Harmony 玉野市民病院新聞 第 51 号 2015 年 4 月発行 ~ 総合病院玉野市立玉野市民病院 基本理念 ~ 地域医療の拠点病院をめざし 急性期から亜急性期 回復期へと切れ目ない医療を提供します 地域包括医療の機能を有した病院として市民に安全と安心を提供し 健康と心の支えとなる病院運営に努めます トピックス 玉野市民病院病院事業管理局長あいさつ ヘリコバクターピロリ : ピロリ菌について 病院の日 看護の日のご案内 テーマ あったかいんだからぁ市民病院 5 月 15 日 ( 金 )13:30 より看護の日 病院の日を開催します 気軽に相談できるコーナーや 一緒に参加してもらえる催し物を準備して皆さんのお越しをお待ちしております 総合病院玉野市立玉野市民病院 706-8531 玉野市宇野 2 丁目 3 番 1 号 TEL:0863-31-2101 FAX:0863-32-4278 ホームヘ ーシ アト レス :http://www.kct.ne.jp/^byoin^/
玉野市民病院の現状と今後 玉野市民病院病院事業管理局長梶田亮治 玉野市民病院は, 昭和 27 年 10 月, 田井地区に市立玉野療養所として開設され, 昭和 48 年 10 月には現在地の宇野へ新築移転し, 平成 10 年度に救急告示病院指定を受け, 平成 18 年度から病床の一部を回復期リハビリ病棟 (25 床 ) として設置し, 平成 19 年度から地方公営企業法全部適用に踏み切り, 現在に至っています 平成 16 年の新医師臨床研修制度により, 岡山大学からの医師派遣をよりどころとしていた当院においては, 十分な医師供給を受けることができない状況が続き, 慢性的な医師不足となっており, 経営収支については, 平成 23 年度から25 年度までの3 年間においても連続で赤字を計上し, 損失額が増加傾向にあります これまで, 病院の経営改善を図るため, 在り方検討懇談会 の提言を受けて新経営改善計画を策定, 平成 21 年には 公立病院改革ガイドライン に沿って改革プランを, 平成 23 年には, 改革検討委員会 の提言を受け経営改善計画を策定するなど, 様々な検討を重ね, また実施してまいりましたが, 抜本的な改善に至っていないのが現状です 玉野市の人口動態, 当院の受診 入院患者等の状況, 市内医療機関等との連携状況などを分析する中で, 外来患者に占める 60 歳以上の患者割合は65% を超え, 入院患者に占める60 歳以上の患者割合は90% を超える状態は, 当院の病棟再編整備が避けて通れることのできない, 早急に対応しなければならない課題であります また, 地域医療連携室の強化により, 入院患者の獲得や退院患者の在宅復帰支援の促進, 市内医療機関との連携強化や後方支援, 公衆衛生活動の受け入れなどの業務を, 組織的に行う必要もあります さらに当施設は, 昭和 48 年 10 月竣工から既に41 年が経過し, 耐震化につながる改修等は未実施の状況であります ( 次ページへ続く ) 玉野市民病院
このような状況を踏まえ, 昨年 9 月議会において市長が公設民営化の方針を打ち出し, 市民の要望の高い, 夜間 休日の救急対応や小児医療の充実に努め, 当市における地域医療の中核拠点病院として今後も存続させていくために, 苦渋の選択として指定管理者制度の導入に踏み切ることといたしました 今後も, 指定管理事業者とともに, 市内外の各医療機関等との連携強化に努めるのはもちろんのこと, 岡山大学との良好な関係構築に努め, 玉野地域の中核病院として市民の方々の期待に応えられるよう日々努力してまいりたいと考えておりますので, 皆様方のご理解とご協力を賜りますよう, よろしくお願い申し上げます 沿革 1952 年 ( 昭和 27 年 ) 市立玉野療養所 として玉野市田井に開設 ( 病床数 150 床, 診療科目内科 外科 歯科 ) 1955 年 ( 昭和 30 年 ) 名称を 市立玉野病院 と改称 1973 年 ( 昭和 48 年 ) 現在地 ( 宇野 2 丁目 3 番 1 号 ) へ新築移転名称を 玉野市立玉野市民病院 と改称 ( 一般 112 床, 結核 93 床計 205 床 ) 診療科目内科 外科 産婦人科 眼科 小児科 整形外科 耳鼻咽喉科 泌尿器科 1975 年 ( 昭和 50 年 ) 名称を 総合病院玉野市立玉野市民病院 と改称 1978 年 ( 昭和 53 年 ) 病床数一般 205 床 1998 年 ( 平成 10 年 ) 6 階病棟開設 (3~5 階各 60 床,6 階 25 床 ) 人間ドック専用室開設 1998 年 ( 平成 10 年 ) 救急告示病院に指定 2002 年 ( 平成 14 年 ) 病床数一般 199 床 2004 年 ( 平成 16 年 ) 眼科 耳鼻咽喉科 脳神経外科 皮膚科休診 医事業務全部委託 2005 年 ( 平成 17 年 ) 診療科目にリハビリテーション科を追加 2006 年 ( 平成 18 年 ) 2006 年 ( 平成 18 年 ) 6 階病棟 (25 床 ) を回復期リハビリテーション病棟に変更 整形外科を 4 階病棟に変更 亜急性期病室を 9 床設置 (3 階 5 床 5 階 4 床 ) 訪問リハビリテーション指定事業者 2006 年 ( 平成 18 年 ) 眼科 耳鼻咽喉科を再開 ( 週一回 ) 2007 年 ( 平成 19 年 ) 地方公営企業法全部適用 平成 27 年 4 月からの外来診療について 産婦人科 非常勤医師による 週 2 回の婦人科診療となります 産科に関する診療は 対応できない場合がございます 泌尿器科 非常勤医師による 週 2 回の診療となります ご不便をおかけいたしますが ご理解ご協力の程よろしくお願い致します
ヘリコバクターピロリ : ピロリ菌について ~ ピロリ菌についてどれだけご存知ですか?~ < 担当医 > 玉野市民病院内科医長重戸伸幸先生 ピロリ菌とは ピロリ菌は今から約 33 年前 (1982 年 ) オーストラリアの医師 ( ウォーレンとマーシャル : 後にノーベル医学賞受賞 ) によって胃粘膜から新しい細菌として発見されました ピロリ菌が発見されるまでは 慢性萎縮性胃炎 胃 十二指腸潰瘍や胃癌などは加齢や胃酸が原因とされていました しかし ピロリ菌の発見以後様々な研究がおこなわれ 現在ではピロリ菌の感染は幼 小児期 (1~7 歳ごろ ) に両親や祖父母から ( 口から口へ ) が原因の大部分で 30~40 年かけて慢性萎縮性胃炎が胃幽門部 ( 胃の出口 ) から口側 ( 胃の入口 ) 方向に徐々に進行すると考えられています ピロリ菌と病気 次にピロリ菌の関係する病気について 胃癌 1995-2015 Takeda Pharmaceutical Company Limited 慢性胃炎の進行に続いて 腸上皮化生 ( ピロリ菌による遺伝子レベルの変化により 胃の細胞が小腸型の細胞に置き換わる ) を経て 40~50 年で胃癌が発生します 胃潰瘍ピロリ菌の感染により 顆粒白血球 リンパ球などの炎症細胞浸潤が起こり それらから放出される障害物質により胃粘膜がもろくなり ( 胃粘膜防御機構の破たん ) 胃酸の影響を受けて潰瘍が発生します 十二指腸潰瘍十二指腸球部に異所性胃粘膜 ( 生まれながらに十二指腸球部に胃型の細胞が存在する ) がある人にピロリ菌感染が起こる ( ピロリ菌は胃粘膜にしか定着できない ) と 以後は胃潰瘍と同じメカニズムで十二指腸潰瘍が発生します その他ピロリ菌は胃過形成性ポリープなどの胃十二指腸の病気だけでなく 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 鉄欠乏性貧血や慢性蕁麻疹などの胃十二指腸以外の病気にも関連があるとされています
ピロリ菌の診断 ピロリ菌の感染診断は 平成 25 年 2 月から従来の胃 十二指腸潰瘍や早期胃癌切除後や ITPの患者さんだけでなく 上部消化管内視鏡検査 ( 胃カメラ ) にて慢性萎縮性胃炎が確認された患者さんに対しても実施できるようになりました 検査法 胃カメラを用いるもの : 迅速ウレアーゼテスト 生検や培養法 胃カメラを用いないもの : 尿素呼気試験 便中抗原や尿中 血中抗体などの検査があり 患者さんの年齢や体調によって適切なものを選択し実施します ピロリ菌の除菌 除菌療法は 一次除菌療法 ( 除菌成功率 70~80%) として 1. PPI ( 胃酸を抑える薬 : 胃酸を抑えると 以下に述べる抗生剤のピロリ菌に対する効果が増加する ) 2. 抗生剤 2 種 ( アモキシシリン (AMPC) と クラリスロマイシン (CAM)) もし一次除菌療法で失敗した場合は二次除菌療法 ( 除菌成功率 80~85%) として 1. PPI 2. 抗生剤 ( アモキシシリン (AMPC)) 3. 駆虫剤 ( メトロニダゾール ) 上記 3 種類の薬を朝 夕食後に7 日間内服するだけです 除菌療法の副作用 除菌に伴う副作用は約 10% 程度に軟便 下痢 肝機能異常 味覚異常などで除菌終了後比較的速やかに改善します ごく稀に下血や全身の皮疹のために入院が必要となることもあります
除菌後に 除菌判定は最低 1か月 (4 週間 ) できれば2か月(8 週間 ) 後に尿素呼気試験で判定します ピロリ菌除菌により 慢性萎縮性胃炎の進行がストップするだけでなく 胃 十二指腸潰瘍の発生 再発は明らかに減少 早期胃癌の内視鏡的切除後や胃部分切除後の新たな癌の発生も減少します さらに胃過形成性ポリープも除菌後 6 割はポリープの縮小が認められ ITPも除菌により 約 5~6 割は治療不要になると報告されています 担当医より 私が特にピロリ菌除菌が重要だと思うのは 祖父母や父母の世代でピロリ菌を駆除することによって 子や孫の世代のピロリ菌感染者が激減し 将来 胃 十二指腸潰瘍や胃癌などで苦しむ人々が減少するというメリットが大きいと考えるからです 最後に医療機関の皆様に 釈迦に説法の内容で申し訳ありませんが 1 除菌療法を実施された場合は必ず除菌判定をしてください ( 一次除菌の成功率は70~80% ですので 除菌失敗している場合があります ) 2 その際には偽陰性を防止するために ピロリ菌除菌判定に支障のある薬剤 (PPI 抗生剤など) を少なくとも2 週間は休薬してから実施してください 3 除菌成功後も再感染もしくは検出限界以下に減少したピロリ菌が再増殖したことにより 数年後に再びピロリ菌が陽性になる患者さんがおられます ( 年間 1% 程度 ) ので 1~2 年毎に尿素呼気試験にてピロリ菌の再チェックをお願いします 4 ピロリ菌除菌後に胃癌が出現することがありますので 少なくとも10 年間は毎年胃カメラを受けていただくように患者さまへのご指導をお願いいたします 5 もし一次 二次除菌が失敗した場合は三次除菌を行いますので 当院にご紹介いただければ幸いに存じます