概要 PET(Positron Emission Tomography) 陽電子断層画像装置はがん診断に有用なツールとなっている 早期発見によりがんは完治する病になってきているが それには画像診断法の進歩が大きな寄与をしている 患者の QOL(Quality Of Life) 向上のために短時間でな

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1 修士学位論文 MPPC を用いた次世代 PET 装置の基礎研究 平成 21 年度信州大学大学院工学系研究科物質基礎科学専攻高エネルギー研究室山﨑真

2 概要 PET(Positron Emission Tomography) 陽電子断層画像装置はがん診断に有用なツールとなっている 早期発見によりがんは完治する病になってきているが それには画像診断法の進歩が大きな寄与をしている 患者の QOL(Quality Of Life) 向上のために短時間でなおかつ高精度な検査が必要となり そのための機器開発が盛んに行われている その中でも PET 装置は人間の生理現象を用いており がんの特性をうまく利用し確実に病巣を発見できる 本研究では PET 装置の高位置分解能をいかに達成するかを示し 次世代 PET の開発へつなげる第一歩とする 高位置分解能を得るために 本研究では光検出器として MPPC(Multi Pixel Photon Counter) を用いた MPPC はその微小なサイズから かねてからの PET 装置の問題である 縁辺での視差を減尐させる DOI(Depth Of Interaction) のアイデアに最適と言える素子である そして 5T もの高磁場中でも安定動作するので MRI(Magnetic Resonance Imager) 核磁気共鳴断層画像診断装置との組み合わせも可能であり 放射線を使用する画像診断の中でも 人体被爆を最小限に抑えることもできると考えている 現在の画像診断ではより鮮明な画像を取得することを目的に CT(Computer Tomography) と PET を組み合わせた PET-CT 装置が主流になりつつあるが CT は X 線を使用するため最低限の人体被爆が問題である それをさらに減尐させるために MRI と PET の組み合わせで画像診断装置を製作し 臨床に用いればさらに被爆を抑制することが可能になる また シンチレータとして無機シンチレータ LFS(Lutetium Fine Silicate) を用いた LFS のシンチレーション光の減衰時間は 35ns と非常に短く TOF(Time Of Flight) の手法にも応用できる可能性がある PET の仕組みは 体内に注入された放射性同位体からの陽電子による対消滅 γ 線を対向させた二つの検出器で同時計数することにより そのγ 線の発光位置を捕える 本研究では 1 1mm 2 の受光面を持つ浜松ホトニクス社製 MPPC に mm 3 のサイズを持った Zecotek 社製 LFS を直接接着した検出器を二個製作し それを対向させ 中心に 22 Na の陽電子放出核を配置して実験を行った それによると エネルギー分解能は σ/e=10% 位置分解能は σ=1.4mm を達成した この結果から MPPC と LFS を用いて DOI と TOF を考慮した次世代 PET を開発することは十分可能であると考えられる

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4 目次 第 1 章 PET(Positron Emission Tomography) 装置について 1-1. 原理 診断項目 脳血管 心臓 癲癇 使用薬剤 これまでの PET 装置 PET 装置について 光検出器 シンチレータ DOI(Depth Of Interaction)-PET TOF(Time Of Flight)-PET 13 第 2 章新型光検出器 MPPC(Multi Pixel Photon Counter) 2-1.MPPC の動作原理 諸特性 Gain Noise rate Cross talk 検出効率 17 第 3 章無機シンチレータについて 3-1. 発光機構 PET 用シンチレータ 新型無機シンチレータ LFS(Lutetium Fine Silicate) 20 第 4 章新型 PET 装置開発のための基礎実験 4-1. 研究内容 MPPC の測定 Gain について Noise rate について Cross talk について 実験のセットアップ システムの妥当性 エネルギー分解能 位置分解能 31 1

5 4-7. 角度依存性 位置分解能の角度依存性 34 第 5 章結果のまとめ 5-1. エネルギー分解能 位置分解能 角度依存性 位置分解能の角度依存性 37 第 6 章考察 6-1. エネルギー分解能 位置分解能 角度依存性 位置分解能の角度依存性 46 総括 今後の課題 参考文献 謝辞 付録 2

6 図 表目次 図 1 ブドウ糖と FDG 5 表 1 PET 用薬剤 8 図 2 PET 装置の概要図 9 図 3 有機シンチレータの発光機構 11 8 図 4 Non-DOI と DOI の比較 図 5 TOF-PET 図 6 1 1mm 2 MPPC と受光面拡大写真 図 7 無機シンチレータの発光機構 表 2 PET 用無機シンチレータの特性 図 8 無機シンチレータ LFS 20 図 9 LFS の発光スペクトルの強度温度依存 21 図 10 波長 415nm と 290nmLFS の発光スペクトル温度依存性 21 図 11 LFS と BGO の発光スペクトルの比較 図 12 Gain 測定のセットアップ 242 図 mm 2 MPPC の ADC 分布 図 14 Gain 線形性 図 15 Noise rate 図 16 LFS と MPPC の模式図 図 17 検出器 (MPPC と LFS) と各モジュールの接続図 図 18 PET を想定した検出器のセットアップ 図 19 実際のそれぞれの配置 図 Na の崩壊図 28 図 21 同時計数率の距離依存性 図 Na からのγ 線のエネルギー 図 23 コインシデンスの信号数分布 (9cm) 図 24 コインシデンスの信号数分布 (12cm) 図 25 角度依存性と位置分解能の角度依存性の測定 図 26 角度依存性 図 27 位置分解能の角度依存性 (θ=10 ) 図 28 位置分解能の角度依存性 (θ=20 ) 図 29 エネルギー分布 (threshold : -7.2mV) 3834 図 30 エネルギー分布 (threshold=-100mv) 図 31 エネルギー分布 (threshold=-150mv) 図 32 エネルギー分布 (threshold=-200mv)

7 図 33 位置分解能 (threshold=-150mv) 41 図 34 角度依存性 (threshold=-150mv) 43 図 35 ディスクリミネ タの設定 図 36 threshold curve for discriminator A 図 37 threshold curve for discriminator B 図 38 位置分解能の角度依存性のメカニズム 図 39 ADC モジュールと積分方法 51 図 40 LSO シミュレーションの様子 52 図 41 LSO 内で 0.51MeVγ 線が落としたエネルギー分布 52 4

8 第 1 章 PET( 陽電子断層画像 ) 装置について PET(Positron Emission Tomography) は名のごとく 陽電子 電子対消滅に より発生した 511keV の対消滅 γ 線を検出器で捕えて画像化する 1-1. 原理体内に陽電子放出核を注入すると そのままでは体全体に分布してしまう PET 装置の標的はがん細胞なので がん細胞の代謝機構をうまく使ってがん細胞に陽電子放出核を蓄積させる 体の生理現象を応用するため 機能診断と呼ばれる それには 糖に似た構造を持つ FDG (Fluoro Deoxy Glucose)( 図 1) の水酸基の一つを陽電子放出核に置き換えて体内に注射すると がん細胞は糖の代謝が多い つまり糖をため込む性質があるため この FDG はがん細胞に集積する そこで 陽電子が放出されるが 我々の体はその 60% が H 2 O( 水 ) でできているため体内にはたくさんの電子が存在する すると 放出された陽電子はすぐにそれらの電子と対消滅を起こし それとともに 511keV の二つの対消滅 γ 線となる このγ 線を対向させた検出器で測定する また この対消滅 γ 線はソースからの陽電子の初期運動量によって様々な方向に放出される すると 対消滅 γ 線の検出位置によりいくつもの直線を描くことができる これらの直線を重ね合わせて交わった点を陽電子の放出点と定義する つまり がん細胞の位置を特定することができるのである e + 図 1 ブドウ糖と FDG 検出器に用いられるのは シンチレータと光検出器である それらで構成された検出器を 360 円形に配置して 完全な PET 装置が製作される これにより 360 どの方向に放出された対消滅 γ 線でも同時に観測することができるようになる 5

9 1-2. 診断項目 PET 装置は主にがん診断装置として用いられるが そのほかにも薬剤を 変えることによって 様々な診断が可能である 脳血管脳梗塞などの虚血性疾患とくも膜下出血などの出血性疾患に分けられる PET では 虚血性疾患の診断に有用である つまり 脳血管の血流や酸素の代謝を見る 血流と酸素飽和度は使用する薬剤を変化させることにより区別することが可能である 心臓心臓は血液循環の要となる臓器である 大量の血管がそれを取り巻いている PET では心筋の血管障害を探る 血流を見るのは脳と同じで 心筋生存能を判定する 心筋梗塞や狭心症 虚血性心疾患を発見する 癲癇癲癇とは 大脳の神経細胞 ( ニューロン ) 由来の発作や脳波異常を指す ニューロンは正常な場合 お互いに一定の電気信号で活動しているが この電気信号が突発的に乱れることにより発症する PET は癲癇の起こる発作点 ( 焦点という ) を特定するために使用される この発作には2 種類あり 発作の初めから脳全体が電気信号の乱れに襲われる 全般発作 この場合発作当初から意識不明に陥る また 脳の特定の部位から始まる部分発作があるが そのほかの診断法 脳波検査や CT MRI など所見も合わせて PET 検査ではさらに 発作の部分を確実に特定するため こちらのケースが検査対象になる 1-3. 使用薬剤 PET で用いる薬剤は 主に体の代謝にのせるもの ( 標識化合物 ) と 陽電 子放出線源に分けられる 代謝にのせるものとは PET では動物の生理現 象を用いることからここではそう呼んでいるが PET が適用になるのはほ とんどががんなので 糖に分類される薬剤である 標識化合物診断したい箇所により 陽電子放出核で標識する化合物を変化させる 局所的血流においては CO ガスや CO2 ガス また CO ガスは肺の灌流 ( 血液のもれ ) の診断にも使用される N2 ガスは換気機能 O2 ガスは酸素消費 6

10 量等の診断に用いられる アミノ酸やグルコースの先駆物質を調べるために水素シアン化物 各種薬剤の先駆物質を調べるのにはヨウ化メチルを用いる また 特定の臓器がターゲットとなる場合 脳と心筋の造影 糖代謝ではグルコース 脳と膵臓の造影 受容体の研究にはメチオニン 脳と胸の造影にはアンモニア 単純な血流を調べるのに H2O 脳と胸の造影 がんの診断には FDG(Fluoro Deoxy Glucose) が使用される どれも生体の生理機能を用いて つまりそれぞれの臓器で周りの臓器よりも代謝されやすいといった 異なる薬剤が適用される 陽電子放出核 PET 検査で用いられる陽電子放出核は人体の被爆を最小限に抑えるために 比較的短い半減期の放射性同位元素が用いられる そのため 検査で用いる化合物を施設外で生産し それを輸送して検査に使用するのは効率が悪い そこで PET 装置を所有する施設ではサイクロトロンを併設していることが多い 様々な陽電子放出核の中で PET で用いられるのは主に 炭素 11 C 窒素 13 N 酸素 15 O フッ素 18 F である それらの生産過程を見てみる 最も効率的な反応は 高濃縮された安定核を含むターゲットにサイクロトロンで陽子を加速して (p,n) 型反応を起こさせることである 例えば 13 C (p,n) 13 N, 15 N (p,n) 15 O, 18 O (p,n) 18 F である 1 回の検査で使用される放射能は 11 C と 13 N で約 10mCi 15 O で 15~20mCi 18 F で 5~10mCi の放射性核種の初期放射能に対して 1~ 数 mci の範囲である 表 1 に PET 検査で使用される薬剤と検査目的を示す PET に使用される放射性核種は 数 10mCi であるが サイクロトロンで製造される量はその治療施設における検査を受ける患者数によるが 陽子を加速するエネルギーと放射性核種の収量はほぼ一定となっている 例えば 18 F に関しては現状の臨床現場では 十数 MeV に加速された陽子を 18 O に照射するが この 18 O は H2O の酸素をターゲットにしているので 実質 陽子で水を照射することになる 十数 MeV の陽子で 18 F の収量は 1 ~10Ci/2h になる 18 F は半減期が 108min. と短いので 患者の検査時間に合わせて製造し放射能を減弱させれば 上に挙げた 5~10mCi の放射能で検査を行うことができる [1] 例として 10Ci の 18 F が 10mCi になるまでの時間は 計算によると 79.9 分でおよそ 80 分である また 18 F 生成核反応断面積は陽子 10MeV と 18 O の反応で 200mb 陽子 20MeV で 40mb と陽子エネルギー上昇に伴って指数関数的に減尐する [2] 7

11 核種 標識化合物 検査目的 15 O(gas) O 2 脳酸素消費量 CO 2 組織血流量 CO 組織血流量 15 O(liq.) 水 脳血流量 18 F FDG 腫瘍 脳機能 心機能 フロロド パ 脳機能 ( ドーパミン代謝 ) 11 C メチオニン アミノ酸代謝 腫瘍 酢酸 心筋血流量 メチルスピペロン 脳機能 ( ドーパミンD 2 ) 13 N アンモニア 心筋血流量 表 1 PET 用薬剤 1-4. これまでの PET 装置次世代 PET の研究するにあたり 過去または 既存の PET について知る必要がある その中で 高位置分解能を達成するための問題点を明らかにし 本研究の課題にする まず PET に不可欠な素子として光検出器があり さらに放射線を光検出器の敏感波長を持つ光に変換 十分な光量を得るために必要なシンチレータについて述べる これまでの PET 装置では シンチレータとして BGO や LSO などが用いられてきた しかし BGO は減衰時間が非常に長く光量も尐ない LSO に関しては特性は PET 装置に適当である なぜなら大抵使用する光検出器 PMT などの敏感波長領域に発光波長領域が合うためである しかし LSO BGO 共に高価であり 低コストで PET 装置を製作するためには不都合である また 既存の PET 装置では光検出器として PMT が主流であった PMT は同じく高価であり それを回避するために1つの PMT で多数のシンチレータからの信号を読み出す技術が提案されてきた しかし そこでは読みだした信号をそのまま画像化することは不可能であり 検出器の後に組み込まれるエレクトロニクスやコンピュータの画像解析で補正を行っていた そのために位置精度には限界があり 位置分解能の向上は見込めないのが現状である 8

12 1-4-1.PET 装置についてまず これまでの基本となる PET 装置の形式について述べる PET 装置は 360 に配置された検出器で対消滅 γ 線を捕える ( 図 2) ここで 検出器は先述した光検出器とシンチレータで構成される 様々な方向に直線的に放出される対消滅 γ 線のラインを重ね合わせることによって それらのラインの交差する点をγ 線が放出された点 つまりがんなどのターゲットがある位置と定義する ターゲット 検出器 ( 光検出器 + シンチレータ ) 図 2 PET 装置の概要図 光検出器 Photo MultiPlier Tube (PMT) 高エネルギー実験では最も安定しており ノイズも尐なく広範囲に使用される光検出器である 医療分野でも画像診断の機器に応用され 現在も多くの面で使用されるスタンダードなツールである また 高 Gain(10 5 ~10 8 程度 ) を稼げるため 神岡実験や他の実験でも利用される しかしが比較的大きなサイズを持つことと 磁場の影響を受けること さらに高価なためコストの問題が短所となる 動作原理は 入射してきた photon が光電面に入射することで 光電効果により電子がたたき出される これが 高電場のかかったダイノードに衝突し2 次電子をたたき出す そこでは複数の電子がたたき出されるため 次のダイノードではさらに複数の電子がたたき出される これがダイノードの数だけ繰り返され電子が増幅されるという仕組みである 9

13 Flat Panel Photo MultiPlier Tube (FP-PMT) 平面に受光面を持つ光電子増倍管である 多数のチャンネルを保有することから Multi Anode PMT とも呼ばれる また チャンネルごとの positioning をうまく行えば どのチャンネルからの信号なのか割り出すことができるため 位置情報も取り出せる そのため PS-PMT(Position Sensitive PMT) とも呼ばれる このタイプの光検出器は 広い受光面を持っており広範囲に渡る光の入射がある実験に適している Avalanche Photo Diode (APD) 半導体検出器の一種であり 第 2 章で述べる MPPC の原点でもある p-n 接合の半導体に逆バイアスをかけて動作させる しかし 始めは電流は流れない ところがある点 (breakdown Voltage) を超えると 急に電流が流れ始める これは電子雪崩降伏による 空乏層中でのキャリアーのエネルギーによって結晶格子の結合を切り 新しい電子と正孔対を作る これらがさらに加速されて同じ現象を引き起こすとネズミ算式に電子と正孔が作られ 大きな電流となる 雪崩降伏では終始雪崩が起こるので 素子の中にクエンチング抵抗を組み込みそれを抑制する breakdown Voltage 以上の逆バイアスで動作させると 同時に入射する photon 数に依存せず一定の信号を出力するようになる このモードをガイガーモードいう シンチレータ シンチレータには大きく分けて有機シンチレータと無機シンチレータが ある それぞれ異なった特徴があり 使用用途に分けて利用される Ⅰ. 有機シンチレータ固体 液体 気体の3 種類に分類される 基本的には有機溶媒に蛍光物質をまぜ 成型して製作する 有機シンチレータの場合 蛍光物質を混入させる有機溶媒の相や種類によって 使用用途に合わせて加工するが 加工自体は非常に簡単で安価である 有機シンチレータは 青 ~ 緑の波長の光を発光する photon 数は 100eV の吸収エネルギーで 1photon 程度である 有機シンチレータの発光機構は 3 種類に分けられるが すべてが重なって発光する まず 蛍光であり 主なシンチレーション光になる これは 図 3 の S1 から S0 の遷移であり 寿命は 10-9 ~10-8 秒程度である 蛍光量 I は指数関数的に減衰し 次式 t/ I I 0 e (1) 10

14 に従う ここで I0 は初期蛍光 τは減衰時間である 続いて 燐光である これは T1 から S0 の遷移であり 10-4 ~ 数秒でやはり 指数関数的に減衰する 3つ目は遅い燐光である 常温 または高温において見られる現象であり T1 S1 と遷移できる十分なエネルギーがあるときに可能である 発光スペクトルは蛍光と同じで 寿命は T1 と S1 の間隔 T1 の寿命 温度に依存し 10-6 秒程度かそれより長くなる 図 3 有機シンチレータの発光機構 また 本来シンチレータで吸収されたエネルギーと発光量には線形性が あるはずであるが 有機シンチレータは非線形性を有する特性がある こ れは入射 photon のエネルギーが小さくなると顕著になる その式を以下に 示す k B dl dx L 0 de/dx 1 k B (de/dx) ここで は粒子の種類に依存しない定数であり (2) という値を持つ 9~11mg cm - 2 MeV - 1 固体シンチレータ スチルベンやアントラセンなどの蛍光有機結晶をそのまま用いる プラスチックシンチレータ p テルフェニル (TP) を適当な溶媒 スチレンなどに溶かした後 プラスチック化したもの プラスチックの成形は容易なので 実験目的に合わせて比較的安価に製作することが可能である しかし シンチレータそのものの寿命 残光 製作工程で混入する空気の光子生成抑制 放射線耐性が悪い などの問題もある 11

15 液体シンチレータトルエン 混合キシレン ( オルソ メタ パラ-キシレンの混合物 ) プソイクドメン ジオキサンなどの溶媒に PPO( ジフェニルオキサゾール ) やブチル-PBD(2-[4-tert-ブチルフェニル ]-5-[ ビフェニル ]-1,3,4-オキサジアゾ ル ) などの溶質を混合させたもの 液体シンチレータは測定試料を直接シンチレータの中に溶かし込めることが特徴であり 幾何学的検出効率は 100% である Ⅱ. 無機シンチレータ PET の場合 シンチレータに以下のような要請がある MeVγ 線を検出するために 高阻止能を持つ つまり高密度であること 2 一定時間連続的に信号を検出するために 信号の重なりを防ぐため蛍光減衰時間が短いこと 3 シンチレーション光を検出器まで効率的に導くため 透明であること 4 蛍光出力が高いこと 5 自己放射性がないこと バックグラウンドを抑えるため 6 結晶が大量生産できること これらを満たすものとして PET には無機酸化物単結晶 ( 無機シンチレ ータ ) が用いられている 本研究で用いる新型無機シンチレータを含めて 第 3 章で詳しく述べる 1-5.DOI-PET DOI(Depth Of Interaction) は 対消滅 γ 線を検出する際の検出器の幾何学的な問題による視差を低減させ さらに感度を低下させないための原理である 既存の PET は 1 層の円筒形の検出器で構成される しかしこのままでは FOV(Field Of View) の縁辺つまり検出器内の対消滅 γ 線発生点が検出器の縁辺にあるとき 検出器そのものの大きさによって対消滅 γ 線の発生点を割り出すのに限界ができる つまり検出器に入る異なる位置から放出された対消滅 γ 線が同じシンチレータ対に入射した場合 同じ信号として認識されてしまう これを回避するための発想が DOI である 図 5 に示すように DOI は検出器のシンチレータ部分を FOV 中心から見て放射方向に垂直に分割させる すると 検出器は奥行き方向において別々 12

16 の検出器として働く しかし 分割によりシンチレータの長さが短くなり γ 線との相互作用の確率が低下する それが検出器の感度を低下させるが DOI-PET では細分割した検出器を層構造にして円周上に配置することによって 感度低下を防ぐ 図 4 Non-DOI と DOI の比較左側の PET 装置の概略図を見ると ソースが FOV 中心にあるときはどの検出器を見込む立体角は同じであるが ソースが FOV 縁辺になると立体角が大きくなり これが位置分解能を低下させる 右側の図を見ればわかる通り Non-DOI の場合 2つの黄色のソースの位置からのγ 線は同じ検出器に入射し 同じ信号として検出されてしまうため判別が不可能になり 一様に広がったぼやけたものになる DOI の場合 2つの赤いソースは検出器を分割することにより 判別が可能になる これが位置分解能向上させる 1-6.TOF-PET TOF(Time Of Flight)-PET は時間情報を元に ターゲットの位置を特定する装置である 図 5 に示すように対向した検出器で 0.51MeV の対消滅 γ 線を捕えるのは普通の PET と同じであるが 対の検出器の片方に γ 線が入射した時間ともう片方に γ 線が入射した時間の差を計測することによって その対消滅 γ 線の走った直線上のどこで対消滅が起こったのか特定する これにより 通常の PET のように線を重ねることによって求めていた対消滅点を 原理的には 1 つの直線 13

17 が検出できればその点を割り出すことが可能となる そして 実質検査時間の短縮と位置分解能の向上が予想される しかし 時間情報を扱うので検出器の高時間分解能が要求される 現在検出器には無機シンチレータが用いられているが 無機シンチレータは一般に蛍光減衰時間が長く (~O(100ns)) TOF の技術を適用するのは困難である そのため TOF-PET 開発に当たってはより蛍光減衰時間の短いシンチレータが必要であり 現在様々な研究が行われている 時間差情報に関して 1ns の時間差で 15cm(FWHM) の位置特定にな る これは PET 装置として十分な性能ではない 現在 LSO(Lu2SiO5) など ( 表 2) 減衰時間の速いシンチレータを用いて時間分解能の向上を目標 [3] に しているが [ns] オーダーの減衰時間から我々が目指す [mm] オーダーの位 置分解能を得ることは困難である [mm] オーダーの位置分解能を得るには 尐なくとも 60ps の時間差情報が必要である 60ps の時間差で 0.9mm の位 置分解能 (FWHM) が算出できる これは シンチレータの改善が不可欠に なるが TOF-PET の利点としては 1 直線上でターゲットの位置を特定可 能なため バックグラウンドの軽減に寄与する cδt Δt 図 5 TOF-PET 信号を検出した時間差を測定することにより 0.51MeV の対消滅 γ 線の走った直線上で FOV の中心からのソースの位置的なずれを測定可能 これにより原理的には既存の PET のように直線を重ねて 対消滅点を割り出す必要性がなくなる また 多数の対消滅 γ 線の信号を観測すれば 統計的にも分解能が向上すると考えられる 14

18 第 2 章新型光検出器 MPPC(Multi Pixel Photon Counter) MPPC(Multi Pixel Photon Counter) は で述べた APD を小面積内に集積させた光検出器であり 例えば 1 1mm 2 の受光面に 1600pixel の APD が集積されたものがある 現在信州大学など国内の研究教育機関と浜松ホトニクスが共同開発中の新型光検出器である 特徴としては 優れた photon counting 性能 常温で動作 低バイアスで動作(~76V) 高い Gain が得られる (10 5 ~10 6 ) 磁場の影響を受けない 微小なサイズ( 受光面 :1 1mm 2 や 3 3mm 2 など ) などがあげられる PMT と比較しても低バイアスで同等の Gain が得られることから PMT に取って替わる光素子といっても過言ではない また 磁場の影響を受けないため 広範囲に応用可能であると考えられる 得られる信号は photon が入射した pixel 数に比例し 入射光量が尐ない場合 photon 数と出力信号は線形性を持つ しかし pixel 数を超える photon が入射してくると一定の信号に飽和してしまう つまり 大光量に対しては MPPC の信号は非線形性を示す cathode 図 6 1 1mm 2 MPPC と受光面拡大写真 2-1.MPPC の動作原理 MPPC の受光面に集積されたそれぞれの APD pixel は入射 photon 数によらず一定の大きさの信号を出力する また APD pixel はそれぞれクエンチング抵抗が接続されており 出力電流が流れるようになっている MPPC 内ですべての APD pixel は1つの読み出しチャンネルにつながっているので それぞれの APD pixel からの信号は重なり合い 1つの信号となる この信号の大きさ または電荷量を測定することにより MPPC に入射し 15

19 た photon 数を見積もることができる 1 つの photon が MPPC に入射した ときに得られる信号を 1photoelectron(p.e.) と定義する 2-2. 諸特性 Gain ADC 分布を見たとき MPPC は1photon ごとにきれいに分別されたピークを描く ( 図 13) 隣り合うピークの間隔はちょうど1p.e. 分の電荷量に相当することから Gain を見積もることが可能である 1つの pixel のガイガーモードでの電子の増幅率は Gain 1pixel が出力する電荷量 素電荷 2つのピーク間のADCチャンネル ADC変換量 素電荷 (3) で求めることができる MPPC の増幅率は 逆バイアスに対して直線性を持つことが知られてい る Noise rate 入射光がない状態での単位時間当たりの信号数 これは 熱励起によるノイズと考えられ ダークノイズと呼ばれる MPPC は固体素子であるので この熱励起による電子が雪崩を起こしてノイズが発生する ガイガーモードで動作する MPPC はノイズ成分も増幅され 本来の photon 信号と区別できなくなる そこで ノイズの評価は MPPC では重要となる ここでは そのノイズを評価するため ある一定時間内にどのくらいのノイズが発生するのかを検証するので Noise rate を定義する ほとんどの場合 1 秒間のノイズをカウントし 単位を Hz で表す また ノイズの信号の大きさは 1p.e. に相当する Cross talk APD pixel において 増幅の過程で入射した photon とは別の photon が発生することがある 一度励起された電子とホールが再結合を起こし photon が発生する この photon が隣の pixel に入射し そこで増幅を起こして信号として検出されてしまうのが cross talk である Cross talk は 1.5p.e. threshold での Noise rate と 0.5p.e. threshold での 16

20 Noise rate の比で表される cross talk Noise Noise rate(1.5p. e. threshold) rate(0.5p. e. threshold) (4) ここで p.e.threshold について述べる p.e. とは 1 photon に対する出力信号のことである 図 13 に示すが MPPC は優れたフォトンカウンティング性能を持っている 信号分布は 1 photon ごとにピークを示し ADC 分布から photon 数を見積もることが可能である そこで cross talk を評価するにあたり threshold を 0.5p.e. と 1.5p.e. に設定する 0.5p.e. の threshold に設定すると 1p.e. 以上の photon 入射で MPPC は信号を出力する 同様に 1.5p.e. の threshold 設定で 2p.e. 以上の photon 入射で信号が出力される 0.5p.e. の threshold で 1 photon の入射を保証 1.5p.e. の threshold で 2 photon の入射を保証する これらの比を取ることによって 1 つの pixel に入射した photon により放出された photon が 隣の pixel に入射することにより信号を出力する割合を計算することができる 検出効率 入射 photon のうち 検出可能な photon の割合を示すものである こ れは 量子効率 QE とアバランシェ増幅を起こす確率 ε Geiger MPPC の受 光面において光子に対して感度のある有効面積 ε geometry を用いて 検出効率 = QE εgeiger εgeometry (5) で表すことができる 17

21 第 3 章無機シンチレータについて 3-1. 発光機構第 1 章でも述べたとおり PET 装置では無機シンチレータがよく使用される そこで まずは無機シンチレータの発光機構について述べる この発光機構は 結晶格子で決まるエネルギー準位による 結晶中のエネルギー準位は離散的なバンド構造を持つ しかし純粋な結晶の場合 価電子帯と伝導帯間のバンドギャップが大きいため 電子は禁制帯を飛び越えて価電子帯から伝導帯へ遷移することができない そこで 活性化物質と呼ばれる不純物を添加することにより 禁制帯内に電子の存在できる新たなエネルギー準位 ( 活性化中心 ) を作り出す 入射粒子によって結晶は電離 励起され電子 ホール対を生成する このホールは素早く活性化中心に移動し 活性化物質を電離する また 電子はその電離された活性化物質と結合し そのエネルギーがシンチレーション光として放出される 伝導帯 禁制帯 活性化物質の 基底状態 価電子帯 活性化中心 photon 図 7 無機シンチレータの発光機構 3-2.PET 用無機シンチレータ PET には NaI:Tl(Sodium Iodide) BGO(Bismuth Orthogermanate, Bi4Ge3O12) GSO(Gadlinium Orthosilicate, Gd2SiO5:Ce) LSO (Lutetium Orthosilicate, Lu2SiO5:Ce) などといったものが従来用いられてきた これは より重い元素を結晶の密度を上げるために使用したことと 発光量を大きくするための手段であった また それぞれに Tl や Ce の不純物が含まれている これは 不純物を混ぜ込むことにより 新しいエネルギー準位を作りだし 求める波長の光 厳密には使用する光検出器の敏感波長領域の光を取り出すことが目的である 現在臨床における PET 装置の多くには BGO が用いられており 研究段階として LSO やいくつかの 18

22 無機シンチレータを組み合わせた LGSO(LSO+GSO) や LYSO(LSO+ Y2SO5) などの混晶型無機シンチレータの開発が行われている しかし 有機シンチレータと比較して 無機シンチレータの場合 融点や沸点が非常に高いことから その製法にまで工夫が求められており 全体として大きな研究分野となっている 主だったものの特性は表 2 に示す [4] NaI は発光量は非常に多いのだが 潮解性があるため安定した PET 装置運転のために不向きである また GSO は高密度で減衰時間は短いが 光量が尐ない さらには BGO は GSO よりさらに密度を高めたが 減衰時間が非常に長くなり光量も低下してしまった そこで LSO が誕生する LSO は密度も高く 放射線の阻止能に優れており光量も NaI の 80% という高い出力を持つ さらに 減衰時間も短いため 現在 PET に使用される最も有力な候補であり LSO を実装した PET 装置も市場に出てきている しかし 問題はその価格である LSO は非常に高価であり PET 装置のコストの大半を占める これが PET 装置の普及を妨げていると考えられる そこで 我々はより新しい無機シンチレータ LFS(Lutetium Fine Silicate)[5] の使用を考えている Specification Density (g/cm3) attenuation length(cm) decay constant(ns) maximum emission(nm) light yield (NaI:100) NaI BGO LSO LYSO LGSO 7.2 unsearchable LFS 表 2 PET 用無機シンチレータの特性 19

23 3-3. 新型無機シンチレータ LFS(Lutetium Fine Silicate) LFS( 図 8) は LSO と同等の特性を持ち かつ非常に安価であることから現在の PET 装置のコストを下げるのに有効であると考えられる LFS の特性も表 2 に載せる また 減衰時間が 35ns と短いので 高時間分解能が必要な TOF-PET にも使用できる可能性がある しかし その構造がいまだに不明であるため 詳細が分かりかねるところが難点である 我々は信州大学工学部の伊藤稔教授に依頼し LFS の特性を調査していただいた そこでは LFS は CexLu2+2y-xSi1-yO5+y の構造を持ち 近似的に不純物として Ce が用いられた LSO(Lutetium Ortho Silicate ; Lu2SiO5: Ce) と考えることができると示された 密度は 7.3g/cm 3 と高く LSO とほとんど同じである また 発光波長は 412nm であり 青色の光を発する これは 本研究で用いる光検出器 MPPC との適応性がよい また NaI:Tl の 80% を超える光量を稼ぐことができるので PET 装置の検出効率を上げることが可能であると考えられる 既に PET に広く使用されている BGO との比較においては 室温で約 20 倍の光量が稼げるとの伊藤教授からの報告がある LFS の発光スペクトルの温度特性 LFS 発光強度温度依存性 LFS と BGO の発光スペクトルの比較は図 9 図 10 図 11 に示す 図 8 無機シンチレータ LFS 20

24 図 9 LFS の発光スペクトルの温度依存性本研究では室温で実験 を行っているので 300K で規格化されている 図 10 波長 415nm と 290nm の LFS 発光強度温度依存性 21

25 図 11 LFS と BGO の発光スペクトルの比較 これらの実験データは信州大学工学部の伊藤稔教授による測定結果である 22

26 第 4 章新型 PET 装置開発のための基礎実験 4-1. 研究内容 本研究では新型 PET 装置製作を念頭において 高感度 高位置分解能で低コストでそれが実現できるようなツールを用いる そこで 光検出器として MPPC を 無機シンチレータとして LFS を使用する 現在 PET 装置の研究では低コスト 高位置分解能の2つに目的が集約されているが 本研究では高エネルギーの物理実験で用いられる放射線検出器を応用することで その視点から高性能な PET 装置を製作することを念頭に置いている 我々高エネルギー分野での検出器 ( カロリメータなど ) は PET 装置とほぼ同じ構造を持つがその性能は PET 装置を考えたとき オーバースペックである なので 医療診断分野で求められる性能と市場を見極めつつ PET 装置の基礎研究を行う 4-2.MPPC の測定まず MPPC の諸特性について測定を行った MPPC は素子それぞれが異なった特性を持ち それらをモニタリングしながら実際の応用の実験に用いなければならない MPPC は 1 1mm 2 の受光面を持つもの [6] を使用した Gain について MPPC はそれ自体ノイズを持っており 光が入射しなくても 1p.e. また は 2p.e. 相当の信号は十分測定可能である しかしノイズに関しても厳密に は素子ごとにその数は変化する そこで 意図的に LED を光らせ 室温で 測定を行った MPPC の Gain を求めるには まず出力信号の ADC 分布を 取る その分布からピークとピーク間の差 d を求めて 次式を適用する Gain d S e A (6) ここで d は 1p.e. に相当する ADC カウント S は ADC の分解能 0.25pC/ADCcount e は素電荷 ( C) A はアンプの増幅率であり 本研究で用いたアンプでは 倍である 実験系のセットアップは図 12 に載せる 23

27 LED LED driver 電源 Clock generator Gate generator MPPC ADC 恒温槽 電源 図 12 Gain 測定のセットアップ Clock generator は 50kHz ADC の gate の時間幅は 200ns に設定した 75.6V から 77.2V まで MPPC のバイアスを変化させて ADC 分布を測定 した 76.1V の ADC 分布を図 13 に示す [ADC count] 図 mm 2 MPPC の ADC 分布 ( バイアス :76.1V) 図 13 の左から最初のペデスタルのピーク 2 つ目の 1p.e. のピークを Gaussian で fit し ピークの中心値を求め そこから d を求めると d = (1p.e. の中心値 )-( ペデスタルの中心値 ) = 87.06±0.89 となり 式 (6) に代入すると 24

28 Gain ( ) となった MPPC のバイアス電圧を変化させたときの Gain を求め 結果を図 14 に示す MPPC の Gain は線形性を持っているが それが確認できた f(x)=(1.31±0.02) 10 5 x+( 9.70±0.17) 10 6 図 14 Gain 線形性 : 各バイアス電圧での Gain をプロット また このグラフで直線の横軸の切片は MPPC に電流が流れ始める電圧 break down 電圧を示す これは本来各 MPPC により異なるため 素子ごとに測定をする必要がある さらに 実際に operate する電圧はその 2 ~3V 上に設定することが多い 本研究で用いた MPPC では breakdown 電圧が 74.38±1.79V になった 誤差が大きいが これは fitting の際の切片の誤差に起因している Noise rate について 77V のバイアスで MPPC を作動させ その threshold curve を測定した 図 15 では 1p.e. で値は急激に低下するのが分かる 図 15 の実線はガウス関数をある下限以上で積分した相補誤差関数で fitting したものである これにより 0.5p.e. threshold を決定し それを Noise rate と定義する 図 15 から 0.5p.e. が-30mV threshold に対応する 25

29 図 15 Noise rate この結果からは 0.5p.e. threshold で (1.71±0.01) 10 5 Hz となった Cross talk について threshold curve を元に 式 (4) を適用する まず 1.5p.e. の Noise rate は (2.62±0.01) 10 4 Hz であるので Cross talk は 4 ( ) 10 Hz Cross talk 5 ( ) 10 Hz となったので およそ 15% である 4-3. 実験のセットアップ本研究では 主に PET 装置を前提としたエネルギー分解能と位置分解能について実験を行った まずそのためのセットアップについて述べる MPPC は 1 1mm 2 の受光面を持ったものを使用した また LFS は mm 3 のサイズの結晶を用いた 図 16 に示すように MPPC の受光面に LFS の 3 3mm 2 の面を接着剤を使用せず直接接合し 1 つの検出器とした これをもう 1 セット製作し 1 直線上に対向させて配置させると PET 装置における 1 対の検出器に相当する また 実験のための回路図を図 17 に載せる 26

30 LFS 図 16 LFS と MPPC の模式図 ADC Gate 図 17 検出器 (MPPC と LFS) と各モジュールの接続図 まず それぞれの検出器から読みだした信号はディスクリミネ タに 入力される その後 コインシデンスモジュールにそれらの信号が入力 され 同時計数のロジックが出来上がる ここで コインシデンスのタ イムコンスタントは 25ns に設定した さらに エネルギー分解能の測定 のために ADC 分布を測定したので コインシデンスモジュールからの 1 つの信号は ADC モジュールに gate 信号として入力した ここで gate 信号は 200ns に設定した また ADC 分布を取る信号は片方の検出器 図 17 の MPPC1 からの信号を用いた また コインシデンスからのもう 1 つの信号は 同時計数により位置分解能を測定するため スケーラーに 入力した 本研究では ディスクリミネ タは豊伸電子 [7]N023 コインシデン スモジュールは豊伸電子 N013 ADC モジュールは 豊伸電子 C009-16chADC スケーラーは KN1860 を用いた エネルギー分解能 位置分解能各測定での検出器の配置を図 18 と図 19 に示す まず LFS と MPPC で構成された検出器を対向させ て設置する それらを結ぶ直線上のちょうど中心に 0.51MeV の対消滅 γ 線源 22 Na を置く この線源は位置分解能測定時に使用するマイクロメー タ上に置き 中心から検出器を結ぶ直線に対して垂直に移動させること 27

31 ができるようにした 実験を通して MPPC のバイアスは 75.6V に設定 した 22 Na 検出器 (MPPC+LFS) 9cm or 12cm 9cm or 12cm 検出器 (MPPC+LFS) micro meter 図 18 PET を想定した検出器のセットアップ 22Na 図 19 実際のそれぞれの配置 図 Na の崩壊図 28

32 22 Na の線源は図 20 に示すような崩壊を起こす 実験で用いた線源はプラスチック内に密封されており 線源から放出された陽電子はプラスチック内で対消滅を起こし 0.51MeV の back to back のγ 線になる これを検出器で検出するのが本研究の目的である しかし 22 Na 線源は 1.28MeV のγ 線も放出するので それがバックグラウンドとして実験結果に影響するので 実験結果の評価ではそれを考慮する必要がある 4-4. システムの妥当性実験システムの妥当性を探るため 線源と検出器の間隔を変化させてコインシデンスのカウント数を計測した ディスクリミネ タの threshold は-7.2mV に設定した これは 1/r 2 に従うはずなので その検証のため 実際の実験に入る前に行った測定である 図 21 にその結果を示す カウント数は 1 分間になっている 図 21 同時計数率の距離依存性 fitting の結果は y=a/r 2 ±b (7) において a=(6.84±0.31) 10 7 [Counts/min./mm 2 ] b=(10.76±0.56) 10 5 [Counts/min.] となった これから 計数率は 1/r 2 にしたがっており システムの妥当性が示された また テールの部分の底上げは 22 Na からの 1.28MeV のバックグラウンドと考えられる 29

33 4-5. エネルギー分解能 4-4 節で述べたシステムで各検出器と線源の距離を 12cm に設定し ADC 分布を測定した また ディスクリミネ タの threshold は-200mV に設定した 結果を図 22 に示す 図 22 より 0.51MeV のピークとコンプトンの連続分布が見てとれる [ADC count] 図 Na からの γ 線のエネルギー分布 PET では 0.51MeVγ 線の検出を目的としているので そのピークを Gaussian で fitting をし エネルギー分解能を σ(e)/e で評価した σ(e)/e=10.00±0.19% となった gate 信号は分布のコインシデンスを取っているので このピークは 0.51MaV の back to back のγ 線と保証される 4000 チャンネル付近に鋭いピークがあるが これは ADC が最大 4095 チャンネルまでしか測定できないことによるオーバーフローで 1.28MeV によるものと考えられる 4-6 節の位置分解能のバックグラウンドの議論のためも 1.28MeV のγ 線の計数が必要であるが 1.28MeV のピークがオーバーフローによりデルタ関数のようになっているため 解析が不可能である 1.28MeV のエネルギー分布が検出できれば 0.51MeV の分布と 1.28MeV の分布を積分し その比を算出することにより位置分解能 ( 図 23 24) での 1.28MeV によると思われるバックグラウンドと 0.51MeV の計数比較が可能になる 1.28MeV の分布を検出する実験が今後の課題になる 30

34 4-6. 位置分解能この実験では 線源と検出器の距離を 9cm と 12cm の2 通りに変化させて行った さらに マイクロメータを用いて 線源を図 19 のように 1mm ずつ検出器と検出器を結ぶ直線に垂直な直線の中心 ( エネルギー分解能測定で線源を置いた位置 ) を 0mm と定義し その直線に垂直な方向に- 5mm~5mm まで移動させてそれぞれの位置で同時計数を行った 計数は 1 分間のカウント数で評価し 結果をプロットしてさらに Gaussian で fitting を行い 位置分解能を算出した また threshold は-7.2mV に設定した まず 検出器と線源を 9cm に設定した場合の分布を図 23 に示す position [mm] 図 23 コインシデンスの信号数分布 (9cm) これより位置分解能は σ=2.49±0.17mm (FWHM=5.85±0.40mm) となった 次に検出器と線源の距離を 12cm に設定して同じ実験を行った結果を図 24 に示す 31

35 図 24 position [mm] コインシデンスの信号数分布 (12cm) 同じように Gaussian で fit して 結果が σ=1.38±0.05mm (FWHM=3.25±0.12mm) となった 12cm の方が検出器を見込む立体角が小さくなるため 分解能が向上していることが分かる また 信号数に関しての議論はこの後のバックグラウンドの評価のところで述べるが 式 (7) に従うことが確かめられた 以上の図 のグラフを見ての通り 分布にはバックグラウンドがあることが分かる 本来であれば コインシデンスを取っているので back to back のγ 線のみを検出しているのであれば バックグラウンドは 0 カウントになるはずである これは エネルギー分解能のところでも述べたが 線源からの 1.28MeV のγ 線を偶発的に同時計数してしまった結果と考えている バックグラウンドの評価であるが 今回用いた 22 Na の崩壊 ( 図 20) を考えると まず β + 崩壊で 22 Ne の励起状態に遷移し そこからの 0.51MeV のγ 線と EC(Electron Capture) による 1.28MeV のγ 線の割合は 1.1:1.0 の計算になる これを考慮すると 図 におけるピークの値とテールの値はほぼこの比に対応していると考えられる なお 22 Na はプラスチックで密封されているため 放出された陽電子は プラスチックパッケージ内ですべて対消滅を起こすと考えられる 32

36 また 図 においてのバックグラウンドの計数であるが 式 (7) をそれぞれの線源と検出器間の距離に適応すると バックグラウンドの差は 9cm と 12cm で Hz となる 図 23 ではバックグラウンドが Hz として 図 24 では Hz と見積もり 式 (7) において r=9cm or 12cm として信号数を計算して その差を取れば図 でバックグラウンドが異なることが説明可能である 4-7. 角度依存性ここでは 検出器の片方を動かして対の検出器が直線上にないときのコインシデンス信号数の分布を調べた PET 装置では 360 に検出器が配置されているため 異なった時間に起こった対消滅による 0.51MeVγ 線が対向した検出器に入射せず 直線上からずれた検出器に同時に入射することもあり得る もちろんこれは使用する陽電子放出核の崩壊率にもよるが そのイベントがバックグラウンドとなり 位置分解能を低下させる要因になる可能性がある そこで本実験では 検出器と線源の距離を 12cm と一定に保ったまま 検出器を円弧上に移動させてそれぞれの位置で同時計数を行い 角度依存性を調べた 22Na MPPC 12cm θ 90 5cm 12cm LFS 図 25 角度依存性と位置分解能の角度依存性の測定 図 25 のような配置で測定を行った 角度 θ は ±50 の範囲で 10 毎に取り カウント数は 1 分間のものになっている また threshold 33

37 Counts[/min.] は 150mV に設定した 結果を図 26 に示す 図 26 によると θ=0 にピークがあることが分かる また その他の位置では信号数は同等と考えられる 図 25 のように片方の検出器に角度をつけて配置すると back to back のγ 線は検出できない そのために θ=0 にのみピークができる この結果から 0.51MeV の back to back のγ 線を検出できていることが示された また バックグラウンドの部分は 22 Na の 1.28MeV のγ 線に起因していると考えられる 図 24 と比較して 計数率が減尐しているのは threshold を-15mV に設定して 位置分解能 図 23 図 24 のデータを取得した時の-7.2mV の threshold で測定した時と実験環境を変化させたためである 詳細は 6-3 節を参照 angular dependance position[degree] 図 26 角度依存性 4-8. 位置分解能の角度依存性検出器に角度をつけて位置分解能を測定する ここでは 図 25 のように検出器をある角度 θ で固定し 線源と検出器を結ぶ直線に垂直な方向に線源を移動させて同時計数を行い 検出器が直線上にないときの位置分解能を評価する なお 線源の位置は検出器を一直線上に置いたときのその線の中心を 0mm として図 25 の黄色い線に沿って 5mm ごとに動かしてそれぞれの位置でコインシデンスを取った信号数を計測した 図 25 において角度 θ を 10 に設定した場合の信号分布を図 27 に示す また threshold は-15mV に設定した 34

38 counts[/5min.] counts[/5min.] spatial resolution depending on angle 10 degree position[mm] 図 27 位置分解能の角度依存性 (θ=10 ) θ=20 の場合の信号分布を図 28 に示す spatial resolution depending on angle(20 degree) position[mm] 図 28 位置分解能の角度依存性 (θ=20 ) なお 計数 ( グラフの縦軸 ) は 5 分間のカウントになっている これは threshold を高く設定したため 計数率が減尐したので統計的な問題を回避するためにより多くのカウント数を取得するためである 図 27 と図 28 の結果から 同時計数した信号分布はある位置でピークを持った分布となった これらはガウス分布で評価できないため 分布の仕方を考察し 評価した 図 25 のように片方の検出器に角度をつけて配置しても もう片方の検出器とで back to back のγ 線を検出できる範囲がある この範囲で分布はピークを形成するのであるが そのピークの立ち上がりと立下りの範囲を計算し 実験結果と比較す 35

39 る必要がある この考察は 6-4 節で述べる 36

40 第 5 章結果のまとめ 5-1. エネルギー分解能 4-5 節の 0.51MeV の光電ピークからエネルギー分解能は となった σ(e)/e=10.00±0.19% 5-2. 位置分解能線源と検出器の距離を 9cm と 12cm と 2 種類の測定を行った それによると 9cm の場合位置分解能は σ=2.49±0.17mm (FWHM=5.85±0.40mm) となった また 12cm の場合 σ=1.38±0.05mm (FWHM=3.25±0.12mm) となった これらの結果は 無機シンチレータ LFS と新型光検出器 MPPC を用いて PET 装置に求められる位置分解能が得られたことを示している 5-3. 角度依存性角度を 10 間隔で測定した場合 その間隔が角度分解能よりも大きかったため 計数率が有意に大きかったのは図 24 の θ=0 のみであり Gaussian による fitting を今回は断念した しかし このプロットから角度分解能が 10 以下であることが言える さらに この結果から θ=0 にピークが存在することにより back to back の 0.51MeVγ 線を検出できていることが確認できた 5-4. 位置分解能の角度依存性位置分解能の角度依存性は θ=10,20 の二通りで測定を行った 分布は図 27 図 28 を見てそれぞれの場合で比較をしたが 独特な分布をしている 詳細は考察で述べるが この実験によって PET 装置の縁辺部では位置分解能が著しく低下することが分かった 37

41 第 6 章 考察 6-1. エネルギー分解能 4-5 節で示した結果ではエネルギーの分布は threshold を -200mV に設定した場合であるが 当初は threshold をディスクリミネ タの 最低値の -7.2mV で実験を行っていた ADC 分布を図 29 に示す [ADC channel] 図 29 エネルギー分布 (threshold : -7.2mV) 図 29 を見ると ADC カウントが 100 付近に多数の信号がきていることがわかる しかし 本来であれば検出している対消滅 γ 線の信号はコインシデンスを取っているので このような pedestal やノイズのような信号は検出されないはずである そこで threshold を変化させて ADC を再取得することになった threshold を-100mV -150mV -200mV に設定した時の ADC 分布をそれぞれ 図 30 図 31 図 32 に示す これらの分布から threshold を高くすることによって 図 26 にあったノイズらしきピークを排除することができたことが分かる threshold=-100mv の図 30 の ADC カウントが 400 近辺のピークは本来の pedestal と考えられる back to back のγ 線を検出しているが コインシデンスの幅は 25ns に設定してあるので その時間内で同時計数にかからなかった信号がこのピークを形成していると考えられる 38

42 さらに threshold を上げていくと コンプトン散乱の分布も減尐していき 0.51MeV のピークが顕著になってくる 本研究では -200mVthreshold の分布をエネルギー分解能を算出する際に用いたが このいくつかの threshold を設定した中で 一番良い分解能が得られた 図 30 エネルギー分布 (threshold=-100mv) [ADC channel] 図 31 エネルギー分布 (threshold=-150mv) [ADC channel] 39

43 図 32 エネルギー分布 (threshold=-200mv) [ADC channel] 図 32 の本研究の実験結果ではコンプトンエッジが見えていない こ れは実験において統計的な揺らぎが大きかったためと考えられる 40

44 6-2. 位置分解能位置分解能に関しても threshold との問題がある 4-6 節に示した実験結果では やはり threshold が-7.2mV とディスクリミネ タの最低値に設定された場合の結果である しかし この結果は妥当な数値と考えている なぜなら シンチレータそのもののサイズから来る分解能の限界を与えられていると考えられるからである 実験に使用した無機シンチレータ LFS は mm 3 のサイズを持っており 実験では対消滅 γ 線を検出するためにこのシンチレータを対にして 3 3mm 2 の面を対向させて配置した ここから 2 次元での信号の広がりは FWHM で 3mm の限界を持つ可能性があるからである この結果が妥当とすると 位置分解能はシンチレータのサイズに左右され それ以上の分解能を得ることは不可能に思える しかし 今回エネルギー分解能測定で threshold を変化させて再測定を行うと同時に 位置分解能も再測定した 設定した threshold の値は-150mV である 結果を図 33 に示す 図 33 位置分解能 (threshold=-150mv) 結果は Gaussian で fit されており σ=0.31±0.02mm (FWHM=0.73±0.05mm) となった これは この節の冒頭で示したシンチレータのサイズによる位置分解能の限界を超えさらに良い分解能を与えることを示す ここから threshold を高く設定することにより 図 3 1 のようにデータの広がりを抑制し Gaussian で fit できると仮定したときに 良い分解能を得ることができると考えられる結果となった これは シンチ 41

45 レータ中のコンプトン散乱による信号が threshold を高く設定したことにより抑制された結果であると考えている 本実験では位置分解能の測定でシンチレータの 3 3mm 2 の面に 0.51MeV のγ 線が入射するように検出器を配置したが この 3 3mm 2 の面の縁辺では 入射 photon がコンプトン散乱によりシンチレータ外に散乱される可能性が考えられる このコンプトン散乱の電子によるシンチレーション光が図 23 図 24 の position=0mm を中心として シンチレータのサイズを考慮した時 ±1.5mm の部分で信号数を増加させているのではないかと考察する 6-1 節の図 30 図 31 図 32 を見ると threshold を上げることによってコンプトン散乱の分布が threshold の位置でカットされていることからもこの可能性がある さらに threshold を高く設定したことにより 検出効率は格段に低下している 例えば threshold が-200mV の場合は event で 3~4 時間 データ取得に要した これは PET 装置においては好ましくない傾向である つまり検査中に患者をベットに固定しておく時間が長くなるわけであり 患者の QOL(Quality Of Life) を低下させるにとどまらず 実質的な効率も悪くなる 検査にかかる時間が長くなればなるほど 検査結果を出すのにも時間がかかるわけである それだけ 主に人件費になるであろうがコストもかかる PET においてはいかに低コストで高分解能を得るかというのが一番の問題である それは低コストな装置というだけではなく 現在に至ってはそのシステム全体の問題になっている つまり 装置の使用開始から装置使用停止までの総ランコストが低くなければいけないということである threshold をどの辺りに設定するかということで ここまで話が広がるのかとも思うが 位置分解能と検出効率は threshold を介して表裏の関係にある 結論としては高位置分解能を得るために 検出効率をどこまで犠牲にできるかということであろう 現に threshold を高くすれば分解能は 値として小さくなる結果を示した そこで 検出効率と位置分解能の関係性を明らかにするための追実験が必要である それらの関係性が明らかになれば 臨床で求められるパラメータを決定することが可能になる さらには 決まったサイズの線源を使用し 位置分解能の測定を行わなければならないと考えている これにより例えば 1mm の線源を使用したとき その位置分解能を測定することにより PET 装置としての性能を示すことができる これは次のステップである多数の検出器を製作し 実機に近い PET 装置を製作につながる一つの大きなファクターになるであろう 42

46 counts[/min.] 6-3. 角度依存性角度依存性の測定においても threshold の問題が上がった まず 結果の図 26 に載せたのはきちんと threshold curve を測定し 適正な threshold を設定 (15mV) した後取得した結果である そこで まずは threshold を-150mV でエネルギー分解能を測定した時のままで角度依存性を測定した結果を図 34 に示す coincident counts depending on angle(source to LFS = 12cm) position[degree] 図 34 角度依存性 (threshold=-150mv) 測定値として position=0mm のところを見てもらうと バックグラウンド つまりテールの部分の値とピークの値に 1200counts ほどの違いしかない これは γ 線の入射数でグレースケールを決める PET としてはそれほど画像に綺麗な違いを出すことは不可能と考えられる そこで きちんと threshold curve を測定して 角度依存性の再測定を行うことになった threshold curve は対向させた 2 つの検出器において 片方ずつ threshold を変化させて測定したものである 43

47 counts[/min.] 図 35 ディスクリミネ タの設定 図 35 はエネルギー分解能と位置分解能を測定した時のシステムのブロック図であるが ここでそれぞれのディスクリミネ タを A B とし どちらの threshold の値を動かしたかわかるようにしておく このときもう片方のディスクリミネ タの threshold は-7.2mV に設定しておいた 図 36 図 37 にその結果を示す threshold curve(a) threshold[-mv] 図 36 threshold curve for discriminator A 44

48 counts[/min.] threshold curve (B) threshold[-mv] 図 37 threshold curve for discriminator B 図 36 図 37 それぞれの threshold curve を見て分かる通り -15mV にプラトーを持つので 両ディスクリミネ タともに threshold を -15mV に設定して実験を行った それが 4-7 節の図 24 にある角度依存性のグラフである 45

49 6-4. 位置分解能の角度依存性位置分解能の 2 つの測定の結果の違いに着目する 測定器に 10 の角度を持たせた時 ( 図 381) と 20 の時 ( 図 382) の比較をすると 10 の時の方が鋭いピークを形成していることがわかる 検出器 22Na 元の位置 の検出器 L10 L の偏角 図 の偏角 位置分解能の角度依存性のメカニズム 図 25 に示すように 検出器に角度を持たせて配置する このとき 10 と 20 では 検出器つまりシンチレータの有感領域を見たとき 図 38 では黄線で示した範囲が 20 になると広がる これによって信号の広がりが 10 と 20 で異なると考えられる 計算を行ってみると 10 の場合 L10 は 5mm となる また 線源の位置から水平点線に沿った図 39 の左側の黄線までの距離は 9.6mm となった すると back to back の γ 線を捕えられる範囲は 線源を動かした直線上で 線源から 9.6mm から 14.6mm の範囲になる これから 結果と照らしあわせてみると 実験結果では 10mm の位置から信号が増加しているのが分かる そして 15mm 辺りでピークを迎える 詳しくは調べていないが この点で二つの 46

50 シンチレータで捕獲できる対消滅 γ 線の数が最大になると考えられる また 幾何学上 14.6mm の位置で back to back の γ 線を同時計数できなくなるので そこからは信号が減尐していく この減尐の仕方であるが 同時計数可能な範囲を超えると 線源からシンチレータを見込んで γ 線のシンチレータ内の相互作用長は 両シンチレータでそれほど変化はないので 理論上 1/r 2 でバックグラウンドの底上げ分の計数まで減衰していくと考えられる 本来であれば対消滅 γ 線を検出可能な範囲内では信号数がそれほど変わらずにほぼ一定の値を取ると考えており グラフとしてはその範囲内では水平に推移する つまり グラフ全体の形が台形のようになると考えられるが 今回の実験ではソースを 5mm ごとに移動させていることと 装置全体のシステム上 1mm の精度は出ていないと思われる それにより きれいなデータとはなっていないが 以上の説明でその形が説明できると考えられる さらに 20 の場合 計算によると L20 は 6.5mm となる また 対消滅 γ 線を捕えられる範囲は 初めに線源を置いた位置から 20.5mm から 27mm となった ここでも 図 25 のグラフを見ると 10 の場合と同じような説明ができると考えられる 位置分解能という観点からは解析しにくい信号分布となったが その広がり方を理解することができた 47

51 総括 今後の課題 本研究により 我々のシステムを使用して高分解能な PET 装置が構築できる兆しが見えてきた MPPC や LFS などの低コストな材料を用いることによって PET 装置全体のコストダウンももちろん見越している 本研究ではそのための基礎実験を行ったわけであるが 今後の課題として MPPC と LFS で検出器を多数製作し より実機に近いシステムを作って実験を行うことが求められる さらには LFS の特性を生かして TOF-PET の可能性も模索していかなければならない これにはまず 検出器の時間分解能の測定が不可欠となるので そこから始める必要があると考えている 48

52 参考文献 [1] 小型サイクロトロンへの挑戦熊田幸正住友重機械量子機器事業センター [2] PET 用線形加速器岡崎隆司他日立製作所電力電機開発研究所 [3] W. W. Moses, Senior Member, IEEE, and S. E. Derenzo, Senior Member, IEEE, Prospects for Time-of-Flight PET using LSO Scintillator, IEEE Trans. Nucl. Sci. NS-46, pp (1999) [4] 無機シンチレータ開発の近況小林正明 KEK 素粒子原子核研究所 [5] Zecotek Photonics Inc. ウェブページ [6] 浜松ホトニクス株式会社ウェブページ [7] 株式会社豊伸電子ウェブページ [8] N.D Ascenzo, E.Garutti, A.Tadday, Application of MPPC to Positron Emission Tomography, PoS(PD07)006 [9] シンチレータから見た PET の世界石橋浩之 清水成宜日立化成工業 ( 株 ) 機能性材料研究所 [10] 放射線概論飯田博美通商産業研究社 [11] 医生物学用加速器総論バルデマール シャーフ医療科学社 [12] M.Gottlich, E.Garutti, V.Kozlov, Hans-Christian Schultz-Coulon, A.Tadday, A.Terkulov, Application of Multi-Pixel Photon Counter to Positron Emission Tomography, IEEE Trans. Nucl. Sci.,

53 謝辞 本研究において 竹下徹教授 長谷川庸司准教授 小寺克茂研究員には実験 論文執筆に当たり細かいご指導をいただき大変お世話になりました この場でお礼を申し上げます また 一緒に研究を行ってきた同研究室の仲間に支えてもらったことに感謝しています 彼らの助けなしにはここまで来られなかったと思います 本当にありがとうございました 50

54 付録 1 ADC について 本研究では ( 株 ) 豊伸電子社製 [9]ADC モジュール C009-16chADC( 図 40 左図 ) を用いた ここでは ADC の仕組みについて述べる グラウンド線 デジタル信号 ゲート信号 図 39 ADC モジュールと積分方法 ADC はアナログ信号をゲート信号が開いている間に そのアナログ信号の電荷量を積分し それに比例した値 (0.25pC/ADC Count) を出力する ( 図 39 右図 ) 使用した ADC は 0~1000pc の電荷量を検出することが可能である 実際のアナログ信号とゲート信号は図 39 の右側の図に示したようになり 斜線で示した部分が積分される このメカニズムで今回実験では ADC 分布を取得した 51

55 Counts 付録 2 LFS シンチレータのシミュレーションについて 本研究の実験で使用した LFS の性質を理解するため シミュレーションも行った シミュレーションでは Geant4 を用いて 実験で用いた mm 3 の結晶に 0.51MeV のγ 線を入射させ シンチレータ内で落としたエネルギーについて調べた ( 図 40) ただし 我々は伊藤教授の測定により LFS が LSO と構成元素が同じで Lu と Si と O の割合がこれまで流通してきた LSO と異なることが分かったが LFS はその構成元素が公表されていない そこで本研究ではシミュレーションの際 LFS を LSO で置き換えた 15mm 0.51MeVγ 線 シンチレータ LSO 3mm 図 40 LSO シミュレーションの様子 エネルギー分布を図 41 に示す Energy deposit [kev] 図 41 LSO 内で 0.51MeVγ 線が落としたエネルギー分布 図 41 をみると 0.51MeVγ 線が LSO 内でその 40% を光電吸収ですべてのエネルギーを落とすことが分かる また 30% 近くが相互作用を起こさずに LSO 内から逃避してしまう PET 装置では 0.51MeV の γ 線のみを検出するため 装置の検出効率を向上させるためシンチレー 52

56 タにおいては相互作用を起こさない 30% を減尐させ その分光電吸収の検出効率 40% をさらに上げる必要がある また ピークがデルタ関数のように現れているのは シミュレーションに統計的ばらつきを組み込んでいないためである 統計的なばらつきをシミュレーションに組み込むこと また LFS の詳細な構成要素が報告され次第 新たにシミュレーションを行うことも今後の課題となる 53

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