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Transcription:

1 定量 NMR 法による化学計量トレーサビリティの革新 2011 年 11 月 4 日計測標準フォーラム第 9 回講演会 ( 独 ) 産業技術総合研究所計測標準研究部門化学計量システム研究室井原俊英

2 長さのトレーサビリティ体系 長さの定義 光周波数コム装置 ( 特定標準器 ) 校正 He-Ne レーザ装置 校正 ブロックゲージ 校正 各種計測機器 マイクロメータダイヤルゲージノギス

3 化学標準 ( 有機標準物質 ) のトレーサビリティ体系 物質量 ( モル ) の定義 校正 校正 1,4- ジクロロベンゼンのメタノール溶液 ( 特定標準物質 ) 1,4- ジクロロベンゼンのメタノール溶液 ( 特定二次標準物質 ) 1,4- ジクロロベンゼンのメタノール溶液 ( 実用標準物質 )

信号強度4 有機標準物質で使われている校正技術 国家標準物質 O 屈折率や吸光度など分子構造に依存した校正技術 CH 3 S P NH 2 H C 3 O CH 3 目盛付け目盛付け目盛付け目盛付け クロマトグラフ法等による同じ物質の比較校正 物質量 ( 濃度 ) 物質 A 物質 B 物質 C 定量分析定量分析定量分析定量分析 ベンゼン 二次標準物質 CH 3 O S P NH 2 H C 3 O CH 3 トルエンクロロホルムメタミドホス

揮発性有機化合物における標準物質のトレーサビリティ 物質量の定義 個別の値付け 国家標準 ジクロロメタンクロロホルムブロモホルム o-キシレン m-キシレン p-キシレン トルエンベンゼン他 15 成分 同じ成分どうしの校正 二次標準 ジクロロメタンクロロホルムブロモホルム o-キシレン m-キシレン p-キシレン トルエンベンゼン他 15 成分 同じ成分どうしの校正 実用標準 ジクロロメタンクロロホルムブロモホルム o-キシレン m-キシレン p-キシレン トルエンベンゼン他 15 成分 国家標準を中核とする高信頼性の標準供給システム 5

6 286.5 286.4 286.3 凝固点降下法による国家標準の値付け 平衡温度の実現による世界最高精度の純度測定 #282 #132 #437 断熱型熱量計 T / K 286.2 286.1 286.0 試料 :p-xylene 1 / f 1 / (f + α) 99.865 % ± 0.010 % 285.9 0 2 4 6 8 10 1/F( 1 / 融解分率の逆数 f or 1 / (f + α) ) 適用できる物質が限定される

7 核磁気共鳴装置 (NMR) ラジオ波 超伝導磁石

8 これまでの NMR の使われかた NMR は化学物質の構造決定 ( 定性 ) に用いるもの - 定性 NMR- エチルベンゼン 5H 2H 3H 水素信号の化学シフトと大凡の面積比から分子構造を求める 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 化学シフト (ppm)

9 定性 NMR から定量 NMR へ 分子構造が既知であればピーク面積の比較で定量が可能ではないか? 水素の基準物質 O 構造既知 OH 測定対象物質 構造既知 O O O 5H 比較 2H 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 化学シフト (ppm)

10 水溶液中のエタノールの定量分析に関する国際比較 (2001 年 ) 1.21 1.19 1.17 1.15 mg g -1 1.13 1.11 NMIJ 1.09 ±1 % 1.07 1.05 1.03 A B C D E F G H 参加機関 :BAM( 独 ), KRISS( 韓 ), LGC( 英 ), DSM( 蘭 ), NMIJ( 日 ), NRC( 加 ), NRCCRM( 中 ),VNIM( 露 )

化学物質の規制強化 安全安心への意識の高まりから 規制対象の有害化学物質が年々増加 例 食品衛生法の改正 (2006 年 ) 食品残留農薬の規制がネガティブリスト制からポジティブリスト制へ 一律基準値設定により流通全農薬が対象 ( 約 800 種類 ) 食品残留農薬試験に用いる実用標準物質の種類が大幅に不足 2008 年時点では国家標準物質は 2 種類のみ 水道法 大気汚染防止法なども規制強化! 11

12 拡大する計量標準のニーズ mol 物質量の定義 サイエンスプレーン mol 物質量の定義 サイエンスプレーン トレーサビリティの鎖 国家計量標準の設定 加えて トレーサビリティの鎖 SI に繋がっていない トレーサビリティの鎖標準ガス ph 標準液金属標準液計測ニーズプレーン メーカ標準品など多くのトレーサビリティ未確立標準 食品 環境 臨床検査 計測ニーズプレーン

信号強度13 水平展開から垂直展開への発想の転換 国家標準物質不確かさ 0.1 % 水素原子をものさしとした分子構造に依存しない校正技術 目盛付け 1 H 信号の基準物質 NMR による異なる物質の比較測定 NMR 水素 物質 A,B,C ベンゼン 定量分析 CH 3 O S P NH 2 H C 3 O CH 3 トルエンクロロホルムメタミドホス 濃度 試験に用いる実用標準物質不確かさ 1 %~5 %

定量 NMR 法の実用化への技術展開 ( 定性 ) NMR 技術 要素技術の開発と統合 定量 NMR 技術 不確かさ 10 % 程度 コアとなる要素技術 遅延時間の最適化 オーディオフィルタの最適化 位相補正方法の改良 ベースライン設定の改良 積分範囲の安定化 不確かさ <1 % 不確かさを 1 桁以上向上 標準物質の校正ができる水準へ 14

15 コアとなる要素技術 遅延時間 ( 励起させた核が基底状態に戻るまでの時間 ) の最適化定性 : 感度重視のため基底状態に戻る前に励起を繰返し 信号強度の定量性が乏しい定量 : 基底状態に戻るまでの時間を設けることで 信号強度と水素原子数が比例 オーテ ィオフィルター ( 信号の S/N 向上のために取込周波数の帯域幅を狭めるもの ) の最適化定性 : 感度重視で帯域幅を狭めるため 測定帯域中の信号強度に周波数依存性がある定量 : 適切な帯域幅を設定することで 測定帯域中の信号強度が一定 位相補正 ( 信号を取込む時間の初期値に生じるずれの補正 ) 方法の改良定性 : スペクトル全体を補正するため 信号周辺の位相に歪みを生じる定量 : 信号周辺のスペクトルを抽出して補正するため 位相に歪みが生じない ヘ ースライン ( 信号のゼロレベルの基準となるライン ) 設定の改良定性 : 信号形状を良く見せるために 信号の裾をカットするようなレベル設定定量 : 信号の裾まで厳密に評価するレベル設定で 信号強度を正確に取得 積分範囲 ( 信号の面積を評価するための幅 ) の安定化定性 : 値の正確さが不要ゆえに信号の裾まで積分をしないため 信号強度を過小評価定量 : 信号の裾まで厳密に積分することで 信号強度を正しく評価

クロトン酸エチル 遅延時間の最適化 定性条件 45 パルスパルス繰返し時間 = 7 秒 CH 0.92 CH 0.93 CH 2 CH 3 CH 3 1.96 測定時間 = 約 1 分 3.00 2.97 ppm 積算回数 8 回 定量条件 90 パルスパルス繰返し時間 = 64 秒 0.99 0.99 1.99 測定時間 = 約 10 分 3.00 2.99 ( 株 )JEOL RESONANCE 末松孝子博士より ppm 16

農薬標準物質における実証実験 (1) 定量 NMR 法 凝固点降下法 17

農薬標準物質における実証実験 (2) Calibration Method Calibration Method No. Compound No. Compound NMR DSC GC HPLC NMR DSC GC HPLC 1 Trichlorfon(DEP) 42 Glyphosate 2 Procymidone 43 Pyributicarb 3 EPN 44 trans -Permethrin 4 Etofenprox 45 Flufenoxuron 5 Propyzamide 46 NAC 6 Benthiocarb 47 Bensulide 7 Malathon 48 Chlorfluazuron 8 Fenobucarb(BPMC) 49 Silafluofen 9 Atrazine 50 Isoxathion 10 Echlomezol 51 Coumaphos 11 Pendimethalin 52 MCP 12 Bethrodine 53 Prochloraz 13 Chloroneb 54 Triadimefon 14 Simetryne 55 Diazinon 15 Thiuram 56 Flazasulfuron 16 Isoprothiolane 57 Imazosulfuron 17 Bifenox 58 Cyprodinil 18 Probenazole 59 Diflubenzuron 19 Pyridaphenthion 60 Famoxadone 20 2,4 -PA 61 Trifloxystrobin 21 DCMU 62 Tiadinil 22 Iprodione 63 Acephate 23 MCPP 64 Thiamethoxam 24 Fenitrothion(MEP) 65 Tolclofos-methyl 25 Dithiopyr 66 Warfarin 26 Mefenacet 67 Teflubenzuron 27 Bensulfuron-methyl 68 Linuron 28 Esprocarb 69 Flusulfamide 29 Mepronil 70 Cymoxanil 30 Thiophanate 71 Indanofan 31 Metalaxyl 72 Pyrazoxyfen 32 Vinclozoline 73 Thiacloprid 33 Asulam 74 Chlorfenapyr 34 Flutolanil 75 CNP-amino 35 Dimepiperate 76 Chloro IPC 36 Molinate 77 Methyl Thioacetohydroxamate 37 Cumyluron 78 Pyrimethanil 38 cis -Permethrin 79 Phosalone 39 Anilofos 80 XMC 40 PCP 81 Bifenthrin 41 Myclobutanil 82 Daminozide 18

19 化学標準における計量トレサ - ビリティのイノベーション 従来のトレーサビリティ体系 新たなトレーサビリティ体系 物質 A 物質 B 物質 C 物質 X 物質 Y 物質 Z 国家標準 基準物質 同じ物質による Traceability 1 H 数の測定による Traceability 物質 A 物質 B 物質 C 物質 X 物質 Y 物質 Z 二次標準 物質 α 物質 β 同じ物質による Traceability 1 H 数の測定による Traceability 物質 A 物質 B 物質 C 物質 X 物質 Y 物質 Z 実用標準 物質 A 物質 B 物質 C 物質 X 物質 Y 物質 Z

標準物質の種類20 本技術が社会にもたらしたもの標準物質の迅速な充実 検疫上等における食品残留農薬試験の信頼性確保による食品の安全性向上 180 160 140 食品残留農薬試験に用いる標準物質 * の整備状況 検疫所で常時モニタリングしている農薬 :200 種類 120 100 80 60 40 20 0 2 12 54 88 170 ( 予定 ) * 計量トレーサビリティの確保された標準物質

21 本技術が社会にもたらしたもの公定法 ( 食品添加物公定書 ) への適用 フルジオキソソニル ピリメタニルなどの農薬は 現在 ポジティブリスト制度により 食品衛生法における規制対象物質となっているが 米国等の要請により 食品添加物として指定することとなった 食品添加物公定書に新たに収載するにあたり 標準品の定量法を設定する必要があり 信頼性の高い分析値の得られる NMR 法が採用された (2011 年 8 月 31 日官報告示 ) 定量法本品約 20 mg 及び DSS-d 6 約 4 mg をそれぞれ精密に量り, 重水素化ジメチルスルホキシド 2ml を加えて溶かす この液を外径 5 mm の NMR 試料管に入れ, 密閉し, 次の測定条件でプロトン共鳴周波数 400 MHz 以上の装置を用いて 1 H NMR スペクトルを測定する DSS-d 6 のシグナルを 0 ppm とし,δ7.31~7.40,7.56 及び 7.85 ppm 付近のシグナルの面積強度をそれぞれ A 1 ( 水素数 3 に相当 ),A 2 ( 水素数 1 に相当 ) 及び A 3 ( 水素数 1 に相当 ) とするとき,(A 1 /3)/A 2 及び (A 1 /3)/A 3 及び A 2 /A 3 がそれぞれ 1.0 となることを確認する DSS-d 6 のシグナル面積強度を 9.000 としたときの A 1,A 2 及び A 3 の和を I とし, 水素数の和を N,DSS-d 6 の純度を P(%) とし, 次式によりフルジオキソニルの含量を求める ただし, 本品由来のシグナルに明らかな夾雑物のシグナルが重なる場合には, そのシグナル面積強度は定量に用いない 試薬 試液 DSS-d 6 C 6 H 9 D 6 NaO 3 SSi 国際単位系へのトレーサビリティが確保された 3-( トリメチルシリル )-1- プロパン -1,1,2,2,3,3-d 6 - スルホン酸ナトリウム

本技術が社会にもたらしたもの天然物中の有効成分の正確計量への応用 従来 今後 天然物 不正確な有効成分含量の推定 単離 正確な有効成分含量の推定 不十分な評価 有効成分 定量 NMR 法による正確な評価 日本薬局方における生薬標準品の定量法に採用予定 22