Japanese Orthoptic Journal 46: , 2017.

Size: px

Start display at page:

Download "Japanese Orthoptic Journal 46: , 2017."

そよささおか
4 years ago
Views:

1 第 46 巻 (2017) 第 57 回日本視能矯正学会一般講演斜視を伴う小児に対する Spot TM Vision Screener の使用経験萬束恭子松岡真未新保由紀子赤池祥子越後貫滋子片桐聡吉田朋世横井匡仁科幸子東範行国立成育医療研究センター眼科 Use of the Spot TM Vision Screener in pediatric patients with strabismus Kyoko Manzoku, Mami Matsuoka, Yukiko Shinbo, Shouko Akaike, Shigeko Ogonuki, Satoshi Katagiri, Tomoyo Yoshida, Tadashi Yokoi, Sachiko Nishina, Noriyuki Azuma Department of Ophthalmology, National Center for Child Health and Development 要約目的 Spot TM Vision Screener(SVS) は小児の視覚スクリーニングに有用であるが斜視を伴う例の検討は少ない我々はSVSを様々な眼全身疾患をもつ小児に施行し斜視の検出及び斜視眼の屈折の測定精度について検討した方法対象は2016 年 1~8 月に当科でSVSを行った393 例で年齢は2か月 ~23 歳 ( 平均 56±41 か月 ) 眼全身疾患を26.0% 26.5 % に合併していた SVS による斜視の検出を近見眼位検査と比較検討した次に斜視眼の屈折について斜視時と固視時の等価球面度数の差 (SE 差 ) を非調節麻痺下群と調節麻痺下群に分けて検討した結果斜視の検出を検討できた 118 例でSVSの鋭敏度は 94.7 % 特異度は 92.9 % であった斜視眼固視でもSVSを測定できたものは38 例 ( 内斜視 22 例外斜視 15 例上下斜視 1 例 ) であった非調節麻痺下群 29 例 41 眼のSE 差は- 3.25D ~+2.75D( 平均 ±1.08D) で機器の屈折精度範囲を超える差を22 眼 (53.7%) に認めうち14 眼 (63.6%) が近視寄り 8 眼 (36.4 %) が遠視寄りの値を示した調節麻痺下群 9 例 12 眼のSE 差は- 1.25D~+ 0.50D( 平均 ±0.41D) で 1 眼のみ精度範囲外の値を示した結論 SVSは斜視の検出に有用であるが非調節麻痺下における斜視眼の屈折の測定精度は低下する別冊請求先 ( ) 東京都世田谷区大蔵国立成育医療研究センター眼科仁科幸子 Tel. 03(3416)0181 Fax. 03(3416)2222 nishina-s@ncchd.go.jp Key words: フォトレフラクション法視覚スクリーニング斜視屈折測定 photorefraction, vision screening, strabismus, refractive measurement 167

2 日本視能訓練士協会誌 Abstract Purpose The Spot TM Vision Screener (SVS) is an effective vision screening tool in pediatric patients; however, few studies have analyzed the results obtained using the SVS in pediatric patients with strabismus. We used the SVS to examine pediatric patients with various ocular and systemic diseases and studied the detection rate of strabismus and the accuracy of the refractive measurements in strabismic eyes. Patients and Methods Using the SVS, we examined 393 patients (203 females, 190 males) who visited our hospital from January to August The patient ages ranged from 2 months to 23 years (mean ± standard deviation [SD], 56 ± 41 months). The detection rate of strabismus was evaluated using the cover test at near. In eyes diagnosed with strabismus, we measured the spherical equivalent (SE) refraction when the eyes were fixed and deviated and calculated the difference in the SE (DSE) when using and not using cycloplegic agents. Results In 118 patients for whom accurate results of ocular alignment using the SVS were obtained and evaluated using cover test at near, the sensitivity and specificity using the SVS were 94.7% and 92.9%, respectively, compared with the cover test at near. In strabismic cases, the DSEs were measureable in 38 cases (22 cases with esotropia, 15 cases with exotropia, and one case with hypertropia). In 41 eyes of 29 patients in whom cycloplegic agents were not used, the DSEs ranged from to diopters (D) (mean ± SD, 0.17 ± 1.08 D). The DSE was not within the range of accuracy of measurement by the SVS in 22 (53.7%) eyes. In those 22 eyes, the DSEs in 14 (63.6%) eyes shifted to myopia, and the DSEs of the other eight (36.4%) eyes shifted to hyperopia. In nine eyes of 12 cases in which cycloplegic agents were used, the DSEs ranged from to D (mean ± SD, ± 0.41 D) and the DSE exceeded the accuracy of measurement in only one patient. Conclusion SVS is useful for detecting strabismus even in pediatric patients with various diseases; however, the accuracy of the refractive measurement deteriorates in strabismic eyes Ⅰ.緒言良好な視力と両眼視機能を獲得するためには感受性の高い乳幼児期に強い屈折異常や斜視を発見して治療する必要があるこれまで国内外で様々な屈折検査機器が試用され乳幼児に対する屈折スクリーニングの有用性が報告されてきた 1)~ 7) 米国では2012 年以降機器を用いた視覚スクリーニングが導入され 8) 現在では生後 6か月ないし1 歳からのスクリーニングの実施が推奨されている 9) Spot TM Vision Screener(Welch Allyn Inc, Skaneateles Falls, NY) は 2015 年 9 月から日本にも導入されている新しい視覚スクリーニング機器であり検査距離 1m 測定時間 1 秒で両眼同時に屈折眼位瞳孔径瞳孔間距離を測定することが可能である検査結果にはアメリカ小児眼科斜視学会の弱視の危険因子の基準にそって精密検査の要否がわかりやすく表示される SVSは主に視覚スクリーニングに有用な機器とされているが 10)~12) 最近では眼科診療の場でも使用されているそこで今回我々は様々な疾患をもつ小児の眼科診療においてSVSを施行し斜視の検出及び斜視眼の屈折について検討したので報告する Ⅱ. 対象及び方法 2016 年 1 月から8 月までに国立成育医療研究センター眼科を受診し Spot TM Vision Screener (SVS) を施行した393 例 ( 男児 190 例女児 203 例 ) を対象とした国立成育医療研究センター倫理委員会の承認 ( 番号 1239) のもと検査を実施し解析を行った検査時年齢は2か月 ~23 歳 ( 平均 78 ± 43か月 ) 背景には眼疾患を102 例 26.0% 全身疾患を104 例 26.5% に合併していた SVSの屈折値の測定範囲は等価球面度数が ± 168

3 第 46 巻 (2017) 7.5D 眼位ずれは水平上下ともに20 までである測定の精度は屈折値 ±3.5D 以内は ±0.5D ±3.5Dより強い屈折では ±1.0D 視線測定の精度は5 以内では ±1 6~20 では ±2 となっている ( 図 1) 図 1 SVS の測定範囲と精度 ( 等価球面度数視線測定 ) SVSによる斜視の検出について近見眼位検査 ( 遮閉試験検査距離 33cm) と比較し検討した注視不良例と器質疾患のため両眼同時に測定できなかった例は除外した次にSVSで斜視 (20 以下 ) が検出された症例に対し斜視眼における斜視時と固視時の屈折の差を検討した屈折は等価球面度数をとり SE 差 :( 斜視時の屈折値 ) ( 固視時の屈折値 ) を検討した斜視時と斜視眼固視時の屈折の測定方法は自然に交代固視する例では右眼固視時と左眼固視時の屈折を測定し ( 図 2A) 交代固視ができない症例では両眼開放で測定後固視眼を遮閉し斜視眼で固視をさせた状態で片眼の屈折を測定した ( 図 2B) SE 差については非調節麻痺下群と調節麻痺下群に分類し比較したまた非調節麻痺下群では斜視角や斜視のタイプとの関連につき検討した Ⅲ.結果 (1)SVS 施行例の年齢と合併疾患 SVSを施行した症例の年齢分布を図 3に示す 0 歳 ~3 歳までの乳幼児が54.2% を占めた眼全身合併症の内訳を表 1に示す睫毛内反眼瞼下垂眼振角膜デルモイド無水晶体眼未熟児網膜症など前眼部から後眼部までの様々な眼疾患に加え全身疾患としてDown 症や全身症候群の小児が多数含まれていた (2) 斜視の検出 SVSによる斜視の検出について近見眼位検査と比較検討できたものは118 例である表 2に結果を示す SVSによる斜視の検出は鋭敏度 94.7% 特異度 92.9% といずれも高率であった SVSで斜視が検出され近見眼位検査で顕性斜視が検出されなかった偽陽性例は3 例のみで眼振 2 例弱視 1 例であったまた SVSで斜視が検出されず近見眼位検査で顕性斜視が認められた偽陰性例は4 例で交代性上斜位 2 例調節性内斜視 1 例 Duane 症候群 1 例でありいずれも眼位や頭位の変動する例であった (3)SE 差斜視眼における斜視時と固視時の等価球面度数の差 (SE 差 ) を検討できたのは38 例 ( 男児 10 例女児 28 例 ) 1 歳 0か月 ~15 歳 8か月 ( 平均 78 ± 46か月 ) である非調節麻痺下群は29 例 41 眼で内斜視 13 例外斜視 15 例上下斜視 1 例内斜視角は +5~ +20 外斜視角は 8 ~ 20 上斜視角は9 であった調節麻痺下群は9 例 12 眼 ( アトロピン点眼 6 例サイプレジン点眼 3 例 ) で全例内斜視斜視角は +6 ~ +17 であった非調節麻痺下群の結果を図 4に示す SE 差は 3.25~ +2.75D( 平均 0.17±1.08D) で 22 眼 53.7% と約半数が機器の測定精度を超える差を認めたそのうち14 眼 63.6% は斜視時の屈折が近視寄り 8 眼 36.4% は遠視寄りの結果となった斜視のタイプ ( 内斜視外斜視上下斜視 ) によって差はみられなかった SE 差と斜視角 ( 絶対値 ) の結果を図 5に示すスピアマンの順位相関係数検定にて SE 差と斜視角に相関はみられなかった (p=0.45, 相関係数 rs= 0.126) 調節麻痺下群の結果を図 6に示す SE 差は 1.25~ +0.5D( 平均 0.29±0.41D) で測定精度範囲外の値となったものは1 眼 8.3% のみであった 169

4 日本視能訓練士協会誌図 2A 図 2B 図 2 斜視眼固視での屈折の測定方法 A 交代固視が可能な場合 6 歳 9 か月男児左眼外斜視自然に交代視 B 交代固視が困難な場合上段 :1 歳 4 か月男児右眼内斜視左眼アイパッチにて遮閉下段 :4 歳 4 か月男児左眼内斜視右眼お母様の手で遮閉 Ⅳ.考案今回の結果から SVSはさまざまな疾患背景をもつ小児に対し応用可能であること生後 2 か月から検査可能であることがわかった例えば先天白内障術後の無水晶体眼の乳児に対してもコンタクトレンズ矯正下にて屈折や眼位の検査が可能であり診療に有用であった測定時間が1 秒と短く機器がコンパクトで近づかずに検査ができ恐怖心を与えにくいため多くの小児に対し検査を施行することができたと考えられる SVSはフォトレフラクション法 170

5 第 46 巻 (2017) 図 3 年齢分布表 1 眼全身合併症表 2 斜視の検出 :SVS と近見眼位検査の比較図 4 SE 差 : 非調節麻痺下群 (29 例 41 眼 ) 破線は屈折精度範囲を示す矢印は精度外を示し 14 眼 63.6% は斜視時の屈折が近視寄り 8 眼 36.4 % は遠視寄りの値となった 171

6 日本視能訓練士協会誌図 5 SE 差と斜視角の比較 ( 非調節麻痺下群 ) 図 6 SE 差 : 調節麻痺下群 (9 例 12 眼 ) 破線は屈折精度範囲を示す矢印は精度外を示すを用いてOn Axsis Off Axsis の両方で測定するため頭位の変化にも対応しやすいまた機器が軽量なため持ち運びやすくさまざまな場所や体勢で測定できるため検査の成功率が高かった精度の問題はあるが他の機種に比べて調節の介入も少なく障がい児も含めた視覚スクリーニング機器として有利と思われる 13) しかし明室では瞳孔径が小さく測定困難なことがあり半暗室での検査が望ましいまた固視灯の変化が単調のため測定に時間を要すと固視が持続しにくくなるという問題点もあった注視不良例や頭位異常例での結果には注意を要すると思われるさまざまな患児に対し顕性斜視を高率に検出できることは眼科診療の場でも利用価値が高いと思われる PeterseimらはSVSは視覚スクリーニングにおける斜視の検出にも有用であり鋭敏度 77.17% 特異度 93.73% 陽性的中率 76.34% 陰性的中率 94.0% と報告している 14) 眼科診療の場における今回の検討では視能訓練士眼科医による検査によって鋭敏度 94.7% 特異度 92.9% と更に良好な結果を得ることができたしたがって視覚スクリーニング機器の使用や判定に際し視能訓練士眼科医の関与が望ましいと思われる 15) 斜視眼の屈折を検討した結果では非調節麻痺下では斜視時と固視時の屈折に差があることが示された遠視寄りか近視寄りか一定した傾向はなく斜視角と屈折のばらつきに相関はなく斜視のタイプとも関係がないという 172

7 第 46 巻 (2017) 結果であった今回の結果からSVSによる斜視眼の屈折値は斜視がない場合より精度が下がっているのではないかと思われる SVSは屈折スクリーニングには有用であるが精密屈折検査としては限界がありとくに斜視のある症例に対しては屈折の評価に注意を要すると思われる一方今回調節麻痺下では斜視があっても屈折に差は少ないという結果となった本機器による非調節麻痺下屈折値と検影法等による調節麻痺下屈折値を比較した報告はあるが 1),2),10)~12),16),17) 本機器の調節麻痺下の屈折精度は不明である調節麻痺下での固視眼斜視眼の屈折については症例数を増やしさらなる検討が必要である以上より様々な疾患をもつ乳幼児の眼科診療においてSVSは応用可能であり顕性斜視の検出に有用であることが示されたしかしSVS を使用する際は斜視眼の屈折は斜視時と固視時で差があることに留意が必要である参考文献 1 )Arnold RW, Armitage MD: Performance of four new photoscreeners on pediatric patients with high risk amblyopia. J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 51: 46-52, )Peterseim MMW, Papa CE, Wilson ME, Cheeseman EW, Wolf BJ, Davison JD, et al: Photoscreeners in the pediatric eye office: compared testability and refractions on high risk children. Am J Ophthalmol. 158: , )Sanchez I, Ortiz-Toquero S, Martin R, de Juan V: Advantages,limitations, and diagnostic accuracy of photoscreeners in early detection of amblyopia: a review. Clin Ophthal. 10: , ) 坂本章子, 吉永宏美, 関向秀樹, 丹治弘子, 橋本禎子, 八子恵子 : 三歳児眼科検診における手持ち式オートレフラクトメーター ( レチノマックス ) の有用性. 眼臨 97: , ) 市原美恵子, 天野みゆき, 山口直子, 橋村星美, 春日井めぐみ, 浅野典子, 他 :Welch Allyn 社製シュアサイト TM オートレフラクタの使用経験. 日視会誌 34: , ) 野原雅彦, 高橋まゆみ :3 歳児健康診査における屈折検査の6 年間の結果. 眼臨 99: 21-24, ) 中川浩明, 石子智士, 菅原一博, 間瀬智子, 吉田晃敏 :3 種類の他覚的屈折検査装置. 日視会誌 43: , )Miller JM, Lessin HR: Instrument-based pediatric vision screening policy statement. Pediatrics 130: , )Committee on practice and ambulatory medicine, section on ophthalmology, American Association of Certified Orthoptists, American Association for Pediatric Ophthalmology and Strabismus, American Academy of Ophthalmology: Visual system assessment in infants, children, and young adults by pediatricians. Pediatrics 137: 1-3, )Ransbarger KM, Dunber JA, Choi SE, Khazaeni LM: Result of a community visionscreening program using the Spot photoscreener. J AAPOS 17: , )Silbert DI, Matta NS: Performance of the Spot vision screener for the detection of amblyopia risk factor in children. JAAPOS 18: , )Peterseim MMW, Papa CE, Wilson ME, Davidson JD, Shtessel M, Husain M, et al: The effectiveness of the Spot Vision Screener in detecting amblyopia risk factors. J AAPOS 18: , ) 伊藤由美子, 橋本禎子, 八子恵子 : 手持ち式オートレフラクトメーターによる障害児の屈折検査. 眼臨 91: 5-7, )Peterseim MMW, Davidson JD, Trivedi R, Wilson ME, Papa CE, Cheeseman EW: Detection of strabismus by the Spot Vision Screener. J AAPOS 19: , ) 恒川幹子 :3 歳児健診における視能訓練士の役割. 日視会誌 29: ,

8 日本視能訓練士協会誌 16)Erdurmus M, Yagci R, Karadag R, Durmus M: A comparison of photorefraction and retinoscopy in children. J AAPOS 11: , )Mu Y, Bi H, Ekure E, Ding G, Wei N, Hua N, et al: Performance of spot photoscreener in detecting amblyopia risk factors in Chinese pre-school age children attending an eye clinic. PLoS One Feb 16; 11(2): e doi: /journal.pone

Japanese Orthoptic Journal 46: , 2017.

Japanese Orthoptic Journal 46: , 2017. 第 57 回日本視能矯正学会一般講演 3 歳児健康診査での Spot TM Vision Screener の使用経験鈴木美加比金真菜佐藤千尋松野希望齋藤章子森隆史橋本禎子 2) 八子恵子 3) 石龍鉄樹福島県立医科大学眼科学講座 2) 桜水さかい眼科 3) 仁泉会北福島医療センター Experience of Using Spot TM Vision Screener in a Health