構造強度と材料強度 構造強度 ( 実機の強度 ) 構造物が意図する機能 ( 目的 ) を達成できるために 材料強度 を基礎に 構造物としてもたねばならない強度 構造強度は人間が決める クリップの構造強度とは? 弾性 塑性 座屈など 材料強度 構造物を構成する部品をつくる材料の変形と強度および破壊の基礎資料 構造強度の基礎となる材料自体の特性 本講座では 静的強度 ( 塑性崩壊 ) と疲労強度を扱う 1
1 構造破損 破損様式について 構造物の破損とは : 構造物が本来の機能を果せなくなる状態 以下の種別に分けられる 壊れて使いものにならない状態破壊 破裂 破断など 2 変形破損 ゆがんで使いものにならない状態 座屈 塑性変形など 2
荷重 荷重条件荷重条件熱荷重変動静的クリープサブクリープ ( 高温構造物 ) 腐食疲労高サイクル疲労低サイクル疲労漸増崩壊 ( 進行性塑性変形 ) 延性破裂座屈脆性破壊環境の影響他塑性崩壊 構造破損 変形破損代表的な破損の様式
機械的 ( 強度データ ) 1 静的強度 材料強度データ 応力 - ひずみ線図 降伏応力 引張強さ等 2 疲労強度 S N 線図 疲労限度 影響因子 3 高温強度 ( クリープを含む ) クリープ変形 リラクセーションクリープラプチャ 4 環境強度 ( 応力腐食割れを含む ) 物理的 ( 物性データ ) 比重量 γ 線膨張係数 α 食 減肉脆性破壊腐座 屈 延性破裂 静的 塑性崩壊 荷重 荷重条件 熱荷重 荷重条件 クリープ 変動 漸進腐行増食塑崩性疲性壊(労変形)( 高温構造物 ) 低サイクル疲労 高サイクル疲労 たくさんあるので 個々に学習が必要 4
実は恐ろしい座屈 座屈は初期不整の影響を受ける 座屈には種類がたくさんある ( 薄肉材 板 球殻 ) ~ 機械工学便覧材料力学 p92 材料を強くしても座屈強度は変わらない ( 高張力鋼による薄板化で問題発生 ) ガンダムは不可能 P 実際 ( 非線形 ) Pcr 材料力学 ( 線形 ) 初期不整 ε の影響 5
構造強度設計の考え方の基礎 1. 有限要素法による詳細な弾塑性応力解析 (Design by analysis) 2. 材料力学を使った手計算による強度設計 (Design by rule) 本講義の対象 (ASMEの規格 ) Sultana 号の事故 ( ボイラの爆発 ) 1865 年 15 人死亡産業革命により事故が多発 Boiler Code の制定 (ASME 規格の原型 ) 6
P l P 断面積 A YouTube 泉研のチャンネル https://www.youtube.com/user/izumilab 7
鉄鋼材料の応力ーひずみ曲線 公称応力 (σ n =P/A ) p : 塑性ひずみ 公称応力 (σ n =P/A ) 公称応力 (σ n =P/A ) σ B σ Y 降伏応力 A P e : 弾性ひずみ σ.2.2% 耐力 ~ 降伏応力 P σ B P 加工硬化領域 O p Q e 公称ひずみ (ε=(l-l )/l ) O p Q.2 公称ひずみ (ε=(l-l )/l ) O 公称ひずみ (ε=(l-l )/l ) 図 2.2 軟鋼の応力 - ひずみ曲線 クロムモリブデン鋼 鋳鉄 鉄鋼材料の応力ーひずみ曲線 ( 強度 ) は 添加不純物 (C, Si, V, Mo, Cr) 熱処理 ( 焼き入れ 焼きなまし ) によって異なる ~ 鉄鋼会社 産地 ( 中国産等 ) によって異なる ヤング率 ポアソン比はほぼ同じ (p.66) 材料ごとに測定する必要がある ネットの不確かな情報を使わないこと! 8
降伏の微視的メカニズム 転位 ( 結晶格子の線状のずれ ) の増殖 転位はせん断応力で進む 降伏をミーゼス相当応力で評価する根拠 9
転位とは? 生きている金属 1 2(24 分 ) 1
例題 1 引張試験の降伏評価 (1) 引張試験の弾性応力解析を行い 塑性変形がはじまる場所を調べよ 材料は炭素鋼で E=25GPa, ν=.3, 降伏応力は 3MPa とする 荷重は 標点間に分布荷重で 2MPa 与えよ tensile_test_pl5.2del 11
例題 1 解答 ここは 2MPa Mises 相当応力の最大値は 262MPa で 場所は R 部 ( 応力集中部 ) となる ここで壊れていましたか? 12
例題 2 引張試験の降伏評価 (2) 例題 1 の引張試験の弾塑性応力解析を行い 荷重を増していき 塑性不安定 ( 破壊 ) が生じる荷重を調べよ ただし 材料は 降伏応力が 3MPa の弾完全塑性体とする Y= 3MPa 13
例題 2 解答 断面積が小さい部分で 塑性域がつながって 降伏応力以上の荷重を支えられなくなり 3MPa で崩壊する 塑性崩壊 28MPa の塑性域 tensile_test_pl7.2del 3MPa の塑性域 tensile_test_pl75.2del 14
塑性崩壊の設計計算 応力強さ分類と許容限界の考え方について ASME:Criteria JIS B8266 前提 : 弾完全塑性材モデル ( 図 1): 応力が降伏強さ σ y に等しくなる外力 P y に達すると 抵抗力がないため変形 δ は限りなく増大 ( 無制限塑性流れ ) し ついには破損に到る ( 図 2) σ 実際の材料 外力 P 無制限塑性流れ σ y 弾完全塑性材 P y ( 破損へ ) E ε 変形 δ 図 1 応力 - ひずみ線図 図 2 荷重 - 変形曲線 ASME:CRITERIA OF THE ASME BOILER AND PRESSURE VESSEL CODE FOR DESIGN BY ANALYSIS IN SECTIONS Ⅲ AND Ⅷ,DIVISION 2 JIS B 8266 15
塑性崩壊の計算方法 ( 練習問題 ) a. 膜降伏 ( 引張を受ける棒 ) P t σ m 弾性 σ y σy P b. 塑性関節 ( 曲げを受ける棒 ) P 塑性関節 σ y 全断面降伏 (σ m =σ y ) P M M -σy 断面 σ bend <σ y σ y σ y σ y -σ y -σ y -σ y 弾性初期降伏部分降伏全断面降伏 (σ bend =1.5σ y ) 降伏が始まる曲げモーメントの1.5 倍 16
(σm+σb)/σy C. 引張 + 曲げを受ける棒 ( 略 ) 1.8 1.6 1.4 1.2 1.8.6.4.2 断面 図心 安全余裕 中立軸 設計許容限界.2.4.6.8 1 σ m /σ y σ<σ y M e 弾性 安全余裕 2/3 σ y ( 崩壊限界 ) σ +σ m σ y P σ y M -σ M y y M py 初期降伏部分降伏 b σ = σ m y -σ y -σ y 設計用に変形 3 σ + 1-2 σ m y 2 σ σ y σ y M c 全断面降伏 (1 ) σ m σ b + = テクニカルな計算になるので本演習では 支配的な応力によって評価する 17 M ( 崩壊条件 ) σ σ b y 3 σ = 1-2 σ P m y σ m +σ b 2 (1)
例題 3 引張試験の疲労評価 例題 1 の引張試験の荷重が圧縮と引張り ( 両振り ) を繰り返す場合 疲労破壊がはじまる場所と破壊に至る繰り返し数を求めよ 両振りの SN 線図を以下に示す 応力振幅S (MPa) 1.E+5 1.E+6 1.E+7 1.E+8 1.E+9 1 1 σ max 破壊繰り返し数 N σ a =σ max σ m = 両振 18
疲労強度とは? 疲労破壊とは 1 回の負荷では破壊しないような小さな荷重であっても繰返すことによって ついには破断に至る現象 1 高サイクル疲労 ( 低応力 弾性疲労 ~ 応力振幅 < 降伏応力 ) 繰り返し回数 ( 寿命 ): 1 5 ~1 6 以上 精密機器 電子機器 家電 車等の設計 2 低サイクル疲労 ( 高応力 塑性疲労 ~ 応力振幅 > 降伏応力 ) 繰り返し回数 ( 寿命 ): 1 4 程度以下 ボイラー 圧力容器 配管等 応力振幅 S 疲労線図 (S~N 線図 ) 機械学会 : 疲労強度の設計資料 (Ⅰ) 1 低サイクル疲労域 1 2 1 3 1 4 1 5 1 6 高サイクル疲労域 繰返し回数 N 19
疲労破壊のメカニズム 金属材料に繰返し応力が負荷 金属結晶中にすべり線発生 すべり帯に沿って表面切欠きが形成 微小き裂へ成長 き裂どうしが結合し大きなき裂に成長 金属材料が破壊 入込み 突出し Δσ 表面 Δσ すべり帯 Δσ 表面 き裂の発生 疲労は応力が高くても除荷しないと生じない 応力の変動幅が疲労き裂を作る Δσ き裂の進展の模式図 2
疲労破壊の様子 1μm 21
チャイナエアライン 611 便空中分解事故 WIKI より 22 年 5 月 25 日に中正国際空港 ( 現台湾桃園国際空港 ) から香港国際空港へ向かっていたチャイナエアラインのボーイング 747 2B( 機体記号 B 18255) が台湾海峡上空を巡航中に空中分解し海上に墜落した航空事故である 事故原因は機体スキン ( 外皮 ) の不完全な修理のために起きた金属疲労により破壊が生じたというものであった 動画 22
応力変動と S N 線図 応力変動 応力振幅 σ max 最大応力 σ a =σ r /2 σ r =σ max -σ min 応力範囲 σ m (=σ max +σ min )/2 平均応力 σ min 最小応力 S N 線図 ( 高サイクル疲労 ) SN 線図は平均応力に依存する 応力振幅(MPa) 1.E+5 1.E+6 1.E+7 1.E+8 1.E+9 1 σ 6 σ w 1 時間強度時間強度 ( 例 :σ 6 は1 6 時間強度 ) 疲労限度破壊繰り返し数 23
例題 3 引張試験の疲労評価 ( 再 ) 例題 1 の引張試験の荷重が圧縮と引張り ( 両振り ) を繰り返す場合 疲労破壊がはじまる場所と破壊に至る繰り返し数を求めよ 両振りの SN 線図を以下に示す 応力振幅S (MPa) 1.E+5 1.E+6 1.E+7 1.E+8 1.E+9 1 1 σ max 破壊繰り返し数 N σ a =σ max σ m = 両振 24
例題 3 解答 応力集中を起こす R 部を起点にき裂が発生する SN 線図より 応力振幅 262MPa( 降伏応力以下 ) で N=3~4 1 6 回程度で疲労破壊が生じると考えられる ( 高サイクル疲労 ) 疲労限度以下で設計するためには 応力振幅を 2MPa 以下にする必要がある 1 26MPa 2MPa 1 1.E+5 1.E+6 1.E+7 1.E+8 1.E+9 25
例題 4 引張試験の疲労評価 例題 1 の引張試験の荷重が引張りと除荷 ( 片振り ) を繰り返す場合 疲労破壊がはじまる場所と破壊に至る繰り返し数を求めよ 降伏応力は 3MPa 引っ張り強さは 4MPa とする σ max σ a =σ max /2 σ m =σ max /2 片振 片振りの SN 線図? 26
疲労強度の影響因子 : 平均応力の影響 ( 高サイクル疲労 ) 平均応力が引張応力の場合 疲労強度は低下する 平均応力 σm と疲労限度 σw との関係を与える実験式 : 修正 Goodman 線図 ( 安全側 取扱い容易で実用的 ) 25 疲労限度 σw2 15 修正疲労 1 限度 σw 修正 Googman 線図 : σw =σw(1-σm/σu) 応力振幅平均応力 5 平均応力 σm 引張強さ σu 1 2 3 4 5 27
例題 4 解答 応力集中を起こす R 部を起点にき裂が発生する 応力振幅は 131MPa となる 両振りの疲労限以下 (2MPa) だが 片振りの疲労限以下と比較する必要がある Goodman 線図より 片振りの疲労限は 133MPa となり 本設定は疲労限以下となっている σ m ( 平均応力 )= σ a ( 応力振幅 ) 応力振幅σa σw( 25 両振 ) 2 15 1 σ a =σ m 5 1 2 3 4 5 σw ( 片振 ) 平均応力 σ m 引張強さ σ u 28
安全率 形状 工作 検査 外力などの不確定性と機器の重要度や事故の影響度などの不確定要因を考慮して安全率が設定される 例えば 強度設計を降伏応力で行い 降伏応力が3MPaで安全率を3とすると 許容応力は 3/3=1MPa 確率密度.2 安全裕度 確率密度関数.1 許容値 代表値 強度 34
安全率は経験的に決められている 安全率 1. 栗崎彰 図解設計技術者のための有限要素法はじめの一歩 講談社 212 より 航空宇宙 1.15~1.25 航空機 1.5 一般的な機械部品 :3~4 エレベータロープ :1 以上 安全率を高く設定できない航空機 航空機は軽量化のため強度的にギリギリの設計がなされている その代わり CAEなどによる応力の見積もり 材料の管理 検査など不確定要素を排除している 運用管理においては メンテナンスにより き裂の計測 管理が 35 精度よくなされている
動画 サイエンスニュース クリープ試験 (NIMS) 5:25 36