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参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

Microsoft Word - notes①1210(的場).docx

男女共同参画に関する意識調査

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

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Microsoft Word - H29 結果概要

調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

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2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

厚生労働省発表

「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

調査実施の背景 2015 年 4 月から子ども 子育て支援新制度 以下 新制度 が施行され 保育事業の拡大が図られます そのため保育人材の確保が重要な課題となっており 保育士確保のための取組が強化されています しかし保育士のみでは必要量を満たせないことから 子育て分野で働くことに関心のある地域住民に

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

佐藤委員提出資料

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スライド 1

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1


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中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

男女共同参画に関する意識調査

第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

1. 交際や結婚について 4 人に3 人は 恋人がいる または 恋人はいないが 欲しいと思っている と回答している 図表 1 恋人が欲しいと思わない理由は 自分の趣味に力を入れたい 恋愛が面倒 勉強や就職活動に力を入れたい の順に多い 図表 2 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚

1 非正規雇用者用 働き方 に関するアンケート あなた自身についてお答えください F1. 性別 ( ひとつだけ ) 1. 男性 2. 女性 F2. 生年月日 ( 西暦 )19 年月 ( 生まれ ) F3. 最終学歴 ( ひとつだけ ) 在学中の場合は在学中の学校を 中途退学の場合はその前の学歴を選ん

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資料2(コラム)

本日の内容 1. 短時間正社員の定義とそのタイプ 短時間正社員は多様化する正社員のうちの 1 つ 2. 短時間正社員の必要性 社会的要因 労働者側の要因 企業側の要因 3. 短時間正社員制度を機能させるための仕組み : 制度構築 雇用管理 4. 総括

労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

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労働力調査(詳細集計)平成24年平均(速報)結果の要約

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

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4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

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電通総研、「女性×働く」調査を実施

1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

働き方の現状と今後の課題

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)  レベル診断チェックシート

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PowerPoint プレゼンテーション

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

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日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

の手支援策の紹介事例の紹介1 ページに記載した法改正の趣旨や内容を十分に理解した上で 以下の手順で制度導入を進めましょう STEP 1 STEP 1 STEP 2 STEP 3 STEP 4 有期社員の就労実態を調べる社内の仕事を整理し 社員区分ごとに任せる仕事を考える適用する労働条件を検討し 就業

調査レポート

調査の背景 埼玉県では平成 29 年度から不妊に関する総合的な支援施策として ウェルカムベイビープロジェクト を開始しました 当プロジェクトの一環として 若い世代からの妊娠 出産 不妊に関する正しい知識の普及啓発のため 願うときに こうのとり は来ますか? を作成し 県内高校 2 年生 3 年生全員

25~44歳の子育てと仕事の両立

(2) 労働者人口の減少 一方労働人口は減少しつつあり 推計値では 2025 年には 6300 万人まで減少見込みとなっております 問題点 以下のような状況の中で今後どのように労働者を確保して 企業を活性化させるか? 条件 1 労働者人口が減少する 2 フルタイム労働者が減る 3 未熟練従業員が増え

調査実施の背景 わが国は今 人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため 女性の活躍を推進し経済成長を目指しています しかし 出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています 女性の活躍を促進させるためには 継続就業のための両立支援策ととも

少子高齢化班後期総括

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2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

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(2) 月額の手取り収入と扶養控除について 図 2: 月額の手取り収入について ( 既婚女性 n=968 未婚女性 n=156) 図 3:( 上 ) 扶養控除や健康保険免除について ( 月収 10 万円未満 n=802 月収 10 万円以上 n=166) ( 下 ) 働く際に扶養控除などを気にしてい

<本調査研究の要旨>

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記者発表「大学生・大学院生の多様な採用に対するニーズ調査」(平成29年12月26日)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

電通総研、「若者×働く」調査を実施

調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

調査結果 1. 働き方改革 と聞いてイメージすること 男女とも 有休取得 残業減 が 2 トップに 次いで 育児と仕事の両立 女性活躍 生産性向上 が上位に 働き方改革 と聞いてイメージすることを聞いたところ 全体では 有給休暇が取りやすくなる (37.6%) が最も多く 次いで 残業が減る (36

160 パネリスト講演 1 労働市場における男女格差の現状と政策課題 川口章 同志社大学の川口です どうぞよろしくお願いします 日本の男女平等ランキング世界経済フォーラムの 世界ジェンダー ギャップレポート によると, 経済分野における日本の男女平等度は, 世界 142 か国のうち 102 位です

派遣社員の評価に関する 派遣先担当者調査結果

Ⅱ.1 ワーク ライフ バランス施策の定義と類型 (1) ワーク ライフ バランス施策とは work-life balance 1 (2) ワーク ライフ バランス施策の類型

7 8 O KAYAKU spirit I O K T C % E C O M T O K T T M T I O O T C C C O I T O O M O O

調査結果 ~~ 中の働き方 ~~ 中の 日の労働時間 約 8 時間 が最多 9 時間以上 は 割半 正社員 正職員では 9 時間以上 が 4 人に 人以上 9 時間以上 働くことが多かった早産した人では 4 人に 人 流産してしまった人では 5 人に 人の割合に 中の働き方 立ったままの仕事が多かっ

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三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

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第 16 表被調査者数 性 年齢階級 学歴 就業状況別 124 第 17 表独身者数 性 年齢階級 就業状況 家庭観別 142 第 18 表有配偶者数 性 年齢階級 就業状況 家庭観別 148 第 19 表仕事あり者数 性 年齢階級 配偶者の有無 親との同居の有無 職業別 154 第 20 表仕事あ

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第5回 「離婚したくなる亭主の仕事」調査

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

Microsoft Word - Report 月号(松田).doc

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

短時間.indd

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我が国の女性の活躍推進に向けて

第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

女性の活躍推進の意義と課題 意 義 課題 少子高齢化で生産年齢人口が減少 労働力人口の増加 海外を含む企業間競争の中で 性別に関わらず優秀な人材の確保が必要 埋もれている優秀な人材の確保 少子化と生産年齢人口の減少が進む中で 女性の活躍の推進は喫緊の課題 女性の労働力率は 第 1 子出産を機に 6

制度名 No. 1 ( 働 1) フレックスタイム制度 対象者: 営業職の正社員 労働時間の清算期間: 毎月 1 日から末日までの1か月 1 日の所定労働時間は 8 時間 清算期間内の総労働時間: 1 日あたり8 時間として 清算期間中の労働日数を乗じて得られた時間数 ただし 清算期間内を平均し1

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調査の背景 わが国は今 女性の活躍推進を掲げ 結婚や出産をしても働き続けることを後押しする社会を目指しています しかしながら 出産後も働き続ける女性は未だ半数にとどまっているばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も多くありません こうした中 北海道においても地域や職場 家庭などのさまざまな

共通事項 1 キャリアアップ 管理者情報 ( 氏名 ): 役職 ( 配置日 ): 年月日 2 キャリアアップ管理者 の業務内容 ( 事業所情報欄 ) 3 事業主名 印 4 事業所住所 ( - ) 5 電話番号 ( ) - 6 担当者 7 奨励金対象労働者数 ( 全労働者数 ) 9 企業規模 ( 該当

Transcription:

子育て期の女性の就業意識 小学生以下の子どものいる女性のワーク ライフ バランス 研究開発室的場康子 要旨 1 小学生以下の子どもをもち働いている女性に対するアンケート調査結果から 正社員 パートそ れぞれ現在の仕事に満足している人が多いものの ワーク ライフ バランスの観点から 現状に満足していない人もいることがわかった 2 正社員 パートのいずれの働き方においても 多くの人が収入や雇用の安定と子育てとの両立が確保された働き方を望んでいる このような期待に応える制度の一つとして 短時間正社員制度がある程度支持されていることも明らかとなった 3 しかし現状では 同制度について子育て期の働く女性にあまり認知されておらず 企業による導入率も低い まずは その普及のために行政による情報提供の徹底や導入支援が必要である 今後 子育て期の女性のワーク ライフ バランスの実現のためには 働き方の選択肢を増やし 短時間勤務を選ぶことが処遇面で不利にならないような労働環境の整備が求められる 1. はじめに 現在 わが国ではワーク ライフ バランスの推進が重要課題となっている その実現のためには 育児休業制度などの仕事と家庭の両立支援制度や保育所の整備に加え 労働市場の弾力化が必要とされている 特に女性の場合 正社員として働いていても結婚や出産を機に退職することが多く 再び職に就くにはパート等の非正規社員しか選択の余地がないことが多い 実際 女性有配偶者で雇用されて働いている人のうち 正社員は38.7% 非正規社員は61.3% である ( 図表 1) 正社員が 85.6% を占める男性有配偶者と比べると 女性有配偶者の正社員比率が低いことがよくわかる 多くの女性が結婚や出産後 正社員として働き続けることができないことの背景には 家庭と仕事との両立の難しさがあるとされている 長時間労働か短時間勤務かという二者択一的な状況 ( 労働政策研究 研修機構 2010) にある中で 両立のために勤務時間を短くした働き方を選ぶことを余儀なくされ そのことが多くの子育て期の女性の非正規雇用に結びついているのである こうした中 厚生労働省では 働き方の柔軟性を高め より多くの人に適切な雇用 16

機会を与えることができるための一方策として 短時間正社員制度 の導入を進めている 短時間正社員制度とは 育児理由のみでなく 介護や通学 それに地域活動への参加 健康や体力的な理由など様々な事情により 一時的あるいは恒常的に一日の所定労働時間を短くしたり 一週間の所定労働日数を短くしたりして働く制度である ( 図表 2) 同制度の普及により 短時間勤務を選ぶことが非正規雇用に結びつくという障害を取り除くことになるので ワーク ライフ バランス推進施策の一環としても位置付けられている ( 山口 2009) 2010 年 4 月からは 短時間正社員制度導入促進等助成金が創設され 企業が同制度を導入することを国が支援している こうしたことを背景に本稿では 小学生以下の子どもをもち働いている女性に対するアンケート調査結果から 主に就業形態別に就業実態や意識を紹介する これをもとに 子育て期の女性が自らの働き方をどのように認識し 短時間正社員制度へのニーズを含め ワーク ライフ バランスの実現のためにどのような働き方を望んでいるかについて考える 図表 1 雇用者の実態 ( 非農林業 ) 雇用者 ( 役員を除く ) 正社員 非正規社員 パート 派遣社員契約社員その他アルバイト 全体 ( 万人 ) 5,047 3,350 1,696 1,138 108 319 131 雇用者に占める割合 (%) 66.4 33.6 22.5 2.1 6.3 2.6 男性 ( 万人 ) 2,834 2,316 518 246 37 172 63 雇用者に占める割合 (%) 81.7 18.3 8.7 1.3 6.1 2.2 男性有配偶者 ( 万人 ) 1,845 1,580 264 93 16 115 40 雇用者に占める割合 (%) 85.6 14.3 5.0 0.9 6.2 2.2 女性 ( 万人 ) 2,213 1,034 1,178 892 72 147 67 雇用者に占める割合 (%) 46.7 53.2 40.3 3.3 6.6 3.0 女性有配偶者 ( 万人 ) 1,251 484 767 620 30 74 43 雇用者に占める割合 (%) 38.7 61.3 49.6 2.4 5.9 3.4 資料 : 総務省 平成 21 年労働力調査年報 短縮方法 労働契約 給与 パターン 図表 2 短時間正社員制度の概要 正社員と比較して 1 日の所定労働時間を短縮する制度 または週または月の所定労働時間を短縮する制度 あるいは週または月の所定労働日数を短縮する制度労働契約期間の定めがない 時間当たりの基本給及び賞与 退職金等の算定方法等が 同一事業所に雇用されるフルタイムの正規型の労働者と同等であること A. 正社員から一時的に育児や介護のため 一時的に短時間正社員として働く短時間正社員として働く B. 正社員から恒常的に正社員として恒常的または期間を限定せずに 所定労働短時間正社員として働く時間を短く設定する C. 短時間正社員として入社採用時から短時間正社員として働く D. パートから短時間正社員として働く パートとして入社 数年勤務した後 登用試験に合格し 短時間正社員として定年までの雇用契約に変更 資料 : 厚生労働省 短時間正社員制度導入支援ナビ http://tanjikan.mhlw.go.jp/ を参考に筆者作成 17

2. アンケート調査概要 アンケート調査の概要は図表 3の通りである 調査は株式会社クロス マーケティングに委託して インターネット調査により実施した なお 子どもが複数の場合は 最年少の子どもについて回答してもらった 回答者の年齢は 20 歳代が40 人 (5.0%) 30 歳代が439 人 (54.9%) 40 歳代が307 人 (38.4%) 50 歳代が14 人 (1.8%) であり 30~49 歳が9 割以上を占めている 平均年齢は38.2 歳 ( 最年少 21 歳 最高齢 55 歳 ) であった 対象者標本抽出標本数調査方法調査時期 図表 3 アンケート調査概要 首都圏 ( 埼玉 千葉 東京 神奈川 ) と近畿圏 ( 京都 大阪 兵庫 ) の7 都府県 ( 政令指定都市 中核市を含む ) に住んでいる小学生 6 年生以下の子どもがいる 働いている女性 800 人株式会社クロス マーケティングのモニター就業形態が 正社員 及び パート アルバイト ( 以下 パート ) の回答者各 400 人 ( 正社員 パートそれぞれについて 子どもの年齢が0~2 歳 3~5 歳 小学 1~3 年生 小学 4~6 年生の人 各 100 人ずつ ) インターネット調査 2010 年 11 月 5 日 ~8 日 3. 現在の就業状況 (1) 学校卒業後の就業履歴まず 学校卒業後の就業履歴をみる 正社員は 学校卒業後 同じ勤務先で正社員として 継続して働いている ( 育児休業取得を含む ) が41.5% 学校卒業後 勤務先は変更したが 正社員として継続的に働いている が33.5% であり 7 割以上が正社員として継続して働いているという回答である ( 図表省略 ) 学校卒業後 正社員として働いていたが 結婚あるいは出産のために退職し 再び正社員として働いている ( 勤務先の変更の有無を問わず ) (22.0%) のように いったん退職し 再び正社員として働いているという割合は約 2 割である ( その他 2.3% 無効 0.8%) パートは 学校卒業後 正社員として働いていたが 結婚あるいは出産のために退職し 再びパート アルバイトとして働いている ( 勤務先の変更の有無を問わず ) が 81.5% 学校卒業後 パート アルバイトとして継続的に働いている( 勤務先の変更の有無を問わず ) が11.8% である ( その他 2.5% 無効 4.3%) 現在パートで働いている人の多くは 結婚あるいは出産前は正社員として働いていたが 結婚あるいは出産を機に退職し その後パートとして働くことになったという人である (2) 現在の勤め先の勤続年数現在の勤め先の勤続年数は 正社員は 3 年未満 が24.3% 3 年 ~5 年未満 が 18

14.5% 5 年 ~10 年未満 が22.3% 10 年以上 が39.0% である ( 図表省略 ) パートは 3 年未満 が 65.8% 3 年 ~5 年未満 が 18.8% 5 年 ~10 年未満 が 12.0% 10 年以上 が 3.5% である 正社員は継続就業をしているので長期間働いている人が多いが パートでは勤続年数が短い人が多い (3)1 日の平均的な労働時間 通勤時間 1 日の平均的な労働時間は 正社員は 7 時間以上 が88.8% を占める パートは 7 時間未満 が76.1%(4 時間未満 11.8% 4 時間台 20.5% 5 時間台 25.5% 6 時間台 18.3%) である ( 図表省略 ) パートの場合 短時間勤務者が多い また 1 日の平均的な通勤時間は 正社員は 30 分未満 が24.0% 30 分以上 1 時間未満 が29.8% 1 時間以上 が46.3% である パートは 30 分未満 が63.0% 30 分以上 1 時間未満 が21.5% 1 時間以上 が15.5% である 正社員よりもパートの方が通勤時間が短い人が多い パートの場合 自宅からあまり遠くないところで働いている人が多いようだ 4. 現在の就業形態に対する認識 (1) 現在の就業形態を続けたいか現在の就業形態に対して 子育て期の女性は自らどのような認識をしているのか まず 現在の就業形態の継続意向をたずねたところ 現在の就業形態を続けたい が正社員では84.3% パートでは72.3% であった ( 図表 4) 正社員もパートも 大半は現在の就業形態を続けたいと思っている 他方 他の就業形態に変わりたい への回答割合は 正社員では11.0% パートでは24.5% であった パートの場合 4 人に1 人が変わりたいと思っている 他の就業形態に変わりたい と回答した人を対象に 希望する就業形態をたずねた結果をみると 正社員の34.1% が パート に パートの65.3% が 正社員 に変わりたいと回答している ( 図表 5) 図表 4 現在の就業形態の継続意向 ( 就業形態別 ) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 正社員 (n=400) 84.3 4.8 11.0 パート (n=400) 72.3 3.3 24.5 現在の就業形態を続けたい働くことを辞めたい他の就業形態に変わりたい 19

図表 5 望む就業形態 ( 就業形態別 ) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 正社員 (n=44) 34.1 29.5 6.8 29.5 パート (n=98) 65.3 12.2 5.1 17.3 正社員パート アルバイト契約社員派遣社員その他 注 : 図表 4 で 他の就業形態に変わりたい の回答者対象 (2) 現在の就業形態を変更したい理由現在パートであるが 正社員に変更したいという人の理由をみると より多くの収入を得たいから (84.4%) や 雇用が安定しているから (50.0%) への回答割合が高い ( 図表 6) 他方 回答者数が15 人と少ないのであくまでも参考値であるが 現在正社員でパートに変更したいという人は 子育てとの両立ができる働き方をしたいから という理由が80.0% を占めている 図表 6 現在の就業形態を変更したい理由 ( 就業形態及び変更内容別 )<2つまでの複数回答 > 0 20 40 60 80 100 (%) 6.7 より多くの収入を得たいから 84.4 雇用が安定しているから 6.7 50.0 家事 育児の制約がなくなる ( なくなった ) から専門的な資格 技術をいかしたいからキャリアを高めたいから 14.1 10.9 9.4 現在正社員でパートに変わりたいと思っている人 (n=15) 現在パートで正社員に変わりたいと思っている人 (n=64) 体力が続かないから 4.7 33.3 子育てとの両立ができる働き方をしたいから その他 3.1 6.7 80.0 注 : 図表 5 で 正社員のうち パート を望む回答者 及びパートのうち 正社員 を望む回答者が対象 ちなみに 自分の収入に対する満足度をみると 正社員では 満足している ( 満足している と どちらかといえば満足している の合計 以下同様 ) が49.3% 不満である ( 不満である と どちらかといえば不満である の合計 以下同様) が 50.8% である ( 図表省略 ) パートでは 満足している が41.5% 不満である が 20

58.5% である パートのほうが正社員よりも 収入面での満足度が低いことがわかる また 子どもと過ごす時間に対する満足度をみると 正社員では 満足している が33.3% 不満である が66.8% である ( 図表省略 ) パートでは 満足している が60.1% 不満である が40.0% である 子どもと過ごす時間の面では 正社員のほうがパートよりも満足度が低い 自分の就業形態を変更したいと思っている人で パートから正社員に変わりたい人は 収入 や 雇用安定 を また少数派ではあるが正社員からパートに変わりたい人は 子育てとの両立 を期待しているが *1 そのことは自分の就業形態における満足度とも関係があるようだ (3) 仕事満足度他方 仕事の内容ややりがいに対する満足度をみたところ 正社員 ( 満足している 74.0%) もパート ( 満足している 73.0%) も ともに7 割以上が 満足している と回答している ( 図表 7) 就業形態によって仕事満足度に大きな差はなく いずれも大半は満足しているようだ しかしながら 就業形態ごとに 現在の就業形態の継続意向別に仕事満足度をみると 正社員もパートも 現在の就業形態を続けたい 人よりも 他の就業形態に変わりたい 人の方が満足度が低いという結果であった 仕事に対する満足度は 就業形態では大きな差はないが 現在の働き方に対するモチベーションによって異なるようである 図表 7 現在の仕事の内容 やりがいに対する満足度 ( 現在の就業形態の継続意向別 ) 正社員 全体 (n=400) 19.0 55.0 19.3 6.8 現在の就業形態を続けたい (n=337) 20.5 59.3 16.6 3.6 他の就業形態に変わりたい (n=44) 11.4 27.3 34.1 27.3 満足している どちらかといえば満足している どちらかといえば不満である 不満である 全体 (n=400) 現在の就業形態を続けたい (n=289) 他の就業形態に変わりたい (n=98) パート 8.2 満足しているどちらかといえば不満である 18.0 22.1 37.8 55.0 60.9 14.2 40.8 21.0 6.0 13.3 2.8 どちらかといえば満足している不満である 5. 短時間正社員制度について 最後に 冒頭で紹介した短時間正社員制度に対するニーズをみる 短時間正社員制度は 現在の正社員にとっては正社員としての処遇のまま子育てとの両立を図りながら働くことを 現在のパートにとっては正社員としての処遇で雇用安定が確保されながら子育てと両立した働き方を可能とする制度である まさに 正社員とパート双方 21

が期待している雇用安定と子育てとの両立の いずれをも満たす働き方の実現を目指すものである アンケート調査では 短時間正社員制度について フルタイムの正社員より所定労働時間は短いものの 正社員としての待遇 ( 例えば 正社員の月給を時間比例で支給 ) を得られる働き方を選択できる制度 と説明した上で 同制度の利用状況などをたずねた まず 短時間正社員制度が勤務先に あり と回答した人は回答者全体の17.4% なし( わからない ) が82.6% であった ( 図表省略 ) 現状では同制度はあまり普及していないようだ 短時間正社員制度について なし ( わからない ) と回答した人に その利用意向をたずねた結果を就業形態別にみると 利用したい 割合は正社員では40.7% パートでは29.4% であり 正社員のほうが高い ( 図表 8) ただし 同制度の認知度が低いためか わからない の割合が正社員で39.1% パートで57.7% となっている そこで わからない の回答者を除いて 利用したい 割合をみると 正社員は66.9% パートは69.5% であり ほぼ同じくらいの割合であった ( 図表省略 ) また 現在の就業形態の継続意向別に利用意向をみると 正社員 パートいずれも 現在の就業形態を続けたい 人よりも 他の就業形態に変わりたい 人の方が短時間正社員制度の利用意向が高い ( 図表 9) 特に 正社員で他の就業形態に変わりたい人の6 割以上が同制度を利用したいとしており ニーズが高いことがわかる 図表 8 短時間正社員制度の利用意向 ( 就業形態別 ) 全体 (n=661) 正社員 (n=297) パート (n=364) 34.5 29.4 40.7 12.9 16.2 20.2 49.3 57.7 39.1 制度があれば利用したい制度があっても利用したくないわからない 注 : 勤務先に短時間正社員制度が なし ( わからない ) と回答した人が対象 図表 9 短時間正社員制度の利用意向 ( 現在の就業形態の継続意向別 ) 正社員 パート 現在の就業形態を続けたい (n=252) 38.1 21.8 40.1 現在の就業形態を続けたい (n=260) 24.6 14.2 61.2 他の就業形態に変わりたい (n=32) 制度があれば利用したいわからない 62.5 6.3 31.3 制度があっても利用したくない 他の就業形態に変わりたい (n=92) 制度があれば利用したいわからない 注 : 正社員のうち 勤務先に短時間正社員制度が なし 注 : パートのうち 勤務先に短時間正社員制度が なし ( わからない ) と回答した人が対象 ( わからない ) と回答した人が対象 40.2 10.9 48.9 制度があっても利用したくない 22

前述のように 他の就業形態に変わりたいという人は 雇用安定や子育てとの両立などワーク ライフ バランスの観点を意識している人が多いことを踏まえると 短時間正社員制度もその期待に応える制度の一つとして考えられているといえよう 6. まとめ 以上 調査結果から 現在正社員の人でも パートの人でも それぞれ現在の仕事に満足している人が多いものの ワーク ライフ バランスの観点から 現状に満足していない人もいることがわかった 現在パートの4 人に1 人は他の就業形態に変わりたいと思っており その大半は 収入 や 雇用の安定 を期待して 正社員 を希望している 他方 少数ながら現在正社員の中でも 家庭との両立を可能とするためにパートを望む人もいる まさに正社員 パートのいずれの働き方においても 多くの人が収入や雇用の安定と子育てとの両立が確保された働き方を望んでいる このような期待に応える制度の一つとして短時間正社員制度が ある程度支持されていることも明らかとなった しかし現状では同制度は子育て期の働く女性にあまり認知されておらず 企業による導入率も低い まずは その普及のために行政による情報提供の徹底 並びに同制度のような両立支援制度を企業が導入しやすいよう行政による支援が必要である 今後 子育て期の女性のワーク ライフ バランスの実現のためには 企業とともに行政が多様な働き方を認めるための支援策を拡充させ 働き方の選択肢を増やし 短時間勤務を選ぶことが処遇面で不利にならないような労働環境の整備が求められる ( 研究開発室主任研究員 ) 注釈 *1 ちなみに 内閣府 男女の働き方と仕事と生活の調和 ( ワーク ライフ バランス ) に関する調査結果概要 (2006 年 1 月調査 ) によれば 夫婦ともに正規職員で小学生以下の子どもがいる女性の場合 就業時間 日数を 短くしたい 減らしたい と思っている割合が31.4% 柔軟に変えたい が49.0% であり 就労時間 日数の短縮 柔軟化を希望する人が多く 子育てとの両立への期待の高さがうかがえる 参考文献 山口一男,2009, ワーク ライフ バランス実証と政策提言 日本経済新聞出版社. 労働政策研究 研修機構,2010, 女性の働き方と出産 育児期の就業継続 就業継続プロセスの支援と就業継続意欲を高める職場づくりの課題 労働政策研究報告書 (122). 23