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出典 : 1) Budavari, S.(Ed), The Merck Index Ver.12:2 2) 神奈川県化学物質安全情報提供システム (kis-net) 3) 独立行政法人製品評価技術基盤機構 (NITE) 調査 (1) 分析法の概要 1 分析法 1,3- ジクロロ -5,5- ジメチルイミダゾリジン -2,4- ジオン ( 以下 1,3- ジクロロ -5,5- ジメチルヒダントイン :DCDMH と略す ) は水溶液中で即時分解が認められ 分析法を確立できなかった 本報告では DCDMH の分解生成物として確認された 5,5- ジメチルイミダゾリジン -2,4- ジオン ( 以下 5,5- ジメチルヒダントイン : DMH と略す ) を分析する方法 ( 注 1) について これまでに得られた知見を示す 水質試料に酢酸アンモニウムを添加し DCDMH の分解物である DMH を生成させ ( 注 2) 試料を固相カートリッジ (Sep-Pak PS2 と Sep-Pak AC2 を連結したもの ) に通水する PS2 を取り外し AC2 を逆方向にしてアセトンを通液し DMH を溶出する 窒素気流下で濃縮 定容後 LC/MS/MS-SRM(ESI-Positive) 法で定量する (2) 試薬 器具 試薬 5,5-ジメチルヒダントイン : 東京化成工業製 >98 1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン : 和光純薬製 >96 メタノール : 関東化学製 LC/MS 用 >99.8 アセトン : 残留農薬試験 PCB 試験用 3 倍濃縮酢酸アンモニウム : 試薬特級ギ酸 : 試薬特級精製水 :Milli-Q 水 (JIS K 557(1998) に規定される種別 A4 と同等以上の質のもの ) 固相カートリッジ :Sep-Pak PS2 265 mg Waters 製 Sep-Pak AC2 4 mg Waters 製 標準液の調製 標準原液 DMH5 mg を精秤し メタノール 1 ml に溶解して 5. mg/ml の標準原液を調製する 443

検量線用標準液 DMH 標準原液を 5 メタノール水溶液で順次希釈して 3.~1 ng/ml の濃度範囲で検量線用標準液を調製する また 高濃度検量線用標準液として 1 ng/ml の範囲まで調製する DCDMH 溶液 DCDMH5 mg を精秤し メタノール 1 ml に溶解して 5. mg/ml の標準液を調製する 標準原液を 5 メタノール水溶液で希釈して 各試験で使用する溶液を調製する 器具 メスシリンダー メスフラスコ ピペット類 マイクロシリンジ 1 ml 比色管 ガラス製注射筒 (1 ml) GL-SPE 濃縮管 1. & 2. & 5. メス /6 ml :GL サイエンス製 Sep-Pak コンセントレーター :Waters 製 (3) 分析法 試料の採取及び採取試料の前処理 環境省 化学物質環境実態調査実施の手引き ( 平成 21 年 3 月 ) に従う 試料採取後に 1 mmol/l になるように酢酸アンモニウムを添加してから ( 注 2) 試験液の調製 を行う 試験液の調製 ( 注 3) 水質試料 1 ml をあらかじめコンディショニングをした固相カートリッジ (Sep-Pak PS2 を上段 Sep-Pak AC2 を下段に連結したもの : 注 4) に 1 ml/ の流速で通水する 試料の入っていた容器は.1 ギ酸水溶液 2 ml 次いで精製水 2 ml で洗浄し 洗液も通水する 通水後 PS2 は取り外し AC2 に注射筒で空気を通気して間隙水を除去する AC2 を逆方向にしてアセトン 6 ml で受け器の濃縮管に DMH を溶出し 窒素気流下で約.5 ml まで濃縮する 5 メタノール水溶液で 2 ml に定容して これを試験液とする 空試験液の調製 試料と同じ量の精製水を用い 酢酸アンモニウムを添加してから 試験液の調製 の項に従って操作し 得られた試験液を空試験液とする 測定 LC/MS 条件 LC 使用機器 : Waters 製 Alliance 2695 444

カラム : GL Sciences 製 Inertsil ODS (2.1 mm 25 mm, 3 μm) 移動相 : A: 精製水 B: メタノール 1. A:B = 4:6 カラム流量 :.2 ml/ カラム温度 : 3 C 試料注入量 : 1 μl MS 使用機器 : Waters 製 Quattro micro API キャピラリー電圧 : 4. kv コーン電圧 : 3 V コリジョンエネルギー : 15 ev ソース温度 : 12 C デゾルベーション温度 : 45 C コーンガス : N2 5 L/hr デゾルベーションガス : N2 75 L/hr イオン化法 : ESI(+) 測定モード : SRM モニターイオン (m/z) : 129. > 58. ( 定量用 ) 129. > 11. ( 確認用 ) 検量線 5 種類以上の検量線用標準液 1 μl を LC/MS/MS に導入して分析する 5 メタノール水溶液の溶媒ブランク試験液からは対象物質のピークが検出されないことを確認する 対象物質の濃度と得られたピーク面積値から DMH の検量線を作成する 得られた対象物質のピーク面積値から検量線を作成する 寄与率が.995 以上であることを確認する 各測定点における計算濃度と 実際に添加した濃度との 偏差が ±15 以下であることを確認する 定量 試験液 1 μl を LC/MS/MS に導入して分析する 得られた対象物質のピーク面積値から検量線を基にして DMH 濃度を求める 濃度の算出 試料水中の DMH 濃度 C DMH (ng/l) は次式により算出する C DMH (ng/l) = (Cs-Cb) E / V Cs : 検量線から求めた対象物質濃度 (ng/ml) Cb: 空試験液の対象物質濃度 (ng/ml) E : 試験液量 (ml) 445

V : 試料水量 (L) 本分析法に従った場合 以下の数値を使用する E = 2. (ml) V =.1 (L) 装置下限値 (IDL) 本分析に用いた LC/MS/MS の DMH 及び分子量で換算した場合の DCDMH の IDL を次に示す ( 注 5) 物質名 表 1 IDL の算出結果 IDL 試料量 最終液量 IDL 試料換算値 (ng/ml) (L) (ml) (ng/l) DMH.71.1 2. 14 * DCDMH 換算値 1.1.1 2. 22 *:DCDMH の M.W. 197.1 DMH の M.W. 128.13 から当量換算した値 注解 ( 注 1) 分析値は 5,5- ジメチルヒダントインを分解物として生成する可能性がある 3- ブロモ -1- クロロ - 5,5- ジメチルヒダントイン 1,3- ジブロモ - 5,5- ジメチルヒダントイン等の類似化合物由来のもの 及び最初から存在する 5,5- ジメチルヒダントインの分析値を合計した値となる ( 注 2) 残存している DCDMH の分解 ( イミダゾリジン骨格の 1 位と 3 位の 2 つの塩素を水素に置換 ) を促進するために 1 mmol/l になるように酢酸アンモニウムを試料水に添加する 保存性試験の結果から 添加後 4 時間で DMH まで分解することを確認している ( 注 3) 分析法の検討が中止となったため 測定方法の検出下限値 (MDL) や環境水での添加回収率等を求めていない これまでに検討した範囲で 試験液の調製方法や分析法のフローチャート等を記載する ( 注 4) 固相カートリッジは それぞれアセトン 1 ml 精製水 2 ml でコンディショニングしたものを使用する ( 注 5)IDL は 化学物質環境実態調査実施の手引き ( 平成 21 年 3 月 ) に従って 表 2 のとおり算出した IDL 測定時のクロマトグラムを図 1 に示す 446

表 2 IDL の算出結果 対象物質名 DMH 試料量 (L).1 最終液量 (ml) 2. 注入液濃度 (ng/ml) 3. 装置注入量 (μl) 1 結果 1 (ng/ml) 3.12 結果 2 (ng/ml) 2.93 結果 3 (ng/ml) 3.6 結果 4 (ng/ml) 3.42 結果 5 (ng/ml) 3.14 結果 6 (ng/ml) 3.33 結果 7 (ng/ml) 3.37 平均値 (ng/ml) 3.195 標準偏差 (ng/ml).1822 IDL (ng/ml)*.71 IDL 試料換算値 (ng/l) 14 S/N 比 13 CV () 5.7 *IDL= t (n-1,.5) σ n-1 2 1328_218 1 3.64 F1:MRM of 2 channels,es+ 5.451e+3.91 3.2 4.16 5.31 6.62 8.59 9.15 2. 4. 6. 8. 図 1 DMH の IDL 算出時のクロマトグラム (3. ng/ml 標準液 ) 2 解説 DCDMH の分解性について DCDMH( 図 2) の水溶液中のマススペクトルで 塩素の 1 つが水素に置換したと考えられる化合物 ( 図 3: 以下 モノクロロ体と略す ) 塩素が 2 つとも水素に 447

置換したと考えられる DMH( 図 4) のイオンが観測された DCDMH 標準液調製直後でも モノクロロ体のイオン強度はジクロロ体 (DCDMH) の分子イオンよりも大きく 水溶液中での即時分解が予想された Cl Cl H H H 3 C H 3 C N O H 3 C H 3 C N O H 3 C H 3 C N O H 3 C H 3 C N O N N N N O Cl O H O Cl O H 図 2 DCDMH ( ジクロロ体 ) 図 3 モノクロロ体 図 4 DMH DCDMH 標準物質のマススペクトル DCDMH 標準物質のマススペクトルを図 5 に DCDMH 及び水溶液中で生成したと考えられるモノクロロ体 DMH をプレカーサーイオンとしたときのプロダクトイオンのマススペクトルを図 6~8 に示す また 各化合物のモノアイソトピック質量を表 3 に示す 1322DCDMH_MS1M2P 36 (.363) 1 163 Scan ES+ 8.66e7 モノクロロ体 [M+H] + DCDMH [M+H] + DMH [M+H] + 165 197 199 127 129 m/z 1 11 12 13 14 15 16 17 18 19 2 21 22 図 5 DCDMH 標準液のマススペクトル 13221DCDMH_MSMS1M2P 28 (.282) 92 1 Daughters of 197ES+ 1.3e7 185 169 m/z 6 8 1 12 14 16 18 2 22 図 6 DCDMH 標準液中の分子イオン ( ジクロロ体 ) をプレカーサーイオン (m/z 197.) としたときのプロダクトイオンのマススペクトル 448

13221DCDMH_MSMS1M4P 31 (.312) 92 1 Daughters of 163ES+ 8.25e6 58 69 135 163 m/z 6 8 1 12 14 16 18 2 22 図 7 DCDMH 標準液中で生成したモノクロロ体をプレカーサーイオン (m/z 163.) としたときのプロダクトイオンのマススペクトル 13221DCDMH_MSMS1M6P 29 (.292) 58 1 Daughters of 129ES+ 1.9e6 129 11 m/z 6 8 1 12 14 16 18 2 22 図 8 DCDMH 標準液中で生成した DMH をプレカーサーイオン (m/z 129.) としたときのプロダクトイオンのマススペクトル 表 3 DCDMH モノクロロ体 DMH のモノアイソトピック質量 物質名 モノアイソトピック質量 DCDMH ( ジクロロ体 ) 195.986 モノクロロ体 162.196 DMH 128.586 449

分析法 フローチャート DCDMH を DMH として分析する場合の 分析法のフローチャートを図 9 に示す * 水質試料 固相抽出 溶出 1 ml * 1mmol/Lになるように試料採取後に 酢酸アンモニウムを添加 Sep-Pak PS2 + Sep-Pak AC2 1 ml/.1 ギ酸水溶液 2 ml 1 回精製水 2 ml 1 回で試料採取容器を洗い込み Sep-Pak PS2 取り外し Sep-Pak AC2を逆方向にしてアセトン 6 ml 濃縮 定容 LC-MS/MS 窒素気流下で.5 ml 程度まで 5 メタノール水溶液 2 ml 標線まで ESI-Positive 図 9 分析法のフローチャート ( 参考 ) 検量線 DMH の検量線を図 1 に示す また 検量線データ一覧を表 4 に示す 応答値 2 15 1 5 y = 353.68x - 36.714 R² =.9992 1 2 3 4 5 濃度 (ng/ml) 応答値 y = -.366x 2 + 258.35x + 6751.8 R² =.9996 2.E+5 1.5E+5 1.E+5 5.E+4.E+ 2 4 6 8 1 濃度 (ng/ml) (3.~5. ng/ml) (5.~1 ng/ml) * 2 次式で近似図 1 DMH の検量線 45

表 4 DMH の検量線データ一覧 応答値標準液濃度 (Cs) DMH(As) (ng/ml) (m/z 129. > 58.) 3. 993 5. 1862 1. 3256 3. 1842 5. 17523 1 34861 3 8451 5 126655 1 228579 DMH 標準物質のマススペクトル DMH 標準物質のマススペクトルを図 11 に m/z 129. のプロダクトイオンのマススペクトルを図 12 に示す 1326DMH_MS3P 35 (.353) 1 129 Scan ES+ 2.61e7 プレカーサーイオン 6 m/z 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 図 11 DMH 標準物質のマススペクトル 1326DMH_MSMS13P 39 (.393) 58 1 Daughters of 129ES+ 1.48e6 定量用 11 確認用 129 m/z 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 図 12 DMH(m/z 129.) のプロダクトイオンのマススペクトル 451

操作ブランク試験 操作ブランク試験結果を表 5 に示す DMH として IDL の 2 倍程度の操作ブランクが検出された 表 5 操作ブランク試験結果 物質名 試験数 検出濃度 (ng/l) DMH 2 tr*,27 * 1 検体はクロマトグラム上でピークを検出 1337_37 1 2.29 1.51 3.54 3.54 F1:MRM of 2 channels,es+ 2.444e+3 3.88 5.44 5.72 8.29 8.66 8.92 2. 4. 6. 8. 図 13 操作ブランクのクロマトグラム 添加回収試験 精製水への添加回収試験結果を表 6 に示す DCDMH 標準物質を添加したときのクロマトグラムを図 14 に DMH 標準物質を添加したときのクロマトグラムを図 15 に示す 試料名 精製水 物質名 試料量 (L) DCDMH.1 表 6 添加回収試験結果 添加量 (ng) 12 * DMH 換算量 78 試験数 検出濃度 (ng/l) DMH 回収率 () 変動係数 () 3 722 93 3.5 DMH.1 8 3 785 98 3.1 *:DCDMH の M.W. 197.1 DMH の M.W. 128.13 から当量換算した値 452

1337_42 1 3.55 F1:MRM of 2 channels,es+ 4.762e+4 2. 4. 6. 8. 図 14 DCDMH 添加回収試験 ( 精製水 ) のクロマトグラム 1337_39 1 3.55 F1:MRM of 2 channels,es+ 5.132e+4 2. 4. 6. 8. 図 15 DMH 添加回収試験 ( 精製水 ) のクロマトグラム 保存性試験 水溶液中での DCDMH の分解性を把握するために保存性試験を行い 河川水中で DCDMH が残存しないことを確認した また 水溶液中で DCDMH またはモノクロロ体が残存している場合 これらの化合物の塩素がすべて水素に置換した DMH としてモニタリングができるように アンモニア / ギ酸 (NH4/FoAc) 酢酸アンモニウム (AmAce) の添加を試した < 試験方法 > 試薬 試験液の調製 DCDMH をメタノールで溶解し DCDMH 標準原液 (5 mg/ml) を調製後 表 7 に示した 1 μg/ml 濃度の各試験液を調製した 453

表 7 保存性試験を行った試験液 試験液標記 保管場所 調製方法 初期濃度 (μg/ml) 明所 1 24 C 蛍光灯下 DCDMH 原液を精製水で希釈 1 暗所 1 24 C 暗所 DCDMH 原液を精製水で希釈 1 暗所 2 24 C 暗所 DCDMH 原液を精製水で希釈 1 ph 5 24 C 暗所 ph 5 緩衝液で希釈 1 ph 7 24 C 暗所 ph 7 緩衝液で希釈 1 ph 9 24 C 暗所 ph 9 緩衝液で希釈 1 NH4/FoAc 24 C 暗所 精製水で希釈時に NH 4 FoAc 4) を添加 1 AmAce 24 C 暗所 精製水で希釈時に AmAce 5) を添加 1 河川水 1 24 C 暗所 6) 河川水で希釈 1 河川水 2 24 C 暗所 6) 河川水で希釈 1 MeOH1 7) 24 C 暗所 MeOH で希釈 1 MeOH2 7) 24 C 暗所 MeOH で希釈 1 精製水ブランク 8) 24 C 暗所 2 MeOH / H 2 O 河川水ブランク 8) 24 C 暗所 2 MeOH / H 2 O 1), 2), 3) フタル酸塩 ph 標準液 (ph 4.1) 中性りん酸塩 ph 標準液 (ph6.86) ほう酸塩 ph 標準 液 (ph 9.18) を 2 倍希釈後 塩酸または水酸化ナトリウムで ph をそれぞれ 5 7 9 に調製 4) 試験液中の濃度がそれぞれ.5 になるように アンモニア (NH 4 ) ギ酸(FoAc) の順で添加 5) 試験液中の酢酸アンモニウム (AmAce) 濃度が 1 mmol/l になるように添加 6) 試験当日に採水した河川水を 5 時間静置し 上清を分取して河川水試料 (1, 2) とした 7) 参考として メタノール溶液を作成した 8) 精製水 河川水でブランク溶液を調製した ( 測定結果は すべて不検出 ) 保存条件 各試験液を 24~25 C に保たれた室内に遮光して保管した 明所保存のものは 遮光しないで常時 実験室の蛍光灯下で保管した 測定 解析 各試験液の一部を 調製直後 ( 時間後 ) 4 時間後 1 3 7 14 28 42 日後に分取し そのまま LC/MS で測定を行った 各試験液中の DCDMH モノクロロ体 DMH をモニタリングして それぞれのピークの応答値 ( 面積値 ) を求め 各化合物の残存性を確認した < 保存性試験時の LC/MS 条件 > LC 使用機器 :Waters Alliance 2695 カラム :XBridge Phenyl (2.1 mm 1 mm 3.5 μm) 移動相 :A: 精製水 B: メタノール A:B = 65:35 6. B:4 9 linear gradient 6. 12. A:B = 1:9 454

カラム流量 :.2 ml/ カラム温度 :3 C 試料注入量 :1 μl MS 使用機器 :Waters Quattro micro API キャピラリー電圧 :4. kv コーン電圧 :3 V ソース温度 :12 C デゾルベーション温度 :4 C コーンガス :N2 5 L/hr デゾルベーションガス :N2 5 L/hr コリジョンエネルギー :15 ev イオン化法 :ESI(+) 測定モード :SRM モニターイオン (m/z) :197. > 92. (DCDMH) 163. > 92. ( モノクロロ体 ) 129. > 58. (DMH) < 結果 > 1. DCDMH の測定結果 ( 図 16) 1 精製水中では 明所 暗所ともに調製直後の DCDMH の面積値は 5 前後であり 継時的に減少傾向を示したが 1~2 週間後でもピークが検出された ( 図 17) 2 河川水中への調製直後の試験液では DCDMH は検出されたが 4 時間後の測定では不検出になった ( 図 18) 3 ph 7 水溶液 及びアンモニア / ギ酸 (NH4/FoAc) 酢酸アンモニウム (AmAce) の水溶液中では 調製直後から DCDMH は検出されなかった また ph 9 水溶液でも 4 時間後からは不検出であった ( Area ) 25 MeOH1 MeOH2 2 15 1 5 7 14 21 28 35 42 ( day ) 明所 暗所 1 暗所 2 ph5 ph7 ph9 NH4/FoAc AmAce 河川水 1 河川水 2 図 16 DCDMH( ジクロロ体 ) の応答値 ( 面積値 ) の推移 455

12918_8 H2O Annsho1-h 3.9 484 1 1.37 3.9 484 3.9 484 3.9 484 197 > 92 1.44e+3 5.6 6.6 8.69 9.96 11.3 12924_25 H2O Annsho1-7d 3.64 81 1 2.53 1.94 197 > 92 4.288e+2 4.18 6.13 6.47 8.69 11.2 2. 4. 6. 8. 1. 2. 4. 6. 8. 1. 調製直後 : 暗所 1 ( hr) 7 日後 : 暗所 1 (7 day) 図 17 DCDMH を精製水中で保存したときのクロマトグラム 12918_21 Kasensui 1-h 3.32 197 > 92 53 3.624e+2 1 3.32;53 3.32.32 53 5.89 6.63 8.53 9.11 11.12 12918_42 Kasensui 1-4h 1 197 > 92 2.942e+2 2.92.2 1.94 3.26 6.18 7.71 8.96 11.29 2. 4. 6. 8. 1. 2. 4. 6. 8. 1. 調製直後 : 河川水 1 ( hr) 4 時間後 : 河川水 1 (4 hr) 図 18 DCDMH を河川水中で保存したときのクロマトグラム 2. DCDMH から生成したモノクロロ体の測定結果 ( 図 19) 1 精製水中では 42 日後でも 16~34 程度のモノクロロ体の面積値が検出され 調製直後と比較しても同程度であった 河川水中では継時的に減少傾向を示し 42 日後の面積値は 7~8 程度となった ( 図 2) 2 酢酸アンモニウム (AmAce) 水溶液中では 4 時間後からモノクロロ体は不検出となったが ( 図 21) アンモニア / ギ酸 (NH4/FoAc) 水溶液中では 14 日後まで検出された また ph 7 水溶液中でも分解が促進され 24 時間後からは不検出であった ( Area ) 8 MeOH1 MeOH2 6 4 2 7 14 21 28 35 42 ( day ) 明所 暗所 1 暗所 2 ph5 ph7 ph9 NH4/FoAc AmAce 河川水 1 河川水 2 図 19 DCDMH から生成したと考えられるモノクロロ体の応答値 ( 面積値 ) の推移 456

12918_22 Kasensui 2-h 2.92 1531 1 163 > 92 5.143e+4 1213_21 Kasensui 2-42d 2.11 1 2.98 8 163 > 92 8.54e+2 1.81 4.9 5.29 5.77 7.29 11.7 8.5 1.4 調製直後 : 河川水 2 ( hr) 42 日後 : 河川水 2 (42 day) 図 2 河川水中で DCDMH から生成したと考えられるモノクロロ体のクロマトグラム 12918_15 1mM AmAc-h 2.71 618 1 2. 4. 6. 8. 1. 163 > 92 3.861e+3 2.8 11.51 2. 4. 6. 8. 1. 12918_36 1mM AmAc-4h 1 2.11 1.74 2.69.63 4.29 2. 4. 6. 8. 1. 調製直後 :AmAce 水溶液 ( hr) 4 時間後 :AmAce 水溶液 (4 hr) 図 21 DCDMH 水溶液に酢酸アンモニウムを添加して保存したときのモノクロロ体のクロマトグラム 3. DCDMH から生成した DMH の測定結果 1 精製水中では調製直後には約 2 であった DMH の面積値が 42 日後の明所で 24 暗所で 31 程度まで増大した 河川水中の面積値は一定の傾向を示さず 河川水 1 と 2 の値の差も大きかった ( 図 22 図 24 図 25) 2 ph 5 水溶液の DMH の面積値は 28 日目まで上昇傾向を示したが 42 日後は減少していた ph 7 ph 9 アンモニア/ ギ酸 (NH 4 /FoAc) 各水溶液の 3 日目以降の測定値は 一定の水準で推移した ( 図 23) 3 酢酸アンモニウム (AmAce) 水溶液では 調製直後から DMH の面積値が 15 前後の一定の水準で推移した ( 図 23 図 26) 2. 4. 6. 8. 1. 6.19 163 > 92 6.454e+2 7.58 1.96 9.8 11.62 ( Area ) 8 MeOH1 MeOH2 6 4 2 明所暗所 1 暗所 2 河川水 1 河川水 2 7 14 21 28 35 42 ( day ) 図 22 DCDMH から生成したと考えられる DMH の応答値 ( 面積値 ) の推移 ( 精製水 河川水 メタノール溶液中 ) 457

( Area ) 8 6 4 2 ph5 ph9 AmAce ph7 NH4/FoAc 7 14 21 28 35 42 ( day ) 図 23 DCDMH から生成したと考えられる DMH の応答値 ( 面積値 ) の推移 (ph を調製した水溶液 NH 4 /FoAc AmAce を添加した水溶液中 ) 12918_8 H2O Annsho1-h 3.16 1 1.998e+5 1213_7 H2O Annsho1-42d 1.89 39274 1 1.459e+6 1.9 2159 3.14 2. 4. 6. 8. 1. 2. 4. 6. 8. 1. 調製直後 : 暗所 1 ( hr) 42 日後 : 暗所 1 (42 day) 図 24 精製水中で DCDMH から生成したと考えられる DMH のクロマトグラム 12918_22 Kasensui 2-h 1.9 32551 1 1.242e+5 1213_21 Kasensui 2-42d 1.86 16874 1 3.869e+5 2.94 1.53 2. 4. 6. 8. 1. 2. 4. 6. 8. 1. 調製直後 : 河川水 2 ( hr) 42 日後 : 河川水 2 (42 day) 図 25 河川水中で DCDMH から生成したと考えられる DMH のクロマトグラム 12918_15 1mM AmAc-h 1.87 15347 1 7.63e+5 1213_15 1mM AmAc-42d 1.89 157961 1 7.722e+5 2. 4. 6. 8. 1. 調製直後 :AmAce ( hr) 2. 4. 6. 8. 1. 図 26 DCDMH 水溶液に酢酸アンモニウムを添加して保存したときに生成した DMH のクロマトグラム 42 日後 :AmAce (42 day) 458

< まとめ > 1 保存性試験結果から水溶液 ( 精製水 河川水 ) 中の DCDMH( ジクロロ体 ) は 速やかにモノクロロ体まで分解することが確認された しかし モノクロロ体の面積値は精製水中で大きな変化がなく 河川水中でも一定期間の残存が認められた これらのことから 水溶液中で DCDMH の 1 つ目の塩素は容易に脱離してモノクロロ体となるが モノクロロ体の塩素はそれほど容易には脱離しないことが推測された 2 水溶液 ( 環境水 ) 中の DCDMH( ジクロロ体 ) を対象物質として分析することは 環境水で速やかに分解してしまうため不可能であると考えられた モノクロロ体は水溶液中で比較的安定して残存するが標準試薬の入手が困難であるため 標準試薬を入手することのできる DMH を分析対象物質とした 3 水溶液 ( 環境水 ) 中のジクロロ体 モノクロロ体のすべての塩素を脱離して DMH として分析を行うために 酢酸アンモニウムなどの添加が必要であると考えられた 酢酸アンモニウムを添加した水溶液中では DCDMH から生成したと考えられる DMH の応答値は試験液調製直後から安定していて 調製直後にはわずかに残存していたモノクロロ体も 調製 4 時間後には検出されなくなった 評価 殺菌 殺藻剤等の用途として使用される DCDMH の作用や毒性等は 水溶液中で脱離した遊離塩素によると考えられる その易分解性により分子イオンの状態でのモニタリングをすることができず 分析法の確立には至らなかった 環境水中では DCDMH は速やかに分解し モノクロロ体を経て DMH になると考えられ DCDMH を DMH として分析する方法の検討を行った 水溶液に酢酸アンモニウムを添加することにより DCDMH は 4 時間後には DMH まで分解したが 生成した DMH は 42 日後も安定していて 分析対象物質として適していると考えられた これまでに検討を行った範囲では DMH の IDL 試料換算値を分子量で DCDMH に当量換算すると 22 ng/l であった また 精製水に DCDMH 標準液を添加し 酢酸アンモニウムを加え DMH として回収試験を行った結果 良好な回収率 (93) が得られた 担当者連絡先 所属先名称 : 千葉県環境研究センター所属先住所 : 29-46 千葉県市原市岩崎西 1-8-8 TEL:436-23-7777 FAX:436-23-287 担当者名 : 清水明 E-mail :a.shmz5@pref.chiba.lg.jp 459

物質名分析法フローチャート ( 参考 ) 備考 1,3- ジクロロ -5,5- ジメチルイミダゾリジン -2,4- ジオン 別名 : 1,3- ジクロロ -5,5- ジメチルヒダントイン (DCDMH) 以下の分析フローに従い DCDMH の分解物である 5,5- ジメチルヒダントインを定量し その測定値を当量換算して DCDMH 値を求める 5,5- ジメチルイミダゾリジン -2,4- ジオン 別名 : 5,5- ジメチルヒダントイン (DMH) 水質 分析原理 : * 水質試料 固相抽出 LC/MS/MS -SRM ESI(+) 1 ml Sep-Pak PS2 + Sep-Pak AC2 * 1 mmol/lになるように 1 ml/ 試料採取後に.1 ギ酸水溶液 2 ml 1 回 酢酸アンモニウムを添加 精製水 2 ml 1 回で試料容器を洗い込み 溶出 濃縮 Sep-Pak AC2を 窒素気流下で Sep-Pak PS2 逆方向にして.5 ml 程度まで 取り外し アセトン 6 ml 分析条件 : 機器 Waters Alliance 2695 Quattro micro API カラム Inertsil ODS (25 mm 2.1 mm, 3 μm) 定容 LC-MS/MS 5 メタノール水溶液 ESI-Positive 2 ml 標線まで 46