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カルシウム代謝疾患の救急 : 高カルシウム血症クリーゼと低カルシウム血症性テタニー 要旨 高カルシウム血症と低カルシウム血症は, いずれも症候性であれば適切な緊急対応が必要な病態である. 意識障害と急性腎障害の場合は高カルシウム血症を, テタニーと痙攣の場合は低カルシウム血症の可能性を想起することが大切である. また, 低カルシウム血症の原因として低マグネシウム血症が潜在する可能性にも配慮する. 竹内靖博 日内会誌 105:658~666,2016 Key words 副甲状腺ホルモン, ビタミン D, ビスホスホネート, カルシトニン, 低マグネシウム血症 はじめに血中カルシウム濃度の著しい上昇は意識障害や急性腎障害をもたらし, 救急対応が必要となる. また, 血中カルシウム濃度の低下は痙攣発作やテタニーをもたらし, やはり救急処置が必要となる. 臨床現場でこのような症状に遭遇した際には, カルシウム代謝異常の可能性を想起することが重要であり, それぞれに対する適切な緊急対応の原則を理解しておくことが望ましい. 1. 高カルシウム血症クリーゼの初期治療意識障害や急性腎障害の患者に高カルシウム血症を認めることは稀ではない. 高カルシウム 血症による症状の発現は血中カルシウム濃度の上昇速度に依存するため, 血清カルシウム値のみでは重篤度を判断できない. 意識障害や腎不全を呈する症候性の高カルシウム血症であれば, 原因疾患や病態の検討を進めつつ, 速やかに治療を開始することが肝要である. 高カルシウム血症の原因には, 悪性腫瘍や原発性副甲状腺機能亢進症のように骨吸収亢進に基づく骨からのカルシウム動員による場合と, サルコイドーシスなどの慢性肉芽腫疾患あるいは活性型ビタミンD 薬によるビタミンD 作用過剰による場合とに大別される 1). なお, すでに維持透析中の患者や末期腎不全の患者では直ちに血液浄化療法の適応となるので, 腎不全に関する成書を参照されたい. 虎の門病院内分泌センター Endocrine and Metabolic Emergencies;Points of Initial Management. Topics:IV. Emergency medical care for patients with hypercalcemia or hypocalcemia. Yasuhiro Takeuchi:Toranomon Hospital Endocrine Center, Japan. 658 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号

特集 内分泌 代謝疾患の救急 ~ 初期対応のポイント ~ 1) 十分な輸液原因の如何によらず, 高カルシウム血症の患者は, 腎集合管における水再吸収不全および食欲不振などにより, 高度の脱水状態にある 1). 速やかにカルシウム リンを含まない生理食塩水を基本とした輸液を十分に行う. 必要な輸液量は患者ごとに異なるが, 緊急性の高い場合は少なくとも1 日 2リットルあるいはそれ以上になることが多い. 輸液量は合併する腎不全や心不全に配慮しつつ, 可能な限り大量に行う. NaCl( 塩化ナトリウム ) を含む十分な輸液により, 脱水の改善のみならず, 尿中へのカルシウム排泄が促進される. 心不全を回避することやカルシウム排泄をさらに促進することを目的にループ利尿薬を適宜併用する 1). サイアザイド利尿薬はカルシウム排泄を抑制し, 高カルシウム血症を悪化させるため不適切である. 2) 原因薬剤の中止高カルシウム血症の原因となる薬剤には, 活性型ビタミンD 製剤, サイアザイド系利尿薬, テオフィリン, 大量のビタミンA, 炭酸リチウム 2) などがある. なお, 成書に記載されているビタミンD 中毒症の臨床像は天然型ビタミンD の大量摂取によるものであり, 活性型ビタミン D 製剤の作用過剰による場合とは異なることに注意する. 頻度が高いのは活性型ビタミンD 製剤である. 代表的な活性型ビタミンD 製剤であるアルファカルシドールやカルシトリオールの血中半減期は15 時間程度であり, 休薬により2~3 日後には高カルシウム血症の改善傾向が認められる. 一方, 活性型ビタミンD 製剤でもエルデカルシトールは血中半減期が50 時間程度であるため, 休薬後の高カルシウム血症の改善にいくらか時間がかかる. また, 天然型ビタミンD 過剰摂取によるビタミンD 中毒症では, 体内でのビタミンD 半減期が少なくとも15 日以上と長期 になるため, 活性型ビタミンDによる場合とは休薬後の経過が異なる. 3) ビスホスホネート点滴静注骨吸収亢進によると推定される場合は, 輸液を開始した後に, 高カルシウム血症治療用のビスホスホネート薬 ( ゾメタ R, アレディア R など ) の点滴静注を検討する. ビスホスホネートはピロリン酸類似の化学物質であり, 高い親和性で骨に取り込まれ, 骨吸収を強力に抑制することで血中カルシウム濃度を低下させる 3). 輸液のみで十分に血中カルシウム濃度が改善する患者にビスホスホネートを投与すると, 遷延性の低カルシウム血症をもたらす危険性がある. 一方, ビスホスホネート点滴の効果発現には24~72 時間かかる 4) ため, 十分な尿量が確保されている間に時期を失することなく投与することが必要である. ビスホスホネートは未変化体で腎から排泄されるため, 急速に静注すると血中濃度の上昇により, 急性腎尿細管壊死を惹起する恐れがある 8) ので, 添付文書に従って緩除に点滴することが必要である. 最も短時間で投与できるゾメタ R は15 分での投与が可能とされている. しかしながら, ビスホスホネートの効果は血中濃度には依存せず, 骨に取り込まれた量に依存すると考えられていることから, 特に腎障害を認める場合には, できる限り緩除に点滴することがポイントとなる. 一方, 高カルシウム血症における腎障害は, 高カルシウム血症の治療により改善することが期待されるため, 高度の腎障害があっても, 尿量が確保できていれば, ビスホスホネートの投与を考慮すべきである. ビスホスホネートの高カルシウム血症改善効果は, 少なくとも 1 週間程度は持続することが期待される 4). したがって, 再投与の時期は, 初回投与から1 週間以上空けることになっている. 高カルシウム血症に対する点滴静注用ビスホ 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号 659

スホネートの適応症は, 悪性腫瘍を原因とするものに限られるため, 保険診療上の配慮が必要である. ただし, 本薬剤は, 緊急性の高い重症高カルシウム血症においては, 原因の如何によらず投与を考慮すべき薬剤であると広く認識されている. 骨粗鬆症治療用のビスホスホネート製剤は, 適応症のみならず血中カルシウム低下効果からみても, 緊急を要する高カルシウム血症には不適当である. ビスホスホネート製剤の点滴中および点滴後当日から翌日にかけて, しばしば頭痛や発熱を認める. これはアセトアミノフェン投与などで対応可能である. 頭痛や発熱を認めない場合も, 全身の著しい倦怠感を来たすことが多い. 眼球結膜の充血を認めることもある. 点滴静注用のビスホスホネート薬を繰り返し使用中に, ビスホスホネート関連顎骨壊死 (osteonecrosis of the jaw:onj) と呼ばれる特異な病状が上下の顎骨に生じることがある 5). 病理学的には骨壊死というよりは, 骨髄炎の治癒が遷延した状態と考えられる. 本症は, 主に腫瘍関連の骨病変の治療のために定期的にビスホスホネートの点滴静注を受けている患者に発症する. ビスホスホネートと同様に強力な骨吸収抑制作用を有するデノスマブ投与中の発症も報告されている. 発症には背景因子の影響が大きいことが指摘されており, 糖尿病や肥満, 喫煙, 飲酒, ステロイド治療, 悪性腫瘍治療が発症危険因子とされている. また, 口腔内衛生状態も非常に重要である. 4) カルシトニン骨吸収亢進による高カルシウム血症と考えられる場合は, カルシトニン製剤 ( エルシトニン R ) の併用を検討する. カルシトニンは血清カルシウム濃度の低下効果ではビスホスホネートに劣るものの, 速効性が期待できる薬剤であ る. 作用時間が短いために,1 日 2 回の静注もしくは筋注が必要となる. また, エスケープ現象 が知られており,1~2 週間で効果が得られなくなることが多い. カルシトニンによる血中カルシウム濃度低下作用は, 早ければ3 時間で認められることから, 治療開始時にはビスホスホネートと併用することでより高い治療効果が期待できる. 5) 糖質コルチコイドサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患を原因とするビタミンD 作用過剰による高カルシウム血症では, 中等量の糖質コルチコイド ( プレドニゾロン20~30 mg/ 日 ) により1~2 週間で病状の改善を認める. これは, 肉芽腫病変内における異所性のビタミンD 活性化酵素の発現を, 糖質コルチコイドが抑制することに基づく効果である. 6) 血液透析 1)~5) の治療を組み合わせることにより治療効果の得られる場合が多いが, 時には全く高カルシウム血症の改善がみられないことや腎不全が進行する場合もある. そのような状況では, 時期を失することなく血液透析を検討するべきである. 7) 高カルシウム血症治療中の低リン血症への対処悪性腫瘍が原因の高カルシウム血症では, しばしば著しい低リン血症を伴う. また, ビスホスホネート製剤投与により骨吸収が抑制され, 骨からのリンの動員が低下するので, 治療によりさらに低リン血症が進行することが多い. 著しい低リン血症は致命的な組織障害の原因となるので, 血中リン濃度が2 mg/dlを大きく下回る場合には, 低リン血症補正用の静注製剤を用いて輸液による補正を考慮する. しかしながら, 高カルシウム血症が存在する状況で経静脈的にリンを投与すると, 肺などの主要臓器に急激な 660 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号

特集 内分泌 代謝疾患の救急 ~ 初期対応のポイント ~ 家族性または後天性低 Ca 尿性高 Ca 血症 (FHH/AHH) 原発性副甲状腺機能亢進症 悪性腫瘍に合併する高 Ca 血症 PTH 上昇 PTHrP 上昇 FECa<1% 2 nd Step 3 rd Step 高 Ca 血症 1 st Step FECa>1% PTH 低下 問診 サイアザイドテオフィリンビタミン A 中毒ビタミン D 作用過剰炭酸リチウム 1,25 水酸化ビタミン D 高値 慢性肉芽腫症 ( サルコイドーシスなど ) 悪性リンパ腫 Jansen 型骨幹端軟骨異形成症 4 th Step 広範な骨破壊甲状腺機能亢進症副腎不全 ( 原発性 中枢性 ) など 図 1 高カルシウム (Ca) 血症の原因疾患の診断フロー 石灰化を生じ致命的な転帰をたどる可能性があるため, 十分に経験を積んだ医師と相談のうえ実施することが望ましい. 8) 高カルシウム血症治療におけるピットフォール (1) 長期にわたり経静脈栄養を行っている患者では, 必要以上にビタミンDを補充することにより高カルシウム血症を生じることがある. (2) 維持透析患者における続発性副甲状腺機能亢進症の治療薬として用いられているシナカルセト ( レグパラ R ) は, 術後再発や難治性の原発性副甲状腺機能亢進症あるいは副甲状腺癌による高カルシウム血症の治療にも使用可能である. この薬剤は, 副甲状腺ホルモンの分泌を抑制することにより高カルシウム血症の改善をもたらすものであり, その他の病態には使用できない. また, 高カルシウム血症緊急症の場合にファーストラインで考慮すべき薬剤ではない. 2. 高カルシウム血症を来たす疾患の鑑別と特徴 急性期の処置を終えたら, 高カルシウム血症 の原因疾患を同定することが治療方針の決定において重要となる. 原発性副甲状腺機能亢進症の急性増悪であれば, 血中カルシウム濃度の改善を待って, 速やかに責任病巣となる副甲状腺の摘除術を行う必要がある. また, サルコイドーシスが原因であれば, 高カルシウム血症のみならず, 原疾患の治療にもプレドニゾロンなどのステロイド治療が必要となる. 原因が悪性腫瘍の場合は, 原疾患の適切な診断が重要であり, とりわけ多発性骨髄腫や悪性リンパ腫などの血液疾患では, 高カルシウム血症が契機となり診断されることも稀ではない. 高カルシウム血症の診断の流れを図 1に示す. 外来診療で遭遇する高カルシウム血症の原因として最も頻度の高い疾患は原発性副甲状腺機能亢進症である. 一方, 入院患者では, 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の頻度が最も高い施設が多いと推測される. しかしながら, 原発性副甲状腺機能亢進症の有病率は最大で0.1% 程度と推測されるほど高率である 6) ため, 担癌患者に併存症として認められることも稀ではない. 高カルシウム血症を来たす疾患の鑑別には, 補正血清カルシウム値と血中副甲状腺ホルモン 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号 661

腎不全 血中 intact PTH (pg/ml) 65 腎機能正常な場合ビタミン D 欠乏症マグネシウム欠乏症など 健常者 PTH 依存性高カルシウム血症 15 0 副甲状腺機能低下症 8.7 10.1 補正血清 Ca (mg/dl) PTH 非依存性高カルシウム血症 図 2 血中カルシウムと副甲状腺ホルモン濃度からみた高カルシウム血症の病態生理的には血清補正カルシウム (Ca) と血中副甲状腺ホルモン (intact PTH) 濃度との間には負の相関が認められる. 高 Ca 血症と同時に不適切な intact PTH 濃度の上昇を認める場合は,PTH 依存性高 Ca 血症と診断される. また, 高 Ca 血症にもかかわらず intact PTH が基準値を下回る場合は,PTH 非依存性高 Ca 血症と診断される. なお, 腎機能が低下しておらず血清補正 Ca 値が正常もしくは低下している症例で,intact PTH 高値を認める場合の多くはビタミン D 欠乏による続発性副甲状腺機能亢進症である. (parathyroid hormone:pth) 濃度の相対的評価が必要である ( 図 2). 生理学的あるいは病態生理学に重要なのは血中カルシウムイオンであるが, 技術的な問題から, 臨床現場では蛋白質などと結合した総カルシウム濃度が測定される. 血中カルシウムイオンの約 50% はアルブミンを主体とする蛋白と結合しているため, 血中カルシウム濃度の評価は, 血清アルブミン値で補正した補正血清カルシウム値 [= 実測カルシウム (mg/dl)+4- アルブミン (g/dl)] を用いることが多い. ただし, 血清アルブミン値が4を超える場合は補正を行わない. また, アルブミン濃度が4から離れるほど, カルシウムイオン濃度との相関性が低くなることから, 念のため, イオン化カルシウムを実測することが望ましい. 1) 第 1 段階 : 薬剤性の高カルシウム血症高カルシウム血症の原因となる薬剤を図 1に示した. サイアザイド内服中は, 尿中へのカルシウム排泄低下により軽度の高カルシウム血症を呈することがある. 天然型のビタミンAやビタミンDの大量摂取により, 中毒症状として高カルシウム血症が惹起されることがある. また, 日常診療では, 活性型ビタミンD 製剤の不適切な投与により, 高カルシウム血症となることにしばしば遭遇する. いずれにおいても, 原発性副甲状腺機能亢進症など潜在する他の疾患が, これらの薬剤により顕在化する場合があることに注意する. 炭酸リチウムの長期内服により, 稀に副甲状腺がPTHの自律性分泌能を獲得することがあ 662 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号

特集 内分泌 代謝疾患の救急 ~ 初期対応のポイント ~ る 2). この場合, 生化学的には原発性副甲状腺機能亢進症と区別がつかないので注意する. 2) 第 2 段階 :PTH 依存性高カルシウム血症高カルシウム血症の鑑別診断に最も重要なステップは,PTH 依存性か否かの判断である.PTH の評価は,intact PTHもしくはwhole PTHで行う. 腎不全時にはintact PTHの比率が高まり, 両者が乖離することがあるが,CKD(chronic kidney disease) ステージ 3(eGFR(estimated glomerular filtration rate)>30 ml/ 分 /1.73 m 2 ) までであれば, いずれを用いてもおおむね問題はない. 高カルシウム血症の存在下でPTHが高値であれば,PTH 依存性高カルシウム血症である ( 図 1,2). ただし,PTHが基準値内であっても高カルシウム血症に対しては不適切に高値という場合もある ( 図 1) 7). PTH 依存性高カルシウム血症のほとんどは原発性副甲状腺機能亢進症である. その他の可能性として, 家族性もしくは後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症 (familial or acquired hypocalciuric hypercalcemia:fhh or AHH) もしくは異所性 PTH 産生腫瘍が挙げられる.FHH はカルシウム感知受容体遺伝子の不活性化変異による疾患であり, 常染色体優性遺伝の先天性疾患である.AHH はFHHと同様の病態を示すが, 後天性疾患であり, カルシウム感知受容体に対する自己抗体の出現によるものと考えられている. これらの病態は一般的に治療を必要としないものであるため, その除外診断は重要である.24 時間蓄尿を行い, カルシウム排泄率 (fractional excretion of calcium:feca) を算出し, これが1% 未満であればFHH/AHHの可能性を考慮する. ただし,FECaはクレアチニンクリアランスが低下すると正確に評価できないので,CKD ステージ3b 以上の腎機能障害では,FECa が低値であってもFHH/AHHとは限らない. 異所性 PTH 産生腫瘍は極めて稀であり, これ まで本症として疑いの少ない報告症例数は10 数例である 8). 3) 第 3 段階 :PTHrP 依存性高カルシウム血症 PTHが抑制されている場合の多くは, 悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症である 9). 血中副甲状腺ホルモン関連蛋白 (parathyroid hormone-related protein:pthrp) が高値であり, 悪性腫瘍を合併する場合は本症と診断してよい. しかしながら, 血中 PTHrP 濃度が低値であっても, 悪性腫瘍による高カルシウム血症は否定できない. PTHrPの血中濃度は悪性腫瘍以外にも様々な良性疾患で高値を示すことがある 10). 4) 第 4 段階 :PTHおよびPTHrP 非依存性高カルシウム血症 PTHおよびPTHrP 非依存性の場合は, 低リン血症を認めないことが特徴である. この中ではビタミンD 作用の過剰による高カルシウム血症が重要である 1,10). 血清 1,25 水酸化ビタミンD 高値を認める場合は, サルコイドーシスなどの慢性肉芽腫性疾患や一部のリンパ腫の可能性を検討する. なお, 天然型ビタミンDの過剰摂取や活性型ビタミンD 製剤の不適切な内服による高カルシウム血症では, 血清 1,25 水酸化ビタミンDは異常高値とならないことが多いので注意する. これまでのステップで診断がつかない場合, 甲状腺ホルモンの過剰や副腎不全では高カルシウム血症を認めることが多いので, これらのホルモン異常について検討するべきである 1). 3. テタニーや痙攣を伴う低カルシウム血症の初期治療 低カルシウム血症による臨床症状は, 成人ではもっぱらテタニー ( 図 3A) であるが, 小児期には全身性の痙攣を認めることも多い. また, 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号 663

図 3A テタニーに特有の指位手関節の屈曲, 母指の回内,MP(metacarpo phalangeal) 関節の屈曲およびPIP (proximal interphalangeal) DIP(distal interphalangeal) 関節の伸展を呈することである. しばしば第 2 3 指と第 4 5 指が二群に分かれるために, 助産師手位 ( 指位 ) と呼ばれる形状を示す. 図 3B 大脳基底核の石灰化像長期罹患の副甲状腺機能低下症では頭部単純 CT 画像で大脳基底核や扁桃核の両側性の石灰化を認めることが多い. ただし, 本所見は副甲状腺機能低下症のみに特異的なものではないことに注意する. 低カルシウム血症による喉頭痙攣は喘息と類似の症状を示すので, 呼吸困難で喘鳴のある場合には注意する.CT(computed tomography) などの頭部画像検査で大脳基底核の石灰化 ( 図 3B) を認める場合は, 副甲状腺機能低下症である可能性を第一に検討する. 低カルシウム血症であることが確認されたら, 直ちに経静脈的にカルシウムを投与する. 通常, グルコン酸カルシウム ( カルチコール R ) が用いられる. カルチコール R 液のカルシウム濃度は 0.36 meq/mlであり,2~3 ml/ 分を上限として緩除に静注 ( あるいは点滴静注 ) する. 投与量は 1 日あたり 4.7~23.5 mlとする. カルシウム塩の沈殿や結晶化を避けるために, クエン酸塩, 炭酸塩, リン酸塩あるいは酒石酸塩などとグルコン酸カルシウムの混合はできないので, 別に投与ルートを確保することが望ましい. セフトリアキソンナトリウム ( ロセフィン R ) との混合でも沈殿を形成する. なお, グルコン酸カルシウムは強心配糖体との併用は 禁忌である. グルコン酸カルシウム投与と並行して, 活性型ビタミンD 製剤であるアルファカルシドールやカルシトリオール ( アルファロール R, ワンアルファ R, ロカルトロール R など ) を経口投与する. アルファカルシドールは1~4 μgを1 日 1 回, カルシトリオールは0.5~2 μgを1 日 2 回に分けて投与する. なお, 新規の活性型ビタミン D 製剤であるエルデカルシトールは, 投与対象疾患が骨粗鬆症のみであり, かつ用量調節ができない薬剤であるため, 低カルシウム血症の治療に用いることは避ける. 4. 低カルシウム血症の原因低カルシウム血症の原因の診断には, まず血中マグネシウムと intact PTHの評価を行う ( 図 4). 低マグネシウム血症を認める場合は, マグネシウム欠乏と判断する.intact PTHが 30 pg/ml 未満であれば, 副甲状腺機能低下症と診断できる. それ以 664 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号

特集 内分泌 代謝疾患の救急 ~ 初期対応のポイント ~ 低 Ca 血症 慢性腎不全 低マグネシウム血症 血清 Mg 基準値以下 尿中 Ca 高値 グルココルチコイド過剰症腎尿細管障害など 副甲状腺機能低下症 ( 偽性を除く ) Intact PTH <30 pg/ml Intact PTH 30 pg/ml 血清 P 3.5 mg/dl 偽性副甲状腺機能低下症 ビタミン D 欠乏 血清 P <3.5 mg/dl 25 水酸化ビタミン D 低値 25 水酸化ビタミン D 正常 ビタミン D 作用不全 1,25 水酸化ビタミン D 低値 1,25 水酸化ビタミン D 著明高値 ビタミン D 依存症 Ⅰ 型 ビタミン D 依存症 Ⅱ 型 図 4 低カルシウム血症の原因疾患の診断フロー 外の大半はビタミンD 欠乏症などのビタミンD 作用不全であるが, 成人では低カルシウム血症による症状を呈することは稀である. 低マグネシウム血症では,PTHの分泌不全と作用不全を同時に生じるため, 血中 intact PTH 濃度は低値から高値まで様々である. したがって,intact PTHの測定値だけでは低カルシウム血症の診断はできない. 5. 低マグネシウム血症による低カルシウム血症 低マグネシウム血症では同時に低カリウム血症を呈することが多いため, 低カリウム血症を認める患者では積極的に疑うべきである. マグネシウムの充足度の評価には尿中マグネシウム排泄量の評価が必要であると成書に記載されているが, 症候性の低マグネシウム血症では, 血清マグネシウム値が低下していれば直ちにその補充を行うべきである. その最大の理由は, 低マグネシウム血症による低カルシウムおよび低カリウム血症は, マグネシウムの補給なしには, カルシウムとカリウムの補充を行って も十分な改善は得られないことにある. マグネシウムの補充には硫酸マグネシウムを緩除に点滴静注する. マグネシウム不足量の客観的な評価は難しいが, 通常マグネシウムとして 500 mg( 硫酸 Mg 補正液 R 1 meq/mlなどで 40 ml) を1 時間以上かけて点滴静注する. 急速に静注すると不整脈や血圧低下あるいはその他のマグネシウム中毒症状を呈するので注意する. 特に, 腎機能低下状態ではマグネシウム中毒を生じやすい. 病状が安定したら, 硫酸 Mg 補正液 R 1 meq/mlを 1 日 20~40 ml 程度緩除に点滴静注する. マグネシウム欠乏時には点滴による補充を1 週間程度続ける必要のある場合が多い. マグネシウム充足度は, 体内に取り込まれたマグネシウム量の30% 未満しか尿中に排泄されない場合は絶対的不足と判断され,50% 以上排泄されれば充足したと判断する. マグネシウムを経静脈的に投与する場合は, 少なくとも初期段階では必ず心電図モニターを装着し, 呼吸状態にも注意する. また, 腱反射の消失や眼瞼下垂も重要なマグネシウム中毒の徴候である. 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号 665

6. 低カルシウム血症治療におけるピットフォール 最近では, 骨粗鬆症治療薬のデノスマブ ( プラリア R ) 皮下注の1 週間後に著しい低カルシウム血症を生じることがあり, テタニーや痙攣を来たして受診する例も報告されている. ただし, 副甲状腺ホルモンは代償性に上昇しており, 血中リン濃度の上昇は認められないことが多い. デノスマブによる低カルシウム血症発症の背景には腎機能低下とビタミンD 作用不全があるため, カルシウムの補充と同時に活性型ビタミンD 製剤の投与を開始する. おわりに 高カルシウム血症と低カルシウム血症は, いずれも症候性であれば適切な緊急対応が必要な病態である. 意識障害と急性腎障害の場合は高カルシウム血症を, テタニーと痙攣の場合は低カルシウム血症の可能性を想起することが大切である. また, 低カルシウム血症の原因として低マグネシウム血症が潜在する可能性にも配慮する. 著者の COI(conflicts of interest) 開示 : 竹内靖博 ; 講演料 ( 旭化成ファーマ,MSD, 第一三共, 大正富山医薬品, 中外製薬, 日本イーライリリー ), 研究費 助成金 ( 第一三共, 中外製薬 ) 文献 1 ) Bringhurst FR, et al : Chapter 28 Hormones and disorders of mineral metabolism. Melmed S, et al, eds. Williams Textbook of Endocrinology. 12 th Edition, Saunders Elsevier, Philadelphia, 2011, 1260 1278. 2 ) Shine B, et al : Long-term effects of lithium on renal, thyroid, and parathyroid function : a retrospective analysis of laboratory data. Lancet 386 : 461 468, 2015. doi : 10.1016/S0140-6736(14)61842-0. PMID : 26003379. 3 ) Rogers MJ, et al : Cellular and molecular mechanisms of action of bisphosphonates. Cancer 88 : 2961 2978, 2000. PMID : 10898340. 4 ) Body JJ, et al : A dose-finding study of zoledronate in hypercalcemic cancer patients. J Bone Miner Res 14 : 1557 1561, 1999. PMID : 10469284. 5 ) Khan AA, et al : Diagnosis and management of osteonecrosis of the jaw : a systematic review and international consensus. J Bone Miner Res 30 : 3 23, 2015. doi : 10.1002/jbmr.2405. PMID : 25414052. 6 ) Yeh MW, et al : Incidence and prevalence of primary hyperparathyroidism in a racially mixed population. J Clin Endocrinol Metab 98 : 1122 1129, 2013. doi : 10.1210/jc.2012-4022. PMID : 23418315. 7 ) Kinoshita Y, et al : 1,25-dihydroxyvitamin D suppresses circulating levels of parathyroid hormone in a patient with primary hyperparathyroidism and coexistent sarcoidosis. J Clin Endocrinol Metab 90 : 6727 6731, 2005. PMID : 16159932. 8 ) Nakajima K, et al : Humoral hypercalcemia associated with gastric carcinoma secreting parathyroid hormone : a case report and review of the literature. Endocr J 60 : 557 562, 2013. PMID : 23303131. 9 ) Stewart AF : Clinical practice. Hypercalcemia associated with cancer. N Engl J Med 352 : 373 379, 2005. PMID : 15673803. 10)Jacobs TP, Bilezikian JP : Clinical review : Rare causes of hypercalcemia. J Clin Endocrinol Metab 90 : 6316 6322, 2005. PMID : 16131579. 666 日本内科学会雑誌 105 巻 4 号