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1 1 親水性分子の光学分割能を実 現するクロマトグラフィー 分離媒体の発明 京都工芸繊維大学分子化学系准教授池上亨

2 2 クロマトグラフィーとは クロマトグラフィー (Chromatography) はロシアの植物学者ミハイル ツヴェットが発明した 物質を分離 精製する技法 物質の大きさ 吸着力 電荷 質量 疎水性などの違いを利用して 物質を成分ごとに分離する クロマトグラフィーは色 ( ギリシャ語で chrōma) を分けるといった意味合いを持つ これは ツヴェットがクロマトグラフィーで植物色素を分離した際に色素別に色が分かれて帯ができたことに由来する Wikipedia より 中国語では色譜という これも色を並べるという意味からか 楽譜 詩譜という言葉もある

3 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 検出器 インジェクター カラム 記録計 廃液 ポンプ 移動相 t 0 A B B A t 0 溶質の二相間の分配係数の差を移動速度の差に置き換えて 分離を達成する 3

4 4 クロマトグラフィー分離媒体 微粒子シリカネットワーク 担体 ( 骨格 ) 調製 官能基の配置化学修飾重合反応識別部位組み込み 高性能分離媒体液体クロマトグラフィー ( 相互作用 吸着 ) 識別 分離 多次元化 医薬品 バイオ生産物プロテオミクス環境関連物質合成有機化合物異性体 同族体 同位体高速 精密分離 分取 実用

5 親水性相互作用クロマトグラフィー HPLC は 逆相型の分離モードで主に発展してきた 疎水性の分子の分離分析には不可欠な技術に成長 発展している Chromatography Instruments Market worth Billion USD by System (LC (HPLC, UHPLC, Flash), GC, ther Components (Autosamplers, Detectors, Fraction Collectors), by Consumable (Reverse Phase Columns, Syringe Filters, Vials). 親水性分子を分離分析することの要求が高まっている 順相 HPLC 親水性の分子に保持がある親水性の分子の溶解性 逆相 HPLC 電荷を持つ分子 親水性の分子 (logp < 0) の保持が小さい イオンペアクロマトグラフィー 極性基含有型固定相 誘導体化 etc. 再現性が低い 操作が面倒 誘導体化の効率が悪いなどの問題 5

6 親水性相互作用クロマトグラフィー 350 学会では逆相の発表件数と並んだ Chinese Milk Scandal 発覚メラミン分析 論文数 Alpart が HILIC という術語を提唱 Irgum が双性イオン型固定相を発表 M. Lämmerhofer, J. Sep. Sci., 33 (2010) a. 6

7 親水性相互作用クロマトグラフィー現状と課題 7 12% 14% 9% 4% 25% Si 2 35% 糖は親水性相互作用クロマトグラ未修飾シリカ フィーでも保持双性イオン型 が小さく 分離が アミド型 悪いという意見ジオール型 が多い アミノプロピル型 その他 光学分割が可能シアノプロピル型 なカラムは市販されていない 年の発表に関するデータ Thermo Scientific の技術報告書 HILIC Separations に基づき作成

8 今回の技術の特徴 アミノ酸を重合できる形態に化学変換した 親水性表面の作成と 光学分割能の発現を同時に実現 8

9 今回の技術の特徴 市販カラムの上位 3 種と同程度の親水性保持を示した 重合条件の検討により もっと親水性を上げることは可能 9

10 今回のカラムの分離特性 a (Tb/Tp) 固定層表面の酸性 塩基性 Bare Silica eutral Amides VS-Cys Amines VS-GSH Zwitterionic a (U/2dU) 親水性の大小の指標 10

11 今回のカラムの分離特性 11 テストしたカラムで最大の選択性を 1 に規格化した アニオン交換 カチオン交換については平均値を 1 とした 表面 ph 効果 a(theob/theop) α(tb/tp) 親水性 k(u) 1 k(u) 親水性基選択性 a(u/2 du) α(h) カチオン交換性 a(tmpa/u) CX 疎水性基選択性 a(u/5mu) α(ch2) アニオン交換性 a(spts/u) AX 親水性基配置選択性 a(v/a) α(v/a) α(α/β) 構造選択性 a(paglu/pbglu) α(2d/3d) 親水性基位置選択性 a(2 dg/3 dg)

12 今回の技術の特徴 ZIC$HILIC'(3.5'um)' α(tb/tp)" CX" 1" k(u)" 0.8" α(ch2)" 0.6" 0.4" 0.2" α(h)" 0" AX" α(v/a)" α(2d/3d)" α(α/β)" α(tb/tp)" CX" AX" α(2d/3d)" VS#Cys' 1" k(u)" 0.8" α(ch2)" 0.6" 0.4" 0.2" α(h)" 0" α(α/β)" α(v/a)" α(tb/tp)" CX" AX" α(2d/3d)" VS#GSH& 1" k(u)" 0.8" α(ch2)" 0.6" 0.4" 0.2" α(h)" 0" α(α/β)" α(v/a)" 高い親水性 糖の α 体 β 体の選択性が過去最高 12

13 今回の技術の特徴 13 市販カラムでは フルオロウリジン類の完全分離は困難

14 今回のカラムによる光学分割 14 80%AC-20 mm 酢酸アンモニウム buffer (30 ) 75%AC-20 mm 酢酸アンモニウム buffer (30 ) 現状では α 値が非常に小さいため これらのターゲットを完全分離するには 高理論段数のカラムの作製が必須である 今後の条件検討で より良い分離が達成される可能性はある

15 今回のカラムによる光学分割 15 シリカ粒子にビニルスルホン結合型アミノ酸を重合修飾する方法を新たに開発した 得られたアミノ酸重合型カラムは ほぼ中性の表面を持ち 親水性は市販カラムと同等の値を示した アミノ酸重合型カラムは双性イオン型カラムと類似の分離特性を示した ポリマー部の構造を考慮すると 妥当な結果が得られた アミノ酸重合型カラムは 高い親水性表面を提供し 糖の α/β の差に対する選択性が大きいことが示された アミノ酸重合型カラムによる糖の L 体 /D 体 アミノ酸の L 体 /D 体の分離が可能であった 完全分離には 条件検討とカラムの高性能化が必要である

16 想定される用途 D Glucose L Glucose 地球上のほとんどの生命体がエネルギー源 / 炭素源として利用 ( 資化 ) 解糖系 ( もっとも原始的な代謝経路 ) で分解される 高等生物は代謝できない資化できるバクテリアもある 天然にはわずかに存在する ( 希少糖 ) 化学合成は可能味は D 体と大差ない 筑波大学環境バイオマス共生学中村顕先生の資料に基づく 16

17 想定される用途 17 L-Arabinose ( 自然界では L 体優先 ) 小麦粉 100 g 中に 218 mg アカキャベツ 100 g 中に 200 mg サツマイモ 100 g 中に 19 mg グルコシダーゼ スクラーゼの阻害 砂糖の吸収を抑える L-Fucose ( 自然界では L 体優先 ) 海藻の粘り成分に含まれる AB 式血液型を区別する抗原として含まれる 天然界の糖が D 体優先 ( ホモキラリティ ) であることの解明手段の 1 つを提供する

18 想定される用途 18 H 2 H H H H Hydroxyurea Fomepizole Cycloserine Methimazole iacin H SH SH P H H H H Dimercaprol Foscarnet Me ormin Flucytosine Fluorouracil P H H Fosfomycin H H Allopurinol H 2 H H 2 H Pralidoxime F S H H 2 H H Mercaptopurine F F H H H Favipiravir H 2 H H S H SH H Propylthiouracil Tiopronin Pregabalin H H 2 Aspirin より分子量の小さな医薬品カルボン酸 フェノール アミン等 高極性 水溶性の官能基を持つ分子が多い

19 19 実用化に向けた課題 現在 高い親水性と糖の光学分割を同時に発現できるところまで開発済み 親水性化合物のエナンチオマーの完全分離に向けた カラムの高性能化の点が未解決である 今後 重合条件と分離性能の相関について実 験データを取得し HILIC 型カラムに適用して いく場合の条件設定を行っていく

20 20 企業への期待 未解決のカラムの高性能化については 微粒子型シリカ粒子 ( コアシェル粒子含む ) またはシリカモノリスを担体に用いることで 技術的に克服できると考えている 高性能シリカ粒子 またはシリカモノリス製造 の技術を持つ 企業との共同研究を希望

21 本技術に関する知的財産権 21 発明の名称 : クロマトグラフィー用充填剤 出願番号 : 特願 出願人 発明者 : 京都工芸繊維大学 : 池上亨 上山芳記

22 22 お問い合わせ先 京都工芸繊維大学研究戦略推進本部 URA 片山茂 TEL FAX

23 23 HILIC カラムテストに用いたサンプル 親水性相互作用 親水性基選択性 疎水性選択性 親水性基配置選択性 親水性基位置選択性

24 HILIC カラムテストに用いたサンプル 分子形状に対する選択性 固定相表面の ph 状態 アニオン交換能 カチオン交換能 Y. Kawachi et al., J. Chromatogr. A, 1218 (2011)

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