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参考文献 1. Hampe, J.F. and Misdorp, W. (1974) Tumours and dysplasias of the mammary gland. Bull WHO 50: Moulton, JE, (1990) Tumors of the Mamma

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性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

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乳がんってどんな病気? 手術 放射線療法 薬物療法といった治療があります 乳がんの治療法には がんが一部にとどまっている場合に そこを集中的に治療する 局所療法 と がんが全身に広がっている可能性のある場合に行う 乳がんは 乳房全体をおおうようにはりめぐらされている乳腺にできる腫瘍 です 乳腺は乳汁

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cm 以上の腫瘍では悪性化していることも考慮する必要があります ただし 良性腫瘍でも長期間放置すれば大きくなりますので サイズが大きいからと言って悪性とは限りません 成長速度: 悪性度の高い腫瘍では 大きくなるスピードが速くなります 腫瘍がいつからあったか 最近はどのくらいのスピードで大きくなってき

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がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

4. 膵腫瘤存在診断 A) 確診 1 粋の明らかな異常エコー域 ( 注 ) 2 粋の異常エコー域が以下のいずれかの所見を伴うもの a) 尾側膵管の拡張 b) 膵内または膵領域の胆管の狭窄ないし閉塞 c) 膵の限局性腫大 B) 疑診 1 膵の異常エコー域 2 膵領域の異常エコー域 3 膵の限局性腫大

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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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1980 年当時 ( 私が医学部を卒業 ) 乳がんはまだ少なかった 女性の 30 人に 1 人がかかるといわれた また 外科医も専門分化しておらず 一般外科医 ( 消化器外科医 ) の片手間に治療されていた また 手術は 定型的乳房切断術であった 傷も無残と言わざるを得なかった 1975 年には乳が

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

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ANSWER BREST CANCER 自分の病気を理解するために 担当医に質問してみましょう 私の乳がんは どのようなタイプで 病状はどのようなものですか 病理検査の結果を 説明してください 私のがんは どの病期 ステージ ですか がんはリンパ節やほかの 臓器にも広がっていますか 治療の選択肢 手

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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MMG 所 見 : 腫 瘤 MMG 所 見 : 石 灰 化 カテゴリー3 FAD! カテゴリー4 カテゴリー5 カテゴリー1,2 2 3 カテゴリー4,5 7 8 DCISの 石 灰 化 :MMG 石 灰 化 の 実 態 :MMG MMG 健 診 のC3が 異 常 に 多 い! 経 過 観 察 かM

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モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

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原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

北海道医療大学歯学部シラバス

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

第8回DCIS研究会プログラム

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43048腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1版 追加資料


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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

はじめに この冊子は レトロゾール錠 2.5mg アメル による乳がんのホルモン療法を受ける患者さんが 安心して治療に取り組めるように 乳がんのホルモン療法や薬の効果 副作用について解説しています 冊子を読んでもわからないことや 不安に感じることがありましたら 担当医師や看護師 薬剤師に遠慮なくご相

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はじめに 当院では 乳腺専門医とともに 看護師や薬剤師 他科のスタッフがチームを組み それぞれの専門医的な立場から乳がん患者さんのケアにあたっています あなたは今 不安な気持ちで一杯かもしれません しかし あなたと同じような乳房の治療を受けた患者さんはたくさんいらっしゃいます そして その多くの方が

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

Oncology Area Plan

小葉新生物 異型小葉過形成 非浸潤性小葉癌 乳管内増殖性病変 通常型上皮過形成 平坦型上皮異型 異型乳管過形成 非浸潤性乳管癌 乳管内乳頭状腫瘍 乳管内乳頭腫 異型乳頭腫 乳管内 ( 嚢胞内 ) 乳頭癌 微小浸潤癌 Lobular neoplasia (LN) Atypical lobular hy

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2017 年 10 月 5 日 乳腺疾患のまとめ 関西医科大学附属病院乳腺外科杉江知治

がん年齢調整罹患率年次推移 (1975 年 ~2005 年 ) 2014 年 86700 人 2015 年 89400 人 ( 推定値 ) 2015/7/17

がん年齢調整死亡率年次推移 (1958 年 ~2013 年 ) 2013 年 2015/7/17

Incidence per 100,000 women per year 乳がんの年齢分布 180 平均年齢 58.8 歳 160 140 120 100 80 60 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 40 20 0 2015/7/17 Age of patients (years old)

乳がんの発生 母乳を乳頭に運ぶための通り道 乳管 母乳をつくる工場 小葉

乳がんの進展 乳管上皮 正常な乳管の断面 基底膜 非浸潤がん 浸潤がん がん化した乳管上皮細胞

乳がんの診断 治療 診断 視触診 マンモグラフィー 超音波 MRI 病理 乳がん 局所治療 手術 放射線治療 全身治療 化学療法 ホルモン療法 分子標的療法

乳癌と蒲公英 ( タンポポ )

乳がんの症状の変遷 自己発見症状あり検診症状なし検診その他不明 2015/7/17

乳癌の診察で適切なものはどれか (109H8) a. 月経の直前に行う b. 視触は座位と仰臥位とで行う c. 乳房の触診は指先ではなく手掌で行う d. 乳頭分泌の診察は乳房全体を圧迫する e. 腋かの診察は上肢を挙上させて行う

症状と乳腺疾患 症状しこり皮膚の発赤乳房の左右差 疾患線維腺腫 葉状腫瘍 嚢胞 乳癌 悪性リンパ腫瘍乳腺炎 炎症性乳癌線維腺腫 葉状腫瘍 乳癌 皮膚の陥凹 乳癌 乳頭の偏位 乳癌 乳頭のびらん 乳癌 (Paget 病 ) 乳頭の陥没 血性乳頭分泌 痛み 陥没乳頭 乳癌 乳管内乳頭腫瘍 乳癌 乳腺症 乳癌

乳癌を心配して来院した患者の診察で正しいのはどれか (110C10) a. 平滑な乳房腫瘤は乳癌ではない b. えくぼ徴候は乳癌を疑う所見である c. 痛みを伴う乳房腫瘤は乳癌の可能性が高い d. 血性でない乳頭分泌物は良性の徴候である e. 乳房部のびらんは悪性を示唆する所見ではない

左乳頭直下の母指頭大の腫瘤を主訴とする患者で腫瘤を指で圧迫したとこ乳頭から分泌物を認めた そのとき乳房の写真を示す 考えらえるのはどれか 2 つ選べ (110I33) a. 乳癌 b. 乳腺症 c. 乳腺線維線種 d. 乳腺乳管内乳頭腫 e. プロラクチノーマ

マンモグラフィ 正常例 (MLO) 1 方向の場合通常 MLO (mediolateral oblique) 2 方向の場合 CC (craniocaudal) が追加される 識別可能な濃度差は 脂肪 軟部組織 石灰化 15

正常例 (MLO) 1 方向の場合通常 MLO (mediolateral oblique) 2 方向の場合 CC (craniocaudal) が追加される 識別可能な濃度差は 脂肪 軟部組織 石灰化 16

マンモグラフィーの所見 1. 腫瘤 2. 局所性非対称性陰影 (FAD) 3. 石灰化 4. 構築の乱れ 5. その他 17

1 腫瘤 2 方向で認められる占拠性病変 主に以下の 3 点を評価する 形状 円形 多角形 分葉形 不整形 境界 明瞭平滑 微細分葉 不明瞭 スピキュラ伴うなど 濃度 低濃度 等濃度 高濃度 脂肪 ( 周辺乳腺と比べての濃度評価 ) 含むなど 18

腫瘤の所見形状 : 分葉状境界 : 境界明瞭平滑濃度 : 高濃度カテゴリー (3)4 病理嚢胞内癌カテゴリー 4 19

硬癌 腫瘤の所見形状 : 楕円形境界 : スピキュラを伴う濃度 : 高濃度管状影 微小円形石灰化が随伴カテゴリー 5 20

良悪の鑑別を必要とする石灰化の形態 (1) a. 微小円形石灰化 Small round calcifications 1mm 以下の円形または楕円形の角がない辺縁明瞭な石灰化で 孤立性のものを除く 0.5mm 以下の場合には 点状石灰化 punctate calcifications と呼ばれる b. 淡く不明瞭な石灰化 Amorphous or indistinct calcifications 多くは円形またはフレーク状の石灰化で 非常に小さいか淡いため 明確な形態分類ができない不定形石灰化 21

良悪の鑑別を必要とする石灰化の形態 (2) c. 多形性あるいは不均一な石灰化 Pleomorphic or heterogeneous calcifications 通常不定形石灰化より目立ち 微細線状石灰化とも異なる 形が不整で角を有する石灰化で それぞれの形状や濃度が不均一で 通常 0.5mm 以下である d. 微細線状 微細分枝状石灰化 Fine, linear or fine, linear, branching calcifications 細長い不整形の石灰化で 線状に見えるが断裂しており 幅は 0.5mm 以下である その形態は乳癌が乳管内に進展し 不整となった内腔を埋めていることを示唆している ( 鋳型状 casting ) 22

a. 微小円形石灰化 分泌型 乳腺症 ( 閉塞性腺症 ) 23

b. 淡く不明瞭な石灰化 分泌型管内癌 ( 篩状型 ) 24

c. 多形性あるいは不均一な石灰化 壊死型乳頭腺管癌 25

d. 微細線状 微細分枝状石灰化 壊死型乳頭腺管癌 壊死巣 石灰化 管内癌巣 26

良悪の鑑別を必要とする石灰化の分布 びまん性 diffuse scattered 領域性 regional 集簇性 grouped clustered 線状 linear 区域性 segmental 良性を考えさせる分布悪性を考えさせる分布 27

石灰化のカテゴリー判定 微小円形 淡く不明瞭 多形性 不均一 微細線状 分枝状 びまん性 領域性 カテゴリー 2 カテゴリー 2 カテゴリー 3 カテゴリー 5 集簇性カテゴリー 3 カテゴリー 3 カテゴリー 4 カテゴリー 5 線状 区域性 カテ 3,4 カテゴリー 4 カテゴリー 5 カテゴリー 5 28

正常乳房超音波像 内部構造の変化によって質的診断が可能 29

1. 嚢胞 嚢胞 濃縮嚢胞カテゴリー 2 カテゴリー 2 境界部明瞭平滑で内部無エコー 境界部明瞭平滑で内部は無ではなく 低な均一な腫瘤像前方が線状高エコーで後方エコーは減弱 30

2. 混合性パターン ( 嚢胞内腫瘍 ) 嚢胞内乳頭癌 嚢胞壁からの立ち上がりがなだらかで 嚢胞壁内を這うような不整形構造をとる 31

3.1 充実性腫瘍 後方エコーは減弱し 前方境界線は断裂し 境界部には高エコー像をみとめる ( ハロー ) カテゴリー 5 硬癌の所見 32

3.2 充実性腫瘍 前方境界線断裂 後方エコー減弱 ( 硬癌 ) 微細 点状高エコー ( 乳頭腺管癌 ) 33

D/W 比とは Depth / Width 比のこと 0.7 以上の縦長の腫瘤は悪性の可能性が高まる Depth Width 長径 34

充実性腫瘍 2cm 以下 D/W <0.7 境界部明瞭平滑 粗大高エコー 2cm 以下 D/W<0.7 境界部明瞭平滑 線維腺腫 ( カテゴリー 2) 35

充実性腫瘍 充実腺菅癌 D/W>0.7 粘液癌 D/W >0.7 36

乳癌の組織分類 ( 乳癌取り扱い規約 - 第 16 版 2008 年 ) 非浸潤癌 Noninvasive carcinoma a. 非浸潤性乳管癌 Noninvasive ductal carcinoma b. 非浸潤性小葉癌 Noninvasive lobular carcinoma 浸潤癌 Invasive carcinoma a. 浸潤性乳管癌 Invasive ductal carcinoma a1. 乳頭腺管癌 a1. Papillotubular carcinoma a2. 充実腺管癌 a2. Solid-tubular carcinoma a3. 硬癌 a3. Scirrhous carcinoma b. 特殊型 Special type b1. 粘液癌 b1. Mucinous carcinoma b2. 髄様癌 b2. Medullary carcinoma b3. 浸潤性小葉癌 b3. Invasive lobular carcinoma b4. 腺様嚢胞癌 b4. Adenoid cystic carcinoma b5. 扁平上皮癌 b5. Squamous cell carcinoma b6. 紡錘細胞癌 b6. Spindle cell carcinoma b7. アポクリン癌 b7. Apocrine carcinoma b8. 骨 軟骨化生を伴う癌 b8. Carcinoma with cartilaginous /osseous metaplasia b9. 管状癌 b9. Tubular carcinoma b10. 分泌癌 b10. Secretory carcinoma (juvenile carcinoma) b11. 浸潤性微小乳頭癌 b11. Invasive micropapillary carcinoma b12. 基質産生癌 b12. Matrix-producing carcinoma b13. その他 b13 Others パジェット病 Paget s dsease 37

非浸潤癌 (Non invasive carcinoma) 非浸潤性乳管癌 (DCIS) 非浸潤性小葉癌 (LCIS) 38

浸潤性乳管癌 Invasive ductal carcinoma 乳頭腺管癌 Papillotubular carcinoma 充実腺管癌 Solid tubular carcinoma 硬癌 Scirrhous carcinoma 硬癌 充実腺管癌 乳頭腺管癌の順に予後が不良 39

乳頭腺管癌 40

充実腺管癌 41

硬癌 42

パジェット病 Paget s disease 乳頭 乳輪の表皮内浸潤を特徴とする癌 乳管内進展がみられる 間質浸潤は軽度 多くは非浸潤性 43

パジェット病の臨床所見 乳頭部の湿疹様変化がでれば本症を疑う 出血を伴ったり 乾燥して痂皮化する 進行すると乳頭は平坦化し びらんは乳頭乳輪を越えて広がる

炎症性乳癌 乳房にびまん性の発赤や浮腫をみとめる 触診上明らかな腫瘤をみとめない 乳癌の 1-5% 程度 真皮内リンパ管に腫瘍塞栓をみとめる 皮膚は肥厚し毛穴が目立つ ( 橙皮様 peau d orange ) ただちに化学療法を行う 予後は不良

Orange-peel appearance and Pathology Peau d`orange

40 歳の女性 左乳房のしこりを主訴に来院した 左の乳頭が右に比べ頭側にある 左乳房上外側に腫瘤を触知し 同部位に皮膚の陥凹を認める 正しいのはどれか 2 つ選べ (102A55) a. 乳頭の偏位は良性を示す b. 皮膚の陥凹は良性を示す c. 超音波検視を行う d. 乳房エックス線単純撮影 ( マンモグラフィ ) を行う e. 外科的生検を直ちに実施する

結合織性および上皮性混合腫瘍 1. 線維腺腫 (Fibroadenoma) 2. 葉状腫瘍 (Phyllodes tumor) 3. 癌肉腫 (Carcinosarcoma) 非上皮性腫瘍 間質肉腫 軟部腫瘍 リンパ腫および造血器腫瘍 乳腺症 臨床的には硬結腫瘤として触れる 乳腺の増殖性変化と退行性変化が共存しており 乳管過形成 小葉過形成 腺症などの組織学的変化を認める 増殖性変化のために痛みをともなうことがある. 腫瘍様病変 乳管拡張症 炎症性偽腫瘍 過誤腫 女性化乳房症 副乳 48

線維腺腫 Fibroadenoma 頻度の高い良性腫瘍 15~35 歳に多く 主に単発 16~59% は自然退縮 3cm 以下 40 歳未満で細胞診等で良性と診断されれば経過観察でよい 3cm を越えている場合には葉状腫瘍との鑑別のため針生検を行う 治療は外科的切除 49

線維腺腫 50

乳管内乳頭腫 乳管内に発生する良性腫瘍 2~3% の女性に発症 33~55 歳に多い しこりとして触れることは少ない 血性乳頭分泌を来たす疾患のなかで最も頻度が高い 診断が困難な場合には腺葉区域切除を行うことがある

葉状腫瘍 Phyllodes Tumor 乳腺腫瘍の 0.3%~1% 以下 中高年 ( 中央値年齢 45 歳 ) に多い ( 線維腺腫は 30 歳以下で多い ) 上皮で被覆された間質成分の増殖をみとめ 葉状構造をとる 平均腫瘍径は 4~5cm で急速増大することもある 良性 ~ 悪性まであり 治療は安全な margin をとり外科的切除 53

葉状腫瘍の肉眼像と組織像

乳腺症 (Mastopathy) 同義語乳腺線維嚢胞性変化 (Fibrocystic disease) 乳房の腫瘤 硬結 疼痛 乳頭分泌などの症状を主訴とする良性疾患群 単一の疾患というよりは様々な乳腺の変化の組み合わせを総称するもの 癌との鑑別が困難な場合もある 経過観察のみ

乳腺症の病理像

Mondor 病 乳房または胸郭前璧に見られる表在性の静脈炎 中高年に多く原因は不明 痛みを伴う部位に線状の硬結が触れる 超音波では乳腺との連続性のない索状の低エコーを皮下にみとめる 数週間で自然寛解し 湿布などの対処療法のみで治癒するケースが多い

乳腺線維腺腫で正しいのはどれか 2 つ選べ a. 20 30 歳代に好発する b. 多くは単発性である c. 乳頭から血性分泌がみられる d. えくぼ徴候がみられる e. 圧痛を認める

外科的切除が標準治療となるのはどれか (110D2) a. 乳腺症 b. 女性化乳房 c. 乳腺線維線腫 d. 乳腺葉状腫瘍 e. 乳腺乳管内乳頭腫

MMG の読影 1 次に行うべき検査を 2 つ選べ a. 血管造影 b. 乳管造影 c. 経皮的針生検 d. 乳房超音波検査 e. 骨シンチグラフィ

MMG の読影 2 次に行う検査はどれか a. 乳管造影 b. 乳房超音波検査 c. 乳管内視鏡検査 d. 穿刺細胞診検査 e. ポジトロンエミッション断層撮影 <PET>

MMG の読影 3 最も考えられる疾患はどれか a. 乳癌 b. 囊胞 c. 乳腺症 d. 線維腺腫 e. 葉状腫瘍

USG 読影 1 最も考えられる疾患はどれか a. 囊胞 b. 乳癌 c. 脂肪腫 d. 線維腺腫 e. 悪性リンパ腫

USG 読影 2 最も考えられる疾患はどれか a. 乳癌 b. Mondor 病 b. 慢性乳腺炎 d. 乳管内乳頭腫 e. 乳腺線維腺腫

旧 乳がんの手術 新 拡大 縮小 乳房切除術 乳房温存術 腋窩リンパ節郭清 リンパ節郭清なし センチネルリンパ節生検

80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002 2003 乳がん手術術式の動向 80 70 胸筋温存手術 60 50 乳房切断手術 40 30 乳房温存手術 20 10 0

センチネルリンパ節 がんからのリンパ流が最初に到達するリンパ節 がんの転移が最初に起こる可能性が高い センチネルリンパ節に転移がなければ わきのリンパ節を取り除く必要がない

放射線同位元素をもちいた方法 色素と特殊カメラをもちいた方法

乳癌手術のポイント 乳癌の標準術式は乳房温存手術である 腫瘍径が3cm 以下で乳管内進展が高度でない場合が良い適応となる 腫瘍が3cmを越えたり 乳管内進展が高度な場合には乳房切除術を検討する 腋窩リンパ節転移がない場合にはセンチネルリンパ節生検を行う センチネルリンパ節に転移がなければ腋窩郭清は省略できる 乳房温存手術のあとは基本的に残存乳房に対して放射線治療を行う

病理組織診断 ER(100%) 浸潤性乳管癌 ( 硬癌 ) PgR(10%) HER2 (Negative) Ki67 (20%)

乳がんのバイオロジー ER エストロゲンレセプター PR プロゲステロンレセプター 内分泌療法 Her2 ハーツー Her2 (FISH) 抗 HER2 療法

乳がんサブタイプ別悪性度 HER2 陰性 陽性 ホルモン受容体 陽性 陰性 2015/7/17

乳がんサブタイプ治療法 HER2 陰性 陽性 ホルモン受容体陽性 ホルモン療法 抗 HER2 療法ホルモン療法 陰性 2015/7/17 化学療法 抗 HER2 療法

予後不良の因子 ER 陰性 脈管浸襲 HER2 蛋白陽性 リンパ節転移陽性 組織学的グレード3 2015/7/17

内分泌治療 LHRH LH FSH E2

閉経状態と内分泌療法の選択 閉経前 閉経後 LHRH アゴニスト タモキシフェン アロマターゼ阻害剤

乳がん化学療法薬の変遷 CMF (1977) アンスラサイクリン系 AC, CAF, FAC EC, CEF, FEC (1980) (1988) タキサン系 分子標的薬 TXT,TXL (1997) ABI(2010) Eribulin (2011) Trastuzumab, Lapatinib, Bevacizumab, Pertuzumab (2001) (2009) (2011) (2013)

HER family TGF-α EGF Epiregulin Betacellulin HB-EGF Amphiregulin Pertuzumab Heregulin (neuregulin-1) Heregulin (neuregulin-1) Epiregulin HB-EGF Neuregulins-2,3,4 Ligandbinding domain Trastuzumab Transmembrane Tyrosine kinase domain Erb-B1 EGFR HER1 Erb-B2 HER2/neu Lapatinib Erb-B3 HER3 Erb-B4 HER4

乳がんで使用される分子標的薬 品名 標的 Trastuzumab ハーセプチン HER2 Pertuzumab パージェタ HER2 T-DM1 カドサイラ HER2 Lapatinib ラパチニブ HER1, HER2 Bevacizumab ベバシズマブ VEGF Erlotinib アフィニトール mtor

乳癌の治療で適切でないのはどれか (107I30) a. エストロゲン b. LH-RHアゴニスト c. アロマターゼ阻害薬 d. 分子標的薬 ( トラスツズマブ ) e. アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬

遺伝性乳癌 遺伝性乳がんは乳癌全体の5~10% を占めるが そのうちBRCA1/2 遺伝子が関与しているのは27% 程度 BRCA 遺伝子変異がある場合には乳がん 卵巣がん発症リスクが高い リスク軽減手術等については遺伝カウンセリングを行ないながら検討してゆく

昨年母が乳癌で亡くなり 1 か月前に姉 (25 歳 ) も乳癌と診断され 心配で受診した 22 歳の女性 視触診と乳房超音波検査で異常を認めなかったが 不安を訴えている 対応として推奨されるのはどれか a. 乳房造影 CT b. 全身 FDG-PET c. 予防的乳房切除術 d. 遺伝カウンセリング e. 67Gaシンチグラフィー