のエネルギーの評価 可消化エネルギー (DE) 糞中エネルギー 代謝エネルギー (ME) 尿中エネルギーメタン中エネルギー 正味エネルギー (NE) 熱増加 (HI) 生産の正味エネルギー (NEp) 維持の正味エネルギー (NEm) 熱発生量 (HP) 飼料中のエネルギーを効率的に乳生産に利用する : 飼料 1kg で乳量はどれだけ生産できるか (NEl)?

表 粗飼料で可能な乳生産量 -- アルファ ルファ給与試験 (Tessmann ら 1991) アルファルファ給与比率 泌乳期 1 2 3 4 5 初期 ( 1-12 週 ) 38.2 48.2 58.2 68.2 98.2 中期 (13-26 週 ) 48.2 58.2 68.2 88.2 98.2 後期 (27-44 週 ) 68.2 78.2 88.2 98.2 98.2 乾物摂取量 kg/ 日 21.6ab 22.5a 21.1ab 20.6b 19.0c 305 日乳量 kg 8641a 8315ab 7453bc 6666cd 5768d kg/ 日 (28.3) (27.3) (24.4) (21.9) (18.9) 脂肪率 % 3.37b 3.76a 3.63ab 3.69a 3.77a タンパク質率 % 3.20ab 3.24a 3.17ab 3.11ab 3.06b ビタミンとミネラルの補給が必要

代謝実験室 ( チャンバー ) 北海道農業研究センター 乳牛のエネルギー代謝 チャンバー内の流量を一定にして チャンバー内とチャンバー外の濃度差から 酸素消費量 二酸化炭素排泄量 メタン排泄量を測定する

給与飼料 ( サイレージ ) の成分含量 (DM%) : トウモロコシサイレーシ は大豆粕を添加 イネ科牧草アルファルファトウモロコシ CP 11.9 18.3 11.1 NDF 61.9 44.9 37.8 ADF 37.2 35.3 23.3 NDICP 2.6 2.4 0.7 ADICP 0.6 1.1 0.5 ADL 4.6 7.0 3.2 EE 4.2 4.3 3.2 Ash 6.9 10.5 5.3

エネルギー (MJ/ 日 ) エネルギー (MJ/ 日 ) 図 乾乳牛と泌乳牛 ( 粗濃比 :60:40 乳量 : 30.1kg) のエネルギー代謝 (HP; 熱発生量 ) 160 120 80 蓄積 HP メタン尿糞 400 300 200 蓄積乳 HP メタン尿糞 40 100 0 オーチャート ク ラスアルファルファコーン 0 泌乳牛 TDN(%) 67.8 62.7 74.5 69.7 代謝率 (%) 52.8 51.7 59.6 59.8 HP(MJ/ 日 ) 85.2 71.6 76.0 113.0

高泌乳牛の MEm 要求量 -- 現在の乳牛と飼料による評価 高泌乳牛の血流量 肝機能 ルーメン発酵等の活性化による代謝量増加 高泌乳牛の MEm 要求量の増加 (MJ/kg.75 ) ARC(1980),AFRC(1993) MEm=0.48 日本飼養標準 (1999) MEm=0.49 Yan ら (1997: 高泌乳牛 n=221) MEm=0.67 早坂ら (1995: 高泌乳牛 n=53)mem=0.59 久米ら (2004: 粗飼料多給乾乳牛 )MEm=0.596

乾物消化率 (%) 乾物消化率 (%) 図 サイレージ給与牛の乾物消化率 と飼料中 ADF ADL 含量の関係 80 75 y = -0.71x + 90.21 R² = 0.64 80 75 y = -2.13x + 78.30 R² = 0.68 70 70 65 65 60 60 55 55 50 20 25 30 35 40 45 ADF(%) 50 2 4 6 8 10 ADL(%)

TDN(%) TDN(%) 図 サイレージの TDN と飼料中 ADF ADL 含量の関係 80 75 70 y = -0.76x + 92.13 R² = 0.57 80 75 70 y = -2.61x + 80.93 R² = 0.85 65 65 60 60 55 55 50 20 25 30 35 40 45 ADF(%) 50 2 4 6 8 10 ADL(%) 良質粗飼料は TDN が高い (70% 以上 )

飼料設計ソフト (NRC2001) による TDN の計算 -- 複雑化 TDN 1 (%)=tdnfc+tdcp+(tdfa 2.25)+tdNDF-7 真の可消化 NFC(tdNFC) =0.98 (100-((NDF-NDICP)+CP+EE+Ash)) PAF PAF: 加工処理修正ファクター (Processing Ajustment Factor) 粗飼料の真の可消化 CP(tdCPf) =CP exp(-1.2 (ADICP/CP)) 真の可消化 FA(tdFA) =FA EE-1 EE<1の場合 FA=0 真の可消化 NDF(tdNDF) =0.75 (NDFn-ADL) (1-(ADL/NDFn 0.667 ) NDFn=NDF-NDICP

DE と ME の計算方法 DE : 実測値 =( 摂取エネルギー )-( 糞のエネルギー ) (1)TDN1kg の DE を推定する DE 1 (Mcal/kg)=(tdNFC/100) 4.2 +(tdndf/100) 4.2 +(tdcp/100) 5.6 +(FA/100) 9.4-0.3 (2) 飼料の TDN と摂食水準に応じてエネルギー価を補正するディスカウント率 =(TDN 1 -((0.18 TDN 1-10.3) 摂取量 ))/TDN 1 ME : 実測値 =DE-( 尿とメタンのエネルギー ) ME p (Mcal/kg)=(1.01 (DE p )-0.45) +0.0046 (EE-3)

NRC NRC エネルキ ーの実測値と NRC の比較 DE (Mcal/kg) ME (Mcal/kg) 3.5 3 3 2.5 2.5 2 アルファルファク ラスアルファ + ク ラスコーンコーン + ク ラス 2 2 2.5 3 3.5 実測値 1.5 1.5 2 2.5 3 実測値 注 )DE は計算値が低くなる ( 特に イネ科牧草 )

実測値と計算値の比較 イネ科牧草アルファルファトウモロコシ ME 実測値 (Mcal/kg) 2.44 2.25 2.70 ME 計算値 (Mcal/kg) 2.35 2.34 2.72 実測値 / 計算値比 1.040 0.963 0.992 注 )ME: イネ科牧草で計算値が低い ( 過小評価 ) 複雑な式になると 間違いを起こす確率が高まる ( 飼料分析でも )

高泌乳牛のエネルギー代謝 1. 維持に要する代謝エネルギー要求量の増加 -- 体内代謝 酸素消費量の増加 2. 飼料の利用効率 ( 吸収率 代謝率 ) の向上 -- 少ない飼料で乳量を増やす 農場では 牛群検定 飼料分析などのデータ 牛群 飼料などの観察などで 飼料設計に工夫を加えることが重要 ( 完全なものはない 過信しない )

DMI (kg/ 日 ) 乳量 (kg/ 日 ) 周産期の乳牛の飼養管理 : グラス区は遺伝的能力を満たしていない飼い方 30 50 25 20 15 40 10 5-4 -2 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 30 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=7) グラス給与区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の乾物摂取量と乳量分娩後の粗濃比 : 50:50( グラス アルファルファ ) 60:40( コーン ). 分娩前の粗濃比 :70:30( 各給与区とも )

乾物摂取量 (kg/ 日 ) 乳量 (kg/ 日 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=4) とコーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の乾物摂取量と乳量 25 50 20 15 10 40 30 5-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 20 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 高泌乳牛 : 分娩直後の乳量の急増が特徴

血漿グルコース (mg/dl) 血漿 NEFA (meq/l) 図 アルファルファ給与区 ( :n=4) とコーン + アルファルファ給与区 ( :n=4) の血液成分 100 80 60 40-14 -7 0 7 14 分娩前後 ( 日 ) 0.8 0.6 0.4 0.2 0-14 -7 0 7 14 分娩直後における血漿中遊離脂肪酸の急増 グルコースの低下とその後の回復 1 分娩前後 ( 日 )

体重 (kg) DMI/ 体重 (%) 泌乳牛の体重と DMI/ 体重 : 目標 : 泌乳前期の DMI/ 体重を 4% 以上 800 4 750 700 650 3 2 600-4 -2 0 2 4 6 8 10 1-4 -2 0 2 4 6 8 10 分娩前後 ( 週 ) 分娩前後 ( 週 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=7) グラス給与区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4)

反芻胃内滞留時間 (h) アルファルファとグラスサイレージ給与牛の乾物摂取量と反芻胃内滞留時間の関係 ( 上田ら 2004) 50 45 OG AL 40 35 30 25 20 サイレージ 大飼料片 小飼料片 15 16 18 20 22 24 26 28 乾物摂取量 (kg/day) アルファルファは消化管通過速度が速い :DMI が多いサイレージ ( 約 2cm), 大飼料片 (5mm), 小飼料片 (1mm)

TDN 充足率 (%) CP 充足率 (%) 泌乳牛のエネルギーとタンパク質 の充足率 ( 日本飼養標準 ) 100 80 120 100 80 60 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=7) グラス給与区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の TDN と CP 充足率 60 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) グラス給与区では乳量が少なく TDN の充足率も低い : 周産期の栄養管理でもっとも問題の多い飼養法

乳脂率 (%) タンパク質率 (%) 泌乳牛へのアルファルファと コーンサイレージ給与 5 4 3 4 3 2 0 5 10 分娩後 ( 週 ) 2 0 5 10 分娩後 ( 週 ) 図 アルファルファ給与区 ( ;n=7) グラス給与区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ給与区 ( ;n=4) の乾物摂取量と乳量粗濃比 : 50:50( グラス アルファルファ ) 60:40( コーン ).

Ca 充足率 (%) P 充足率 (%) 泌乳牛の Ca と P の充足率 ( 日本飼養標準 ) 140 120 100 100 80 80 60 40 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 60 0 2 4 6 8 10 分娩後 ( 週 ) 図 アルファルファ区 ( ;n=7) グラス区 ( ;n=6) コーン + アルファルファ区 ( ;n=4) の TDN と CP 充足率 ミネラルでは P の充足率が低い

表, アルファルファ給与牛の繁殖成績 ( 山田ら ) ク ラス区アルファルファ区 例数 14 13 初回排卵 日 35±18 37±19 受胎までの日数 94±33 102±30 受精回数 回 1.4±0.7 2.0±0.9 受胎頭数 13/14 12/13

水摂取 (kg/ 日 ) 水損失 (kg/ 日 ) 図 乾乳牛と泌乳牛 ( 乳量 :29.5kg) の水摂取量と水損失量 120 100 代謝水 飼料水 飲料水 120 100 乳尿 80 80 糞 60 60 蒸発 40 40 20 20 0 乾乳牛 泌乳牛 0 乾乳牛 泌乳牛 乳牛は分娩直後に大量の飲料水を必要とする

表 乾物摂取量 水摂取量 ( 飼料水 + 飲水 ) (TWI) と飲水量 (DWI) の比較 (kg/ 日 ) 乾乳牛泌乳牛泌乳牛 / 乾乳牛 DMI 7.7 20.7 2.69 TWI 30.3 98.4 3.25 DWI 16.0 77.6 4.85 分娩前と比較して 泌乳牛では乾物摂取量の増加率よりも飲水量の増加率が高い : 水が飲めないと代謝異常になる

初産牛と経産牛の栄養管理と 周産期病の予防 周産期病の予防は初産牛と経産牛で大きく異なる 牛群検定 : 初産月齢 (25.6 ヶ月 ) 平均産次 (2.7 産 ) 初産月齢の早期化 (21 ヶ月齢 ) 生涯生産性の向上 ( 平均産次の延長 )

初産月齢の早期化 :1980 年 ( ) と 2004 年 ( ) 米国のホルスタイン種乳牛 (Hare ら 2006)

表 初産月齢の違いによる乳生産 月齢 24.5 22.0 21.3 頭数 84 65 85 増体率, kg/ 日 0.68 0.83 0.94 分娩時体重, kg 550 529 520 初産乳量,kg/ 日 9873 9620 9387 頭数 (2 産 ) 50 40 63 2 産乳量,kg/ 日 11030 10940 11116 (Van Amburghら 1998) 初産月齢早期化 (21 ヶ月齢 ): 乳生産 繁殖などに問題なければ コスト低減の効果が大きい高タンパク質 低脂肪の飼料 : 体高に効果

体重 (kg) 体高 (cm) 600 500 400 300 200 100 0 育成牛の体重 体高の変動 ( 北農研 1994-1997 年 : n=40) 0 4 8 12 16 20 24 月齢 140 120 100 80 60 0 4 8 12 16 20 24 月齢 12 ヶ月齢 : 体重 (366kg) 体高 (127cm) 受精開始時の目安 : 体重 (350kg) 体高 (125cm)

乳量 (kg/ 日 ) 体重 (kg) 乳量と体重の産次による変動 45 40 35 30 25 20 0 2 4 6 8 10 泌乳期 ( 月 ) 700 600 500 0 2 4 6 8 10 泌乳期 ( 月 ) 図. 初産 ( ), 2 産 ( ), 3 産 ( ), 4 産 ( ), 5 産以上 ( ) の乳牛 (n=125) の乳量と体重 (1994-1997 年 : 北農研 ) 初産牛は泌乳前期に適切な増体が非常に重要 : 受胎率低下 ( 淘汰要因 )

表 乳牛と子牛の分娩直後の体重 初産 2 産 3 産 4 産以上 例数 27 14 8 14 月齢 25.5 38.2 49.1 76.0 妊娠期間, 日 282 282 281 284 体重, kg 602c 648b 666b 762a 生時体重, kg 43.3b 47.0a 47.9a 47.7a a,b,c P<0.05 栄養管理が良ければ 1 年 1 産も可能初産牛の栄養改善は分娩時の難産を減らす

û Ê i kg/ú ) Ì d (kg/ú ) 図 1 初産 ( ) 2 産 ( ) 3 産 ( ) および 4 産以上 ( ) の牛の乳量と体重 (n=65) 40 30 20 800 700 600 10 0 2 4 6 ª Ø ã i ú j 500-14 -7 0 7 ª Ø O ã i ú j 3 産以上の分娩後の体重減少 (5.4kg/ 日 ) が著しい

グルコース (mg/dl) 遊離脂肪酸 (meq/l) 図 2 初産 ( ) 2 産 ( ) 3 産 ( ) および 4 産以上 ( ) の牛の血漿中グルコースと遊離脂肪酸濃度 (n=65) 100 80 60 40-14 -7 0 分娩前後 ( 日 ) 7 0.8 0.6 0.4 0.2 0-14 -7 0 分娩前後 ( 日 ) 7 老齢牛になると 脂肪肝 ケトーシスになりやすい

Ca (mg/dl) Pi (mg/dl) 図 3 初産 ( ) 2 産 ( ) 3 産 ( ) および 4 産以上 ( ) の牛の血漿中 Ca と Pi 濃度 10 6 9 5 8 4 7-14 -7 0 7 ª Ø O ã i ú j 3-14 -7 0 7 ª Ø O ã i ú j 3 産以上になると 乳熱になりやすい

表 3 乳牛の分娩直後の血液成分 (a,b,c <0.05) 初産 2 産 3 産 4 産以上 ク ルコース,mg/dl 91.7a 76.8b 86.1ab 81.4b NEFA,mEq/l 566b 479b 520b 793a インシュリン, μu/ml 9.2 6.9 5.5 5.7 Ca,mg/dl 8.8a 8.6ab 8.1bc 7.5c Pi,mg/dl 4.8a 4.7ab 3.9bc 3.7c PTH,pg/ml 166b 425b 385b 1012a 老齢牛では PTH の分泌量が多くても低 Ca 血症になる 3 産以上ではケトーシス 脂肪肝 乳熱になりやすい

移行期の初産牛と経産牛の栄養管理 初産牛 : 成長段階にあることと初産乳量の増加が顕著なため 受胎しない牛が増加 エネルギーの早期充足 : 受胎率向上 難産防止 経産牛 : 乳量増加による移行期の疾病増加 繁殖成績の低下が顕著 ( 適応の遅れ : 老化 ) ケトーシス 脂肪肝 乳熱などの疾病予防を考慮した栄養管理改善による効果が大きい