1. 非正規社員の現状と問題点について (1) 非正規社員の増加非正規社員の定義 1 契約期間の定めのある契約社員 2 正社員より労働時間の短いパートタイマーやアルバイト 3 直接雇用ではない いわゆる派遣労働者 非正規社員の現状 1 非正規社員の数は1990 代から徐々に増え始め 2013 年には36.7% の1 900 万人に達しています 特に15~24 歳の若年層で増加しています 平成 10 年までは総務省 労働力調査 ( 特別調査 ) (2 月調査 ) 長期時系列表 9 平成 15 年以降は総務省 労働力調査 ( 詳細結 果 ) ( 年平均 ) 長期時系列表 10 非正規社員増加における課題 1 雇用が不安定 非正規社員のうち約 4 割が就業期間 3 年未満 となっており 正社員に比べて不安定な雇用状態であることがわかります 業務スキルのレベルアップや 仕事へのモチベーションを高めることが難しくなるのは当然です 2 賃金が安い 一般的に非正規社員は昇給がないか 正社員に比較して少なく 正社員との賃金格差が拡大傾向にあり 社会全体の課題です 3 キャリアビジョンが描けない 雇用が不安定で賃金も少なく 単純労働ばかりで 自らの職業人としてのキャリアデザインを描けない働き方を続け 職業スキルが高まらないまま中高年を迎える労働者が増えることは 日本全体にとって大きな問題です
(2) 労働者人口の減少 一方労働人口は減少しつつあり 推計値では 2025 年には 6300 万人まで減少見込みとなっております 問題点 以下のような状況の中で今後どのように労働者を確保して 企業を活性化させるか? 条件 1 労働者人口が減少する 2 フルタイム労働者が減る 3 未熟練従業員が増える
2. 非正規社員の限定条件について (1) 正社員と非正規社員の差異の確認 正社員 ( 無限定社員 ) 非正規社員 正社員 1. 期間の定めなし 2. フルタイム ( 残業前提 ) 3. 直接雇用 4. 職務の限定なし 5. 勤務地の限定なし 非正規社員 1 期間の限定 2 労働時間限定 3 職務の限定 4 勤務地の限定 一つの案 非正規社員の期間限定をなくし 時間限定 職務限定 勤務地限定を認め 多様な正社員 ( 限定正社員 ) として採用処遇する (2) 非正規社員の限定条件を認める 多様な正社員 ( 限定正社員 ) の就労イメージ 1 勤務地限定正社員 育児や介護の事情で転勤が出来ない 地域活動や自らの ( 子の ) 教育の為転勤が出来ない 配偶者の仕事の関係で自分だけ転勤が出来ない 持病があり長期的な通院の為転勤が出来ない 2 職務限定正社員 高度専門キャリア形成を目的としてその職務限定することが合理的 資格が必要な業務で有資格者の職務限定することが合理的 3 時間限定正社員 ( 残業不可又は 6 時間から 8 時間未満での就労 ) 育児介護の事情 キャリアアップ, 自己啓発 病気を持ち通院の為
3. 多様な正社員をどのような位置付として考えるか 1 非正規社員から限定正社員へ限定要素を持つ人に正社員転換を示唆してもなれないことが多い限定条件を認めたうえで限定正社員として登用する ( 期間限定をなくし時給から社員の賃金をベースとした賃金決定 ) 2 正社員から限定正社員へ誰もがライフサイクルのなかでいつでも無限定に就労できるとは限らない介護等の限定要素が発生したときに 退職という選択しかないのでは本人にも会社にも損失である 限定要素が解決するまで一時的に限定社員となることが出来たなら辞めな くても続けられる
4. 多様な正社員の労働条件の検討 法的な制約は 2 点あります 1 待遇の差別的扱いの禁止 パートタイム労働法では 短時間労働者であることを理由として 賃金の決定 教育訓練の実施 福利厚生施設の利用その他の待遇について 差別的に取り扱うことを禁じています つまり 正社員と全く同じ立場で 同じ責任を持って仕事をしているパートタイマーがいた場合 正社員には賞与や退職金が出るがパートには出ない といった差別をしてはいけないと決められているのです 2 有期労働契約から無期労働契約への転換 2013 年 4 月に施行された改正労働契約法では 有期労働契約で 5 年を超えて雇用されることとなった者に 期間の定めのない無期労働契 約への転換申込権を認めました この二つの法律を特に念頭に置きつつ パートタイマー等の労働条件を検討していく必要があります 今後 多くの企業で教育 福利厚生も含めた処遇面の改善にも力を入れ 能力とモチベーションを高めて戦力化することが必要事項となってくることでしょう
5. 賃金格差の是正均等待遇と均衡待遇 問題点 なぜ均等若しくは均衡でなくてはならないのか この状況で均等 ( 均衡 ) 待遇がなければ 2 極化は避けられない 問題点 正社員からも限定社員からも納得できる範囲の処遇条件とは どの程度のものか 裁判例 臨時社員の賃金が同一労働 同一勤続年数の正社員の賃金の 80% 以下であ る場合には 労働基準法 3 条 ( 均等待遇 ) 4 条 ( 男女同一賃金の原則 ) の根
底にある均等待遇の理念に反し公序良俗違反となるし 正社員賃金の 8 割との 差額に相当する損害賠償請求を肯定したものがあります ( 丸子警報機事件 長野地上田支判例平成 8 年 3 月 15 日判決 ) 一方では その後の裁判例の中には 雇用形態の違いによる賃金格差は契約自由の範疇の問題であるとされたものもあります ( 日本郵便逓送事件 大阪地裁平成 14 年 5 月 22 日 ) (1) 均等待遇としての賃金決定 正社員の賃金テーブル ( パート社員の職級の 2 職級は正社員の 1 職級と 合致しているとする前提 ) 号棒 1 職級 2 職級 3 職級 4 号棒 5 職級 6 職級 ピッチ 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 1 200,000 216,000 240,000 272,000 312,000 360,000 2 202,000 219,000 244,000 277,000 318,000 367,000 3 204,000 222,000 248,000 282,000 324,000 374,000 4 206,000 225,000 252,000 287,000 330,000 381,000 5 208,000 228,000 256,000 292,000 336,000 388,000 6 210,000 231,000 260,000 297,000 342,000 395,000 7 212,000 234,000 264,000 302,000 348,000 402,000 8 214,000 237,000 268,000 307,000 354,000 409,000 9 216,000 240,000 272,000 312,000 360,000 416,000 10 218,000 243,000 276,000 317,000 366,000 423,000 1. 均等待遇 パート社員の賃金テーブル 号棒 1 職級 2 職級 3 職級 1 950 1,156 1,249 2 960 1,168 1,266 3 970 1,179 1,283 4 980 1,191 1,301 5 990 1,202 1,318 6 1000 1,214 1,335 7 1010 1,225 1,353 8 1020 1,237 1,370 9 1030 1,249 1,387 10 1040 1,260 1,405 ( 均等待遇 ) 1ケ月の平均労働時間 173 時間とする 正社員 1 職級 1 号俸 200,000 円パート 2 職級 1 号俸 200000 173 =1156 円
2. 均衡待遇 号棒 1 職級 2 職級 3 職級 1 900 1,040 1,124 2 910 1,051 1,139 3 920 1,061 1,155 4 930 1,072 1,171 5 940 1,082 1,186 6 950 1,092 1,202 7 960 1,103 1,217 8 970 1,113 1,233 9 980 1,124 1,249 10 990 1,134 1,264 ( 均衡待遇 ) 1ケ月の平均労働時間 173 時間とする 正社員 1 職級 1 号俸 200,000 円パート 2 職級 1 号俸 200000 173 =1156 円 1156 円 0.9=1040 円 6 非正規社員から ( 限定 ) 正規社員へ移行を促進するには 問題点非正規で一番多いパート労働者の職級制度で正社員転換を促進するには パート社員も正社員も 会社で行う仕事を調査して 低位から高位に役割的 に等級として区分する 非正規社員の労働意欲と 技能や技術をもちあげ 社員登用しやすくする仕組 みとして利用する 正社員 ( 限定正社員 ) 職務要件 6 等級 職能等級基準 リーダーとして単独もしくは数名の管理職を指導しながら知識 技能 判断等を要する職務を遂行する パートタイマーの職務要件 職能区分職能等級基準 3 級 2 級 1 級 定形的な業務処理のための基礎的な知識や技術を持ち上長の指揮命令を待たずとも業務を正確に 遂行ができる 上長の指示のもとで 指示された作業が出来る 上長の指示のもとで 指示された補助的な作業が出来る 5 等級 4 等級 3 等級 2 等級 1 等級 一般的な監督のもとに リーダーとして単独もしくは数名の補助者を指導しながら知識 技能 判断等を要する職務を遂行する 内在するリスクに対して 改善策を立案でき 自ら新たな管理手法を考案し 実行できる 実行計画を立案遂行でき 目的達成を念頭にして下位者への指導育成ができる お客様からのクレーム トラブルに対して迅速的確に報告ができる 定形的な業務処理のための基礎的な知識や技術を持ち上長の指揮命令を待たずとも業務を正確に 遂行ができる 上長の指示のもとで 指示された作業が出来る
このような職務要件は パートタイマーを正社員 ( 限定正社員 ) に登用しやすくし またパートタイマーの不足する技術や職能を明確にしてスキルアップを図りやすく する施策であると考えます 施策就業規則条文 パートタイマーが 2 職級以上となり〇ケ月以上経過して 直近の評価が B 評価以上の 場合で 本人が正社員または限定社員を希望した場合は会社は面接試験を行い正社員 または限定社員に登用する まとめ 非正規社員が増えて正規 非正規という呼び方も不自然になろうかという状況下で 将来的には自分のライフスタイルに合わせて必要とする時間や場所で必要と考え る仕事に就くことを 労働者自らが選択する時代になると考えられます その中で過去に確立された正社員という定義に固執することが制度疲労として弊 害が生じてこないでしょうか しかし全て非正規社員でまかなうという方向性もワー キングプワーの問題や企業のコアとなる理念や技術の伝承が危ぶまれます そこで同一労働同一賃金の土台の上に限定条件を認めた多様なる正社員を受け 入れることが可能な制度づくりが求められているかと考えます