結核第 84 巻第 7 号 2009 年 7 月 536 黄褐色の混濁した膿を採取した採取した膿の一般細菌レボフロキサシン LVFX 300 mg を併用したまた培養および抗酸菌塗抹は陰性であったが抗酸菌培養お 12 月中旬に皮膚搔痒感のため EB を中止し PZA EB よび PCR

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しょうこくぬぎ
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1 535 Kekkaku Vol. 84, No. 7 : 535_539, 2009 胸郭成形術後長期間を経て発症した胸囲結核の 1 例川﨑水野剛里子佐々木結花志村龍飛別宮山岸玲文雄藤川文子要旨症例は 79 歳男性肺結核にて胸郭成形術の既往あり平成 19 年 8 月左肩甲部痛と左腋窩腫瘤を自覚し近医を受診した腫瘤に対して穿刺吸引を施行され採取された膿の PCR-TB が陽性であったことから胸囲結核と診断され加療目的に当科紹介となった高齢でるいそうを認め病変が広範囲であったことから切開排膿や病巣郭清術は行わずに抗結核薬投与と低侵襲な穿刺吸引による排膿を繰り返し施行した治療開始後病変は次第に縮小し改善を認めた結核既往がある患者の増大する胸壁腫瘤に対して胸囲結核も念頭に診察し全身状態を考慮して治療方針を決定する必要があると考えられたキーワーズ胸囲結核結核性胸膜炎結核後遺症再発結核治療とから胸囲結核と診断され 11 月中旬に加療目的に当はじめに科紹介となった胸囲結核は胸壁軟部組織内の結核性病変の総称であ初診時現症身長 160 cm 体重 40.2 kg BMI 15.6 り比較的稀ではあるが胸壁腫瘤の鑑別疾患として重要体温 36.3 血圧 130/78 mmhg 脈拍 60/分整軽度である背景に結核性胸膜炎の既往を有する症例が多くの難聴あり左腋窩に手拳大で弾性軟の腫瘤を触知し高齢化傾向にあると報告されている高齢者など全 1) 2) Fig. 1 左胸郭の変形と左肺呼吸音の減弱を認めた身状態が必ずしも良好でない患者に対しては侵襲の大初診時検査所見 Table 白血球数 8100 好中球きい処置がしばしば困難であり治療方針の決定に苦慮分画 74.6% CRP 2.36 と軽度の炎症所見を認めたすることがある今回高齢者の胸囲結核に対して抗肝機能腎機能電解質などに異常はなかった 3 日連結核薬投与と低侵襲な処置を行い病変の改善を認めた続で施行した喀痰の抗酸菌塗抹検査は陰性であった症例を経験したので報告する症患例者 79 歳男性画像所見初診時の胸部単純エックス線写真では左胸郭成形術のため左第一から第六肋骨が切除されており左肺の含気低下を認めた Fig. 2 胸部単純 CT 画像では左胸郭は著しく変形し縮小しており左腋窩か既往歴昭和 47 年肺結核にて胸郭成形術ら側胸部後背部にかけて内部が低吸収の不整形な腫瘍現病歴平成 19 年 8 月左肩甲部の疼痛を自覚しと縦隔リンパ節および胸膜の石灰化を認めた Fig. 近医整形外科を受診非ステロイド性抗炎症薬を処方さ 3a 左胸腔内の背側には胸膜肥厚胸膜石灰化を伴うれ症状が改善し経過観察していた同年 10 月頃から慢性膿胸と考えられる部位を認め腫瘤と交通していた左腋窩に弾性軟の腫瘤を自覚し左肩甲部の疼痛を再度 Fig. 3b 肺野には明らかな活動性結核の病変を認めな自覚したため同医を受診した腫瘤に対して穿刺吸引を施行され採取された膿の PCR-TB が陽性であったこ独立行政法人国立病院機構千葉東病院呼吸器科かった当科受診後左腋窩腫瘤に対して穿刺吸引を施行し連絡先川﨑剛独立行政法人国立病院機構千葉東病院呼吸器科 260 _ 8712 千葉県千葉市中央区仁戸名町 t-kawa cehpnet.com. Received 25 Feb / Accepted 8 Apr. 2009

結核第 84 巻第 7 号 2009 年 7 月 536 黄褐色の混濁した膿を採取した採取した膿の一般細菌レボフロキサシン LVFX 300 mg を併用したまた培養および抗酸菌塗抹は陰性であったが抗酸菌培養お 12 月中旬に皮膚搔痒感のため EB を中止し PZA EB よび PCR-TB が陽性結核菌薬剤感受性試験では薬剤耐の中止後は食欲不振皮膚掻痒感の改善を認めた穿刺

2 結核第 84 巻第 7 号 2009 年 7 月 536 黄褐色の混濁した膿を採取した採取した膿の一般細菌レボフロキサシン LVFX 300 mg を併用したまた培養および抗酸菌塗抹は陰性であったが抗酸菌培養お 12 月中旬に皮膚搔痒感のため EB を中止し PZA EB よび PCR-TB が陽性結核菌薬剤感受性試験では薬剤耐の中止後は食欲不振皮膚掻痒感の改善を認めた穿刺性は認めなかった細胞診は class Ⅱであった吸引は 1 2 週間おきに繰り返し治療開始後 3 回目の臨床経過 Fig. 4 治療方針について当院呼吸器外科吸引までは ml 程度の排膿を認めた次第に吸へ紹介し腫瘤に対する穿刺吸引以上の侵襲的なドレ引される量が減少し 12 月下旬に施行した 5 回目の吸ナージ術では創部の閉鎖が得られず混合感染を起こす可引では排膿が 10 ml 程度と少なかったため以降穿刺吸能性がありまた根治的な病巣郭清術は病変が広範で手引は行わずに経過観察したその後穿刺部位は難治性術の侵襲が大きくリスクが高いことが予想されたこの小さな瘻孔を形成しガーゼに膿が付着する程度の自のことからイソニアジド INH 200 mg/日リファン然排膿が持続したため 1 日 1 回以上のガーゼ交換を必ピシン RFP 450 mg/日エタンブトール EB 750 要とした平成 20 年 1 月下旬には膿から表皮ブドウ球 mg/日ピラジナミド PZA 1.0g/日の内服を開始し菌が検出され創部の混合感染予防のため薬剤感受性をかつ腫瘤に対して経皮的な穿刺吸引による排膿を繰り返考慮して LVFX を中止し一時的にミノマイシン 150 mg し施行した 12 月上旬に食欲不振のため PZA を中止しを併用した PZA を 1 月下旬から再開したが食欲不振が再度出現したため 2 月下旬から中止し結核菌薬剤感受性試験にて薬剤耐性なしと判明したことから INH RFP を継続した左腋窩の腫瘤病変は次第に縮小し 3 月頃より穿刺部の瘻孔は縮小し 5 月には瘻孔の消失を認めた CRP は治療開始後数カ月は 2 3 前後で推移していたが 7 月には 0.39 と改善した胸部 CT 画像の経過では初診時に認めた左腋窩から後背部にかけての膿瘍は治療開始 2 カ月後に縮小を認め Fig. 5a 12 カ月後にはほぼ消失した Fig. 5b 平成 20 年 11 月に抗結核薬投与期間が合計 12 カ月となり自覚症状画像所見の改善を認めたことから内服治療を終了し経過観察中である考察胸囲結核とはこれまで胸壁冷膿瘍結核性胸壁膿瘍肋骨周囲膿瘍など様々な名称でよばれてきた胸壁軟部組 Fig. 1 Elastic tumor the size of ﬁst was recognized in left axilla. Table Hematology WBC 8100 Neu 74.6 Eos Bas Lym 18.4 Mon 6.0 RBC Hb 13.8 Ht 41.0 Plt Serology CRP HBsAg HCVAb g/dl 2.36 ( ) ( ) 織内の結核性病変の総称である1) 胸囲結核の発生機序 Laboratory ﬁndings Biochemistry T. Bil AST 18 ALT 11 LDH 258 γgtp 32 ALP 359 ZTT 3.8 ChE 320 BUN Cr UA Na K Cl U TP Alb T. cho HbA1c 7.3 g/dl 4.5 g/dl Sputum acid-fast bacilli smear ( )

3 Chest CT scan shows deformation and decrement of the left thorax, low density irregular shaped mass in left axilla to lateral posterior thorax, calcification of mediastinal lymph nodes

3 Pericostal TB/T.Kawasaki et al. 537 Fig. 2 Chest radiograph shows the left ribs from first to 6th resected and the volume decrement of left lung due to thoracoplasty. Fig. 3 Chest CT scan shows deformation and decrement of the left thorax, low density irregular shaped mass in left axilla to lateral posterior thorax, calcification of mediastinal lymph nodes and pleura (Fig. 3a), chronic empyema with pleural thickness and calcification in left lower posterior thorax (Fig. 3b). Needle aspiration INH 200 mg RFP 450 mg EB 750 mg PZA 1.0 g LVFX 300 mg MINO 150 mg CRP () /20 1/20 3/20 5/20 7/20 9/20 11/20 H19 H20 Fig. 4 Clinical course INH: isoniazid RFP : rifampicin EB : ethambutol PZA : pyrazinamide LVFX: levofloxacin MINO : minomycin

4 結核第 84 巻第 7 号 2009 年 7 月 538 Fig. 5 Chest CT scan shows the abscess from left axilla to posterior thorax became smaller after 2 months treatment (Fig. 5a), and almost disappeared after 12 months (Fig. 5b). として ①結核性胸膜炎による胸膜の癒着肥厚によ囲結核では膿瘍腔が複雑な形態を呈しており胸膜に病りリンパ管新生が起こり胸腔内の結核菌がリンパ行変が及んでいる場合は切開排膿だけでは治癒しない可能性に胸壁軟部組織に到達し乾酪性病変を形成する ②胸性が高いと指摘している8) 以上のように治療方針につ壁軟部組織に直接穿破して胸壁膿瘍を形成する ③結核いては様々な報告があるが一般的に抗結核薬投与と切菌の血行性播種により病変を形成する ④胸腔穿刺など開排膿を行い病変の改善が得られない場合には外科の処置により医原性に胸腔内へ結核菌が播種するな的に病変を広汎に切除するとされている1) しかし本どが考えられている3) 4) 白羽らは胸囲結核が肋間リン症例のように高齢でるいそうが著しい症例に対してはパ節の存在部位にほぼ一致して胸囲結核が発症している切開排膿や病巣郭清術などの侵襲や外科的処置後の混合ことから長期に持続する炎症により胸壁軟部組織内感染のリスクを十分に考慮する必要がある本症例ではにリンパ管が新生し病変を形成すると想定しており抗結核薬に加え膿瘍に対して低侵襲な穿刺吸引による青柳は胸囲結核の 46.8% に結核性胸膜炎の既往があり排膿を繰り返し施行し治療開始後約 5 カ月間は穿刺部そのうち 91.5% が胸膜炎と同側に発症していると報告しに瘻孔を形成し自然排膿も持続したが次第に病変が縮ている以上のことから結核の既往を有する患者に小し瘻孔は消失した侵襲の大きい処置を行うことなく 5) 6) 増大する胸壁腫瘤を認めた際には胸囲結核を念頭に診病変の改善を認めた点で本症例の治療方針は適切で察する必要があると考えられた本症例の病変の発生機あったと考えられた本症例では治療後も慢性膿胸が依序として CT 画像にて左胸郭内の結核性胸膜炎後の慢然として存在しており今後再発の可能性も念頭に経過性膿胸と考えられる部位と胸壁腫瘤の交通を認めたこと観察する必要があるから慢性膿胸部位において結核が再燃し膿瘍が直接本邦の結核発病者が高齢化傾向にあり9) 今後も侵襲穿破して胸壁軟部組織に病変が形成されたことが最も考の大きい処置が困難な胸囲結核症例を認める可能性があえられたる結核の既往があり増大する胸壁腫瘤を認めた場合胸囲結核の診断には膿瘍の穿刺などによる結核菌の検出が重要であるが結核菌が検出できず病理組織学的に診断される場合もある胸囲結核の膿瘍からの抗酸菌検出率は塗抹 60% 培養 42% PCR75% との報告があには胸囲結核も念頭に診察をすすめ全身状態を考慮して治療方針を決定する必要があると考えられた結語り2) 本症例では採取した膿の抗酸菌検査は塗抹が陰性 1. 胸郭成形術後に胸囲結核を発症した 1 例を経験した培養および PCR-TB が陽性であった 2. 抗結核薬投与と低侵襲な穿刺吸引による排膿を繰り胸囲結核の治療方針については過去の症例の検討で返し施行し病変が改善したは 81.5% に膿瘍搔爬術 6.2% に抗結核薬投与と切開排膿 3. 結核の既往があり増大する胸壁腫瘤を認めた場合術が行われていたとの報告や内科的治療にて治癒しに胸囲結核も念頭に診察をすすめ全身状態を考た症例の報告では化学療法開始後 3 カ月以内に軽快ま慮して治療方針を決める必要がある 2) たは治癒している例が多くこの時期が膿瘍搔爬術を考慮する一つの目安となるとの報告がある7) 野中らは胸

5 539 Pericostal TB / T. Kawasaki et al. 文 1 春名 14 : 51 _ 57. 献茜, 冨岡洋海胸囲結核. 結核, 第 4 版, 冨岡洋海編, 医学書院, 東京, 2006, 246 _ 春名茜, 冨岡洋海, 大竹洋介, 他胸囲結核 10 例の臨床的検討. 結核 ; 80 : 69 _ 竹内信一胸囲結核症の研究. 日本外科宝函 ; 20 : 67 _ 三沢剛文胸囲結核に関する研究, 特にその成因について. 日大医誌 ; 15 : 371 _ 青柳安誠胸囲結核に関して. 最新医学 ; 7 : 1247 _ 中出雅治, 谷口哲郎, 阪井宏彰, 他胸囲結核に対する外科的療法の検討. 日胸外会誌 ; 44 : 1070 _ 野中誠, 荒井他嘉司, 稲垣敬三, 他結核性胸壁膿瘍手術症例の検討. 日呼外会誌 ; 5 : 724 _ 厚生労働省結核の統計結核予防会, 東京, 白羽弥右衛門, 田口雄一胸囲結核. 外科治療 ; Case Report A CASE OF PERICOSTAL TUBERCULOSIS OCCURRED IN A LONG PERIOD AFTER THORACOPLASTY Takeshi KAWASAKI, Yuka SASAKI, Rei BEKKU, Ayako FUJIKAWA, Satoko MIZUNO, Ryuhi SHIMURA, and Fumio YAMAGISHI Abstract A 79-year-old man with past history of thoracoplasty due to pulmonary tuberculosis visited a general clinic complaining of left back pain and left axillary tumor. As the pus of tumor aspirated was positive for PCR-TB, the patient was diagnosed as pericostal tuberculosis and introduced to our hospital. At ﬁrst, the operation was considered, but the patient had high risk for the operation because he was old and low body weight and the lesion of tuberculosis in his thorax was very extensive. Anti-tuberculous drugs were administrated and exclusion of pus by needle aspiration was repeated. After starting the treatment, the size of tumor had reduced guradually. Pericostal tuberculosis should be taken into consideration in case of pericostal mass with past history of tuberculosis, and the method of treatment should be decided with considering patient s condition. Key words : Pericostal tuberculosis, Tuberculous pleuritis, Sequela of tuberculosis, Recurrenece, Tuberculous treatment Department of Thoracic Disease, National Hospital Organization Chiba-East National Hospital Correspondence to : Takeshi Kawasaki, Department of Thoracic Disease, National Hospital Organization Chiba-East National Hospital, 673 Nitona-cho, Chuo-ku, Chiba-shi, Chiba 260 _ 8712 Japan. ( t-kawa cehpnet.com.)

BUN, CRP K mg/ cm, 49.6 kg, BMI /72 mmhg, 92/ Hb 6.7 g/dl PT-INR CT 1 MRI 2a, b T1 T2 T1 MRI

BUN, CRP K mg/ cm, 49.6 kg, BMI /72 mmhg, 92/ Hb 6.7 g/dl PT-INR CT 1 MRI 2a, b T1 T2 T1 MRI 20 2 2015 1 2 3 85 K CT Abstract A case of renal subcapsular hematoma resulting from trigger point injection under excessive effect of anticoagulant YAMANE Tateki, UMEDA Akira and SHIMAO Hitoshi An 85-year-old