スクールカウンセラー活用における課題とその対応 県子どもと親のサポートセンター研究指導主事佐藤浩 1 研究のねらい平成 17 年度現在, 県内全公立中及び高等 30 へのスクールカウンセラー配置事業が実施されている 配置においては, 効果的な活用事例が見られる一方で, 対応にはかなりの温度差も見られ, 活用が十分にできていない例もある また, カウンセラー側にも, における活動という点で様々な課題があるように感じられる こうした実態から, スクールカウンセラー配置事業の実施に際しての, 側 カウンセラー側双方が抱える課題を整理し, その対応について考察することによって, 効果的なスクールカウンセラー活用のための資料を提供したい ( スクールカウンセラーは以下 と表記 ) 2 研究の内容 <アンケート調査 > 平成 17 年 11 月 : 対象 356 / 回答 354 : 対象者 356 人 / 回答者 349 人 調査 1 23 項目について4 件法 () による充実度調査を行った 各項目における+ 評価 () の結果は以下の通りである 項 目 1 の活動についての職員の共通理解 99% 2 着任時の打ち合わせ時間 97% 74% 3 の担当職員の設置 98% 84% 4 の務分掌上の位置づけ 82% 7 5 職員会議への参加 17% 21% 6 生徒指導部会議 教育相談部会議等への参加 52% 7 相談時間以外の子どもへの関わり ( 給食 清掃等 ) 79% 74% 8 全集会等でのの紹介 9 74% 9 広報紙等でのの紹介 95% 77% 10 保護者への周知 ( 教育相談の日時 方法等 ) 94% 61% 11 児童 生徒への周知 ( 教育相談の日時 方法等 ) 97% 67% 12 専用の相談室の設置 10 98% 13 職員室での机 椅子の設置 9 86% 14 相談室用専用電話の設置 63% 65% 15 相談件数 相談状況等の管理職への報告 95% 85% 16 による便り等の発行 75% 74% 17 教職員との情報共有 98% 97% 18 教職員との信頼関係 協力関係 97% 92% 19 他機関へつなぐ際の長の承認 96% 9 20 がに期待することの明確化 97% 75% 21 児童 生徒 保護者への効果 95% 93% 22 全体に対する効果 95% 83% 23 の対応 /の活動それぞれに対する満足度 93% 87% 調査 2 選択肢法により効果的活用のために障害になっていると考える事項を調査した 上位選択の結果は以下の通りである : 配置時間 51% への予算措置 23% カウンセリングへの抵抗感 12% 配置事業の周知 4% : 配置時間 36% への予算措置 15% カウンセリングへの抵抗感 13% 配置事業の周知 11% の組織内での位置付け 11% 教職員の理解 7% -1-
< の課題 > 1 を受け入れるに当たっての, 職員の共通理解 内の位置づけ 担当職員の選任等が充分とは感じられていない 一人職種であること, 教職員ではないこと, 活動時間が限られていること等を考えると, より丁寧な対応が望まれる ( 項目 1 2 3 4) 2 配置事業や 本人に関する紹介 広報活動をよりきめ細かく行う必要がある は現状で充分との認識であるが,の満足度とはかなりの差がある ( 項目 8 9 10 11) 3 がに何を期待し, どのような活動を望むかについて, 担当者も含めて充分に話し合いたい 側は伝えたつもりでも, 側は不明確であると捉えている傾向にある ( 項目 20) 4 環境整備はかなり充実してきている 各地域の予算との兼ね合いもあるが, 専用電話の設置が進むと更に望ましい ( 項目 12 13 14) <の課題 > 1 社会に積極的に溶け込む姿勢が求められる 相談活動以外にも児童生徒とふれあう時間を持ったり, 相談室だより 等で情報を発信したりすることも望まれる ( 項目 7 16) 2 受け身的にならず, より主体的に文化 教員文化を理解する必要がある の経営方針や活動内容等, 不明な点があれば進んで話し合いの場を求めるなどの働きかけが望まれる ( 項目 20 23) 3 各種会議への参加は, 出勤曜日との兼ね合いで難しい面もある 不可能な場合は, 内の状況が把握できるような伝達システムの構築を工夫したい ( 項目 5 6) 3 研究のまとめ < 今後の対応 > 1 配置時間の拡大や予算措置を求める声が多い 展望としてはその通りであるが, 現状の週 8 時間の中でどのように有効活用するかを前提として考えたい その点, よりもの方が改善の視点が多様である ( 調査 2) 週 8 時間ではしょうがない から 週 8 時間をどう生かすか へ発想の転換が必要である 2 上記項目 1 の制約を考えると, すべての相談業務を のみに委ねることは無理がある むしろ日々児童生徒に接する教職員へのコンサルテーションや事例検討会 研修会の企画等を中心に活動内容を見直すことも必要である 3 現状では, の年齢構成や過去の臨床経験等様々である また, 県内全域に配置するためには, 地理的な制約も大きい こうした中で の資質を確保し活動を充実させるためには, の資質向上に向けた研修が不可欠である 特に, 経験の浅い や臨床が初めての への研修の充実が重要である 4 有効活用のために何よりも基本となることは, 管理職も含めた教職員と との相互理解に尽きる 互いの立場 役割 専門性を認め, 尊重し合う中からこそ, 児童生徒への望ましい働きかけが生じる は外部人材で専門性を有している一方で, チームの一員として経営に参画する立場にもある この外部性と内部性を融合するための場や機会が充分に持たれているでは, 有効な活用が展開されている 今回の調査では, 多くので協力体制が整い, 互いの満足度も高い数値となっているが, なお一層, 内における の位置づけ 役割を明確にし, 積極的な関わりを通して相互の信頼感を高め, 以ての教育相談機能の充実に資することが望まれる -2-
スクールカウンセラーの有効活用のために スクールカウンセラーの活動に係る アンケート調査 集計報告 県子どもと親のサポートセンター 支援事業部
1 調査のねらい平成 17 年度現在, 県内全公立中及び高等 30 へのスクールカウンセラー配置事業が実施されている 配置においては, 効果的な活用事例が見られる一方で, 対応にはかなりの温度差も見られ, 活用が十分にできていない例もある また, カウンセラー側にも, における活動という点で様々な課題があるように感じられる 本調査によって, スクールカウンセラー配置事業の実施に際しての, 側 カウンセラー側双方が抱える課題を整理し, その対応について考察することによって, 効果的なスクールカウンセラー活用のための資料とする 2 調査の方法全配置及びスクールカウンセラーに下記のアンケート調査を実施 ( 平成 17 年 11 月 ) (1) 調査 1 23 項目について 4 件法 () による充実度調査 (2) 調査 2 選択肢法による効果的活用のために障害になっていると考える事項の調査 (3) 調査 3 自由記述による改善希望事項の調査 3 調査結果 ( : 対象 356 回答 354 / : 対象者 356 人回答者 349 人 ) (1) 調査 1 Q1 の活動について全職員で共通理解が図られている % 50.8 47.7 0.8 0.0 0.6 19.5 60.2 17.2 2.3 0.9 2 の + 評価は 98.5% だが, は 79.7% である 特に では,31.3 ポイントの差があり, が認識している程には は充分とは感じていない Q2 着任の際, ととの打ち合わせ時間が充分に取られた % 46.9 50.3 2.8 0.0 0.0 28.9 44.7 20.9 5.4 0.0 2 の+ 評価は97.2% だが,は73.6% である 特にでは,の方が18.1ポイント高い 不充分さを感じているが1/4もいることは課題である Q3 の担当職員が決まっている 1
% 76.3 21.5 1.7 0.6 0.0 53.6 30.1 11.2 4.3 0.9 2 の + 評価は 97.8% だが, は 83.7% である 本来同程度の結果が見込まれる項目だけに, 認識の差がどこから生じるのか, 考える必要がある Q4 が務分掌上, 組織内に位置づけられている % 58.5 24.0 9.3 8.2 0.0 37.0 32.7 14.9 12.9 2.6 2 の + 評価は 82.5% だが, は 69.7% である 本項目は有効活用の重要なポイントの一つとなるだけに,3 割の が実感を持っていないことは大きな課題である Q5 が職員会議に参加している % 6.5 10.2 16.9 66.1 0.3 8.0 12.6 21.5 57.3 0.6 2 ともに + 評価は 2 程度と低い 参加させたくても, 出勤曜日との兼ね合いで参加不可能という所が多い Q6 が定例会議 ( 生徒指導部会 教育相談部会等 ) に参加している 2
% 41.0 19.2 22.6 16.4 0.8 31.8 19.8 14.3 33.2 0.9 2 若干の評価が高めの傾向にあるが, およそ半数が参加している状況にある 出勤日に会議日を合わせる等対応の努力も見られるので, どのでも実施したい Q7 相談以外の時間 ( 給食 清掃等 ) も積極的に子どもに関わっている % 45.2 33.6 15.5 4.8 0.8 33.8 40.7 20.6 3.2 1.7 2 ともに 弱の + 評価である ができるだけ積極的に子どもとふれあう機会を持つことは重要であり,1/4 程度の が - 評価である点は課題である Q8 全集会等での紹介がされた % 73.7 15.8 4.2 5.6 0.6 51.9 21.8 9.7 16.0 0.6 2 10 2 の + 評価は 89.5% だが, は 73.7% である 特に では,10.4 ポイントも差があり, が認識している程には は充分とは感じていないのが実態である Q9 広報 ( 便り 年便り ) 等での紹介がされた % 3
76.3 19.2 4.0 0.3 0.3 47.3 29.8 15.5 6.9 0.6 2 10 2 の + 評価は 95.5% だが, は 77.1% である 特に では 29 ポイントの差がある 実際 に便りが渡っているのか等確認し, 認識のずれの要因を考えたい Q10 が保護者に対し教育相談の日時 方法等の周知に努めている % 66.1 28.0 5.4 0.6 0.0 26.4 34.4 33.0 5.7 0.6 2 の + 評価は 94.1% だが, は 60.8% である 特に では,39.7 ポイントの差がある としての教育活動の伝達不足が伺える Q11 が児童 生徒に対し教育相談の日時 方法等の周知に努めている % 74.3 23.2 2.5 0.0 0.0 26.6 40.7 28.7 3.7 0.3 2 の + 評価は 97.5% だが, は 67.3% である 特に では,47.7 ポイントの差があり, 保護者への周知と同様にと との間に大きな認識の差がある Q12 専用の相談室が設置してある % 96.6 3.1 0.0 0.0 0.3 4
88.3 10.0 1.1 0.6 0.0 10 無関係 2 ともに 98% を超える + 評価であり, ほぼ設置はできていると言える 若干の認識の違いは, 遮音性や設置場所等の環境の問題と考えられる Q13 職員室にの机 いすが設置してある % 84.5 5.6 2.8 7.1 0.0 72.5 13.8 3.2 10.0 0.6 10 無関係 2 ともに 9 程度の + 評価であり, ほぼ設置はできていると言えが, 教職員との融合を考えた際には, より 10 に近い設置が望まれる Q14 用 ( 相談室用 ) の専用電話が設置してある % 56.5 6.5 1.7 34.7 0.6 54.4 10.9 3.7 30.4 0.6 2 およそ 強の設置状況である 予算との兼ね合いもあるが, 相談の機密性や特殊性を考慮すると, より高い設置率が望ましい Q15 相談件数 相談状況等を担当職員 管理職等へ定期的に報告している % 63.6 31.6 4.0 0.0 0.8 49.9 35.5 9.2 4.6 0.9 5
2 の + 評価は 95.2% だが, は 85.4% である 本来同程度の結果が見込まれる項目だけに, 認識の差がどこから生じるのか, 考える必要がある Q16 による たより ( 相談室だより等 ) を発行している % 56.8 18.1 9.0 16.1 0.0 50.1 23.5 12.3 13.8 0.3 2 ともに 75% 程度の + 評価である 周知の一環として, また情報発信という観点からも, の努力を期待したい項目である Q17 相談内容について, 必要に応じて教職員と情報の共有ができている % 69.5 28.2 2.0 0.3 0.0 64.2 33.2 2.0 0.3 0.3 2 ともに 97% 超の + 評価である お互いに共有できることは, 信頼感と集団守秘の考えが高まってきたものと考えられる Q18 教職員とが互いの信頼関係のもと, 協力的に活動できている % 67.2 29.9 2.3 0.3 0.3 39.3 52.7 6.9 0.6 0.6 6
2 ともに 9 以上の + 評価である 内訳で, は が多いのに対して, は が多い点が課題である より満足度の高い協力が望まれる Q19 他機関へ相談をつなぐ際には, 長の承認を得ている % 78.8 17.5 2.3 0.8 0.6 58.2 31.5 6.0 0.6 3.7 2 の + 評価は 96.3% だが, は 89.7% である 特に では,20.6 ポイントの差がある のチェック体制の整備と の組織の一員としての自覚が望まれる Q20 がに求めている ( 期待している ) ことが明確になっている % 48.9 48.3 2.5 0.3 0.0 21.2 54.2 21.2 2.6 0.9 2 の + 評価は 97.2% だが, は 75.4% である 特に では,27.7 ポイントも差がある の考えをもっと に伝えていく必要がある Q21 児童 生徒 保護者に対してよい効果が得られた / よい関わりを持つことができた % 47.2 48.0 4.8 0.0 0.0 25.2 67.6 6.9 0.0 0.3 7
2 ともに 9 以上の + 評価である 内訳で, は が多いのに対して, は が多い の謙遜もあるが, より自信を持った活動が望まれる Q22 全体にとってよい効果が得られた / 役立つことができた % 55.6 39.3 5.1 0.0 0.0 18.3 65.0 15.2 0.9 0.6 2 の + 評価は 94.9% だが, は 83.3% である 特に では,37.3 ポイントの差がある はまだまだやれることがあると認識している部分が大きい Q23 総合的に判断しての活動に満足している / の対応に満足している % 62.7 30.2 5.1 0.8 1.1 33.2 53.6 9.5 1.1 2.6 2 の+ 評価は92.9% だが,は86.8% である 特にでは,29.5ポイントの差があ り,の満足度は低い 要因についてより細かく分析していきたい部分である (2) 調査 2 Q24 より効果的な活動をするために, 障害になっている事項は何だと考えるか < > 1 配置時間が少ないこと 331 2 への予算措置 ( 備品購入等 ) が無いこと 151 3 子どもや保護者のカウンセリングに対する抵抗感があること 78 4 子どもや保護者に 配置事業の周知が徹底していないこと 25 8
5 の立場がの中で組織的に位置付けられていないこと 21 6 が ( 教育現場 ) のシステムを理解していないこと 17 7 が自分の専門性に固執していること 12 8 教職員がの専門性を理解していないこと 11 9 教職員が 配置事業の意義を理解していないこと 7 10 が 教職員に対して批判的なこと 0 3 4 2 5 9 6 7 8 10 1 2 3 4 5 1 6 7 8 9 10 < > 1 配置時間が少ないこと 252 2 への予算措置 ( 備品購入等 ) が無いこと 105 3 子どもや保護者のカウンセリングに対する抵抗感があること 89 4 子どもや保護者に 配置事業の周知が徹底していないこと 80 5 の立場がの中で組織的に位置付けられていないこと 74 6 教職員が 配置事業の意義を理解していないこと 46 7 教職員がの専門性を理解していないこと 35 8 管理職 ( 長 教頭 ) が 配置事業の意義を理解していないこと 11 9 管理職 ( 長 教頭 ) がの専門性を理解していないこと 5 10 ( 教育現場 ) がに対して批判的なこと 2 10 5 4 6 3 7 9 8 2 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 4 課題と対応 < の課題 > 1 を受け入れるに当たっての, 職員の共通理解 内の位置づけ 担当職員の選任等が充分とは感じられていない 一人職種であること, 教職員ではないこと, 活動時間 が限られていることなどを考えると, より丁寧な対応が望まれる 2 配置事業や 本人に関する紹介 広報活動をよりきめ細かく行う必要がある は現状で充分との認識であるが, の満足度とはかなりの差がある 3 が に何を期待し, どのような活動を望むかについて, 担当者も含めて充分に 9
話し合いたい 側は伝えたつもりでも, 側は不明確であると捉えている傾向に ある 4 環境整備はかなり充実してきている 各地域の予算との兼ね合いもあるが, 専用電話の設置が進むと更に望ましい < の課題 > 1 社会に積極的に溶け込む姿勢が求められる 相談活動以外にも児童生徒とふれあう時間を持ったり, 相談室だより 等で情報を発信したりすることも望まれる 2 受け身的にならず, より主体的に文化 教員文化を理解する必要がある の経営方針や活動内容等, 不明な点があれば進んで話し合いの場を求めるなどの働きかけ が望まれる 3 各種会議への参加は, 出勤曜日との兼ね合いで難しい面もある 不可能な場合は, 内の状況が把握できるような伝達システムの構築を工夫したい < 今後の対応 > 1 配置時間の拡大や予算措置を求める声が多い 展望としてはその通りであるが, 現状の週 8 時間の中でどのように有効活用するかを前提として考えたい その点, より も の方が改善の視点が多様である 週 8 時間ではしょうがない から 週 8 時間をどう生かすか へ発想の転換が必要で ある 2 1 の制約を考えると, すべての相談業務を のみに委ねることは無理がある むしろ日々児童生徒に接する教職員へのコンサルテーションや事例検討会 研修会の企画等 を中心に活動内容を見直すことも必要である 3 現状では, の年齢構成や過去の臨床経験等様々である また, 県内全域に配置するためには, 地理的な制約も大きい こうした中で の資質を確保し活動を充実させ るためには, の資質向上に向けた研修が不可欠である 特に, 経験の浅い や 臨床が初めての への研修の充実が重要である 4 有効活用のために何よりも基本となることは, 管理職も含めた教職員と との相互理解に尽きる 互いの立場 役割 専門性を認め, 尊重し合う中からこそ, 児童生徒へ の望ましい働きかけが生じる は外部人材で専門性を有している一方で, チー ムの一員として経営に参画する立場にもある この外部性と内部性を融合するため の場や機会が充分に持たれているでは, 有効な活用が展開されている 今回の調査では, 多くので協力体制が整い, 互いの満足度も高い数値となってい るが, なお一層, 内における の位置づけ 役割を明確にし, 積極的な関わりを通 して相互の信頼感を高め, 以ての教育相談機能の充実に資することが望まれる 10