園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): doi: /hrj 原著カンキツのコルヒチン処理により作出した 2x-4x-4x 倍数性キメラの花粉および果実組織の倍数性と三倍体育種親としての活用柳本裕子 1 * 金好純子

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みいかにばし
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1 園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): doi: /hrj 原著カンキツのコルヒチン処理により作出した -4-4 倍数性キメラの花粉および果実組織の倍数性と三倍体育種親としての活用柳本裕子 1 金好純子 1 2 古田貴音 1 広島県立総合技術研究所農業技術センター果樹研究部広島県東広島市安芸津町三津 2 広島県立総合技術研究所農業技術センター栽培技術研究部広島県東広島市八本松町原 Polploid of Pollen and Fruit Tissue, and Utiliation for Triploid Breeding in -4-4 Ploid Chimera Obtained b Colchicine Treatment of Citrus Yuko Yanagimoto 1, Junko Kaneoshi 1 and Takane Furuta 2 1 Hiroshima Prefectural Agricultural Research Center the Fruit Tree Research Division, Mitsu, Akitsu, Higashi-Hiroshima, Hiroshima Hiroshima Prefectural Agricultural Research Center the Cultivation Techniques Research Division, Hara, Hachihonmatsu, Higashi-Hiroshima, Hiroshima Abstract We investigated the characteristics and polploid of pollen and fruit tissue in -4-4 ploid chimeras induced b colchicine treatment of citrus. The pollen sie of -4-4 ploid chimeras and tetraploids was larger than that of diploids in all cultivars and strains that we investigated. The peel of the tetraploid fruit was thicker than that of diploids in all cultivars and strains, but a constant tendenc was not seen in -4-4 ploid chimera fruits. The flavedo, segment membranes, and juice sac showed diploid and tetraploid, the albedo showed tetraploid onl, and the pollen showed diploid and tetraploid in all -4-4 ploid chimeras cultivars and strains. All plants raised from a seed, which we crossbred with diploid pollens in these individuals, showed triploid. These results indicate that the -4-4 ploid chimeras would be useful parents for triploid breeding b crossing with diploids like tetraploids. Ke Words:flow ctometr, monoembron, seedless, tetraploid キーワード : フローサイトメトリー, 無核, 単胚性, 四倍体緒カンキツ類において, 無核性は重要な育種目標であり, 無核性品種の育成手法の一つに三倍体の利用がある. 三倍体は, 幼苗期での判定が可能で無核率が高いうえ, 受粉しても種子が入りにくい形質を維持できるため, 無核性品種の育成にく利用されている (Cuenca ら,2010; 金好ら, 2014; 島ら,2015; Recupero ら,2007, 2008; Soost Cameron, 1980, 1985; 徳永ら,2005; 吉田ら,2003). 三倍体の育成は, 特に単胚性の四倍体を種子親として二倍体の花粉を交配すれば, 得られる種子はすべて雑種実生となり, 数の三倍体が獲得できることが報告されており (Alea ら,2012; 金好ら,2008), 交配親として, 様な単胚性四倍体の作出は重要である. 単胚性四倍体の作出については, 胚性品種で行われている珠心胚実生からの四倍体の選抜 (Frost, 2016 年 7 月 22 日受付.2016 年 11 月 29 日受理. 本研究の一部は第三回国際カンキツバイオテクノロジーシンポジウムで発表した. Corresponding author. -anagimoto89233@pref.hiroshima.lg.jp 言 1925; 河瀬ら,2005; Longle, 1926; 生山,1992) が不可能であることから, 腋芽などへのコルヒチン処理による人為的な作出が行われてきた (Alea ら,2009; 金好ら,2008; 生山,1992). コルヒチン処理では, 四倍体や, 四倍性細胞と二倍性細胞が混在する倍数性キメラが出現するが, この倍数性キメラのうち, 組織起源第 2 層が四倍性であるものは, 三倍体を育成するための交配親として活用できることが報告されている ( 金好山口,2002; 糠谷ら,2011). コルヒチン処理により作出された倍数体に関して, 四倍体の形態的特性については, 生山 (1992) が福原オレンジ (Citrus sinensis (L.)Osbeck), ヒュウガナツ (C. tamurana hort.e Tanaka) およびクレメンティン (C. clementina hort.e Tanaka) などで, 河瀬ら (2005), 糠谷ら (2011) がニンポウキンカン (Fortunella crassifolia Swingle) で報告している. また, 組織起源第 1 層 ( 以下,L1) が二倍性, 第 2 層 ( 以下,L2) と第 3 層 ( 以下,L3) が四倍性の倍数性キメラ ( 以下, -4-4 倍数性キメラ ) の形態的特性は, 糠谷ら (2011), 安田ら (2008) がニンポウキンカンで報告しているが, その研究事例は少ない. 249

2 250 柳本裕子金好純子古田貴音第 1 表供試品種一覧交配組合せ学名胚数供試個体の倍数性大橘 Citrus maima (Burm.)Merr. 単胚四倍体水晶文旦 Citrus maima (Burm.)Merr. 単胚四倍体土佐文旦 Citrus maima (Burm.)Merr. 単胚キメラ農間紅八朔 Citrus hassak hort.e Tanaka 単胚四倍体, キメラ西之香清見トロビタオレンジ (Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.) 単胚四倍体 Osbeck) Citrus sinensis (L.)Osbeck ありあけ清家ネーブルクレメン Citrus sinensis (L.)Osbeck Citrus clementina hort.e 単胚四倍体ティン Tanaka 清見宮川早生トロビタオレンジ Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.)Osbeck 単胚四倍体広島果研 11 号清見サザンレッド (Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.) 単胚四倍体, キメラ Osbeck) (( Citrus unshiu Marcow. Citrus nobilis Loureiro) Citrus reticulata Blanco) 安芸タンゴール興津早生トロビタオレンジ Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.)Osbeck 単胚四倍体, キメラはれひめ E-647( 清見オセオラ ) 宮川早生 (( Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.) Osbeck) (Citrus clementina hort.e Tanaka (Citrus paradisi Macfaden Citrus tangerina Tanaka))) Citrus unshiu Marcow. 単胚四倍体, キメラはるか日向夏の自然交雑実生 Citrus tamurana hort.e Tanaka 胚四倍体, キメラ不知火清見野 3 号ポンカン (Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.) 胚キメラ Osbeck) Citrus reticulata Blanco はるみ清見ポンカン F-2432 (Citrus unshiu Marcow. Citrus sinensis (L.) 胚キメラ Osbeck) Citrus reticulata Blanco 石地 Citrus unshiu Marcow. 胚四倍体, キメラ道谷系ビラフランカ Citrus limon (L.)Burn.f. 胚四倍体茎頂分裂組織第 1 層が, 第 2 層が 4, 第 3 層が 4 の -4-4 周縁キメラと推定した個体一方, 著者らは,1994~2003 年に生山 (1992) の方法を一部改変したコルヒチン処理法で, 四倍体および倍数性キメラを作出した ( 金好ら,2008). 倍数性キメラについては, 組織別の倍数性調査を行い, 四倍体と同様に三倍体を育成するための交配親に利用できると想定される -4-4 倍数性キメラを選抜した. また, これらの四倍体が二倍体と比較して有意に葉が厚く, 気孔密度が低いこと,-4-4 倍数性キメラは二倍体と比較して有意に葉が厚いことを明らかにし, これらの特性を利用して倍数体候補を粗選抜できることを報告した ( 柳本ら,2012). 本研究では, コルヒチン処理により作出した -4-4 倍数性キメラ個体について, 花粉の特性および花粉と果実組織の倍数性を調査し, 二倍体および四倍体との違いを明らかにするとともに, これらを種子親として二倍体花粉を交配し, 得られた完全種子の倍数性を調査して, 三倍体作出の育種親としての有効性を明らかにすることを目的とした. 材料および方法広島県立総合技術研究所農業技術センター ( 広島県東広島市八本松町 ) にて,1994 ~ 2003 年にコルヒチン処理した腋芽をカラタチに接木して育苗し, フローサイトメーター (Ploid Analer PA, Partec) で倍数性を確認した四倍体および -4-4 倍数性キメラと推定した個体を供試した. これらの倍数体は, 各の二倍体とともに, 広島県立総合技術研究所農業技術センター果樹研究部 ( 東広島市安芸津町 ) の無加温ガラス室にて 45~60 L ポットで,1 当たり 1 ~ 2 個体を育成した. 各個体は, ごとの適正葉果比に基づいて摘果し,10 果未満の着果を維持した. 供試したは第 1 表に記した. 対照は, 同ガラス温室内で育苗した各の二倍体とした倍数性キメラおよび四倍体の花粉の特性 2013~2014 年に, 第 1 表の-4-4 倍数性キメラ5 および四倍体 9 の花粉特性を調査した. 花粉量は, 種苗特性分類調査報告書カンキツ類 ( 愛媛県立果樹試験場,1994) の定義により, 無, 少,, の四段階で評価した. 花粉粒径と花粉稔性については, 開花直前の花蕾を 4~5 月に各とも 5 個以上採取し,25 C 10 時間日長に設定した人工気象室内で開葯した花粉を 30 C で冷凍保存し,3 か月後に解凍して 1% アセトカーミン液で染色して観察した. 花粉粒径は, 花粉粒の垂直に交わる 2 つの直径の平均値とし,1 反復当たり 10 粒を調査し,5 反復とした. 花粉稔性は,1 反復当たり 500 粒を調査し,5 反復とした倍数性キメラおよび四倍体の果実形質 2007~2013 年に, 第 1 表の-4-4 倍数性キメラ7 および四倍体 9 について, 完熟した 3~5 果の自然受粉による果実を採取し, 果実重, 果実縦径, 果実横径, 果形指数, 果皮厚, 果皮重, 果肉歩合, 完

3 251 園学研 (Hort. Res. (Japan)) 16 (3) 全種子数不完全種子縦径 8 mm 以上数および完全種第2表子重を調査したコルヒチン処理により得られた -4-4 倍数性キメラの花粉特性倍数性キメラの組織別倍数性第 1 表の -4-4 倍数性キメラ 7 および四倍体 7 の果実についてフラベドアルベド土佐文旦じょうのう膜および砂じょうをそれぞれ 5 mm 角で取り出し 4,6-Diamidino-2-phenlindole,dihdrochloride 以下 DAPI を 2 mg L 1 添加した核単離液 Tris 塩酸 10 mm Sodium Citrate 50 mm MgCl 2 2 mm Pol vinl pr- 広島果研 11 号安芸タンゴール rolidone K-30 1 Triton X ph 7.5 の混合液はるかを 1 ml 加えシャーレ上にてカミソリで回粗く刻み 30 μm メッシュのフィルターでろ過してフローサイ不知火トメーターにより倍数性を判定した花粉は粒径および稔性を調査したものと同じものを解凍しフロストスライドグラスのスリ面上に 3 5 個の葯を置き DAPI 添加核単離液 0.1 ml を加えて葯から花粉を取り出し他のフロストスライドグラスのスリ面で花粉をすり潰したさらに DAPI 添加核単離液 1 ml を加えて 30 μm メッシュのフィルターでろ過しフローサイトメーターにより倍数性を測定した倍数性キメラを種子親とした二倍体との交雑個体の倍数性花粉量キメラキメラキメラキメラキメラ少少花粉粒径 μm 稔性 w 種苗特性分類調査報告書カンキツ類の定義による無少の四段階評価 1 アセトカーミンによる染色茎頂分裂組織第 1 層が第 2 層が 4 第 3 層が 4 の -4-4 周縁キメラと推定した個体 w およびはステューデントの t 検定により同一品種系統内でそれぞれ 1 および 5 水準で有意差があることを示すにおいて二倍体と比較して花粉粒径が有意に大きく二倍体の倍であった第 2 表第 1 図による三倍体の作出単胚性の -4-4 倍数性キメラおよび四倍体胚性また花粉稔性は土佐文旦広島果研 11 号安芸タである道谷系ビラフランカの四倍体を種子親とし二ンゴールが二倍体と比較して有意に低くはるかと倍体の大橘を花粉親として交配を行ったなお四倍不知火は有意差がなかった四倍体の花粉は供試し体の道谷系ビラフランカはこれまでの調査で単胚率たすべてのにおいて二倍体と比較して花粉粒が 94 であり得られた実生はすべて雑種であることを径が有意に大きく二倍体の倍であった第 3 確認しているまた対照として同一品種の二倍体にも表第 2 図また道谷系ビラフランカを除く 8 品二倍体の大橘の花粉を交配した交配で得られた果実種系統において花粉稔性が二倍体と比較して有意に低は完全種子数および不完全種子数を測定し完全種子にかったついては種子重を測定した完全種子はバーミキュライト倍数性キメラおよび四倍体の果実形質に播種し得られた実生について葉の倍数性をフローサ -4-4 倍数性キメラ個体の果実は供試した 7 品種のうち 3 品種で二倍体と比較して果皮が有意に厚く 5 品種イトメーターにより判定したで二倍体と比較して果肉歩合が有意に低かったがその他結果倍数性キメラおよび四倍体の花粉の特性 -4-4 倍数性キメラ個体の花粉は供試したすべてのの果実形質においてはによって傾向が異なった第 4 表第 3 図四倍体の果実は供試したすべての品種系統で二倍体と比較して果皮が有意に厚かった第第 1 図土佐文旦における A 二倍体 B -4-4 倍数性キメラの 1 アセトカーミンで染色した花粉

252 第3表柳本裕子金好純子古田貴音コルヒチン処理により得られた四倍体の花粉特性大橘水晶文旦農間紅八朔西之香ありあけ広島果研 11 号安芸タンゴールはるか道谷系ビラフランカ個体の倍数性花粉量 4 4 4 4 4 4 4 4 4 二倍体と比較して果肉歩合が低かったその他の果実形質花粉粒径 μm 稔性 34.7 41.9 34.4 45.0 32.6 40.

0 5 表第 3 図また水晶文旦を除く 8 でにおいてはによって傾向が異なった 3-4-4 倍数性キメラおよび四倍体の組織別倍数性フローサイトメトリー分析では二倍体花粉の相対蛍光強度が半数性と二倍性のピークを示すのに対し -4-4 倍数性キメラの土佐文旦はるかおよび四倍体の大橘農間紅八朔の花粉はいずれも二倍性と四倍性のピークを示した第 6 表第 4 図

4 252 第3表柳本裕子金好純子古田貴音コルヒチン処理により得られた四倍体の花粉特性大橘水晶文旦農間紅八朔西之香ありあけ広島果研 11 号安芸タンゴールはるか道谷系ビラフランカ個体の倍数性花粉量二倍体と比較して果肉歩合が低かったその他の果実形質花粉粒径 μm 稔性 w 表第 3 図また水晶文旦を除く 8 でにおいてはによって傾向が異なった倍数性キメラおよび四倍体の組織別倍数性フローサイトメトリー分析では二倍体花粉の相対蛍光強度が半数性と二倍性のピークを示すのに対し -4-4 倍数性キメラの土佐文旦はるかおよび四倍体の大橘農間紅八朔の花粉はいずれも二倍性と四倍性のピークを示した第 6 表第 4 図果実組織の倍数性において二倍体の果実はフラベドアルベドじょうのう膜砂じょうのいずれも二倍性四倍体の果実はいずれの組織も四倍性 -4-4 倍数性キメラ個体の果実はフラベドじょうのう膜および砂種苗特性分類調査報告書カンキツ類の定義による無少の四段階評価 1 アセトカーミンによる染色はデータがないことを示す w およびはステューデントの t 検定により同一品種系統内でそれぞれ 1 および 5 水準で有意差があることを示すじょうで二倍性と四倍性アルベドは四倍性のみを示した第 6 表第 5 図倍数性キメラを種子親とした二倍体との交雑による三倍体の作出 4 の -4-4 倍数性キメラ個体および 8 品種系統の四倍体を種子親とした二倍体大橘との交雑において農間紅八朔清見西之香およびはれひめは二倍体を種子親とした場合と比較して有意に完全種子数が少なく完全種子重が軽かった第 7 表また得られた種子を播種して育成した実生において二倍体を種子親とした実生の調査個体はすべて二倍体であり第 2 図大橘における A 二倍体 B 四倍体の 1 アセトカーミンで染色した花粉第 3 図広島果研 11 号における A 二倍体 B 四倍体 C -4-4 倍数性キメラの果実

5 園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): 第 4 表コルヒチン処理により得られた -4-4 倍数性キメラの自然受粉による果実特性個体の倍数性果実数収穫時期果実重 (g) 果実径 (mm) 果肉 1 果当たり種子数完全果形果皮厚果皮重歩合種子重指数 (mm) (g) 縦径横径 (%) 完全不完全 (g) 土佐文旦 5 2 月上旬キメラ w v 広島果研 11 号 5 12 月上旬キメラ安芸タンゴール 5 12 月上旬キメラはれひめ 5 12 月上旬キメラはるか 5 2 月上旬キメラ不知火 5 12 月上旬 u キメラはるみ 5 12 月上旬キメラ ( 横径 / 縦径 ) 100 ( 果実重 - 果皮重 )/ 果実重 100 不完全種子のうち縦径 8 mm 以上の種子数 w 茎頂分裂組織第 1 層が, 第 2 層が 4, 第 3 層が 4 の -4-4 周縁キメラと推定した個体 v およびはステューデントの t 検定により同一内でそれぞれ 1% および 5% 水準で有意差があることを示す u はデータがないことを示す第 5 表コルヒチン処理により得られた四倍体の自然受粉による果実特性個体の倍数性果実数収穫時期果実重 (g) 果実径 (mm) 果肉 1 果当たり種子数完全果形果皮厚果皮重歩合種子重指数 (mm) (g) 縦径横径 (%) 完全不完全 (g) 大橘 5 2 月上旬 w 水晶文旦 5 2 月上旬農間紅八朔 4 2 月上旬 v 西之香 5 12 月上旬ありあけ 4 12 月上旬広島果研 11 号 5 12 月上旬安芸タンゴール 5 12 月上旬はれひめ 5 12 月上旬道谷系 5 2 月上旬ビラフランカ ( 横径 / 縦径 ) 100 ( 果実重 - 果皮重 )/ 果実重 100 不完全種子のうち縦径 8 mm 以上の種子数 w およびはステューデントの t 検定により同一内でそれぞれ 1% および 5% 水準で有意差があることを示す v はデータがないことを示す -4-4 倍数性キメラ個体を種子親とした実生の調査個体は, 四倍体を種子親とした実生と同様に, すべてが三倍体であった. 考カンキツ類では, これまでにコルヒチン処理などにより察

6 254 柳本裕子金好純子古田貴音第 6 表コルヒチン処理により得られた -4-4 倍数性キメラおよび四倍体の果実組織および花粉の倍数性個体の倍数性果実組織の倍数性フラベドアルベドじょうのう膜砂じょう大橘, ,4 土佐文旦, キメラ,4 4,4,4,4 農間紅八朔, ,4 広島果研 11 号キメラ,4 4,4,4 安芸タンゴールキメラ,4 4,4,4 はれひめキメラ,4 4,4,4 はるか, キメラ,4 4,4,4,4 不知火キメラ,4 4,4,4 石地キメラ,4 4,4,4 道谷系ビラフランカ茎頂分裂組織第 1 層が, 第 2 層が 4, 第 3 層が 4 の -4-4 周縁キメラと推定した個体はピークが検出されなかったことを示す花粉くの品種で四倍体や -4-4 倍数性キメラ個体が得られ, その特性調査が行われている. 四倍体の花粉については, コルヒチン処理によって作出された四倍体の福原オレンジ, ヒュウガナツ, クレメンティン ( 生山,1992), ニンポウキンカン ( 河瀬ら,2005; 糠谷ら,2011) において,-4-4 倍数性キメラの花粉については, ニンポウキンカン ( 糠谷ら,2011; 安田ら,2008) において, 花粉粒径が二倍体と比較して有意に大きいことが報告されている. 本報告では, 供試した -4-4 倍数性キメラおよび四倍体のすべてのにおいて花粉粒径が二倍体と比較して有意に大きく, カンキツ属の -4-4 倍数性キメラでも, 四倍体と同様に花粉が大きくなることが明らかになった. これらのことから, 花粉粒径は, 四倍体および -4-4 倍数性キメラと二倍体とを明確に識別できる基準の一つと考えられた. カンキツの同質四倍体では, 花粉形成における減数分裂の過程で異常が起こるため, 花粉稔性が低下することが知られている (Frost Soost, 1968). 本報告では,-4-4 倍数性キメラおよび四倍体のいずれにおいても, 花粉量がい大橘, 水晶文旦, 農間紅八朔, はるかおよび道谷系ビラフランカの花粉稔性の低下程度は小さい, あるいは低下しなかった. 一方で, 花粉量がの西之香, ありあけ, 広島果研 11 号および安芸タンゴールの花粉稔性は大幅に低下した. このように, 不知火を除く 10 品種は, 花粉量によって花粉稔性の低下程度が異なることが示唆された. 花粉の倍数性においては, フローサイトメーターによる分析で, 二倍体の花粉が半数性と二倍性の 2 つのピーク, -4-4 倍数性キメラおよび四倍体の花粉が二倍性と四倍性の 2 つのピークを示した. 一般に, カンキツ類などの二核性花粉は, 開葯した時点は 2 細胞であるが, 受粉して花粉が発芽すると花粉管で生殖核が 2 つの精核になり, この開葯直後における生殖核が精核に分裂する直前の段階では, 生殖核の DNA 量は二倍になることが知られている ( 岩波,1980). 二核性花粉であるユリ (van Tul ら,1989) やシクラメン ( 高村吉村,2007) では, フローサイトメーターによる分析で, 栄養核 ( 後の花粉管核 ) のピークと二倍量となった生殖核のピークが現れることが明らかになっており, 本報告でも同様の分析結果が得られた. また,-4-4 倍数性キメラの花粉が四倍体と同様に二倍性と四倍性の 2 つのピークを示したことから, 三倍体育成の花粉親として活用できることが示唆された. これまでに,

7 園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): 第 4 図はるかにおける花粉の倍数性 (A) 二倍体,(B) 四倍体,(C)-4-4 倍数性キメラ (A) のピーク 1 は半数性, ピーク 2 は二倍性,(B) および (C) のピーク 2 は二倍性, ピーク 3 は四倍性を示す花粉のフローサイトメーターによる倍数性分析は, ユリ (van Tul ら,1989) やシクラメン ( 高村吉村,2007) などで報告されているが, 上記のとおりカンキツにおいても分析が可能であることが明らかとなった. 四倍体および-4-4 倍数性キメラ個体の果実では, 河瀬ら (2005), 糠谷ら (2011), 安田ら (2008) が, ニンポウキンカンの果実が二倍体と比較して有意に重く, 果皮が厚く, 果皮歩合が高いことを報告している. また, Cameron Frost(1968) は, カンキツの四倍体果実が二倍体と比較して果皮が厚く, 果汁割合が低いことを報告している. 本報告においては, 四倍体は二倍体と比較して有意に果皮が厚いが, その他の形質はによって異なった. また,-4-4 倍数性キメラ個体でも, によって傾向が異なっていた. カンキツにおいては, 各組織の DNA 分析により,L1 由来の組織は表皮系, じょうのう膜および砂じょうであること,L2 由来の組織は表皮を除いた葉の大部分, 花粉などの生殖器官, じょうのう膜および砂じょうの一部であること,L3 由来の組織は茎や葉のずいと果心の一部であるこ第 5 図 -4-4 倍数性キメラ広島果研 11 号における果実の組織別倍数性 (A) フラベド,(B) アルベド,(C) じょうのう膜,(D) 砂じょう (A),(C),(D) のピーク 1 は二倍性, ピーク 2 は四倍性,( B) のピーク 2 は四倍性を示すとが示唆されている (Sugawara ら,2002). 一方で, ニンポウキンカンの倍数性周縁キメラ勇紅においては, 砂じょうは L1 のみから由来した組織であることが報告されている ( 安田ら,2008). 本報告で供試したでは,-4-4 倍数性キメラ個体の果実は, いずれもフラベド, じょうのう膜および砂じょうが二倍性と四倍性を示し, フラベド, じょうのう膜および砂じょう組織が L1 と L2 由来であることが裏付けられた. 単胚性の -4-4 倍数性キメラおよび四倍体を種子親とし, 二倍体大橘を花粉親とした交配で得られた完全種子数は, 農間紅八朔, 西之香, 清見およびはれひめで同一品種の二倍体を種子親とした交配で得られた完全種子数と比較して有意に少なかった. これは, ニンポウキンカンにおける安田ら (2008) の報告と同様の結果であった. 完全種子数が減少した要因は, 交配に使用した二

8 256 柳本裕子金好純子古田貴音第 7 表コルヒチン処理により得られた -4-4 倍数性キメラおよび四倍体を種子親とした二倍体大橘との交雑による種子形成と実生の倍数性個体の倍数性個体数調査果実数 1 果当たり種子数完全完全不完全種子重 (g) 調査実生数出現数 3 大橘水晶文旦農間紅八朔キメラ w 西之香清見広島果研 11 号キメラ安芸タンゴールキメラはれひめキメラ道谷系ビラフランカ不完全種子のうち縦径 8 mm 以上の種子数茎頂分裂組織第 1 層が, 第 2 層が 4, 第 3 層が 4 の -4-4 周縁キメラと推定した個体およびはステューデントの t 検定により同一内で二倍体と倍数体の間にそれぞれ 1% および 5% 水準で有意差があることを示す w はデータがないことを示す倍体大橘の花粉稔性が十分に高いため,-4-4 倍数性キメラおよび四倍体の雌性器官の稔性低下に起因すると推察された. また, この4 品種では, 完全種子は, -4-4 倍数性キメラ二倍体および四倍体二倍体が二倍体二倍体と比較して有意に軽く, 交配で得られた完全種子を播種して育成した実生は三倍体であった. カンキツの四倍体二倍体, 二倍体二倍体で生じる三倍体が小粒となるのは, 胚と胚乳の倍数性比によるものと考えられており (Esen Soost, 1973), 本報告で供試したにおいても同様の要因により, 三倍体である完全種子が小粒になったと推察された. さらに, 上記 4 品種を含む -4-4 倍数性キメラ二倍体および四倍体二倍体で得られた実生は, すべて三倍体であった. これらの交配結果から,-4-4 倍数性キメラは四倍体と同様に, 三倍体作出の種子親として有用であることが示唆された. なお, 本報告で供試した -4-4 倍数性キメラは, 作出から 13 ~ 22 年経過しており, この間は倍数性構造を維持していると考えられるが, 今後の栽培過程で構造が変化する可能性もあるため, 継続的な倍数性の確認が必要である. 以上より, コルヒチン処理によって得られた四倍体 9 および -4-4 倍数性キメラ個体 5 の花粉粒は, 二倍体と比較して有意に大きいことが明らかとなり, 花粉粒の大きさは, 前報 ( 柳本ら,2012) で述べた葉の厚さと同様に, 二倍体と識別する特性であることを数の品種で確認することができた. また,-4-4 倍数性キメラ個体の花粉は, フローサイトメーターにより四倍体と同様の相対蛍光強度を示し, 種子親として二倍体との交配により得られた実生が三倍体であったことから, 四倍体と同様に, 三倍体育成の育種親として利用できることが明らかとなった. 摘要コルヒチン処理により得られた 5 の -4-4 倍数性キメラおよび 9 の四倍体について, 花粉の形態的特性と倍数性を調査した. 供試した -4-4 倍数性キメラおよび四倍体のすべてので, 花粉粒が二倍体よりも有意に大きく,11 で花粉稔性が低かった. このことより, 花粉粒の大きさは, 二倍体と明確に識別できる特性であることが示唆された. また,7 の -4-4 倍数性キメラおよび 9 の四倍体について, 果実形質と組織別倍数性の調査を行った. 調査したすべての四倍体で果皮が二倍体よりも厚かったが,-4-4 倍数性キメラでは, によって傾向は異なった. フローサイトメーターによる倍数性の分析では,-4-4 倍数性キメラ果実の組織別倍数性は, 供試した 7 とも, フラベド, じょうのう膜, 砂じょうで二倍性と四倍性の 2 つのピークを, アルベドでは四倍性のピークのみを示した. 花粉は,-4-4 倍数性キメラと四倍体はいずれも二倍性と四倍性の 2 つのピークを示した.-4-4 倍数性キメラおよび四倍体を種子親とし, 二

9 園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): 倍体大橘を花粉親とした交配によって得られた実生は三倍体であり, 四倍体と同様に,-4-4 倍数性キメラは三倍体を作出する育種親として有効であることを明らかにした. 謝辞本研究を行うに当たり, 懇切なご指導, ご校閲を賜った京都大学大学院農学研究科教授北島宣博士に厚くお礼申し上げる. 引用文献 Alea, P., J. Juare, P. Ollitrault and L. Navarro Production of tetraploid plants of non-apomictic citrus genotpes. Plant Cell Rep. 28: Alea, P., J. Juare, M. Hernande, P. Ollitrault and L. Navarro Implementation of etensive citrus triploid breeding programs based on 4 seual hbridisations. Tree Genet. Genomes 8: Cameron, J. W. and H. B. Frost Genetics, breeding, and nucellar embron. p In: Reuther, W., L. D. Batchelor and H. J. Webber (eds.). The Citrus Industr vol II. Universit of California, Division of Agricultural Sciences, California. Cuenca, J., P. Alea, J. Juare, J. A. Pina and L. Navarro Safor mandarin: a new citrus mid-late triploid hbrid. HortScience 45: 愛媛県立果樹試験場種苗特性分類調査報告書 ( カンキツ類 ).p. 4. Esen, A. and R. K. Soost Seed development in citrus with special reference to 4 crosses. Amer. J. Bot. 60: Frost, H. B Tetraploid in citrus. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 11: Frost, H. B. and R. K. Soost Seed reproduction: Development of gametes and embros. p In: Reuther, W., L. D. Batchelor and H. J. Webber, (eds.). The Citrus Industr vol II. Universit of California, Division of Agricultural Sciences, California. 岩波洋造花粉学.p 講談社. 東京. 金好純子古田貴音蔵尾公紀山口聡単胚性カンキツにおけるコルヒチン処理による四倍体の作出とその種子親としての利用による三倍体の獲得. 園学研.7: 金好純子古田貴音塩田俊赤阪信二柳本裕子栗久宏昭レモン自然交雑実生における三倍体の出現と新品種イエローベルの育成. 園学研.13: 金好純子山口聡コルヒチン処理により得られたカンキツキメラ個体の倍数性構造と交配親としての活用. 園学雑.71( 別 2): 229. 河瀬憲次八幡昌紀川匠子原口加奈國武久登ニンポウキンカンにおける同質四倍体の選抜とその特性. 園学研.4: Longle, A. E Triploid citrus. J. Wash. Acad. Sci. 16: 島光廣徳永忠士新居美香津村哲宏山本浩史坂口優山尾正実三倍体香酸カンキツ新品種阿波すず香の育成. 徳島農林水総技支援セ農研報. 2: 糠谷綱希太田知宏安田喜一八幡昌紀國武久登小松春喜新居直祐向井啓雄原田久高木俊彦ニンポウキンカン珠心胚へのコルヒチン処理によって得た倍数体の特性とそれらの三倍体育種への利用. 園学研.10: 1 8. 生山巌カンキツ類の倍数性育種に関する研究主として四倍性育種素材の作出について. 果樹試特報.3: Recupero, G. R., G. Russo and S. Recupero Yellow Star Seedless. US PP17,520 P3. Recupero, G. R., G. Russo and S. Recupero Top Mandarin Seedless. US PP18,568 P3. Soost, R. K. and J. W. Cameron Oroblanco a triploid pummelo-grapefruit hbrid. HortScience 15: Soost, R. K. and J. W. Cameron Melogold a triploid pummelo-grapefruit hbrid. HortScience 20: Sugawara, K., T. Wakiuka and A. Oowada Histogenic identification b RAPD analsis of leaves and fruit of newl snthesied chimeric citrus. J. Amer. Soc. Hort. Sci. 127: 高村武二郎吉村奈津紀フローサイトメトリーを用いたシクラメン植物体および花粉の倍数性検定. 香川大農学報.59: 徳永忠士新居美香津村哲宏山尾正実スダチにおける四倍体と二倍体との交雑による三倍体雑種の作出および無核品種徳島 3X1 号の育成. 園学研. 4: van Tul, J. M., J. N. de Vries, R. J. Bino and T. A. M. Kwakkenbos Identification of 2n-pollen producing interspecific hbrids of Lilium using flow ctometr. Ctologia 54: 柳本裕子金好純子古田貴音北野剛志カンキツのコルヒチン処理により作出した四倍体および倍数性キメラの形態的特性. 園学研.11: 安田喜一國武久登川匠子黒木宏憲八幡昌紀平田力也吉倉幸博川上郁夫杉本安寛ニンポウキンカン勇紅の倍数性キメラの証明とその形態的特性. 園学研.7: 吉田俊雄根角博久吉岡照高家城洋之伊藤祐司野睦子上野勇山田彬雄村瀬昭治瀧下文孝キンカン新品種ぷちまる. 果樹研報.2: 9 16.

園学研.(Hort. Res. (Japan)) 7 (1) : 原著単胚性カンキツにおけるコルヒチン処理による四倍体の作出とその種子親としての利用による三倍体の獲得金好純子 1a * 古田貴音 1b 蔵尾公紀 1c 山口 2 聡 1 広島県立農業技術センター

園学研.(Hort. Res. (Japan)) 7 (1) : 5 10.2008. 原著単胚性カンキツにおけるコルヒチン処理による四倍体の作出とその種子親としての利用による三倍体の獲得金好純子 1a * 古田貴音 1b 蔵尾公紀 1c 山口 2 1 広島県立農業技術センター 739-0151 広島県東広島市八本松町原 6869 2 愛媛大学農学部 790-8566 愛媛県松山市樽味 3-5-7

園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): doi: /hrj 原著 カンキツのコルヒチン処理により作出した 2x-4x-4x 倍数性キメラの花粉および果実組織の倍数性と三倍体育種親としての活用 柳本裕子 1 * 金好純子

園学研.(Hort. Res. (Japan)) 16 (3): doi: /hrj 原著カンキツのコルヒチン処理により作出した 2x-4x-4x 倍数性キメラの花粉および果実組織の倍数性と三倍体育種親としての活用柳本裕子 1 * 金好純子