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融雪期に発生する舗装の損傷実態と損傷のメカニズム 丸山記美雄 1 安倍隆二 1 木村孝司 1 1 ( 独 ) 土木研究所寒地土木研究所寒地道路保全チーム ( 062-0053 札幌市豊平区平岸 1-3) 本研究は, 融雪期に発生する舗装損傷のうち特にポットホールに着目し, その発生実態と発生メカニズムを解明して, 維持管理対策に役立てることを目的とする. 供用中の道路における現地調査等の結果, 融雪期にポットホールの発生が多い実態にあり, 融雪水の存在, ゼロクロッシング等の気温変化, 荷重の作用といった要因が, ひび割れ等の欠陥部に作用することでポットホールが発生するというメカニズムの一端が明らかになり, ポットホール補修対策および予防保全対策を提示した. キーワード : ポットホール, 融雪水, 凍結融解, ゼロクロッシング 1. 本研究の背景と目的 積雪寒冷地においては, 低温や融雪期の融雪水や凍結融解作用などによって道路舗装が影響を受けるため, 積雪寒冷地の舗装を構築するに際しては, 積雪寒冷地特有の過酷な条件に耐えるような対策が取られている 1),2),3),4). しかし, 北海道内の舗装道路の多くが 1960~1970 年代に構築されており, 多くの舗装にダメージが蓄積され老朽化が進んでいると考えられ, 今後は損傷が顕在化することが懸念される. また他方では,IPCC 第 4 次報告書 5) などに示されるように, 多くの地域で気温, 降雨量などの変動幅が拡大する傾向にあるとの指摘があり, これらの要素が重なる場合, 従前よりも融雪期の舗装の損傷が顕著になる可能性は否定できない. 実際に近年では融雪期に発生するポットホール等に関する道路利用者の通報等が増加しているとの指摘がある. 道路としての機能を維持し, 現在の道路資産を安全かつ安定的に守っていくためには, 融雪期に発生する舗装の損傷実態を把握し, 損傷の発生要因やメカニズムを明らかにして, 融雪期の舗装損傷への対策を取る必要がある. そこで, 融雪期に発生する舗装損傷のうち特にポットホールを検討対象とし, その発生実態や損傷が発生しやすい条件を把握し, 発生メカニズムも明らかにして, 今後の補修対策や予防対策立案に役立てることを目的に研究を行った. 手法として, 供用中の道路においてポットホールの発生実態や発生条件を把握するための実態調査を行い, ポットホールを発生させる要因やポットホールの発生メカニズムを検証した. その結果, いくつかの知見を得ることができたので, 以下に報告するものである. 2. 融雪期の舗装損傷実態調査 融雪期に発生する舗装損傷には様々なものがあるが, 本報ではそれらのうち特にポットホールに着目した. 着 目した理由は, 様々ある損傷形態のうちで, ポットホールが道路利用者にとって最も視認しやすく, その大きさは多くの場合直径数十 cm 程度で深さは数 cm 程度と形状的には小さいものの, ひとたび発生すると道路利用者の走行性に直接的かつ即時的に影響し, 道路管理上も速やかな対応が求められるなど, 緊急度の高い損傷形態であるためである. さらに, ポットホールの発生については, いつどのような場所でどれくらいの量のポットホールが発生するかをこれまでに蓄積された技術的知見のみで判断するのは困難であり, 結果として対応も後手に回りがちで, その発生実態やメカニズムについて新たな知見を得る必要があると考えたためである. そこで, 供用中の国道においてポットホール発生状況を調査し, ポットホールの発生実態を分析することで, どのような条件下において舗装が破損する可能性が高いのかを検証した. 2.1 ポットホール発生実態調査方法調査は, 遠軽地域と札幌地域の国道で実施した. 遠軽地域においては, 国道 234 号,242 号,333 号の合計約 160km 区間における一年間のポットホール発生状況を調査した. 調査は基本的に 1 日おきにいずれかの路線で実施しており, ポットホールの発生が確認された月日と個数を記録し, 集計整理した. ポットホールが発生した部位の状況や, ポットホールの発生が確認された日とアメダスデータ等の気象条件の関係の調査も併せて行った. 札幌地域においては, 国道 337 号の約 25km 区間におけるポットホール発生状況等を 1 月 ~3 月の間, 調査した. 調査は 1 日おきにポットホールの発生を確認して発生月日と個数を集計整理するものと, 調査対象区間を 1 月 ~3 月の間に週 1~2 回, ポットホールの発生位置や発生状況を詳しく目視調査する形で実施した.

これらの調査結果を基に, ポットホールの発生時期, ポットホール発生部位や発生時の気象条件, さらに, 秋の時点におけるひび割れ率を実測と予測に基づいて把握し,1 月 ~3 月の間のポットホールの発生状況との対応関係などを調べた. 2.2 ポットホール発生実態調査結果 2.2.1 ポットホールの発生時期遠軽管内におけるポットホールの月別発生件数を図 -1 に示す. ポットホールは 2 月から徐々に増え始め, 遠軽地域の融雪期にあたる 3 月と 4 月に発生量が多いことが確認された. また, 寒さが厳しい 1 月に発生していない点も注目される. 札幌地域における調査においても, 融雪期の 2 月初旬ころから 3 月中旬にかけて多くのポットホールが発生し, 融雪期にポットホールの発生が多いことが確認できた. ポットホール発生件数 ( 件 ) 80 70 60 50 40 30 20 10 0 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 図 -1 遠軽地域におけるポットホールの月別発生件数 これは調査対象路線区間が疲労ひび割れの発生量が多い路線区間であったためと考えられ, 他のひび割れの発生量が多い区間では, そのひび割れに起因するポットホールの発生割合が多くなるものと推測される. 図 -4 には, 路面のひび割れ率と, ポットホールの発生割合の対応関係を整理した結果を示す. ひび割れ率が高くなるにつれて, ポットホールが発生する割合が高くなることがわかる. つまり, ひび割れ率が高い区間ほど, ポットホールが発生する確率が高いといえる. 以上のようにポットホールはひび割れ部分をきっかけに発生することが多いことがわかった. 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% R238 R242 R333 全体 その他 施工継目 縦断ひび割れ横断ひび割れ疲労ひび割れ 図 -2 ポットホールの発生箇所別件数 ( 遠軽地域 ) 縦断ひび割れ 0% 横断ひび割れ 1% 施工継目 8% 積雪寒冷地では, 一年の中でも特に融雪時期や春先に舗装の損傷が激しくなることが分かり, 他の時期に比べて舗装が大きなダメージを受ける時期であることが推察される. 参考として, 本州など比較的温暖な地域では, ポットホールは 6 月の梅雨時期や 9 月 10 月の台風および秋雨の時期など, 雨の多い時期に多く発生するといわれている. 今回の調査においては, それらの時期にはあまりポットホールが発生しておらず, 温暖な地域とは発生時期が異なる傾向を示している点が特筆される. 2.2.2 ポットホールの発生部位遠軽地域と札幌地域での調査において, ポットホールの発生している部位を整理した結果を図 -2, 図 -3 に示す. ポットホールの大半は, 何らかのひび割れや施工時の継目等が存在した箇所に発生していることが確認できる. 遠軽地域では, 疲労ひび割れと横断ひび割れ部に発生したポットホールの割合が約 8 割を占めている. また, 札幌地域では疲労ひび割れ部に発生したポットホールの割合が約 9 割を占めている. 打継目などの施工継目部に発生したポットホールは約 1~2 割であった. 疲労ひび割れ部にポットホールの大半が発生している結果となったが, 割合 (%) 疲労ひび割れ 91% 図 -3 ポットホールの発生部の路面状況 ( 札幌地域 ) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 0 以上 5.0 未満 ポットホール発生区間 5.0 以上 10.0 未満 10.0 以上 15.0 未満 路面のひび割れ率 (%) ポットホール未発生区間 15.0 以上 20.0 未満 20.0 以上 図 -4 路面のひび割れ率とポットホール発生の対応関係 ( 札幌近郊 ) 2.2.3 ポットホールの発生時の気象条件遠軽地域の調査データに対して, ポットホールが発見された日の最高気温と最低気温をプロットした結果を図 -5 に示す. 図中の赤枠で網掛けした範囲は,1 日の間に

気温がプラスからマイナスもしくは, マイナスからプラスに変化した ( 以下, このような気温の変化を ゼロクロッシング とよぶ ) 日であることを意味する. 図 -5 において, 大半のデータが赤枠で網掛けした範囲にプロットされていることから, ゼロクロッシングした日に大半のポットホールが発生していることが理解できる. なお, 赤枠で網掛けした範囲にプロットされていないもの ( 調査当日にゼロクロッシングしていないもの ) についても, 前日もしくは前々日にゼロクロッシングしていることが確認できた. 次に, ゼロクロッシングの発生有無とポットホールの発見の関係を整理した遠軽地域の結果を表 -1 に示す. ゼロクロッシングが発生した日は,5 割や 6 割程度の高い確率でポットホールの発生がみられるのに比べて, ゼロクロッシングが発生していない日は, ポットホールの発見率は約 2 割未満となっており, ゼロクロッシングがポットホールの発生に強く影響していることが認められる. 気温が 0 をまたいで変化するような気象条件が, ポットホール発生リスクを高める条件の一つであるといえる. 最高気温 ( ) 15.0 10.0 5.0 0.0-5.0 調査日調査前日 ( セ ロクロッシンク ) 調査前々日 ( セ ロクロッシンク ) 最高気温が 0 以上かつ最低気温が氷点下 (= 冬日 ) (= ゼロクロッシング発生 ) 最高気温が 0 以下 (= 真冬日 ) (= ゼロクロッシングなし ) 最高気温が 0 以上かつ最低気温が 0 以上 (= ゼロクロッシングなし ) -25.0-20.0-15.0-10.0-5.0 0.0 5.0 10.0 最低気温 ( ) 図 -5 気温とポットホール発生の関係 ( 遠軽地域 ) 表 -1 ゼロクロッシング発生とポットホールの発生の対応関係 ( 遠軽地域 ) 巡回日数 ポットホールの発生日数ポットホールの発生率 (%) 発生無 気温のゼロクロッシング発生 40 24 16 60.0% 巡回当日 気温のゼロクロッシングなし 38 6 32 15.8% 気温のゼロクロッシング発生 40 23 17 57.5% 巡回前日 気温のゼロクロッシングなし 38 7 31 18.4% 気温のゼロクロッシング発生 39 20 19 51.3% 巡回前々日 気温のゼロクロッシングなし 39 10 20 25.6% 2.2.4 ポットホールの発生リスクが高い条件実態調査で明らかとなったポットホール発生リスクが高い条件を改めて整理すると, 図 -6 に示すとおりである. これらの条件を満たす場所および時期はポットホールの発生リスクが高いので, 道路管理者ならびに道路利用者が留意をすることで, 補修体制を確保することやポットホールの発生による道路利用者の不便を減らすことなどに役立てることができると考えられる. (1) ポットホールが多く発生する時期 融雪期に多い (2) ポットホール発生時の気象条件 ゼロクロッシング発生日およびその1~2 日後 (3) ポットホールが発生しやすい部位 ひび割れや打継ぎ目等の弱点がある部位 融雪水が流入 滞留しやすい部位 ひび割れ率が高い区間や路線 図 -6 ポットホール発生リスクが高い条件 3. 融雪水等が舗装体に及ぼす影響の検証 前述の実態調査の結果から, 融雪期のゼロクロッシングや融雪水の存在が舗装体に大きな影響を及ぼしている状況がうかがえたため, これらの条件が舗装体にどのような具体の影響を及ぼすのかを検証した. 3.1 凍結融解作用による混合物の強度低下の検証凍結融解による混合物の強度低下に関しては, これまでにも実験を行っており 2),3), その概要を以下に示す. 同じ材料 ( ストアス 80-100, 骨材, フィラー ) を使用し, 配合比率を変化させた細粒度ギャップアスファルト混合物 F 付き系 (SG13F)2 種, 密粒度アスファルト混合物 F 付き系 (M13F)2 種, 密粒度アスファルト混合物 F なし系 (M13)2 種, 密粒度ギャップアスファルト混合物 F 付き系 (MG13F)1 種の計 7 種類の混合物を対象として, 凍結行程が +4.5-18 で 2 時間, 融解行程が -18 +4.5 で 1 時間の計 3 時間を 1 サイクルとして凍結融解を所定の回数繰り返し, その後に空隙率の測定を行った. 凍結融解作用に伴う空隙率の変化を図 -7 に示す. 細粒度ギャップアスファルト混合物 F 付き系 (SG13F)2 種と密粒度アスファルト混合物 F 付き系 (M13F)2 種は空隙率 3% ~4% の範囲内で推移しており, 凍結融解作用による影響をあまり受けていない. 一方, 密粒度アスファルト混合部物 F なし系 (M13)2 種と密粒度ギャップアスファルト混合物 F 付き系 (MG13F) は 4% 以下の空隙率が 5% 以上程度に増加しており, 凍結融解作用の影響を受けていることがわかる. ラヘ リンク 試験用供試体空隙率 (%) 8 7 6 5 4 3 2 SG 13F M 13F M 13 MG 13F SG 13F55 M 13Fa M 13a 密粒 G F 付系 細粒 G F 付系 密粒 F なし系 密粒 F 付系 0 50 100 150 200 凍結融解サイクル ( 回 ) 図 -7 凍結融解試験後の空隙率の変化

凍結融解前 骨材 空隙 水分が存在する下で凍結融解を受けると 骨材 氷の膨張 空隙に浸入した水が凍結して膨張 融解を繰返す 分から容易に浸入してしている状況にあると推察される. 透水量 (ml/15 秒 ) 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 幅小 (0.5~1mm) 幅中 (3mm 程度 ) 幅大 (5mm 程度 ) 図 -9 曲げ破断ひび割れに対する透水量試験結果 凍結融解後 骨材 凍結融解の繰返し空隙が拡大 図 -8 凍結融解をうけた混合物の変化模式図 この試験において, 凍結融解作用によって混合物内部に発生した変化を模式図で表現したものを図 -8 に示す. 水分が存在する条件の下でアスファルト混合物が凍結融解を受けると, 空隙に浸入した水が凍る際に体積膨張すると考えられ, 凍結と融解を繰返すうちに空隙が拡大し, それに伴って安定度や摩耗抵抗性や骨材飛散抵抗性などが低下するものと推測される. 3.2 ひび割れ部からの水の浸入に関する検証路面の融雪水がひび割れ部からどの程度の量浸入するのかを把握するため, 幅の異なるひび割れを室内で曲げ破断によって作成し, ひび割れ部を跨いで現場透水量試験機を設置して, 透水量を測定した. 試験を行ったひび割れは, 曲げ破断させたひび割れ面を向かい合わせて万力で締め付けて 0.5~1mm,3mm 程度,5mm 程度の幅のひび割れとした. 曲げ破断により発生させたひび割れに対する透水量試験結果を図 -9 に示す. ひび割れ幅が 3mm 以上の場合, 測定の上限である 1400 ml/15 秒以上の透水性を示し, ほとんど抵抗なく水が浸透していく状態となっている. ひび割れ幅が 0.5~1mm 程度の時には, 透水量は約 600 ml/15 秒となり, ひび割れ幅が 3mm 以上の場合に比べると若干浸透しにくくなる. しかし, いずれのひび割れ幅においても, 単位時間当たりの透水量に程度の差はあるものの, 供給された水は速やかに浸透していくレベルであると評価できる. 融雪期には, 路肩部等に堆積された雪が解け, その融雪水が路面から流入し, さらにひび割れや打ち継ぎ目部 3.3 融解期における路盤材料および路床材料の支持力低下の検証既往の調査によって得られている, 路盤材料の凍結融解後の修正 CBR 試験の結果 4) を図 -10 に示す. 凍結融解前の修正 CBR 値と凍結融解後の修正 CBR 値の比 (CBR 保存率 ) は複数の路盤材料でいずれも 70% 程度であり, 路盤材料は凍結融解を受けると支持力が低下することが確認できる. このような凍結融解作用に伴う支持力低下に加えて, ひび割れ等から融雪水が路盤や路床に浸入すると, 路盤材や路床材の含水比を高めることになるため, 更に支持力は低下すると考えられる. B R 保存率 1.0 0.9 C 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 切込砂利(C )切込砕Con 再Con 再Con 再石生生生((B )B )図 -10 路盤材料の凍結融解後の CBR 保存率 4. 融雪期の舗装体への影響要因の整理および損傷メカニズム検討 前述した調査の結果を踏まえ, 融雪期に舗装体にマイナスの影響を及ぼす要因を整理し, 融雪期に発生する損傷の発生メカニズムを検討した. 4.1 融雪期の舗装体への影響要因の整理融雪期における舗装体への影響要因を図解したものを図 -11 に示す. 融雪期の舗装体への影響要因としては, 複数の要因がありそれらが複合的に関与していると考えられるが, 敢えて単純化すれば主要な要素は 1 水の存在, 2 温度変化 ( 凍結融解, ゼロクロッシング ),3 荷重の作用,3 つである. これらの要素がひび割れや打継目等の舗装の弱点に作用すると損傷はより早く進展するものと考えられる. つまり, 雪が解けた水が, ひび割れや打継

目などの舗装構造の一部から浸入もしくは浸透し, それが気温の変動や日射に伴い凍結や融解を繰り返すことで様々な形で舗装体に影響を及ぼすものと整理できる. 4.2 融雪期の舗装体の損傷メカニズム融雪水の浸入および浸入した水の凍結融解が, 舗装体に及ぼす具体的な変化について要約すると以下の項目のとおりとなる. 1) 混合物層を脆弱化させる ( ひび割れの進展, ひび割れ周辺の混合物の脆弱化, 空隙やすきまの増加, アスファルトと骨材の付着の悪化 ) 2) 表層と基層の間など, 混合物層の間の接着力を弱め, 層間ではがれやすくする 3) 路盤や路床を高含水比の状態にし, 路盤材や路床材が部分的に泥濘化するなどして, 支持力が低下する 4) 浸入した水が凍結する際に, 体積が増加して舗装体内部や層間に隙間を生じさせる 5) 路床に氷晶を生じ, 凍上や不等沈下を生じさせる舗装体に上述したような変化が進行したところに, 車両の走行荷重や衝撃荷重が加わることで, ポットホールが発生 進展することとなる. 融雪期に発生するポットホールには, 発生位置や発生原因などが様々なタイプのものがあるが, 融雪期に発生する代表的なポットホールの発生タイプを表層混合物層中心のもの, 混合物層全層のものの 2 タイプに大別し, 各々の発生メカニズムを図 -12, 図 -13 のとおり整理した. 5. 補修対策および予防対策 ポットホールは, 速やかな対応が求められる損傷形態であり, 通行に支障が生じないよう緊急的に補修が行われる. 積雪寒冷地では融雪期にはアスファルトプラントが不稼働であることが多いため, 常温混合物による補修が有効な工法である. 常温アスファルト混合物は標準型と全天候型 ( 特殊常温合材, 高耐久性常温合材 ) に分けられるがその性能は多様であるため, 路面の乾湿の状態, 気温等に応じて材料を選定する必要がある. 可能であれば, 加熱アスファルト混合物を使用することも有効であ 初期の舗装設計 温度環境 ( 凍結, 融解, ゼロクロッシング, 温度変化 ) 降雨 降雪 舗装の劣化度合 ( 経過年数, 通過台数 ) 混合物層の材料や状態 ( 配合, ひび割れの存在 ) 舗装施工時の状況 ( 品質管理, 温度管理, 施工技術 ) 路盤層の材料や状態 ( 水の侵入や凍結融解に伴う支持力低下 ) 車両の載荷 ( 軸重, タイヤ設地圧, 車両重量, 交通量, チェーンやスパイク ) の材料や状態 ( 凍上, 凍結融解に伴う支持力低下 ) 堆雪 水の存在, 舗装内部への水の浸入 ( 融雪水, 降雨, 降雪, 地下水 ) 堆雪 融雪水の舗装体内浸透 ひび割れや打継目から水が浸透 融雪水の舗装体内浸透 地下水 図 -11 融雪期における舗装体への影響要因 表層と基層の境界はく離 ひび割れや打継目の存在. 表面からのひび割れで, 混合物層内で止まっているひび割れ. 脆弱化した部分にタイヤの載荷による衝撃等が加わり, バラバラになり飛散をし始める. 小さなポットホールが発生. ひび割れや継目から浸入した水が表層と基層の境界面を伝って浸入. 凍結融解を繰り返すうちに, 層間の接着を弱め, 層間はく離を生じさせる. 1 2 3 4 ひび割れや継目から水が浸入混合物の路面に融雪水脆弱化 通過車両のタイヤ ひび割れや継目から侵入した水が凍結融解を繰り返し, 周辺の混合物層が脆弱化, 角かけなどを生じ始める 脆弱化した混合物の上をタイヤが通過することでひび割れ等が発生 進展 表層と基層の層間はく離を伴いつつ 飛散が激しくなりポットホールが拡大する. 図 -12 ポットホールの発生メカニズム事例 : 表層中心のポットホールの場合 ( 打継目や表面のひび割れ部 )

通過車両のタイヤ ひび割れや継目から水が浸入路面に融雪水 ひび割れや継目の存在. 底面側からのひび割れで, 混合物層を貫通しているひび割れ. 1 2 路盤内および路床に浸入した水によって, 路盤層上面が泥濘化して空隙の発生や支持力低下が起こる. バラバラになり飛散角欠けや小さなポットホールの発生 路盤内および路床に浸入した水が凍結融解作用によって隆起や沈下を引き起こす. ひび割れが進展し 骨材が飛散し始める. 層間はく離を伴いつつ, ポットホールが発生. 3 4 混合物層全体が飛散し, ポットホールが拡大する. 損傷が路盤層で達して路盤材が飛散し始める. 図 -13 ポットホールの発生メカニズム事例 : 混合物層全層のポットホールの場合 る. 混合物投入前の水分や脆弱部の除去等が有効であるが, 交通状況等の現地条件に合わせ, 適切な材料や施工方法を選定することが求められる. また, ポットホール発生条件の一つがひび割れ部からの水分の浸入であることから, ひび割れ部や打ち継ぎ目部に充填剤を注入することで雨水等の浸入を防ぎ, 損傷の進行を抑制するひび割れ注入工法は有効な予防的対策と考えられる. さらに, アスファルト混合物の品質を良好に保ち耐久性を高めることが長期的視点では重要であり, 施工時において以下の点に留意することも有効である. つまり, 可能な限り適切な施工時期を選び, 必要なアスファルト混合物温度を維持するとともに混合物の温度の均一化に努め, かつ十分な密度を確保すること. また, 端部や構造物まわり等の転圧しにくい場所は入念に締固めを行ったり, 既設舗装の温度が低い場所は路面ヒータ等で加熱してから舗設を行うなど現場条件に応じた施工を行うことなどである. 6. 結論 本研究から得られた成果は以下の様にまとめられる. (1) 融雪期において, 一日の間に気温が 0 をはさんで変化する時に, ひび割れ部や打継目などの周辺や, 融雪水が流入 滞留しやすい箇所で, ポットホールの発生が多い実態にあることが確認された. (2) 融雪水などの水分の存在と凍結融解作用が複合し, それが繰返し作用した場合, アスファルト混合物は一般的には空隙が増加し強度が低下する方向の影響を受けることが確認された. また, 舗装のひび割れからは舗装体内部に容易に水分が浸入することが確認された. 融解期には融雪水が浸入し, 凍結融解作用を受けてアスファルト混 合物の強度を低下させたり, 路盤材や路床材の含水比を高めて支持力低下を招くなどの影響を及ぼすと考えられた. (3) 融雪期の舗装体への影響要因としては, 数多くの要因がありそれらが複合的に関与していると考えられるが, 主要な要因は 1 水の存在,2 温度変化 ( 凍結融解, ゼロクロッシング ),3 荷重の作用, の 3 つに整理できる. これらの要因がひび割れ等の舗装の弱点に作用すると損傷はより早く進展すると考えられ, ポットホールなどに代表される融雪期の舗装損傷の発生に至るというメカニズムを提示した. (4) 本研究で明らかとなったポットホールの発生実態, 融雪水が舗装体に及ぼす影響やポットホールの発生メカニズムを踏まえ, ポットホール補修対策や予防保全対策および耐久性向上策を提示した. 謝辞 : ご協力いただいた北海道開発局ならびに網走開発建設部遠軽道路事務所, 札幌開発建設部の皆様方に謝意を表します. 参考文献 1) 土木学会舗装工学委員会寒冷地舗装小委員会 : 積雪寒冷地の舗装, 舗装工学ライブラリ 6,2011. 2) 久保宏, 岩崎信行 : アスファルト混合物の凍結融解試験について, 土木試験所月報 No.287,1977 3) 丸山記美雄, 高橋守人, 早坂保則 : 表層用アスファルト混合物の凍結融解作用に対する抵抗性, 平成 12 年度土木学会年次学術講演会,2000. 4) 安倍隆二, 丸山記美雄, 熊谷政行 : 積雪寒冷地におけるアスファルト舗装の理論的設計方法に用いる材料特性および環境条件に関する検討, 寒地土木研究所月報 No.708, 2012. 5) 気象庁訳 :IPCC 第 4 次評価報告書第一作業部会報告書技術要約,2007