肝機能の診断 慢性肝炎 肝硬変の原因本日の目標 肝臓 胆のう 膵臓内科越智裕紀 肝機能異常の鑑別診断が出来る様になる 慢性肝炎 肝硬変の原因なぜができないか 肝機能異常の種類 鑑別疾患が多い 何から診断すれば良いかわからない 緊急性の判断ができない ウィルス性肝炎の検査がよめない 1 の手順 1 の手順 1
慢性肝炎 肝硬変の原因をする状況 1 救急外来 2 病棟患者の対応 緊急性の有無を見極める 高度上昇 (500U/L 以上 ) 中等度上昇 (100~ 500 U/L 以下 ) 軽度上昇 (100 U/L 未満 ) 肝機能異常を示す疾患 鑑別疾患 急性肝炎 劇症肝炎 ショック肝 ( ピーク時 ) 総胆管結石 慢性肝炎 自己免疫性肝炎 薬物性肝障害 脂肪肝 閉塞性黄疸原発性胆汁性肝硬変 アルコール性肝炎 筋疾患 (AST ) 心筋梗塞 (AST ) 溶血性疾患 (AST ) 慢性肝炎 肝硬変 肝細胞癌 脂肪肝 自己免疫性肝炎薬物性肝障害 甲状腺疾患 をする手順 1 非肝疾患を除外心筋梗塞甲状腺機能筋疾患 2 肝外胆道疾患を除外総胆管結石膵癌などの閉塞性黄疸 発熱と腹痛あれば緊急性あり 3 肝疾患の緊急疾患の除外急性肝不全 1 の手順 AST/ALT について アミノ酸のアミノ基をケト酸のケトン基に転移させる酵素 アミノ酸代謝に関与 肝細胞が障害 ( 破壊や壊死 ) を受けたときに血中に逸脱する AST は広域に分布 ALT は肝に集中 AST/ALT の分布 AST 心臓 肝臓 > 筋肉 > 腎臓 >> 膵臓 ALT 肝臓 >> 腎臓 >> 筋肉 心臓 膵臓 2
AST/ALT 異常を来す疾患心臓 : 心筋梗塞心不全 ( うっ血肝 ) etc 筋肉 : 横紋筋融解症皮膚筋炎 etc その他 : 甲状腺機能膵炎 ALP/γGTP に異常を来す疾患 胆汁鬱滞 : 閉塞性黄疸 PBC( 肝内胆汁鬱滞 ) その他 : 甲状腺疾患骨疾患 ALP/γGTP について ALP 糖 脂肪の吸収 リン酸や Ca イオンの吸収と輸送 核酸合成の調節 骨の破壊と化骨に関与する 肝細胞膜と毛細胆管に多く分布 胆汁への排出障害 胆肝内圧亢進による肝での生成亢進で血中濃度上昇 γ-gtp 肝の解毒 抱合 排泄機能に重要なグルタチオンの分解 再合成に関与 肝細胞のミクロソームや毛細胆管膜に局在 アルコールや薬剤などで誘導を受け 血中濃度が上昇する 分画分布病態 ALP-1 肝 ( 高分子 ) 閉塞性黄疸 ( 胆管癌 膵頭部癌 総胆管結石 ) ALP-2 肝 毛細胆管 ALP-1の病態に加え 胆道感染 ほとんど全ての肝胆道疾患 ALP-3 骨骨疾患 骨代謝異常 成長期 ALP-4 胎盤癌 妊娠後期 悪性腫瘍 ALP-5 小腸血液型 B 型 O 型の分泌型の人の食後 ALP-6 ALP に異常を来す疾患 免疫グロブリン結合性 ALP 潰瘍性大腸炎の活動期 関節リウマチ γ-gtp に異常を来す疾患 ChE について 高度上昇 (200U/L 以上 ) 中等度上昇 (100~200U/L) 軽度上昇 (100U/L 以下 ) 病態 アルコール性肝障害 閉塞性黄疸 慢性活動性肝炎 薬物性肝障害 肝内胆汁うっ滞 アルコール性肝障害 薬物性肝障害 慢性活動性肝炎 肝硬変 肝癌 脂肪肝 胆道疾患 アルコール性肝障害 薬物性肝障害 慢性肝炎 脂肪肝 肝細胞において合成され 血中に分泌される酵素で 肝細胞障害 特に蛋白合成障害時に低下する 肝疾患では多くの場合が血清 ALB と相関が見られ 過栄養性の脂肪肝で高値を示す 農薬やサリンなどの有機リン中毒で著明に低下する 3
慢性肝炎 肝硬変の原因肝機能検査 をする手順 1 非肝疾患を除外心筋梗塞甲状腺機能筋疾患 2 肝外胆道疾患を除外総胆管結石膵癌などの閉塞性黄疸 発熱と腹痛あれば緊急性あり 3 肝疾患の緊急疾患の除外急性肝不全 :PT.Bil のチェック 問診 診察採血画像 問診 診察 バイタル確認 / 腹痛 / 黄疸の有無 飲酒歴 薬物歴 (2-3 ヶ月以内の新規開始 ) サプリメントの有無 家族歴 ( 肝疾患の有無 ) 輸血歴 入れ墨の有無 生肉や生の海鮮類の摂取 採血 CBC(PLT) AST/ALT/LDH/GTP/ALP Tbil( 直接間接も ) PT ChE( 蛋白合成の指標 ) ZTT/TTT HBs 抗原 HCV 抗体 4
画像 腹部超音波が最も大切 腹部超音波 : 閉塞性黄疸 : 胆管拡張 慢性肝疾患 : 肝の性状腹水 肝腫瘍 造影 CT : 閉塞性黄疸肝腫瘍 慢性肝炎 肝硬変の原因 1. 肝炎ウイルス 5. 自己免疫肝疾患 6. その他 ( 甲状腺心疾患など ) 慢性肝炎 肝硬変の原因急性肝不全を来す疾患 1. 肝炎ウイルス ( 特に HBV) 5. 自己免疫肝疾患 (AIH) 6. その他 ( 甲状腺心疾患など ) 慢性肝炎 肝硬変の原因 1. 肝炎ウイルス 2. HBV 脂肪肝 HCV HAV HEV 3. ヘルペス属など薬物 発熱の有無 5. 自己免疫肝疾患問診採血 6. その他 (HCV 抗体 ( 甲状腺 HBs 抗原など心疾患など ) ) 慢性肝炎 肝硬変の原因 4. 代謝異常飲酒歴 ( 鉄や銅肥満 ) 5. 自己免疫肝疾患 DMなどの生活習慣病 6. その他腹部超音波 ( 甲状腺心疾患など ) 慢性肝炎 肝硬変の原因 1. 肝炎ウイルス 5. 自己免疫肝疾患薬物摂取歴サプリメントや髪染めなども 6. その他 ( 甲状腺心疾患など ) 5
1. 肝炎ウイルス慢性肝炎 肝硬変の原因 5. 自己免疫肝疾患 6. その他 ( 身体診察甲状腺心疾患など ) 採血 慢性肝炎 肝硬変の原因 5. 自己免疫肝疾患 身体診察問診 ( 膠原病の有無など ) 採血 をする手順 1 非肝疾患を除外心筋梗塞甲状腺機能筋疾患 2 肝外胆道疾患を除外総胆管結石膵癌などの閉塞性黄疸 発熱と腹痛あれば緊急性あり 3 肝疾患の緊急疾患の除外急性肝不全 :PT.Bil のチェック 問診 診察 バイタル確認 / 腹痛 / 黄疸の有無 飲酒歴 薬物歴 (2-3 ヶ月以内の新規開始 ) サプリメントの有無 家族歴 ( 肝疾患の有無 ) 輸血歴 入れ墨の有無 生肉や生の海鮮類の摂取 採血 CBC(PLT) AST/ALT/LDH/GTP/ALP Tbil( 直接間接も ) PT ChE( 蛋白合成の指標 ) ZTT/TTT HBs 抗原 HCV 抗体 画像 腹部超音波が最も大切 腹部超音波 : 閉塞性黄疸 : 胆管拡張 慢性肝疾患 : 肝の性状腹水 肝腫瘍 造影 CT : 閉塞性黄疸肝腫瘍 6
慢性肝炎 肝硬変の原因 1. 肝炎ウイルス 5. 自己免疫肝疾患 6. その他 ( 甲状腺心疾患など ) 1 の手順 B 型肝炎の検査 B 型肝炎の検査 HBs 抗原 HBs 抗体 HBs 抗原 HBs 抗体 HBV-DNA HBV-DNA HBcrAg HBc 抗体 HBcrAg HBc 抗体 HBe 抗原 HBe 抗体 HBe 抗原 HBe 抗体 遺伝子型 HBcrAg: HB コア関連抗原 遺伝子型 HBcrAg: HB コア関連抗原 B 型肝炎の検査 B 型肝炎の検査 HBe 抗原 HBe 抗体 HBV-DNA HBe 抗原 / 抗体はウイルスの活動性 HBe 抗原 (+) HBe 抗体 (-) 活動性あり HBe 抗原 (-) HBe 抗体 (+) 活動性低い (10% は活動性あり ) ウイルスの量 感染初期 :10 9 個以上 /ml 肝炎期 : 10 4-5 個以上 /ml 少ない方が肝がん発生を抑制 7
B 型肝炎の検査 HBs 抗原 HBcrAg HBs 抗原と HBV コア関連抗原は 血液内だけでなく 肝臓内のウイルス量を反映 治療効果予測 B 型肝炎の治療対象 慢性肝炎 ALT(GPT) が 30 以上 ウイルスの量が多めの人 (HBV-DNA が 4.0 より多い人 ) 肝硬変 HBV-DNA が陽性の人 ( 日本肝臓学会 B 型肝炎診療ガイドライン第 2 版 ) B 型肝炎の治療対象 HBs 抗原消失が最終目標 ペグインターフェロン治療 (48 週間 ) 20% で肝炎安定 12%/5 年で HBs 抗原消失 核酸アナログ製剤テノホビルとエンテカビルテノホビルで HBs 抗原減少効果条件次第で中止できる場合あり ( 日本肝臓学会 B 型肝炎診療ガイドライン第 2 版 ) De novo Hepatitis B virus infection HBs 抗原陰性化に伴う HBs 抗体や HBc 抗体の出現 以前は臨床的に HBV 治癒とされていた 実際には微量の HBV が肝細胞内などに存在 HBs 抗原陰性,HBs 抗体又は HBc 抗体陽性例に化学療法, 免疫抑制などを行った場合に HBs 抗原陽性化及び肝炎の発症が見られることあり de novo HBV infection ( 日本肝臓学会 B 型肝炎診療ガイドライン第 2 版 ) 1 の手順 C 型肝炎について 急性感染後 60~80% の確率で慢性化する急性肝不全を発症する確率は極めて低い HCV 抗体は感染後 2 から 3 ヶ月以内は陰性 HCV 抗体 HCVRNA C 型慢性肝炎陽性 陽性 既往感染 陽性 陰性 治療対象 :HCVRNA 陽性 ALT31 以上特に PLT15 万以下は対象 8
Direct Acting Antivirals(DAAs) 一覧 C 型治療の変遷と効果 ウイルス陰性化率 (%) 100 80 60 40 C 型肝炎の撲滅 20 0 IFN 単独 24 週 IFN 単独 48 週 IFN RBV ペグ IFN RBV ペグ IFN RBV DAA DAAs 脂肪肝の分類 脂肪肝 1 の手順 アルコール性 単純脂肪肝 非アルコール性 (NAFLD) 脂肪肝炎 (NASH) 非アルコール性の定義一日当たりの飲酒量が 20g 以下 症例 血液検査結果 症例 68 歳女性 主訴 なし ( 精査目的 ) 既往歴 18 歳 : 虫垂炎手術 家族歴 特記事項なし 生活歴 飲酒 : 機会飲酒喫煙 : なし 現病歴 30 歳時に耐糖能異常を指摘されていた 平成 18 年 8 月 糖尿病の内服治療を開始した HbA1cは8% 前後で推移していた 身体所見 身長 :145 cm体重 :69kg BMI:32.3kg/m² 腹囲 :96cm ( 最大体重 :70kg (58 歳 ) 20 歳 :50kg) 血圧 :145/81mmHg 脈拍 :73/min 体温 :36.6 WBC 6,100 / l RBC 454 x10 4 / l Hb 14.0 g/dl Hct 42.7 % Plt 19.8 x10 4 / l PT 81.8 % TP 7.3 g/dl Alb 3.7 g/dl T.Bil 0.7 mg/dl ChE 269 U/L AST 51 IU/l ALT 47 IU/l LDH 229 IU/l ALP 313 IU/l GTP 34 IU/l TG 152 mg/dl T.Cho 192 mg/dl HDL-C 42 mg/dl LDL-C 115 mg/dl Na 140 meq/l K 3.7 meq/l Cl 102 meq/l BUN 14 mg/dl Cre 0.44 mg/dl CRP 0.07 mg/dl Glu 221 mg/dl HbA1c 8.8 % HBs 抗原 (-) HCV 抗体 (-) ANA (-) 9
血小板数 (x10 4 /μl) 2016/10/21 線維化と血小板の関係 NASH による発癌 20 万以下では進行した NASH を疑う 肝細胞癌の併発 NASH (68) 11.3%/5 年 HCV (69) 30.5%/5 年 生命予後 NASH (68) 75.2%/5 年 HCV (69) 73.8%/5 年 (Yatsuji S, Hashimoto E, et al:j Gastroenterol & Hepatol) (Eguchi, et al. J Gastroenterol. 46:1300-1306, 2011) NASH(F3~4)89 名 平均 44 か月観察 5 名で発癌 20%/5 年累積発癌率 (Hashimoto E, Yatsuji S, et al: Hepatol Res33:72,2005) 10