東京国際空港アクセス ( 京浜急行電鉄 ) 1. 京浜急行電鉄とは京浜急行電鉄 ( 以下 京急 ) は 1898 年に設立された大師電気鉄道を前身とする歴史のある鉄道会社です 現在は交通事業の他流通事業やサービス事業 不動産事業も経営しています 2. 京急の空港アクセス路線京急は 東京国際空港 ( 以下 羽田空港 ) へのアクセス鉄道として利用されており また空港アクセスを視野に入れた列車種別もあります * 京急本線京急本線は 東京都港区の泉岳寺駅と 神奈川県横須賀市の浦賀駅を結ぶ路線で 泉岳寺駅からは都営地下鉄浅草線と相互直通運転を行っておりさらに京成電鉄や北総鉄道 芝山鉄道とも都営地下鉄浅草線を通じて直通運転を行っています 本線からは大師線を除く京急各線へ直通列車が運転されています また 近年京成電鉄にて開業した成田スカイアクセス線を経由して成田空港方面へ直通する列車もあります * 京急空港線京急空港線は 東京都大田区の京急蒲田駅と 羽田空港国内線ターミナル駅を結ぶ路線で 空港線を走るほとんどの列車は京急蒲田駅で接続している京急本線と直通運転を行っています 1902 年の開業当初は穴守線を名乗り 沿線にある穴守稲荷神社への参詣客や空港島での海水浴の客を輸送する役割を持っていました 1931 年に羽田飛行場 ( 現 : 羽田空港 ) が開業して以降 飛行場への人員輸送が行われるようになりました しかし 1945 年に戦争による連合国軍の接収で 2 代目稲荷橋駅 ( 現廃止 現在の穴守稲荷駅付近 ) から 2 代目穴守駅 ( 現廃止 現在の天空橋駅付近 ) が営業休止となり さらに飛行場の拡張の為に複線のうち 1 線を使用することになったため京浜蒲田駅 ( 現京急蒲田駅 ) から 2 代目稲荷橋駅の区間が単線営業になりました 1952 年 接収解除を受け 休止になっていた区間や単線営業になっていた区間がそれぞれ営業を再開しました この際 稲荷橋駅は京浜蒲田寄りに 0.3km 移設しています 1956 年 穴守線を 0.5km 延伸して初代羽田空港駅が開業しました しかしこの初代羽田空港駅は現在の天空橋駅付近にあたり 羽田空港には直接乗り入れてはいませんでした 1964 年には空港敷地内に直接乗り入れる東京モノレールが開業したことにより 空港アクセス路線とは言い難い状況になりローカル線として地域輸送に徹することになります
再度羽田空港に乗り入れるようになったのは 1993 年のことです 当時行われていた羽田空港の沖合展開事業により拡大する空港やターミナルに対して東京モノレールだけでは 増大する輸送に対応できないと判断されたためです 1993 年に羽田駅 ( 現天空橋駅 ) が開業し このときに京急本線や都営地下鉄浅草線からの直通運転が開始されました 1998 年には羽田空港駅が開業し 本格的に空港アクセスとして機能するようになりました 現在では 直通運転先の成田空港方面や 横浜 逗子方面など 各地から羽田空港方面へのアクセス列車が運転されています 3. 京急の列車種別 * エアポート快特エアポート快特は羽田空港国内線ターミナル駅から都営地下鉄浅草線を通じて京成押上線や京成成田スカイアクセス線 北総線 京成本線へ直通する種別です この種別は都営地下鉄浅草線でも通過運転を行います 成田スカイアクセス線を経由して成田空港へ向かう列車は京成線内では アクセス特急 と名前を変更して運転されます 京急線内での停車駅は羽田空港国際線ターミナル 品川 泉岳寺です * エアポート快特京急蒲田通過騒動 蒲田飛ばし 高架化が完成した京急蒲田駅 ( ウィキぺディアより引用 ) http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d5/keikyu_kamata_station_east_20130323.jpg 2010 年に空港線と本線の接続駅である京急蒲田駅が高架化され ダイヤ改正が行われました この際 今まで京急蒲田駅に停車していた羽田空港発着の快特 エアポート快特のほぼ全てが京急蒲田駅を通過する新たなエアポート快特に変わることになり 羽田空港発着の快特の京急蒲田停車が消滅 京急蒲田駅から空港方面 さらには品川
方面の利用可能列車が減少する事態になりました 京急蒲田駅の所在地である大田区は京急蒲田駅高架化事業の費用 1650 億円のうち 200 億円を負担したことを根拠にエアポート快特の京急蒲田駅の通過に反対 通過反対対策協議会 が設立され通過反対の議決や今後の高架化事業の負担金の拠出拒否を示唆するなどしました しかし当時の石原慎太郎東京都知事はこれに対し 停車しなくてよい と発言しました その後 2012 年 10 月 21 日のダイヤ改正で品川方面 - 羽田空港方面のエアポート快特 快特を 10 分間隔で運行し このうち 40 分に 1 本をエアポート快特 その他を京急蒲田に停車する快特にすることになりました これによりエアポート快特の京急蒲田通過は継続されています 京急蒲田駅の高架化事業については後述しています * 快特快特は品川方面から途中堀ノ内駅で久里浜線に乗り入れ三崎口まで運転される系統と 空港線に乗り入れる羽田空港発着の系統があります 都営浅草線に乗り入れる快特は浅草線内では各駅停車になります * エアポート急行エアポート急行は羽田空港から品川方面 または京急逗子線の新逗子駅へ運転します 日中は新逗子発着に ラッシュ時間帯は品川方面発着になります 品川方面発着の列車の一部は乗り入れ先の京成電鉄や北総線 都営浅草線からの直通列車で ( 都営浅草線内は各駅停車として運転 ) 車両も他社の車両が使用されています * 普通各駅に停車します 快特などの優等列車が 8 12 両で運転されるのに対し 普通は 4 6 両で運転されます 4 京急の車両 * 新 1000 形京急新 1000 形は初代 1000 形を置き換えるために 2002 年から現在にわたって導入されている京急の新形式であり 主力の車両でもあります 当初 車体はアルミ合金製でしたが 投入途中にステンレス製に変わっています エアポート快特から普通まで幅広く使用されています *2100 形当時 2 扉だった 2000 形 ( 後述 ) を置き換えるために導入されました 海外の製品を多数使用し 中でもインバーター ( 列車の制御装置の一つ ) はドイツ シーメンス社の ドレミファインバーター と呼ばれるインバーターを採用しました この ドレミファインバーター は電車が発車する際 ドレミファ と音色を発する特徴的なものでしたが 保守 管理に手間がかかる事から順次日本製のインバーターに更新さ
れています 普通運用に入る新 1000 形 ( 筆者撮影 ) *2100 形 快特運用に入る 2100 形 ( 筆者撮影 )
*2000 形 エアポート急行の運用に入る 2000 形 ( ウィキぺディアより ) http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/26/keikyu_2011_revival.jpg 2000 形は快特用に導入されました そのためデビュー当初は 2 扉 転換クロスシートでした 快特は 2100 形に置き換えられたため現在は 3 扉化改造され 座席はロングシートに変わりました エアポート急行や普通などで運用されています *1500 形 1500 形は老朽化した初代 1000 形を置き換えるために製造されました 現在機器の更新が行われています *600 形 (3 代目 ) 600 形 (3 代目 ) は 1500 形と同じく初代 1000 形を置き換えるために導入されました デビュー当初車内はクロスシートでしたが 2005 年より車端部以外の部分の座席をロングシート化する工事が行われています 主に 8 両はエアポート快特に 4 両は自社線内で優等列車の増結用に使用されています *800 形 800 形は普通列車を高加速 高減速 多扉の車両に置き換えるために製造されました そのため普通列車での運用がほとんどです 老朽化の為 2011 年度から廃車が始まっています 5 京急蒲田駅付近の高架化事業
* 京急蒲田駅付近の踏切京急蒲田駅は京急本線と空港線が接続する主要駅です 本線から空港線へ直通する列車が多数運転されています 京急蒲田 ( 空 ) 第 1 踏切は空港線が京急蒲田駅を発車してから最初に通る踏切です この踏切は第一京浜道路という交通量の多い道路を横断していたため 渋滞などが発生していました さらにこの踏切は箱根駅伝の復路の道にあるため 駅伝出場選手が踏切を通過できるように踏切での遮断を短くする臨時ダイヤが組まれていました このような事から 京急本線 または空港線において線路を高架化する事業が行われました 高架化工事中の京急蒲田駅前から羽田空港方面 ( ウィキペディアより引用 ) http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b9/keikyuu_kamata_station_1.jpg * 事業の内容京浜急行電鉄本線平和島駅から六郷土手駅までの延長約 5.4km 及び同空港線京急蒲田駅から大鳥居駅延長約 2.1km の区間を連続的に立体交差化するものです これにより 6 路線の都市計画道路を立体交差化し 京急蒲田 ( 空 ) 第一踏切を含む計 28 箇所の踏切が解消されました なお この京急蒲田駅の高架化事業は 2012 年にグッドデザイン賞を受賞しています * ダイヤ改正京急蒲田駅が高架化される以前京急蒲田駅は 2 面 3 線の構造で空港線のホームは両方面共用で その上京急蒲田駅から空港線への線路は単線でした そのため 空港ア
クセスの列車が多数設定されていたにもかかわらず 所要時間が延びる原因にもなりました しかし高架化によって空港線は複線化され 京急蒲田駅も 2 面 6 線と増設されました これにより ダイヤ改正が行われ羽田空港方面に向かう列車の種別を変更することにより ( 快特またはエアポート快特 ) 所要時間が短縮されました ( 品川 - 羽田空港国際線ターミナル 12 分 ) なお 快特に種別を変更したのに伴い 普通列車を品川から京急蒲田間で 1 時間あたり 3 本増発しています 高架化後の京急蒲田駅構内図 ( 京急まち Web より引用 ) http://www.keikyu-ensen.com/stationdetail/12 6 最後に京急は戦後空港アクセスからいったん退いたものの ここ最近 過密ダイヤで所要時間を縮めるなど地道な努力を積み重ねて急成長を遂げ 今では東京モノレ ルと乗客の獲得争いを繰り広げています 羽田空港からの客に京急に乗ってもらうべく京急を宣伝するコマーシャルを福岡や札幌で放送し 京急の知名度を上げているそうです 京浜急行電鉄のダイヤは非常に過密で日中でも快特などの最速達の列車が 5 分間隔で運転されています ( 品川 京急蒲田間 ) そこに各駅停車も運転されているのでかなり複雑になっています そのような複雑な京急のダイヤも京急の地道な努力の成果なのでしょう これからの京急の発展が期待されます 最後に 取材を受け入れてくださった京浜急行電鉄の担当の方々にこの場を借りて
お礼申し上げます 最後までお読みいただきありがとうございました 京急と関連している京成電鉄や東京モノレールの原稿もご覧下さい 7 参考資料など * 京急電鉄オフィシャルサイト http://www.keikyu.co.jp/index.html * 京急沿線情報サイト京急まち Web http://www.keikyu-ensen.com/top * フリー百科事典 Wikipedia 京急本線 http://ja.wikipedia.org/wiki/%e4%ba%ac%e6%80%a5%e6%9c%ac%e7%b7 %9A 京急空港線 http://ja.wikipedia.org/wiki/%e4%ba%ac%e6%80%a5%e7%a9%ba%e6%b8 %AF%E7%B7%9A * 京浜急行電鉄より頂いた資料