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この入射面を基準として, 電界ベクトルが入射面内に平行な ( 横たわっている ) 場合を平行偏波という. また, 磁界が入射面に垂直なので TM (Transverse Magnetc) 波という. さらに, 境界面を地面にたとえると地面に対して垂直の場合に相当するので垂直偏波, あるいは H 波と呼ぶこともある. 図 2 参照. θ n θ n 垂直偏波, TM 波, H 波水平偏波, T 波, 波図 2 偏波の名称 一方, 電界ベクトルが入射面に垂直な場合を直交偏波, または T (Transverse lectrc) 波という. また, 電界が大地に対して水平になっているので水平偏波, あるいは 波と呼ぶことがある.. 水平偏波の反射係数と透過係数まず, 水平偏波の反射係数, 透過係数について調べよう. 図 3のように入射角 θ で平面波の電波が入射すると, 一部は反射し, 残りは媒質内に透過する. そこで, 電界の反射係数をR, h 透過係数をT h とおき, 反射角を θ r, 透過角をθ 2 とする. また, 媒質 Iの誘電率, 透磁率をそれぞれ ε, µ, 媒質 IIの誘電率, 透磁率を, µ 2 とする.( ここでは, ε < を仮定しておく ) y I ε, µ k r k r θ θ r H r H k k x II, µ 2 θ 2 t k t k 2 H t 図 3 水平偏波の反射と透過 2/2

図 4 のように座標軸をとると, 伝搬方向ベクトル ( 波数ベクトル ) は k x y k y θ k θ x 図 4 座標と波数成分 k a x k x a y k y a x k sn θ a y k cos θ k r a x k x + a y k y a x k sn θ r + a y k cos θ r k t a x k 2x a y k 2y a x k 2 sn θ 2 a y k 2 cos θ 2 (.) とおけるので電界の入射波, 反射波, 透過波はそれぞれ a z 0 exp j k r a z 0 exp j k x x k y y r a z R h 0 exp j k r r a z R h 0 exp j k x x + k y t a z T h 0 exp j k t r a z T h 0 exp j k 2x x k 2y y y (.2) と書き表すことができる. これに対応する磁界はMaxwellの方程式より, H k ωµ (.3) で与えられるので, H 0 a x cos θѳ + a y sn θѳ exp j k x x k y y H r R h 0 η a x cos θѳ r a y sn θѳ r exp j k x x k y y H t T h 0 a x cos θѳ 2 + a y sn θѳ 2 exp j k 2x x k 2y y (.4) µ ε, µ 2 電磁界の境界条件により, 境界面 (y 0 ) に対する電界と磁界の接線成分は連続でな ければならない. この場合, 接線成分はと成分になるので z + r z t z, H x + H r x H t x (.5) したがって, e j k x x + R h e j k x x T h e j k 2x x (.6) cos θѳ cos θѳ e j k x x r + R h η e j k x x cos θѳ 2 T h η e j k 2x x 2 (.7) これが成り立つためには, まず位相項が等しくなければならない. 3/2

k x k x k 2x k sn θѳ k sn θѳ r k 2 sn θѳ 2 (.8) したがって, θѳ θѳ r k sn θѳ k 2 sn θѳ 2 (.9) これはスネルの法則と呼ばれている. これは, 入射角と反射角が等しい こと, そし て, 波の屈折 を示している. その結果, + R h T h, cos θѳ R h cos θѳ T h cos θѳ 2 (.0) したがって, R h rz z cos θѳ cos θѳ 2 cos θѳ + cos θѳ 2 cos θѳ 2 cos θѳ + cos θѳ 2 cos θѳ (.) T h tz z 2 cos θѳ cos θѳ + cos θѳ 2 2 cos θѳ 2 + cos θѳ 2 cos θѳ (.2) が得られる. ここで, 反射係数, 透過係数に関してインピーダンス的な意味を考えてみよう. 反射係数, 透過係数の形は図 5に示す伝送線路のものとよく似ている. 伝搬方向のインピーダンスは であるが, 境界に向かう方向を見たインピーダンスは 0 H x cos θѳ > となって, 磁界成分が小さくなる分, インピーダンスとしては大きくなる. H 方向はインピーダンスが θ H インピーダンス cos θ 方向はインピーダンスが H x cos θ > cos θ 2 図 5 インピーダンスの観点で見た反射と透過 ( 水平偏波の場合 ) 4/2

境界方向のインピーダンスが右図のようになるので,2つのインピーダンスから直ちに反射係数, 透過係数が次の形式で与えられる. R 2 cos θѳ 2 cos θѳ cos θѳ 2 + η, T + cos θѳ 2 cos θѳ cos θѳ 2 cos θѳ 上方の媒質の誘電率を基準にとり, 屈折率をとして n 2 k 2 2 ε k ε 2 r, ε ε r n (.2) なる関係をつかえば, 反射係数, 透過係数は次の形になる. R h rz z cos θѳ n 2 sn2 θѳ cos θѳ + cos θѳ n 2 sn 2 θѳ n 2 sn2 θѳ cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ (.3) T h tz z 2 cos θѳ 2 + η cos θѳ 2 cos θѳ 2 cos θѳ cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ (.4) これから, 入射角 θ と屈折率 n が分かれば反射係数, 透過係数が決定されることが分かる. 上式では電界の反射係数を表すという意味で, 上添字をつけてR h,t h と明示している. 2. 垂直偏波の反射係数と透過係数 次に, 垂直偏波 ( 平行偏波, H 波, TM 波 ) の場合を考える. 磁界が水平になるので, 反射係数 R H v を, 透過係数をT H v とし, 入射角 θ, 反射角を θѳ r, 透過角をθѳ 2 とする. また, 媒質 Iの誘電率, 透磁率をそれぞれ ε, µ, 媒質 IIの誘電率, 透磁率を, µ 2 とする. 磁界は, 次のように書くことができる. H a z H 0 exp j k r a z H 0 exp j k x x k y y H r a z R H v H 0 exp j k r r a z R H v H 0 exp j k x x + k y y (2.) H t a z T H v H 0 exp j k t r a z T H v H 0 exp j k 2x x k 2y y 5/2

y k r k r H k ε k, µ θ θ r H r ε 2, µ 2 x θ 2 H t t k t k 2 図 6 垂直偏波の反射と透過 それゆえ, 電界はマックスウエル方程式から次のように求めることができる. H 0 a x cos θѳ + a y sn θѳ exp j k x x k y y r R H v H 0 a x cos θѳ r + a y sn θѳ r exp j k x x k y y (2.2) t T H v H 0 a x cos θѳ 2 + a y sn θѳ 2 exp j k 2x x k 2y y 電磁界の境界条件により, 境界面に対する電界と磁界の接線成分は連続でなければならない. その結果, R H v H rz cos θѳ cos θѳ 2 n2 cos θѳ n 2 sn 2 θѳ H (2.3) z cos θѳ + cos θѳ 2 n 2 cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ T v H H tz H z 2 cos θѳ cos θѳ + cos θѳ 2 2 n 2 cos θѳ n 2 cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ (2.4) これは, 磁界に対する反射係数, 透過係数である. 入射角と屈折率が分かれば反射係数, 透過係数が決定される. 電界に対しては式からもわかるようにx 成分が反転し, 反射係数の符号も反転する. R v rx x R v H cos θѳ 2 cos θѳ cos θѳ 2 + cos θѳ n 2 cos θѳ n 2 sn 2 θѳ n 2 cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ (2.5) T v tx x T v H cos θѳ 2 cos θѳ 2 cos θѳ 2 cos θѳ + cos θѳ 2 2 n 2 sn 2 θѳ n 2 cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ (2.6) 6/2

この結果もインピーダンス的に見ると図 7 のようになり, H 方向はインピーダンスが θ H インピーダンス 方向はインピーダンスが x H 0 cos θ < cos θ 2 図 7 インピーダンスの観点で見た反射と透過 ( 垂直偏波の場合 ) 伝送線路における反射係数, 透過係数と同じであることが分かる. この場合は, 境界方向を見たインピーダンスは波動インピーダンスよりも小さい. R cos θѳ 2 cos θѳ cos θѳ 2 + cos θѳ, T 2 cos θѳ 2 cos θѳ 2 + cos θѳ 以上で, 反射係数と透過係数が求められた. これらの係数をFresnelの反射係数, 透過係数と言う. 電界を各成分に分けて, 反射, 透過波の振幅成分を表すと図 8のようになる. y y R v y z ε, µ θ θ r, µ 2 x µ ε µ 2 θ 2 T h z R h z sn θ 2 sn θ T v y R v x x cos θ 2 cos θ T v x R h cos θ n2 sn 2 θ cos θ + n 2 sn 2 θ R v n 2 cos θ n 2 sn 2 θ n 2 cos θ + n 2 sn 2 θ 2 cos θ T h cos θ + n 2 sn 2 θ 2 n 2 cos θ T v n 2 cos θ + n 2 sn 2 θ (2.7) 図 8 反射, 透過による電界成分 7/2

入射角の変化に伴って反射係数がどのような値をとるか調べるために, 大地の比誘電率を5, 導電率を0.0として計算した結果を図 9に示す. 大きさと位相を示してある. 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0. 0 R h R v H 0 0 20 30 40 50 60 70 80 90 入射角 位相 80 60 40 20 00 80 60 40 20 0 0 0 20 30 40 50 60 70 80 90 入射角 R v H R h 図 9 入射角と反射係数 入射角が0と90 度ではどちらも同じ値になるが, 途中では常に水平偏波の反射係数の方が大きい. また, 垂直偏波では反射係数が0となる角度がある. この角度はBrewster 角と呼ばれている. この角度をとすると, 興味のある関係式が導かれる. R v 0 より,n 2 cos θѳ B n 2 sn 2 θѳ B cos θѳ B,sn θѳ n 2 B n tan θ + n 2 B n (2.8) + (2.8) 式より, 角度 θ B を見いだせば, 媒質の屈折率 ( あるいは等価的に比誘電率 ) を求 めることができる. また, このとき透過角をとすると, sn θѳ t k k 2 sn θѳ B n 2 +, cos θ t n n 2 + sn θѳ B + θѳ t sn θѳ B cos θѳ t + sn θѳ t cos θѳ B n2 + n 2 + したがって, θѳ B + θѳ t π 2 (2.9) この角度では垂直偏波の反射波は無く, 波の進行方向として図 0のような関係になっている. 8/2

θ B θ B n 2 ε r θ t 垂直偏波 H z 図 0 ブリュースター角入射における角度の関係 3. 場の表現 Fresnelの反射係数, 透過係数を使って, 場を表現すると ( 全体の場 ) ( 入射波 ) + ( 反射波 ) で与えられるので, 計算によって場の様子を示そう. 水平偏波では次のようになる. 領域 I(z>0) で I z 0 e + j k y cosθѳ + R h e j k y cosθѳ e j k x snθѳ H x I 0 e + j k y cosθѳ R h e j k y cosθѳ cosθѳ e j k x snθѳ (3.) H y I 0 e + j k y cosθѳ + R h e j k y cosθѳ snθѳ e j k x snθѳ 領域 II(z<0) で z II T h 0 e + j k 2 y cosθѳ 2 e j k 2 x snθѳ 2 H x II T h 0 cosθѳ 2 e + j k 2 y cosθѳ 2 e j k 2 x snθѳ 2 (3.2) H II y T h 0 snθѳ 2 e + j k 2 y cosθѳ 2 e j k 2 x snθѳ 2 垂直偏波では領域 I(z>0) で H I z H 0 e + j k y cosθѳ R v e j k y cosθѳ e j k x snθѳ x I H 0 e + j k y cosθѳ + R v e j k y cosθѳ cosθѳ e j k x snθѳ (3.3) y I H 0 e + j k y cosθѳ R v e j k y cosθѳ snθѳ e j k x snθѳ 9/2

領域 II(z<0) で H z II T v H H 0 e + j k 2 y cosθѳ 2 e j k 2 x snθѳ 2 x II T v H H 0 cosθѳ 2 e + j k 2 y cosθѳ 2 e j k 2 x snθѳ 2 (3.4) y II T v H H 0 snθѳ 2 e + j k 2 y cosθѳ 2 e j k 2 x snθѳ 2 この式に基づいてt0の瞬時における電磁界のz 成分の実数部を絵にしたものが次の図である. 等位相面の傾きが上の媒質と下の媒質で異なることが分かる. これは屈折現象を表している. また, この例では, 下の媒質の誘電率が高いため, 透過角は入射角より小さくなる. そして, 導電率のために深くなるにしたがって, 振幅が減少している. 反射波に関しては, 入射角と反射角が等しいこと, また, その振幅は, 電界と磁界で反射係数が違うので, 合成された最終的な全場のパターンに違いがあらわれている. 境界で電界のz 成分は小さいが, 磁界では大きくなっている. 入射波と透過波 ( z ) 反射波と透過波 ( z ) 全 feld( z ) 全 feld( z ) 入射波と透過波 (H z ) 反射波と透過波 (H z ) 全 feld(h z ) 全 feld( z ) 上 : 自由空間, 下 :ε r 5,σ 0.0 の誘電体,f GHz, 入射角 45 度 0/2

臨界角について 誘電率の大きい媒質から小さい媒質に波が入射するとき, 全反射を起こすことがある. 反射係数の分子において ε > したがって 2 k 2 ε k n 2 2 < n 2 < sn 2 θѳ を満たす入射角では n 2 sn 2 θѳ j sn 2 θѳ n 2 (3.5) となって純虚数になる. その結果, 反射係数は大きさがの複素数となる. R h cos θѳ n 2 sn 2 θѳ cos θѳ j sn 2 θѳ n 2 e j φ h (3.6) cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ cos θѳ + j sn 2 θѳ n 2 R H v n2 cos θѳ n 2 sn 2 θѳ n 2 cos θѳ j sn 2 θѳ n 2 n 2 cos θѳ + n 2 sn 2 θѳ n 2 cos θѳ + j sn 2 θѳ n e j φ 2 v (3.7) sn 2 θѳ φ h 2 tan n 2 sn 2 θѳ, φ v 2 tan n 2 (3.8) cos θѳ n 2 cos θѳ つまり, 波は大きさは不変で, 位相が変化して反射することになる. このとき透過角は sn θѳ t sn θѳ t n > となり, これを満たす実数の角度は存在しない. このとき, 全反射が起きる. 全反射の 起こる境目の入射角を臨界角といい, sn θѳ c n, θѳ c sn n (3.9) で与えられる. 透過場として,yが負の領域でexp j k t r の指数部を展開してみると j k t r j k 2x x k 2y y j k x sn θѳ + k y sn 2 θѳ n 2 となって, 指数関数的に減少することが分かる. その等位相面は境界面に垂直であり (x 方向 ), 境界面に沿って平行に移動することが分かる. エネルギーは等位相面に直交し表面付近に指数分布で局在するが,y 方向に流れ出す電力は存在しない. このような波をevanescent 波とよび, 振幅が不均一な平面波として知られてる. この現象は光ファイバーの基礎となっている. /2

入射波と透過波 ( z ) 反射波と透過波 ( z ) 全 feld( z ) 全 feld 入射波と透過波 (H z ) 反射波と透過波 (H z ) 全 feld(h z ) 全 feld() θ > θ c ε ε > なお, 媒質に損失 ( 導電率 ) がある場合, 誘電率, インピーダンスの表現式を複素数に拡張すればそのまま反射係数, 透過係数として使うことができる. ε ε * ε j ω σ, µ µ η ε (3.0) ε * 2/2