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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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Aty Ly 活性化単球 活性化単球 用手法分類 Meta 1.0 % Stab 10.0 % Seg 12.0 % Lymph 44.0 % Mono 22.0 % Eosino 2.0 %

症例クイズ Q1 データと標本から推測される疾患をあげて下さい Q2 上記疾患にした理由をあげて下さい Q3 診断に必要な検査をあげて下さい Q4 骨髄検査から推測される疾患をあげて下さい

1. 検査データと末梢血標本から推測される疾患をあげて下さい 血球減少症 ( 白血病,MDS, 再生不良性貧血, 脾機能亢進症等 ) 自己免疫性疾患 ウィルス等の感染症 薬剤性反応 ( 無顆粒球症等 ) 等 2. 上記疾患にした理由をあげて下さい 白血球 血小板 2 系統の血球減少 血球減少症 ( 血液疾患 脾機能亢進症 ) 等自己免疫性疾患 好中球の減少 顆粒球系左方推移 CRP のやや増加異型リンパ球 活性化単球の出現 慢性感染症 薬剤性反応等

3. 診断に必要な検査をあげて下さい 網赤血球数 網血小板測定 貧血 血小板数の動向 抗核抗体 補体価等 自己免疫性疾患 各種ウィルス検査 感染症 ( 急性 慢性 ) 臨床所見 経過の確認 一過性 or 持続性? 薬剤使用状況 脾腫の有無 骨髄穿刺 骨髄造血の評価

骨髄標本 MG 染色 NCC 77000/μ l Mgk 16/μ l

骨髄検査 Blast cell 0.2% Pro-Ery 0.6% baso-ery 0.2% poly-ery orth-ery 0.2% Total Erythroid 1.0% Neutrophil Pro 7.4% Mye 12.6% Meta 22.8% Stab 13.4% Seg 13.4% Total Myeloid 71.4% M/E ratio 71.40

大きさ ;RBC8~10 個大核形 ; 類円形核クロマチン構造 ; 粗顆粒状核小体 ; 沈んだ核小体 (+)~(-) N/C 比 ; 大細胞質 ; 好塩基性 巨大前赤芽球

4. 骨髄検査から推測される疾患をあげて下さい 赤芽球系 : 低形成 巨大前赤芽球を認め 好塩基性赤芽球以降の分化は殆ど見られない 顆粒球系 : 相対的過形成 右方推移を認め 明らかな異形成は見られない 巨核球系 : 正形成 明らかな異形成は見られない リンパ系 :Aty-Ly が点在性に見られる Phagocyte 系 : マクロファージの軽度増加及び貪食像が見られる 骨髄像からパルボウィルス B19 関連の赤芽球癆が考えられます パルボウイルス IgM 抗体の検査確認お願いします

症例 1 まとめ 発熱 好中球減少が主訴で 貧血は認めなかった 骨髄穿刺実施 パルボウィルス B19 の感染による赤芽球癆が最も疑われた パルボウィルス B19 IgM 抗体検索 IgM 抗体陽性 (6.20) パルボウィルス B19 感染による赤芽球癆

赤芽球癆 (pure red cell aplasia:prca) とは? 正球性正色素正貧血と骨髄内赤芽球と 網赤血球の著減を特徴とする症候群のこと 病型 ; 先天性 後天性 特発性 ; 原因となる基礎疾患を認めない 続発性 ; 様々な基礎疾患に起因 発症様式 ; 急性型 慢性型 赤芽球癆は均一の病態ではなく 多くの病因 病型からなる

赤芽球癆の病型 病因分類 ( 赤芽球癆診療の参照ガイド ( 平成 22 年度改訂版 ) より ) < 先天性 > Diamond-Blackfan anemia < 後天性赤芽球癆 > 1. 特発性 2. 続発性 胸腺腫造血器腫瘍 (CLL LDGL HD MM NHL CML AML ALL MDS 等 ) 固形癌 ( 胃癌 乳癌 胆道癌等 ) 感染症 ( ヒトパルボウィルス B19 感染症 HTLV-Ⅰ 感染症 HIV 感染症等 ) 慢性溶血性貧血リウマチ性疾患 (SLE 関節リウマチ等 ) 薬剤 化学物質妊娠重症腎不全重症栄養失調症 EPO 治療後の内因性抗 EPO 抗体その他 (ABO 不適合移植後 自己免疫疾患等 )

日本における後天性赤芽球癆の病因別内訳 3% 10% ( 赤芽球癆診療の参照ガイド ( 平成 22 年度改訂版 ) より ) 3% 1% 特発性胸腺腫 7% 14% 39% リンパ増殖性疾患骨髄増殖性疾患固形腺腫自己免疫性疾患 23% 慢性腎不全 薬剤性

赤芽球癆 被疑薬の中止とともに 1 か月間は経過観察 急性型 パルボウィルス B19 初感染 薬剤性 等 1 か月以内に網赤血球の回復がみられ 貧血の改善が 3 か月以内に認められるもの 慢性型 特発性赤芽球癆胸腺腫合併赤芽球癆 LGL 白血病に伴う赤芽球癆 等長期に渡る免疫抑制療法が必要 病因 経過により治療が必要となるので急性型と慢性型の区別は重要となる

赤芽球癆の診断 骨髄赤芽球著減正球性正色素性貧血網赤血球著減 被疑薬の有無 なし あり 病型診断の為の検査 胸部 CT MRI 大顆粒リンパ球数リンパ球サブセット T 細胞抗原受容体クロナリティー パルボウィルス B19DNA 自己抗体悪性腫瘍の有無 被疑薬の中止 他剤への変更 1 ヵ月間経過観察 病型診断 特発性 胸腺腫 大顆粒リンハ 球白血病 その他のリンパ系腫瘍 自己免疫性疾患固形腫瘍 パルボウィルス B19 感染症 薬剤性 ( 赤芽球癆診療の参照ガイド ( 平成 22 年度改訂版 ) より )

赤芽球癆の起因薬剤及び起因物質 Allopurinol α-methyldopa Aminopyrine Anagyrine Arsphenamine Azathioprine Benzene hexachloride Calomel Carbamazepine Cephalothin Chenopodium Chroramphenicol Chlormadinone Chlorpropamide Cladribine Cotrimoxazole Diphenylhydantoin Erythropoietin Estrogens Fenbufen Fenoprofen FK506 Fludarabine Gold Halothane Interferon-α Lamivudine Leuprolide Linezolid Maloprim (dapsone and pyrimethamine) Mepacrine Methazolamide Mycophenolate mofetil D-Penicillamine Penicillin Pentachlorophenol Phenobarbital Phenylbutazone Procainamide Rifampicin Salicylazosulfapyridine Santonin Sodium dipropylacetate Sodium valproate Sulfasalazine Sulfathiazole Sulfobromophthalein sodium Sulindac Tacrolimus Thiamphenicol Tolbutamide Zidovudine

パルボウィルス B19 は なぜ赤芽球癆を起こすのか?

パルボウィルス B19 感染様式 1 ウィルス受容体 (P 抗原 ) に結合 2 細胞質内エントリー 3 脱核 4 ウィルスの DNA の複製 5RNA の転写 6 ウィルス蛋白に翻訳 7 ウィルス粒子の形成 8 細胞障害とウィルスの放出

パルボウィルス B19 感染症による合併症について 溶血性貧血における aplastic crisis 免疫不全患者における慢性赤芽球癆 胎児水腫 等 ウィルスそのものによる障害 伝染性紅斑 関節症状 皮疹 急性腎炎 治療法について 等 免疫応答における障害 ヒトパルボウィルス B19 感染症の場合は 対処的に経過観察を行う しかし 上記に挙げたように免疫不全患者の場合感染が蔓延化することがあるので γ - グロブリン製剤による治療を考慮する

パルボウィルス B19 感染経路 通常の感染経路は鼻腔 咽頭等を介してであるが その他に産道感染や輸血 による感染もある パルボウィルス B19 感染症の問題点 流行期には小児だけでなく成人も罹患する 感染後のウィルス血症の時期に健常成人では50% 前後の人が無症状である そのため 病院内等の施設内での感染源として紛れ込む場合がある 免疫不全者では慢性的な造血不全を呈することがある 妊娠中に感染し胎児水腫を生じることがある

ウィルス血症 網状赤血球消失 IgG 巨大前赤芽球出現 IgM 感染 1 週間 2 週間 2 ヶ月 3 ヶ月 IgM (+) (-) IgG (-)or(+) (+) 結果の解釈 感染中もしくは最近の感染 3 ヶ月以前の感染

症例提示

症例 61 歳女性好中球減少と貧血を認め MDS 疑いで紹介 初診時検査データ血液検査 WBC 5.01 10 3 /μl RBC 1.64 10 6 /μl HB 5.7 g/dl Hct 17.9 % MCV 108.7 fl MCH 34.9 pg MCHC 32.1 g/dl RDW 16.1 % PLT 271 10 3 /μl 白血球機器分類 Seg 14.2% Ly 78.4% Mono 3.0% Eo 1.9% Baso 0.4% LUC 2.0% 生化学検査 TP 6.3 g/dl ALB 4.4 g/dl A/G 比 2.32 TB 1.0 mg/dl GLU 105 mg/dl AST 15 IU/l ALT 14 IU/l LDH 218 IU/l γ-gtp 15 IU/l CRE 0.56 mg/dl UA 3.6 mg/dl CRP 0.14 mg/dl

用手法分類 Seg 10.0 % Lymph 83.0 % Aty-Ly 1.0% Mono 2.0 % Eosino 2.0 % 背景に大型 奇形血小板 (+)

初診時骨髄標本 (2010.05.28) NCC 151500 /μl Mgk 125/μL

初診時骨髄標本 M/E ratio 5.59 Blast cell 0.8% Neutrophil Pro-Ery 0.8% baso-ery 1.2% poly-ery 5.6% orth-ery 4.6% Pro 4.2% Mye 14.6% Meta 10.4% Stab 10.8% Seg 20.4% Total Erythroid 12.6% Total Myeloid 70.4%

巨核球系過形成単核 micro Mgk 等 ;10% 程度 初診時骨髄標本

初診時骨髄検査所見 赤芽球系 : 低形成 各成熟段階の細胞を認める 核融解像 核形不整 (+) 顆粒球系 : 過形成 各成熟段階の細胞を認める 好中球核クロマチン塊粗大 核縁不整 (+) (Ⅱ 型好中球 >Ⅲ 型好中球 ) 巨核球系 : 過形成 単核 micro Mgk 等 (10% 程度 ) MDS(RA) の像として矛盾はしません 臨床所見や染色体等の検査はいかがでしょうか

フォロー時骨髄標本 (2011.10.11 ) NCC 161000/μ L Mgk 16/μ L フォロー時血算 WBC 6.61 10 3 /μl RBC 1.90 10 6 /μl HB 5.8 g/dl Hct 17.6 % MCV 92.6 fl MCH 30.6 pg MCHC 33.0 g/dl RDW 14.7% PLT 356 10 3 /μl 用手法分類 Seg 11.0 % Lymph 78.0 % Aty-Ly 1.0% Mono 2.0 % Eosino 2.0 % 大型 奇形血小板 (+)

フォロー時骨髄検査 M/E ratio 43.50 Blast cell 1.2% Neutrophil Pro-Ery 0.4% baso-ery 0.8% poly-ery 0.8% orth-ery Total Erythroid 2.0% Pro 5.4% Mye 11.4% Meta 7.6% Stab 15.6% Seg 38.2% Total Myeloid 87.0%

フォロー時骨髄検査所見 赤芽球系 : 低形成 前赤芽球 ~ 好塩基性赤芽球は散見されるが 多染性 正染性赤芽球は殆ど認めない 顆粒球系 : 相対的過形成 右方推移を認める 好中球核クロマチン塊粗大 (+) (Ⅱ 型好中球 >Ⅲ 型好中球 ) 巨核球系 : 正形成 単核 micro Mgk 等 (10% 程度 ) MDS 増悪の所見は認めない 臨床所見等はいかがでしょうか

初診時骨髄分類 NCC 151500μ l Mgk 125/μ l Blast cell 0.8% Pro-Ery 0.8% baso-ery 1.2% poly-ery 5.6% orth-ery 4.6% Total Erythroid 12.6% Neutrophil Pro 4.2% Mye 14.6% Meta 10.4% Stab 10.8% Seg 20.4% Total Myeloid 70.4.0% M/E ratio 5.59 フォロー時骨髄分類 NCC 161000/μ l Mgk 16/μ l Blast cell 1.2% Pro-Ery 0.4% baso-ery 0.8% poly-ery 0.8% orth-ery Total Erythroid 2.0% Neutrophil Pro 5.4% Mye 11.4% Meta 7.6% Stab 15.6% Seg 38.2% Total Myeloid 87.0% M/E ratio 43.5 赤芽球系の低下が進んでいる 赤芽球癆の病態?

( 10 3 /μl) 10 6 好中球絶対数 1500/μL 以下リンパ球絶対数 5000/μL 以上 白血球数の推移 4 2 2010/5/28 8/31 11/16 2011/3/15 7/9 10/25 WBC( 10 3 /μ L) 5.01 5.46 5.66 7.70 7.55 8.01 WBC( 10 3 /μl) 5.01 5.46 5.66 7.7 7.55 8.01 N-Seg( N-Seg(%) 絶対数 ) 0.50 10% 0.68 13% 1.08 19% 1.08 14% 0.91 12% 0.56 7% Ly( Ly(%) 絶対数 ) 83% 4.16 81% 4.42 76% 4.30 84% 6.47 86% 6.49 85% 6.81

大きさ ;RBC1 個半 ~2 個大核形 ; 類円形核クロマチン構造 ; ブロック状核小体 ; 不明瞭 N/C 比 ; 大細胞質 ; 微細なアズール顆粒 (+) Seg 11.0 % Lymph 2.0 % 顆粒 Ly 76.0% Aty-Ly 1.0% Mono 2.0 % Eosino 2.0 % 背景に奇形血小板 (+)

末梢血細胞表面マーカー CD2 97.2% CD3 98.9% CD4 7.8% CD5 20.5% dim CD7 65.3% dim CD8 91.4% CD10 0.2% CD11c 31.1% dim CD16 0.8% CD19 0.2% CD20 1.3% CD23 0.1% CD25 3.5% CD30 0.2% CD34 0.2% CD56 0.4% kappa 0.5% lambda 0.4%

症例 T-LGL CLPD-NK ANKL (T 細胞性 LGL 白血病 ) ( 慢性 NK 細胞増加症 ) ( アク レッシフ NK 細胞白血病 ) CD2 CD3 CD4 CD8 CD16 CD56 CD57 + + - + - - + + - + + (80% 以上 ) - + (80% 以上 ) + - - - + -/dim + + - - +( 多くは ) - + - CD5 dim CD7 dim まれに CD4-CD8- CD5 や CD7 の低発現 欠失 cycd3 はしばしば陽性 CD2 CD5 CD7 弱いか陰性のことが多い TCR 遺伝子再構成を認めない EBV clonality の証明 TCRβ 遺伝子再構成を示す TCR 遺伝子再構成 免疫 glb 遺伝子は胚芽型

TCRβ 遺伝子再構成を認めた TCRγ 遺伝子再構成を認めた

Reti(%) 0.9 診断後網状赤血球の推移 2.2 Reti( 10 6 / μl) 1.8 1.4 1.4 0.5 0.49 0.67 1.0 0.1 0.32 0.35 0.46 0.78 0.93 0.2 2011/10/25 11/1 11/29 12/13 2011/11/1~11/29 エンドキサン 100mg 2011/11/30~12/13 エンドキサン 50mg 2012/1/10 2011/12/27~1/9 シクロスポリン 100mg 2012/1/10~2/8 シクロスポリン 120mg 2012/2/8~2/22 シクロスポリン 150mg

症例まとめ 好中球減少と貧血で紹介され MDS としてフォローされていた 初診時骨髄標本 末梢血 ; 奇形血小板赤芽球核融解像好中球核クロマチン粗大 Micro Mgk 貧血が遅延し 輸血依存であった MDSの増悪を疑い 骨髄検査 ( フォロー時 ) を実施したところ 成熟赤芽球は殆ど認めなかった ( 初診時から赤芽球低形成であった ) 赤芽球癆の病態? 末梢血の Ly 絶対数増加 顆粒 Ly(++) 好中球減少 (<1000/μ L) 末梢血細胞マーカー TCR 再構成等により T-LGL による 赤芽球癆

T 細胞性 LGL 白血病 (T-LGL) とは? 明らかな原因のない 6 か月以上持続する末梢血の顆粒リンパ球の増殖症

大顆粒リンパ球 (Large granular lymphocyte) とは? 胞体に 3 個以上のアズール顆粒を認めるリンパ球のこと その多くは赤血球の 2 倍 ( 約 15μ m) 前後の大きさである アズール顆粒の大きさは問わない 2000 /μl 以上を顆粒リンパ球 (+) と記載する ( 日本臨床検査技師学会 : 血液形態検査に関する勧告法 1996 一部改定より ) 今回の症例で認めた顆粒リンパ球 N/C 比 ; 大細胞質 ; アズール顆粒微細

T-LGL における赤芽球癆合併のメカニズム γδ 型 T 細胞のクローナルな増殖 HLA Class Ⅰ; 発現正常 HLA Class Ⅰ; 発現低下 抑制性 KIR TCR TCR-L 抑制性 KIR LGL 赤芽球系細胞 非赤芽球系細胞 細胞障害

T-LGL 検査所見 末梢血中のリンパ球が2000~20000/μ L 位の症例が多い 著明な好中球減少や貧血を認める そのうちの約半数が赤芽球癆であるが 血小板減少は認めない 末梢血での顆粒リンパ球の確認 細胞マーカー及び TCR 再構成の検索

まとめ ホームページ症例 1 は 骨髄中に特徴的な巨大赤芽球を認めたことにより パルボウィルス B19 の感染による赤芽球癆と診断を得ることが出来た 発熱 白血球減少 血小板減少は感染によるものと考えらえた 提示症例は MDS の増悪を疑ったが 再評価の骨髄検査では赤芽球癆の所見であった 末梢血中のリンパ球絶対数増多に注目したことが T-LGL による赤芽球癆の診断を得るきっかけとなった リンパ球数を絶対数で捉えること 詳細に形態観察を行うことの重要性を再認識した 後天性赤芽球癆の病型 病因は多様であり 長期に渡り免疫抑制療法を必要とする場合もある 臨床所見 末梢血所見 骨髄所見等 様々な所見を総合的に捉えることが重要であると考えられた

参考文献 WHO 分類第 4 版による白血病 リンパ系腫瘍の病態学 澤田賢一 高後裕 小松則夫ほか赤芽球癆診療の参照ガイド ( 平成 22 年度改訂版 ) 藤島直人 廣川誠 澤田賢一赤芽球癆細胞 42 号 270-273 熊野浩太郎人パルボウィルス B19 感染症の様々な病態 會田志乃ほか 17 年間の経過中に赤芽球ろうおよび骨髄異形成症候群を合併した T 細胞大顆粒リンパ球性白血病 (T-LGLL) の 1 例山形済生館医誌第 29 巻第 1 号 94-101