課税売上割合に準ずる割合 目次 1 概要と承認申請手続 1 2 適用単位と適用方法 3 3 従業員割合による計算 4 4 事業部門ごとの割合による計算 7 5 床面積割合による計算 9 6 取引件数割合による計算 10 消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書 11 消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書 12 参考 課税仕入れの用途区分の具体例 13 税理士熊王征秀 ( くまおうまさひで )
課税売上割合に準ずる割合 1 概要と承認申請手続 個別対応方式で仕入れに係る消費税額を計算する際に 共通対応分の税額を計算する場 合には 税務署長の承認を受けることにより 課税売上割合以外の合理的な割合 ( 課税売 上割合に準ずる割合 ) を採用することが認められています ( 消法 30 3) ( 消基通 11-5 - 7) 課税売上割合に準ずる割合とは 使用人の数又は従事日数の割合 消費又は使用する資産の価額 使用数量 使用面積の割合その他課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものの性質に応ずる合理的な基準により算出した割合をいう 具体的には 課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書 を提出し 承認が得られればその承認を受けた課税期間からこれを適用することができます なお 課税売上割合に準ずる割合は 個別対応方式により共通対応分の税額を計算する場合に適用するものですから たとえ承認申請を受けていたとしても 一括比例配分方式により仕入税額を計算する場合には 課税売上割合しか使えないことに注意してください この課税売上割合に準ずる割合は 事業の種類の異なるごと 費用の種類の異なるごと 事業場の単位ごとにバラバラに適用することができます また 本来の課税売上割合の計算方法を課税売上割合に準ずる割合として申請することにより 事実上 課税売上割合との併用も認められています ( 消基通 11-5 - 8) この課税売上割合に準ずる割合の適用承認を受けている事業者は実際には少ないようですが 消費税法基本通達 11-2 - 19( 共通用の課税仕入れ等を合理的な基準により区分した場合 ) と同様に 節税対策として今後活用していくべき規定であると思われます また いったん承認を受けた課税売上割合に準ずる割合の適用をやめる場合には 課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書 を提出すれば その提出日の属する課税期間から原則的な計算によることができます 課税売上割合に準ずる 適用を受けようとする課税期間中に 提 割合の適用承認申請書 提出して承認を受けます ( 申告期限 出 ではありません ) 時期 課税売上割合に準ずる 適用を受けることを止めようとする 割合の不適用届出書 課税期間中に提出します - 1 -
なお 税務署長は 承認した割合を不適当とする特別の事情が生じたと認めるときは その承認を取り消すことができます ( 消令 47 3) 承認取消の処分があった場合には その処分があった日の属する課税期間以後については その承認に係る課税売上割合に準ずる割合を用いることはできません ( 消令 47 5) ( 注 ) 課税売上割合に準ずる割合の承認申請については 一定の日までに承認又は却下の処分がなかった場合における みなし承認制度 は採用されていません 具体例物品販売業と不動産賃貸業 ( 賃貸物件はすべて居住用の貸室である ) を営んでいる事業者について考えてみましょう (1) 収入 1 商品売上高 ( 税抜 ) 4,000 2 家賃収入 6,000 10,000 (2) 支出 ( 税込 ) 1 商品仕入高 運送費など課税売上対応の課税仕入高 2,100 2 水道光熱費など共通対応の課税仕入高 1,050 3 貸家の修繕費など非課税売上対応の課税仕入高 525 3,675 円単位は省略表示しています ( 課税売上割合に準ずる割合の承認を受けない場合 ) (1) 課税売上割合 4,000 4,000 + 6,000 (2) 個別対応方式 = 40 % 4 4 2,100 + 1,050 40 % = 96 105 105 (3) 一括比例配分方式 4 3,675 40 % = 56 (4) (2)> (3) 96 105 ( 販売部門の従業員が 9 人 不動産賃貸部門の従業員が 1 人で 課税売上割合に準ずる割 合として 従業員の割合を採用することにつき 承認を受けた場合 ) (1) 個別対応方式 4 4 9 2,100 + 1,050 = 116 105 105 9+1 (2) 一括比例配分方式 4 3,675 40 % = 56 (3) (1)> (2) 116 105-2 -
2 適用単位と適用方法 課税売上割合に準ずる割合は 95 % 判定に用いる本来の課税売上割合のように 事業者が行う事業の全部について統一適用する必要はありません 上記 1で解説のとおり 次の1~3のような区分ごとの課税売上割合に準ずる割合で承認を受けることができます また 本来の課税売上割合の計算方法を課税売上割合に準ずる割合として申請することにより 事実上 課税売上割合との併用も認められています 区分内容 ( 具体例 ) 1 事業の種類 の異なるごと その事業者の営む事業の種類の異なるごとに区分して 事業の異なる ごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法 ( 具体例 ) 不動産業において 仲介部門は取引件数割合 賃貸部門は従業員割合 を採用するケース 2 事業に係るその事業者の事業に係る販売費 一般管理費その他の費用の種類の異販売費 一般なるごとに区分して 費用の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売管理費その他上割合に準ずる割合を適用する方法の費用の種類の異なるごと ( 具体例 ) 物品販売業において 水道光熱費は床面積割合 福利厚生費は従業員割合を採用するケース 3 事業に係るその事業者の事業に係る事業場の単位ごとに区分して 事業場の異な事業場の単位るごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法ごと ( 具体例 ) 本社経費については本来の課税売上割合 支店経費については支店単独の課税売上割合 ( 事業部門ごとの割合 ) を採用するケース ただし 課税売上割合に準ずる割合の承認は 上記 1~3の例示のように 事業者が行う事業の全体として それぞれに承認を受ける必要があります したがって 承認を受けようとする特定の割合が合理的であったとしても その他の割合が合理的でない場合やその割合の計算方法が不明確である場合には承認を受けることができません ( 仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A 基本的な考え方編 ( 問 21 22)) - 3 -
3 従業員割合による計算 従業員数に比例して支出されると認められる共通対応分となる消費税額については 従 業員割合で承認申請をすることができます ( 仕入控除税額の計算方法等に関する Q&A 基本的な考え方編 ( 問 23)) < 適用要件 > 従業員数を課税業務と非課税業務に区分できること 従業員数を区分する場合ですが 兼業従業員がいる場合において 課税業務に従事する従業員数を 総従業員数 - 非課税業務にのみ従事する従業員数 の算式により把握することは認められません ただし 非課税業務にのみ従事する従業員がゼロの場合でも 兼業従業員全員の従事日数が記録されており この記録により従業員ごとの従事日数の割合が計算できる場合には その従事日数の割合で兼業従業員数をあん分することが認められています したがって このようなケースでは そのあん分した従事日数の割合により 従業員割合を適用することができることとされています < 適用単位 > 本店 支店ごと又は事業部門ごとにそれぞれの従業員割合を適用することができます < 計算方法 > 従業員割合 = 課税業務にのみ従事する従業員数課税業務にのみ非課税業務にのみ + 従事する従業員数従事する従業員数 - 4 -
計算の基礎となる従業員の取扱い 区分原則例外 従業員数を把握課税期間の末日の課税期間の末日における従業員数が事業の実 する時期現況による態を反映しないものであるときは 課税期間 中の各月末の平均数値等によることができる 兼業従業員の取 従業員割合の計算 事務日報等により 兼業従業員全員の従事日 扱い に含めない 数が記録されており この記録により従業員ごとの従事日数の割合が計算できる場合には 非課税業務にの 従業員割合を採用その従事日数の割合で兼業従業員数をあん分 み従事する従業員することはできない することができる がゼロの場合 国外取引にのみ 従事する従業員の 取扱い 従業員割合の計算に含めない ( 例 ) 建設会社の海外工事部門の従業員など 国外取引にのみ従 事する従業員など 役常勤役員従業員割合の計算に含める 員非常勤役員従業員割合の計算に含めない アルバイト 従業員割合の計算 に含めない 従業員と同等の勤務状況にある場合には 従 業員割合の計算に含める - 5 -
計算例 1 課税期間末日における課税業務にのみ従事する従業員数 93 人 1 のうち国外取引にのみ従事する従業員数 3 人 1 のうち常勤役員数 5 人 1 のうち従業員と同等の勤務状況にあるアルバイト数 7 人 2 課税期間末日における非課税業務にのみ従事する従業員数 10 人 3 課税期間末日における課税業務と非課税業務の双方に従事する従業員数 20 人 3 の各従業員が課税業務にのみ従事した日数合計 従事日数合計 75 % 3 の各従業員が非課税業務にのみ従事した日数合計 従事日数合計 25 % 4 課税期間末日における総務 経理部門等の従業員数 12 人 4 のうち非常勤役員数 4 人 (1) 兼業従業員数を含めないで計算した場合 93 人 - 3 人 = 90 % (93 人 - 3 人 )+ 10 人 (2) 兼業従業員数を含めて計算した場合 93 人 - 3 人 + 20 人 75 % (93 人 - 3 人 + 20 人 75 %)+(10 人 + 20 人 25 %) (3) (1)>(2) 90 % = 87.5 % - 6 -
4 事業部門ごとの割合による計算 独立採算制の対象となっている事業部門や独立した会計単位となっている事業部門の共 通対応分となる消費税額については 事業部門ごとの割合で承認申請をすることができま す ( 仕入控除税額の計算方法等に関する Q&A 基本的な考え方編 ( 問 24)) < 適用要件 > 独立採算制の対象となっている事業部門や独立した会計単位となっている事業部門につ いてのみ適用が認められます < 適用単位 > 本店 支店ごと又は事業部門ごとに その事業部門に係る課税売上高と非課税売上高を 基礎として 課税売上割合と同様の方法により割合を求めることとされています < 計算方法 > 事業部門ごとの割合 = 事業部門ごとの課税売上高事業部門ごと事業部門ごとの + の課税売上高非課税売上高 ( 注 1) 課税売上割合に準ずる割合が 本来の課税売上割合よりも低いこととなる場合であっても その承認を受けた事業部門における課税売上割合に準ずる割合を使用しなければなりません ( 注 2) 特定の事業部門において 上記算式により計算した課税売上割合に準ずる割合が 95 % 以上になったとしても その事業部門から発生した課税仕入れ等の税額の全額を控除することはできません ( 消基通 11-5 - 9) 事業を行う部門以外の部門 ( 総務 経理部門等 ) の取扱い 原則 事業部門ごとの割合を採用することはできない 総務 経理部門等の共通対応分の消費税額全てを各事業部門の従業員数 例外 比率等適宜の比率により各事業部門に振り分けた上で 事業部門ごとの割 合を適用することもできる - 7 -
計算例 部門課税売上高非課税売上高従業員数共通対応の仕入税額 A 部門 8,000 2,000 40 人 350 B 部門 9,000 1,000 60 人 400 総務 経理部門 - - 10 人 100 合計 17,000 3,000 110 人 850 (1) 課税売上割合 17,000 17,000 + 3,000 (2)A 部門の課税売上割合 8,000 8,000 + 2,000 (3)B 部門の課税売上割合 9,000 9,000 + 1,000 = 85 % = 80 % = 90 % (4) 総務 経理部門について 本来の課税売上割合を適用するケース 円単位は省略表示 350 80 %+ 400 90 %+ 100 85 %= 725 共通対応分の仕入控除税額 (5) 総務 経理部門の共通対応分の消費税額を A 部門と B 部門の従業員数であん分す るケース 40 人 60 人 (350 + 100 ) 80 % +(400 + 100 ) 90 % 40 人 + 60 人 40 人 + 60 人 = 726 共通対応分の仕入控除税額 (6) (4)<(5) - 8 -
5 床面積割合による計算 専用床面積に比例して支出されると認められる共通対応分となる消費税額については 床面積割合で承認申請をすることができます ( 仕入控除税額の計算方法等に関する Q& A 基本的な考え方編 ( 問 25)) < 適用要件 > 床面積を課税業務と非課税業務に区分できること 床面積を区分する場合ですが 兼業に使用する床面積がある場合には 課税業務の専用床面積を 総床面積 - 非課税業務の専用床面積 の算式により把握することは認められません < 適用単位 > 本店 支店ごと又は事業部門ごとにそれぞれの床面積割合を適用することができます < 計算方法 > 床面積割合 = 課税業務にのみ使用する専用床面積課税業務にのみ使非課税業務にのみ使 + 用する専用床面積用する専用床面積 計算の基礎となる床面積の取扱い 区分原則例外 床面積を把握す課税期間の末日の課税期間の末日における床面積が事業の実態 る時期現況によるを反映しないものであるときは 課税期間中 の各月末の平均数値等によることができる 兼業床面積の取床面積割合の計算 3 の従業員割合のようなあん分計算は 扱いに含めない認められていないようである - 9 -
6 取引件数割合による計算 取引件数に比例して支出されると認められる共通対応分となる消費税額については 取 引件数で承認申請をすることができます ( 仕入控除税額の計算方法等に関する Q&A 基 本的な考え方編 ( 問 26)) < 適用要件 > 取引件数を課税業務と非課税業務に係る件数に区分できること < 適用単位 > す 本店 支店ごと又は事業部門ごとにそれぞれの取引件数割合を適用することができま < 計算方法 > 取引件数割合 = 課税業務に係る取引件数 課税業務に係る取引件数 + 非課税業務に係る取引件数 - 10 -
第平平号様式 消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書 収受印 成 月 日 フリガナ 税務署長殿 申 請 者 納税地 フリガナ 氏名又 名称及び代表者氏名 電話番号 印 記 お 消費税法第年 0 条第 項第 号 規定 課税売 割合 準 割合 適用 承認 を受け い 申請しま 採用しよう 計算方法 そ 計算方法 合理的 あ 理由 本来 課税 課税資産 譲渡等 対価 額 合計額 売 割合資産 譲渡等 対価 額 合計額 円 円 左記 割合自 成 算出期間至 成 月 月 日 日 参考事項 税理士署名押印 印 電話番号 記 計算方法 つ 消費税法第年 0 条第 項第 号 規定 よ 承認しま 成 第 月 号 日 税務署長 印 税務署処理欄 整理番号 申請 月日 部門番号 注意 こ 申請書 裏面 記載要領等 留意 通提出し く さい 印欄 記載し い く さい 月日入力処理 月 日 適用開始 月日 台帳整理 月 日 月 日
第平年号様式 収受印 消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書 成 年 月 日 届 フリガナ 納 税 地 出 フリガナ 電話番号 氏名又 税務署長殿 者名称及び 代表者氏名 印 記 おり 課税売上割合 準 る割合 適用をやめ い 消費税法第年 0 条第 項 規定 より届出しま 承認を受け いる計算方法 承認年月日 成年月日 こ 届出 適用開始日 成年月 日 参考事項 税理士署名押印 印 電話番号 税務署処理欄 整理番号 届出年月日 通信日付印年月日 部門番号 年月日入力処理年 月 日 確認印 注意 裏面 記載要領等 留意 上 記載し く さい 印欄 記載し い く さい 台帳整理 年 月 日
参考 課税仕入れの用途区分の具体例 仕 入 れ 課税仕入れ 1 そのまま他に譲渡される課税対象資産課税売上 2 課税対象資産の製造用にのみ消費し または _ 対応分使用される原材料 機械装置など 3 課税対象資産にかかる倉庫料 運送費 広告宣伝費など 4 課税対象資産の販売促進等のために得意先に配布する試供品 試作品等の課税仕入れ 共通対応分 非課税売上対応分 _ 1 土地の売却につき要した仲介手数料 2 販売用土地の取得にかかる仲介手数料 土地造成費用 3 保険診療のために必要な医薬品 医療器具等の仕入れ 4 有価証券の売却につき要した売買委託手数料 5 賃貸用住宅の建築費用 6 住宅の賃貸にかかる仲介手数料 免税仕入れ 非課税仕入れ 消費税の計算対象外 課税対象外支出