応用地盤力学 同演習 ( 担当 : 佐藤 ) ~2 年生後期, 火曜, 木曜 1 限目 教育目標 : 1) 基礎地盤力学で修得した知識を用いて実際の問題を解く考え方と開放のテクニックを修得する. 2) 土構造物を設計 ( 土圧, 地盤内応力, 支持力, 斜面安定計算 ) できる基礎知識を習得する. 3) 地盤改良などの土の特性を用いた改良技術のメカニズムを修得する. 4) 地震による地盤災害と液状化のメカニズムを知る. 学習 教育目標の D に相当する. 質問他 問い合わせ ( 代表 :092-871-6631 内線 6464) E-mail: sato@fukuoka-u.ac.jp せん断試験 土のせん断強さ : 土の種類だけによって定まるものではなく, 土の密度, 含水比, 応力履歴, あるいは試験時の排水条件によって変化する. 土のせん断試験を行う時には, どのような条件のもとにある土のせん断強さを求めるのか, という目的を明らかにして試験を行う必要がある. 道路 土質研究室にある三軸試験機 土のせん断強さを求める試験には, 室内試験と現位置試験とがある. 室内試験としては, 一般に (1) 直接せん断試験 ( 一面せん断試験 ),(2) 三軸圧縮試験,(3) 一軸圧縮試験の三つが最も良く用いられており, 現位置試験としては, ベーンせん断試験が用いられている. 2 土のせん断応力を身近に感じる現象 土の強さ 地盤が 破壊 しないためには その地盤自身が荷重に対して せん断破壊に抵抗できるだけの強さ を持っていることが必要 その抵抗できる強さのことを 土の強度 とか 土の強さ というすべり破壊を起こす力 ( せん断応力 ) の発生同時に 斜面がすべり破壊しないようにすべり面に働く垂直応力の大きさに比例して抵抗する力 ( せん断抵抗 ) も発生する. せん断応力に抵抗する最大のせん断抵抗をせん断強さという. 地震による斜面崩壊 3 土の抵抗力 せん断強さ 土の強度 ( 土の強さ ) 4 物体が破壊するには? 物体が壊れるためには 必ず ずらす あるいは ゆがめる 力 ( せん断力 ) が働かなければならない. すべり面上にはせん断応力 と垂直応力 が作用しており この に対して決まるせん断強さ s との関係から次にように説明される. < s の場合 安定 > s の場合 破壊 = s の場合 極限つり合い状態 等方的に圧縮される ( 鉛直方向と水平方向の力が同じ ) とき 物体 ( 土 ) は決して壊れない. 両者に差があるとき 物体のある面には ずらすorゆがめる ような働きをするせん断力が働く. 物体の破壊 5 6
土のせん断強さを求める試験室内試験 ( 一面せん断試験 一軸圧縮試験 三軸圧縮試験 ) と現位置試験 ( ベーンせん断試験 ) 擁壁の土圧計算 ( 後期の応用地盤力学で学びます ) 室内試験や現位置試験を行う目的 設計に必要な強度定数 (c, ) を知るため 地盤の静的 動的挙動を知るため じゃあなぜ強度定数がいるのか?? その他いろいろ 盛土や構造物等の設計に必要だから. 斜面の安定計算地盤の支持力計算などに用いられる. 擁壁の土圧計算 7 土圧係数の算出 土圧 安全率の計算 8 斜面の安定計算 ( 後期の応用地盤力学で学びます ) 地盤の支持力計算 ( 後期の応用地盤力学で学びます ) 矢板の根入れ深さは?? m 9 10 土の破壊基準 ( 垂直応力とせん断応力の重要性 ) 土の破壊 個体間の摩擦則に似ている ( 土を摩擦性のあるもの ( 摩擦性材料 ) と考える ) 高校物理の復習 : 摩擦力 N F=μN T F のとき 物体は台の上を滑る T T 物体が滑る領域 物体が滑らない領域 ( 安定している領域 ) T=μN 11 N 土の破壊基準 ( 垂直応力とせん断応力の重要性 ) 土の場合に当てはめてみると? すべり面 土が壊れている領域 ( 塑性つり合い状態 ) = tan 土が安定している領域 ( 弾性状態 ) せん断応力 を加えることにより 土はせん断変形しはじめる. 土にも 摩擦則 が成立し 垂直応力に比例したせん断抵抗力が発揮される. 外力を受け物体内部に発生するせん断応力がせん断抵抗力と同じ大きさに達するとせん断変形は急激に大きくなり 土は破壊する. 12 土の摩擦則では 摩擦係数は用いず 内部摩擦角 ( せん断抵抗角 )を用いて表す.
13 14 一面せん断試験 ( 直接せん断試験 ) 一面せん断試験 ( 直接せん断試験 ) 一面せん断試験は 計測している応力状態 ( 垂直応力とせん断応力 ) が 破壊面での応力状態そのものである. 15 16 一面せん断試験 ( 直接せん断試験 ) 一面せん断試験は 計測している応力状態 ( 垂直応力とせん断応力 ) が 破壊面での応力状態そのものである. = c + tan クーロンの破壊基準 17 クーロン (Coulomb) の破壊基準 一面せん断試験は 計測している応力状態 ( 垂直応力とせん断応力 ) が破壊面での応力状態そのものである. 3 種類の垂直応力で一面せん断試験を行い それぞれの最大せん断応力を求めてプロットすれば ほぼ直線に並ぶ. < c +tan の領域 土は弾性領域 ( 可塑的な変形をする領域 ) にあり 変形は小さい. = c +tan の領域土は塑性つり合い状態 ( 非可逆的な変形をする状態 ) になり 大きな変形をしてやがて壊れる. = c +tan 弾性領域 このとき 切片を c 直線の傾きを として 次式のように土が破壊する条件を表した. = c + tan クーロンの破壊基準 18
一面せん断試験 ( 直接せん断試験 ) 一軸圧縮試験 : 主に自立できる粘性土 地盤改良土の試料を対象に利用 19 20 しかし, 一般には試験の際の供試体の端部拘束条件の影響などのために, 破壊面の角度がを満足することは難しいので, 一軸圧縮試験の結果から内部摩擦角を正確に求めることはできない. 飽和した粘性土について非排水試験を行い, 全応力表示を行うと =0となるので, 図 -21の破壊線は水平となる. したがって, この場合のせん断強さ 粘着 一軸圧縮強さの間の関係が成り立っ. ここに,q u : 一軸圧縮強さ (kgf/cm 2 ) (5) 鋭敏比一軸圧縮試験において 供試体が粘性土の場合 一軸圧縮強さは 練返しによる撹乱によって大きく変化する. そこで 練返し前と後の強度の比を鋭敏比という. St = q u / q ur (6) ここで q u : 乱されていない状態の一軸圧縮強さ q ur : 乱した状態での一軸圧縮強さ (kn/m 2 ) c 0 図 -21 1 (kn/m 2 ) 21 22 三軸せん断試験 : 原地盤の応力状態を再現できる試験装置 最もポピュラーな試験装置で 圧密 せん断過程において排水を制御可能 また 最大 最小主応力を制御可能 23 24
主応力による破壊基準の表示 三軸試験装置による土の強度の測定を考えてみよう!! 円筒供試体の上面と側面には, せん断力が加わらないから, 上面 : 最大主応力面 最大主応力 1 が作用側面 : 最小主応力面 最小主応力 3 が作用 実験は, 供試体に 3 なる圧縮応力を加えておき, 軸方向のみ応力を増加させる方法で行う. 軸方向に作用する ( 1-3 ) の力が供試体をせん断破壊へと導く : 軸差応力 1-3 : 軸差応力 3 3 3 : 拘束圧 このようにして, 拘束圧 3 を何パターンか変化させて実験を行うと圧縮応力によって供試体に生じた軸ひずみと軸差応力 ( 1-3 ) の関係は, 図 -1のようになる. また, この時状態をモール円で示すと図 -2となる. このような破壊時のMohrの応力円をいくつかの拘束圧に対して描いてみると, これらの応力円群は1 本の直線で包絡される. Mohr-Coulombの破壊包絡線 1-3 軸差応力 0 1,3-3,3 1,2-3,2 1,1-3,1 軸ひずみ ε 1 拘束圧 : 大きい 3,3 拘束圧 : 中程度 3,2 拘束圧 : 小さい 3,1 粘着力 c 0 3,1 3,2 3,3 1,1 内部摩擦角 1,2 1,3 三軸せん断試験装置 三軸せん断試験 25 図 -1 拘束圧の変化に伴う破壊軸差応力の変化 図 -2 破壊時の主応力に関するMohrの円表示 26 次に, この線 ( 破壊条件式 ) を主応力の表示によって示してみる. 図 -14の三角形 AOB に着目し, 1 と 3 の満たすべき関係を求めるととなり 1-3 =2c cos+( 1 + 3 )sin となる. ところで, 三軸応力状態で土に破壊が生ずる時, すべての面に作用する応力が破壊条件を満たしているかというと, そうではなく, ある 1 つの面に働く応力のみがこの条件を満たしていればよいのである. その面上の応力は,Mohr の応力円が破壊, 包絡線に接する点で表わされる. つまり, 前図でいうと,A 点に相当する応力が破壊条件を満たしているのである. このような応力が作用する面の方向は, 図より, 最大主応力面の方向から, (3) 1 B C 0 3 A C 0 1 だけ傾いていることが分る. このような面はすべり面と呼ばれるが, 実際破壊した土の供試体を観察してみると, 図に示すように, おおよそ水平面から α f =π/4+/2 なる面にそって土にすべり破壊が生じていることが分るのである. 3 すべり面 c cot 図破壊条件の主応力による表わし方 27 図 三軸せん断におけるすべり面の方向 28 29 30
供試体の排水条件によって, 次のように区分することができる. (1) 非圧密非排水せん断試験 (UU 試験 )c u, u せん断する前も, せん断中も, 供試体からの排水をまったく許さない試験方法であり, この試験結果は, 施工中の粘土地盤の安定や支持力を推定するような短期的な状態を検討するのに利用される. (2) 圧密非排水せん断試験 (CU 試験 )c cu, cu せん断中に間隙水圧を測定する場合 (CU 試験 ) c',' せん断する前に, 圧密圧力を加えて供試体内から排水を行い, せん断中には排水させない試験方法である. この試験結果は, 十分に圧密された地盤上に急速に盛土した時などの地盤の安定性の検討や, 地盤が圧密された時に期待される土の強さを推定する時などに用いられる. 砂質土のせん断特性 (1) 砂質土のせん断強さ成分 1 土粒子の回転 すべり摩擦 2 土粒子のかみ合わせ抵抗 抵抗に逆らって外力を加えると土粒子はもとの配列から新しい配列に移行する. 3 せん断中の体積変化 ( ダイレタンシー効果 ) 外的作用力に逆らって試料が膨張する時, 仕事をする. 砂質土の重要な特徴 土の締り具合 ( 密度 ) と密接な関係がある. (3) 圧密排水試験 (CD 試験 ) c d, d せん断前にCU 試験同様に十分圧密させ, さらにせん断中にも供試体中に間隙水圧を生じさせないように排水をしながら試験を行う方法である. この試験の結果は, 砂質土地盤の静的な安定や支持力, あるいは, 粘性土地盤の長期にわたる安定性を検討する時に用いられる. 31 (a) 密な砂の膨張 図 -1 せん断中における砂の容積変化 (b) ゆる詰の砂の収縮 32 (a) -ε,δv/v-ε 関係 図 -2 砂の強さ (b) の成分 砂のせん断特性の大きな特徴 密な砂 せん断中に土粒子が他の土粒子の上に乗り上げるため膨張する. せん断応力はひずみとともに増大しピークを示す. 体積変化は, 初期に少し収縮するがその後大きな膨張量を示す. 緩い砂 せん断中に間隙に土粒子が落ち込み, 収縮する傾向を示す. せん断応力はひずみとともに漸次増大して一定値に達する. 33 体積変化は収縮の一途をたどる. 34 砂のせん断強度 : 密度に左右される. 間隙の大きさによって異なる. ( 強度の発生原因 ) ダイレイタンシーの強度に及ぼす影響 ( 一面せん断の場合 ) f : 最大せん断応力 rf : ダイレイタンシーがない場合のせん断応力 : せん断面上の垂直応力第 2 項は体積変化 Δに対する抵抗成分 ( 三軸圧縮試験の場合 ) 砂質土の場合せん断強さは, 一般には粘着力はないので, = tan となる. 砂質土の場合, 透水性も大きいので土の境界面が自由に排水しうる状態にあれば間隙水圧は発生しない. 間隙水圧が発生する時 ( 不透水面で拘束 : 非排水条件 ) 35 =(-u) (2) 排水条件とせん断強さ砂のせん断強さは, 排水条件によって大きく異なる. (a) ゆるい砂 (b) 密な砂図 -3 飽和砂のせん断強さに及ぼす排水条件と密度の影響 ( テルツァギー ペック,1948) 密な砂は体積変化が妨げられると大きな強度を発揮する. 緩い砂は体積変化が妨げられると大きな強度を失う. せん断中に強度及び体積増加も減少もしない状態 このような限界にある間隙比限界間隙比 36
粘性土のせん断特性 (1) 特徴 :1 透水性が小さいので排水に時間がかかり, せん断中に間隙水圧が発生し, せん断強度を支配する. (2) 飽和粘土の非排水せん断特性 飽和土を非排水条件で三軸圧縮試験 排水を許さないので側圧 3 を増大させるとその分だけ間隙水圧が増大するだけで強度増加はない. 排水条件によって強度定数が大きく変化. 2 土粒子が小さく, 土粒子間には界面物理化学的な力が働き, 粘着力の成分が圧密とともに増大 モール円の大きさは一定で包絡線は 軸に平行である. 3 が増加しても有効応力は全く変わらず一定である. この時, せん断強さは, クーロンの式 f =c u +tan u である. しかし, u 0であるので 37 となる. 一軸圧縮強 q u と同じ 38 粘性土のせん断特性は 排水条件 応力履歴によって大きく異なる 39 40 正規圧密粘土と過圧密粘土のせん断特性正規圧密粘土 c =0 過圧密粘土 c 0 図 -8 応力履歴の差異による c, の変化 41