平成 30 年 6 月 11 日 平成 30 年度農業農村工学会賞 上野賞 を受賞 受賞業績 : 泥炭地域の基盤整備と地域振興 ~ 国営かんがい排水事業 篠津中央地区 篠津中央二期地区 における取組 ~ 札幌開発建設部が実施してきた国営かんがい排水事業 篠津中央地区 篠津中央二期地区 とその関連事業による 泥炭地域の基盤整備と地域振興 の取組が高く評価され この度 公益社団法人農業農村工学会から平成 30 年度農業農村工学会賞 上野賞 を受賞しました 事業の概要及び選考理由 : 戦後 篠津地域泥炭地開発事業により整備された地域の用水施設は 開水路方式で 100 か所以上の揚水機場が散在して電気料金等の経費も大きく 泥炭地特有の地盤沈下や凍上凍害等により老朽化しており 更に冷害防止等の用水の増量も必要となっていました このため 篠津中央地区 篠津中央二期地区 事業により 基幹水利施設である石狩川頭首工を全面改修するとともに 用水路をパイプライン化して揚水機場を5か所に統合し 維持管理費の軽減等を図りました また 道営事業等により関連する水利施設や圃場を一体的に整備し 良食味米の生産 野菜等の高収益作物の生産といった強い農業づくりが進められました このように 国営事業と関連事業が連携して泥炭地域の課題克服にあたったほか 整備した施設や泥炭地開発の歴史そのものを地域資源として地域振興を図る活動を展開していることなどが高く評価され 農業農村工学会より平成 30 年度 上野賞 を受賞 ( 別紙 13 団体の共同受賞 ) しました 授与式は 9 月 4 日に京都大学 ( 吉田キャンパス ) で開催の学会大会講演会にて行われます 上野賞について : 上野賞は 農業農村工学の創始者である上野英三郎博士の業績を記念し 公益社団法人農業農村工学会が授与する学会賞の1つとして昭和 45 年に創設されたもので 農業農村に関する事業の新しい分野の発展に寄与すると認められる業績を上げた組織 団体に授与 される賞です なお 上野英三郎博士は 渋谷駅前の銅像 忠犬ハチ公 の飼い主で ハチ公との物語は邦画 洋画で映画化され 金メダリスト ザギトワ選手への秋田犬贈呈など世界中での秋田犬ブームにつながっています ( 詳細は 農業農村工学会のホームページ (http://www.jsidre.or.jp) 参照 ) 参考 インフラ歴史ツアーの実施について: 北海道命名 150 年目の今年 北海道開発局では インフラ歴史ツアー の取組を行っており 現在 旅行会社により第 2 弾 五感で感じよう! 篠津農地開発と石狩川治水の歴史 ツアーの募集準備が進められています 上野賞 受賞の関連施設等もツアー対象の予定です 問合せ先 国土交通省北海道開発局札幌開発建設部農業整備課課長有安建也電話 011-611-2047 札幌北農業事務所所長門間修電話 011-391-0590 札幌開発建設部ホームページ http://www.hkd.mlit.go.jp/sp/
篠津中央地区 二期地区 の概要 地域の用水施設は 開水路方式で 100 か所以上の揚水機場が散在して電気料金等の経費も大きく 泥炭地特有の地盤沈下や凍上凍害等により老朽化しており 更に冷害防止等の用水の増量も必要となっていました そのため 国営かんがい排水事業 篠津中央地区 篠津中央二期地区 では 石狩川頭首工を全面改修するとともに 用水路をパイプライン化して揚水機場を 5 か所に統合し 維持管理費の軽減等を図りました 全面改修された石狩川頭首工 ( 左 : 改修前 右 : 改修後 ) パイプライン化された美原第一用水路 ( 左 : 改修前 右 : 改修後 ) 篠津中央地区 篠津中央二期地区概要図 改修された川南揚水機場 篠津中央土地改良区揚水機場箇所数と電力使用量の推移
篠津中央地区 二期地区 の概要 石狩川頭首工は 堰長 257m の全可動堰 最大取水量 37m 3 /s と国内有数規模の頭首工に改修されました 左右両岸には魚道が設置されており 管理橋は道営広域営農団地農道整備事業との共同事業により整備され 月形町と岩見沢市を結ぶ道路としても利用されています 施工時には 洪水対応のため仮桟橋上部工を即時に上昇可能なジャッキアップ工法を採用する等 仮締切工法の工夫により工期短縮と安全性向上が図られました 農業用水の流れ 篠津運河 取水口 写真 1: 洪水吐ゲート ( 幅 42m 高さ 4.6m 重量 200t の巨大なゲートで河川水を堰上げる ) 写真 2: 取水口 ( 石狩川から取水し 地域の基幹水路である篠津運河に導水する ) 写真 3: 三連式魚道 ( 左 :3 つの異なる型式を組合わせた三連式魚道 ) ( 右 : モニタリング調査時に捕獲されたサケ ) 写真 4: 管理橋 ( 農産物の輸送や地域交通を支える道路としても利用されている ) 取水口 ( 写真 2) 堰柱操作室 魚道 ( 写真 3) 管理橋 ( 写真 4) 土砂吐 洪水吐 ( 写真 1) 魚道 ( 写真 3) 改修された石狩川頭首工 石狩川 施工中の状況写真 ( 上 : 河川内に仮締切工を設置して工事を施工 ) ( 下 : 仮桟橋工に国内河川工事初となるジャッキアップ工法を採用 )
関連する道営事業等の概要 野菜などの高収益作物や良食味米の生産 水稲の直播栽培など多様な営農を可能とする力強い農業の展開に向けて 水田の大区画化や暗渠排水の集中管理孔設置 米の食味改善を図る客土など 地域の特性を考慮した整備を道営農地整備事業で進めてきました その結果 畑作物の作付面積や水稲直播面積が増加するとともに 直売や 6 次産業化の取組が拡がるなど地域の農業の発展に貢献しています 農作業の効率化を図る水田の大区画化 暗渠排水を整備したほ場での地下かんがい状況 米の食味改善を図る客土 篠津地域 ( 江別市 当別町 新篠津村 月形町 ) 集中管理孔による水稲直播 ha 直売 6 次産業化の取組 約 10 倍に増加 大区画化 暗渠排水などの整備により野菜を中心とした畑作物の作付面積が増加 H21 H26 直播作業地下かんがいを利用した水稲直播栽培面積が増加 米 豆の加工品 軽トラマーケット 6 次産業化による加工品 高収益作物の直売
上野賞 選考理由 受賞業績名 : 泥炭地域の基盤整備と地域振興 - 国営かんがい排水事業 篠津中央 二期地区 における取組 受賞者 選考理由 : : 北海道開発局札幌開発建設部 北海道空知総合振興局 北海道石狩振興局 新篠津村 当別町 江別市 月形町 篠津中央土地改良区 新篠津土地改良区 当別土地改良区 中新土地改良区 月形土地改良区 NPO 篠津泥炭農地環境保全の会 ( 以上 13 団体の共同受賞 ) 流域面積全国 2 位の石狩川下流右岸に拡がる篠津地域は 明治政府の構想により泥炭原野の開拓が試みられ 排水運河の開削が一部始められたが その後の開発は進まず 昭和 26 年度 ~45 年度に世銀の融資を受けて実施された篠津地域泥炭地開発事業により本格的開発が行われ ようやく 1 万 ha を超える水田地帯となりました しかし 泥炭地特有の地盤沈下等により水利施設の機能が低下する一方 冷害防止のための深水用水確保の要請等も踏まえ 昭和 60 年度 ~ 平成 29 年度に実施された国営かんがい排水事業 篠津中央地区 篠津中央二期地区 により基幹的水利施設が再整備されました 本事業では 用水路のパイプライン化により 100 カ所以上の揚水機場を 5 カ所に統合する等 農業水利システムが再編整備され 使用電力量の 6 割 土地改良区の経常賦課金の 3 割の削減を実現しました また パイプラインの整備に当たっては 寒地土木研究所 資材メーカー 建設業者の協力を得て 地域特性に適合する資材や技術の組み合わせの試験施工を行い 基床部にセメント系固化剤で改良した現地発生土を用いるとともに 管頂面にジオグリッドを使用して管を浅埋設する経済的な工法が採用されました さらに 大規模な河川横断構造物であり融雪出水期への対応も求められる石狩川頭首工の改修に際しては 仮桟橋上部工を即時に上昇可能なジャッキアップ工法を採用する等 仮締切工法の工夫により工期短縮と安全性向上が図られました この国営事業と一体的に実施されている道営農地整備事業等においては 水田の大区画化や暗渠管の集中管理孔システムの導入 泥炭産地米のタンパク質含有率を低減するための客土等が進められており 良食味米の生産 野菜等の高収益作物の生産といった強い農業づくりの展開に向け 基盤整備関係者が一丸となって 地域特性を考慮したオーダーメイドの対応が展開されていることは 今後の国営事業及び関連事業の進め方の模範となるものでした このほか 本地域においては NPO 法人 篠津泥炭農地環境保全の会 が管理運営を支援している篠津泥炭地資料館における広報活動や 石狩川頭首工に道営広域営農団地農道整備事業と共同で設置された管理橋を活用した公共施設見学ツアー等 泥炭地開発の歴史そのものを地域資源として地域振興を図る活動が展開されていることも高く評価されました 以上より 本事業は農業農村に関する事業の新たな分野の発展に大きく寄与したと認められ 上野賞を授与するに相応しいと評価されたものです
参考 インフラ歴史ツアーの実施について 北海道命名 150 年目の今年 北海道開発局ではインフラの整備の歴史とその成果を実感できる インフラ歴史ツアー の取組を行っています 現在 旅行会社により第 2 弾 五感で感じよう! 篠津農地開発と石狩川治水の歴史 ツアーの募集準備が進められています ツアー概要 テーマ 国家的一大プロジェクト 篠津泥炭地開発 と石狩川治水の歴史催行予定 : 平成 30 年 7 月 8 月 9 月の各月 1 回各回定員 20 名旅行会社 : 株式会社シィービーツアーズ ( 電話 011-221-1122) 詳しくは インフラ歴史ツアー URL : http://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/chousei/splaat0000019kd2.html お問合せ先 北海道開発局開発監理部開発調整課インフラ歴史ツアー担当 ( 電話 011-709-2311 内線 5477) ツアーメニュー 1 篠津泥炭地資料館 2 篠津運河 3 石狩川頭首工 5 月形樺戸博物館 6 幌向地区自然再生地 7 江別河川防災ステーション+ 船上見学など 石狩川頭首工 エキスカベータ掘削状況 運河掘削中の しのつ号 篠津運河