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-49<< 図 3 椎体 L2-4 と大腿骨近位部における骨粗鬆症の有病率 ( 推定 05 年 ) 2 椎体 大腿骨近位部 50 80 70 60 30 50 30-49 SOURCE Reproduced from Orimo H. et al. Japanese 11 guidelines for prevention and treatment of osteoporosis-executive summary 図 4 ビタミン D 欠乏症とビタミン D 不足状態の男女別有症率 3 男性 女性 0 0 80 80 60 60-49 -49 SOURCE Reproduced from Yoshimura N et al. Profiles of vitamin D insufficiency and deficiency in Japanese men and women: association with biological, environmental, and nutritional factors and coexisting disorders: the ROAD study. 7

生活習慣 日本における 3000 人以上の男女を対象にした大規模集団のコホート研究によると ビタミン D 不足状態の割合は 81.3% で ビタミン D 欠乏症の割合は 1.2% であった ( 血中 25-D 濃度が ng/ml 未満はビタミン D 欠乏症 ~30 ng/ml をビタミン D 不足状態と定義した )3 ( 図 4) ビタミン D 欠乏症の割合は女性で高く 現在の喫煙 外歩き習慣の欠如 高い副甲状腺ホルモン値 (ipth) および日々のビタミン D 摂取不足に有意に関連していた 別の地域ベースの研究では ビタミン D 不足状態であった被験者の割合は 35.3% で 欠乏症は 3.7% であった 4 日本における大腿骨近位部骨折の年代別発生率は低下しているというエビデンスがある これを裏付けるように いくつかの研究では 日本人男女高齢者の BMD が近年上昇していることを示している 5 この上昇に寄与していると思われる生活習慣の変化として 体重の増加 ( 前向きに BMD に影響する ) 骨粗鬆症治療薬使用の増加 および運動と転倒対策がある さらに 低い位置の布団で寝る日本の習慣は 毎日寝る際と起きる際に筋力を要するため 筋力の強さとバランス能力を向上させている可能性がある 6 人口の高齢化と欧米化した生活習慣が結びつき 日本は骨粗鬆症の負担を背負っている 年代別の大腿骨近位部骨折の発生率が低下している可能性がある一方 50 歳以上人口と 日光曝露が少ない都市部の人口が増えたため ( 図 5) 骨粗鬆症および骨折患者が増加している さらに より長生きになり転倒しやすくなっている高齢者はもちろん 座ってばかりの屋内生活による運動不足は 骨粗鬆症の予後を悪化させている 6 認識度 一般に 日本人の骨粗鬆症についての意識は高い これを示すかのように 5 年ごとの大腿骨近位部骨折発生率の計算の元になる骨折記録が作成されている さらに 厚生労働省は骨粗鬆症検診を実施するように命じ 骨粗鬆症にはつきものの転倒防止と 運動の全国的な教育プログラムを実施した また 日本の医師の骨粗鬆症への意識も高い 整形外科 内科および産婦人科医の調査によると 日本における骨粗鬆症の診断基準の認知率は 3 科の合計で 61% 整形外科医では 90% 以上であった 6 骨折率 大腿骨近位部骨折 最近の報告では 39 歳以上の男女の大腿骨近位部骨折発生率は それぞれ年間 50 件 / 万人 180 件 / 万人であった 6 1987 年より 5 年ごとに 日本は一般人口集団レベルの大腿骨近位部骨折発生率の全国調査を行っている それによると 最初の 15 年間で新規の大腿骨近位部骨折件数が 2.2 倍に増加したことが明らかになった (1987 年は 5 万 30 件 02 年は 11 万 7900 件 ) 一般に 人口の高齢化とともに大腿骨近位部骨折の新規患者は全体的に増加するが 一部の年齢層や地域では 大腿骨近位部骨折発生率が低下することもある 例外は西日本で 鳥取地区では大腿骨近位部骨折発生率が高く 上昇し続けているようである 5 表 1 は 1987 ~12 年までの 5 年ごとの大腿骨近位部骨折調査結果の概略と それに基づく 年と 年の予測である 図 5 都市部と農村部の人口比率 7 日本の諸学会からなる委員会によれば 日本では大腿骨近位部骨折の 95% は外科的に管理されており 手術の平均待ち時間は最大 3 日である そのほかの脆弱性骨折 34% 66% データ 椎体骨折 一般に日本の臨床診療で椎体骨折の状態が評価されているのは 日本のガイドラインが X 線検査を用いて骨粗鬆症を診断することを推奨しているからである ⁸ 日本の農村人口集団を対象とした 07 年の研究では 椎体骨折の 年間の累積発生率は 60 歳代では男性 8

5.1% 女性 14% 70 歳代では男性.8% 女性 22.2% であることが明らかとなった 2 表 1 日本における大腿骨近位部骨折件数とその予測 5 年骨折件数前期からの変化率 (%) 1987 53,0 1992 76,600 44 1997 92,0 21 02 117,900 28 07 148,000 26 12 190,000 28 2,000 26 3,000 33 そのほかの研究では 椎体骨折が白人女性より日本人女性で多いこと また 日本人女性における椎体骨折発生率の上昇が死亡率の上昇に関連することが明らかになった 脊椎変形を 1 つもつ女性の死亡リスクは 1.3 倍であり 3 つ以上変形している女性の死亡リスクはほぼ 4 倍であった 骨折後 年の日本人女性の追跡調査によると 骨折しなかった人々の生存率は 86% であったのに対し 骨折者は 69% であった 9 骨折のコスト 日本では大腿骨近位部骨折の 95% に外科的治療が行われ 治療のための入院日数は平均 1 ヵ月以上 (38.2 日 ) である この治療のための均病院医療費は 大腿骨近位部骨折 1 件につき平均 27,599US ドルである ( 表 2) 日本の骨折データベースによれば 12 年には 19 万件の大腿骨近位部骨折があり そのうち 95% が外科的治療を受けている これらから 日本は 1 年あたり 49 億 US ドル以上を大腿骨近位部骨折の治療に費やしていることがわかる そしてこれは病院での医療費にすぎないのである 骨折登録 日本には 大腿骨近位部骨折を登録する全国レベルと地域ごとの 2 つの集中データベースがある データは 5 年ごとに収集され 歳以上男女の情報が含まれている 12 年に登録された大腿骨近位部骨折は 19 万件で 95% は外科的治療を行ったとされる 骨折リエゾンサービス 日本の病院で 50 歳以上の骨折患者を骨折リエゾンサービスに紹介するという制度を利用したのは 約 1 ~% であった 表 2 日本における大腿骨近位部骨折コスト 病院医療費 ( 骨折 1 件あたり ) 骨粗鬆症の専門家 日本における骨粗鬆症の専門家は主に整形外科医であり 特別に訓練を受けて骨粗鬆症患者の治療を担っている そのほかに骨粗鬆症治療のための特別な訓練を受けた専門家には 婦人科医 内分泌科医および内科医が含まれる 場合によって リウマチ専門医や一般開業医が患者を管理することもある また 一部の日本の病院では 骨粗鬆症それ自体が専門分野として認識されている 政府の政策 国民健康における優先事項としての骨粗鬆症 日本において 骨粗鬆症は国民健康における優先事項ではない しかしながら 厚生労働省は健康増進法による骨粗鬆症検診を市町村の自治体で行うよう命じており 11 年は 277,489 人が検診を受けた さらに 日本には運動に注力している国民健康プログラムがあり 骨粗鬆症の予防と治療に運動の効用を含めるため 基準とガイドラインを改訂する予定である 6 ガイドライン 平均入院日数 外科的治療 27,599US ドル 38.2 日 95% 骨粗鬆症の予防と治療に関する日本のガイドラインは 日本骨粗鬆症学会 日本骨代謝学会 および骨粗鬆症財団により 11 年に発表された ガイドラインでは 特に集団ベースのスクリーニングと 骨折歴 年齢 BMD スコア FRAX スコア 骨折の家族歴に注目した骨折リスク評価に取り組んでいる ガイドラインは 通常は費用の 70% が償還される日本の診療報酬の方針におおむね準拠している 9

調査と医療の質指標制度 全国的な大腿骨近位部骨折のデータベースを使用し 日本は骨粗鬆症の追跡と治療のための調査と医療の質指標を実施している 現在 これは大腿骨近位部骨折のみに適用され 5 年ごとに更新されている 治療 ( 薬物治療の保険償還 ) 日本の人口の約 90% は 国民健康保険または被雇用者の健康保険を介して医療保険に加入している 通常 患者は費用の 30% を支払い 健康保険が残りの 70% を負担する 民間保険は 自己負担分や保険適用外の費用を賄うのに利用できる 骨粗鬆症の看護と治療は健康保険が適用され 75 歳以上では費用の 90% を保険が負担する 一般に 保険償還に承認は要しないが 治療薬によっては一定の条件を満す必要がある たとえば テリパラチドは骨折の既往がある場合にのみ認められ そのほかの治療薬では BMD の T スコア -2.5SD 以下の患者の場合のみ適用される 第一選択および第二選択薬としては 骨折していない 65 歳以上の患者に対し 43% の医師がビスホスホネートを処方し 29% が活性型ビタミン D 3 を選択したことが 医師への調査で明らかになった 骨折している患者については 55% の医師がビスホスホネートを 22% が活性型ビタミン D 3 を選択していた 6 しかし 薬剤処方の条件や保険償還基準 ( ほとんどのケースにおいて 70% の負担 ) は 医師が普通なら患者に勧めるだろう治療を 場合によっては妨げることがある 表 3 は 日本で使用できる骨粗鬆症治療薬と保険診療の負担率を示す 診断 日本では 骨粗鬆症の診断に dual-energy X-ray absorptiometry(dxa) と超音波の 2 つが使用されており 両方とも即時に利用できる どちらも健康保険によって費用の 70% が負担され 費用は DXA が約 16 ~35 US ドルで 超音波は約 8US ドルである ( 表 4) 08 年のデータによれば 日本の医療施設では 一般住民 0 万人あたり.8 台の DXA を設置している

さらに 日本人のために特別に調整されたモデルを有する FRAX を通じて 集団ベースの予備的スクリーニングが可能である また アジア人のための骨粗鬆症スクリーニングツール (OSTA 日本人集団で有効性が確認されている ) も利用可能である 11 勧告 骨粗鬆症治療や骨折予防の費用対効果についての研究を進めること 現在 大腿骨近位部骨折の疫学データ ( 全国ベースと地域ベース ) は利用可能である しかし 費用対効果を分析したデータは限られている 過去 年間に日本では骨折患者の大幅な増加があった 大腿骨近位部骨折の適切な治療と予防 ( 骨粗鬆症の治療と転倒予防のより効果的な介入など ) は 骨粗鬆症の負担を軽減するのに役立つ重要な要素なので さらなる議論と取り組みが必要である 骨粗鬆症とその影響に対して引き続き政府および厚生労働省に注目させることによって 骨粗鬆症が国民健康における優先事項になるように提唱すること 表 3 日本における骨粗鬆症治療薬と健康保険の負担率 保険適用負担率 (%) リセドロネート 70%(75 歳以上は 90%) アレンドロネート 70%(75 歳以上は 90%) イバンドロネート 70%(75 歳以上は 90%) ゾレドロン酸 クロドロネート パミドロネート ラロキシフェン 70%(75 歳以上は 90%) バゼドキシフェン 70%(75 歳以上は 90%) デノスマブ 70%(75 歳以上は 90%) ラネル酸ストロンチウム テリパラチド 70%(75 歳以上は 90%) PTH(1-84) サプリメントビタミン D カルシウム カルシウムのみ あり 70%(75 歳以上は 90%) カルシトニン 70%(75 歳以上は 90%) ホルモン補充療法 70%(75 歳以上は 90%) テストステロン アルファカルシドール 70%(75 歳以上は 90%) カルシトリオール 70%(75 歳以上は 90%) エルデカルシトール 70%(75 歳以上は 90%) ビタミン K2 70%(75 歳以上は 90%) ミノドロン酸 70%(75 歳以上は 90%) イプリフラボン 70%(75 歳以上は 90%) デカン酸ナンドロロン 70%(75 歳以上は 90%) 表 4 日本における骨粗鬆症診断の手段 DXA 超音波 待ち時間 費用 (US ドル ) 16~35 8 保険適用あり (70%) あり (70%) 保険診療が治療の妨げになるか ならない ならない 11

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