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ウ WCS 用稲本市は県内最大の酪農地帯であるため 需要に応じた生産確保に努め 多収品種の推進 病害虫防除や雑草管理など適切な圃場管理を行う また についても実施する エ加工用米実需者の要望に対応できるよう 産地交付金を活用して複数年契約を進めることにより安 定的な供給を目指し 担い手の作付維持 (

29 宇農委第 227 号 平成 29 年 12 月 5 日 宇治市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 宇治市農業委員会 農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 という ) 第 7 条第 1 項の規定に基づき 宇治市農業委員会にかかる標記指針を下記のと

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国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

調査結果の主な利活用 食料 農業 農村基本計画における生産努力目標の策定及び達成状況検証のための資料 茶に関する生産振興に資する各種事業 ( 強い農業づくり交付金等 ) の推進のための資料 農業災害補償法 ( 昭和 22 年法律第 185 号 ) に基づく農業共済事業の適正な運営のための資料 累年デ

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目次 1 北海道農業の現状 1 2 北海道の農業農村整備を取り巻く状況 8 3 農業農村整備における新たな技術の導入 15 4 農業農村整備の地域経済等への波及 17

輸出のターゲット市場の拡大 深掘りをするとともに 輸出用米生産に関する制度の運用を改正 現状 課題 日本食レストランを中心とした需要に留まっている中 輸出先国 地域の多様なニーズに合わせた商品の多様化 生産コストの削減による価格競争力の強化を通じ 輸出ターゲット市場の拡大 深掘りを図ることが課題 潜

岡山県農業研報 8:13-17(2017) 13 稲作経営の規模拡大過程とその対応 岡山県の事例から 河田員宏 Scale Expansion Process of Rice Farm Management and Its Response :A Case Study in Okayama Pref

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資料 5-2 平成 28 年度国営事業評価技術検討会 国営土地改良事業等事後評価 評価結果 平成 28 年 7 月 7 日 北海道開発局農業水産部

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ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

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調査の仕様

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農林水産大臣賞受賞 限界集落への危機感から ~ 活気と夢に満ちた農村づくりへ ~ おおしゅうらくえいのう 受賞者農事組合法人多集落営農 しきぐんたわらもとちょう ) ( 奈良県磯城郡田原本町 くみあい組合 地域の沿革と概要田原本町は大和平野の中央に位置し 町の西部を曽我川 飛鳥川が 中央部を寺川が

第 2 章 栗山農業 農村 農家の 現状と課題

第5回 農地・農村部会 資料 /8

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平成 26 年度 国営農地再編整備事業 妹背牛地区 について - 区画整理工事後の効果検証 - 札幌開発建設部深川農業開発事業所 九本康嗣川﨑勇長土居智直 妹背牛地区では 農家戸数の減少に伴う経営規模の拡大 離農跡地の取得等による農地の分散化 狭小 不整形ほ場による非効率な営農作業が懸念されている 本報では 地区で実施した区画整理工事後の土地利用の変化や営農経費節減効果の検証結果について報告する キーワード : 区画整理工事 農地集積 営農経費 1. 地区概要 工事前 0.3~0.5ha と小さい区画のほ場 本地域は 北海道雨竜郡妹背牛町に位置し 石狩川支流の雨竜川左岸に拓けた水田地帯である 国営農地再編整備事業 妹背牛地区 は 既耕地を再編整備する区画整理 997 ha と水田の地目変換による農地造成 5 ha を一体的に施行し 生産性の高い基盤の形成と土地利用の整序化を通じ 農業経営の合理化と効率的な土地利用を図り 農業の振興を基幹とした本地域の活性化に資することを目的としている 工事後大区画に再編されたほ場標準区画 2.2ha 図 -1 妹背牛地区位置図 写真 -1 整備前と整備後のほ場 地区内の 現況区画 0.3~0.5ha の小区画かつ排水不良ほ場では 効率的な営農作業が行えず 農作物の生産性が低いことから 標準区画 2.2ha の大型ほ場化とともに ほ場内の用 排水路のパイプライン化 暗渠排水工 客土工の実施により 営農作業の効率性及び農業生産性の向上を図る また 離農跡地の継承に伴う経営耕地の分散化が懸念されていることから 基盤整備とあわせて換地による担い手への農地の面的集積化を促進する 2. 地区の営農概要 妹背牛町の農業は 明治 18 年に雨竜原野の現地調査として道庁から測量隊が入ったのを契機とし 明治 26 年に未墾の地に開拓の鍬がおろされた 現在では 町域面積に対する農耕地比率 (74%) が日本一であり 全耕地面積に占める水稲作付面積の割合が高く (95%) 稲作を主体とした営農が展開されている また 本町で生産される米は 食味ランキングで A ランク以上の高い評価を受ける良食味米の産地として 大手スーパーや生協等へ契約出荷される等 おいしい米どころとしての地位を確立している

3. 地域営農の課題 (1) 妹背牛町における農業動向妹背牛町の農家戸数は 農林業センサスによると平成 12 年 340 戸から平成 22 年 229 戸と 10 年間で 111 戸 (3 3%) 減少しているのに対し 経営規模別の農家戸数では 戸当り 20ha 以上の総戸数が平成 12 年 12 戸から平成 22 年度 52 戸と 10 年間で 40 戸 ( 約 4.3 倍 ) 増加している ( 図 -2 図 -3 参照 ) H12 0 100 200 300 400 82 総農家戸数 ( 販売農家 )( 戸 ) 234 24 340 戸 表 -1 妹背牛町における農業動向予測 販売農家の農家人口 販売農家の生産年齢人口 (15~64 歳 ) うち若年層生産年齢人口 (15~29 歳 ) うち壮年層生産年齢人口 (30~54 歳 ) うち高年層生産年齢人口 (55~64 歳 ) 販売農家の高齢者人口 (65 歳以上 ) H22 年実績 H37 年予測 増減率 ( 人 ) 898 381-57.5 % ( 人 ) 523 213-59.3 % ( 人 ) 104 46-55.8 % ( 人 ) 241 88-63.5 % ( 人 ) 178 79-55.6 % ( 人 ) 268 131-51.1 % H17 106 159 13 278 戸 販売農家の高齢者比率 (%) 29.8 34.3 4.5 % H22 130 85 14 229 戸 販売農家戸数 ( 戸 ) 229 111-51.4 % H37 予想 111 総農家数 111 戸 ( 予想 ) 販売農家の経営耕地面積 (ha) 3,255 3,093-5.0 % 農家戸数 250 200 150 100 50 0 専業農家数 第 2 種兼業農家数 第 1 種兼業農家数 図 -2 専兼業別農家戸数の推移 総農家戸数 H12 367 H17 278 H22 229 H12 H22 138 戸減 43 25 22 10 0 64 12 0 3 10 7 172 117 91 99 92 65 H12 H17 H22 総農家戸数が減少する中 20ha 以上の戸数が増加 41 28 12 03 11 010 000 図 -3 経営耕地面積規模別農家数の推移 出典 :2010 世界農林業センサスより 販売農家の平均経営耕地面積 (ha) 14.2 27.8 13.6 ha 1) 出典 : 農林業センサスを用いた北海道農業 農村の動向予測( 平成 25 年 1 月 ) 北海道総合研究機構農業研究本部中央農業試験場 以上のことから 離農跡地の点在した農地を集積 集約に伴い 営農作業の効率化を図る等 農家経営の基盤強化が求められている 4. 農地集積 集約の取組み (1) 農地集積 集約化について妹背牛町では前述のとおり農業者の担い手不足 高齢化に伴う経営の大規模化が予測される 本地区ではこれらに対応するため 地元関係機関である妹背牛町農業委員会及びもせうし町土地改良センターが中心となり 工事実施前に農家間で土地の交換及び売買等を促進させて 地域の担い手に農地の集積 集約化を図っている また 妹背牛町の販売農家の農家人口は平成 22 年から 15 年後平成 37 年に 57.5% 減少すると予測 1) されている 年齢別にみると壮年層 (30~54 歳 ) の減少率が 63.5% と最も高く 一方高齢者比率は 4.5 ポイント増となることから担い手不足 高齢化が懸念される 一方 耕地面積は わずか 5.0% の減にとどまり 平均経営耕地面積は平成 22 年 14.2ha から平成 37 年 27.8ha と 13.6ha 増と予測されている 図 -4 工事実施前に土地の交換及び売買を促進

これにより 以下の 2 点が可能になる 1 担い手への大規模な農地集積 集約化 ( 個人の土地所有位置に制限されずに 担い手に農地を集積できる ) 2 全ほ場を標準区画で整備 ( 将来 地区内のどこで営農しても等しく作りやすくなる ) 2 宅地を中心として 算定した円弧半径により円弧を描き 円周辺に所有している工事前 後の農地面積の割合を算定する 農地集約率 =( 円周辺所有面積 / 所有面積 ) 100 T 氏は 所有面積が拡大 ( 約 7.8ha) しているものの 宅地周辺の農地集約率が約 53% から約 84% と 31% 上昇しており 工事実施後に農地集約された状況が確認できた ( 図 -7 参照 ) 工事前の土地所有状況 工事後の土地所有状況 図 -5 工事完了後のイメージ (2) 農地集積 集約化の事例紹介について本地区で 工事完了した農家の農地の集積集約化の状況について事例紹介する 地域の担い手であり 経営規模の拡大に取組んでいる T 氏は 工事実施前は宅地から離れた土地を含め 16.1ha 所有していたが 宅地から離れた農地の一部を売却し 宅地周辺の農地を購入することで 農地集積 ( 工事実施後 23.9ha) が図られた ( 図 -6 参照 ) 工事実施後は ほ場数が 49 枚から 10 枚に減少 ( 約 8 0%) ほ場区画が約 0.3ha/ ほ場から約 2.4ha/ ほ場 ( 約 8 倍 ) に拡大した 工事前の土地所有状況 工事後の土地所有状況 農地集約率対象農家差工事前工事後 T 氏 52.9% 84.3% +31.4% 図 -7 T 氏農地集約状況 5. 区画整理工事後の営農 ( 家族 ) 労働時間節減効果の検証 (1) 調査の背景と目的前述のとおり 区画整理工事前後を比較して 営農労働時間の節減効果が期待されることから ほ場毎の営農労働時間の変化に注目し 労働時間の節減効果検証及び節減効果による経営規模拡大の可能性について検討した 工事前 事前売買状況青 : 買い緑 : 売り 所有面積平均面積ほ場数 (ha) (ha) 団地数 工事前 16.1 49 0.3 2 工事後 23.9 10 2.4 2 図 -6 T 氏農地集積状況 次に 農地集約の度合いを客観的に評価できるよう 農地集約率 として数値に表した 農地集約率が高いことは 宅地周辺に農地が集約していることの証左である 工事中 工事後 宅地周辺の農地集約率の算出方法は以下のとおり 1 農家が所有している工事前 後の農地面積をもとに円弧半径を算出する 円弧半径 = 所有面積 /π 図 -8 区画整理工事前後の労働時間節減効果のイメージ

また 本地区内では 経営規模の大規模化並びに省力化に対応するため水稲直播栽培を推進しており 区画整理後の乾田直播導入による営農労働時間の節減効果も併せて検証した (2) 調査内容 a) 営農 ( 家族 ) 労働時間調査営農労働時間の把握を目的に 実測や農家からの聞き取りにより水稲栽培に係るほ場内作業 ( 融雪促進から透排水性改善まで ) について作業体系と作業時間を調査した b) 生育 収量 品質調査経営規模拡大の可能性検討に供する基礎資料として 空知総合振興局空知農業改良普及センター北空知支所に依頼し 水稲の生育収量や品質を現地におけるサンプル採取により調査した c) 調査対象ほ場調査対象ほ場は 諸条件 ( ほ場の土壌条件 作業機械 施肥体系など ) の統一を図るため 同一耕作者の水田 ( 泥炭土壌 ) を選定した ( 図 -9 及び表 -2) 大鳳川 N (3) 営農労働時間節減効果の結果図 -10 に 本田管理に係る営農労働時間の比較結果を示す 整備前後の比較は 未整備移植の 39.74hr/ha に対して 整備済み移植は 31.85hr/ha となり 20% の削減が見られた 作業項目別では 融雪促進 ( 削減率 66%) 耕起 ( 同 59%) など農機の旋回が伴う作業について 単位面積あたり旋回回数の減少に伴い 労働作業時間の節減がみられた 次に移植栽培と直播栽培の比較は 整備済み移植の 31.85hr/ha に対して 整備済み直播は 16.81hr/ha となり 47% の削減が見られた 作業項目別でもっとも削減率が高いのが移植 ( 直播の場合は播種 )( 移植 10.70hr/ha 播種 3.21hr/ha) で削減率は 70% であった 加えて 乾田直播栽培ほ場では 代かき作業 ゴミ上げ作業がないことが 営農作業時間の節減に大きく寄与している 50 40 30 20 10 0 未整備移植 39.74 13 12 11 ~7 6 5 4 3 2 1 人力作業時間単位 :hr/ha 未整備移植に対して削減率 20% 整備済み移植 31.85 整備済み移植に対して削減率 47% 整備済み直播 16.81 未整備移植整備済み移植整備済み直播 1 融雪促進 2 基肥 3 耕起 4 代かき 5 ゴミあげ 6 移植 播種 7 除草剤散布 8 追肥 整備済み移植 未整備移植 整備済み直播 図 -9 調査ほ場位置図 表 -2 調査対象ほ場概要ほ場名未整備移植整備済み移植整備済み直播 面積 1.48ha 4.67ha 4.21ha 整備 未 不整形 済 整形済み 済 整形済み 栽培 移植 移植 直播 品種ななつぼしゆめぴりかほしまる S 氏経営面積 :40.87ha 作物 : 水稲移植 19.79ha 水稲直播 8.43ha 小麦 9.90ha 大豆 2.60ha ほか労働力 : 本人 ( 夫 ) 妻 息子計 3 名他臨時雇用 委託工事進捗率 H25 時点 94.6% 9 草刈 10 水管理 11 病害虫防除 12 に収穫 運搬 13 透排水性改善 図 -10 調査ほ場の営農労働時間の比較 (4) 収量調査の結果調査対象ほ場の収量調査結果は 精玄米重で未整備移植 491kg/10a(2 等級 ) 整備済み移植 656kg/10a(1 等級 ) 整備済み直播 591kg/10a(1 等級 ) である 北空知における平成 26 年産水稲の 10a 当たり収量は 597kg 作況指数 107 である 2) ことから 未整備移植は地域の収量を大きく下回り 整備済み直播は地域の収量と同等 整備済み移植は大きく上回ったといえる 2) 出典 : 平成 26 年産水稲の収穫量 ( 北海道 ) 平成 26 年 12 月 5 日公表農林水産省北海道農政事務所 表 -3 精玄米重及び 1 俵あたり作業時間の試算 未整備移植整備済み移植整備済み直播 人力作業 精玄米重 1 俵当たり 時 間 (kg/10a)( 俵 作業時間 (hr/ha) /ha) (hr/ 俵 ) (a) (b) (c)=(a)/(b) 検査等級 39.47 491 81.8 0.48 2 31.85 656 109.3 0.29 1 16.81 591 98.5 0.17 1 1 俵当り作業時間 = 人力作業時間 精玄米重 ( 俵 /ha)

3 ほ場において人力作業時間データ並びに精玄米重データを用いて 1 俵あたり作業時間を試算したところ 未整備移植 0.48hr/ 俵 整備済み移植 0.29hr/ 俵 整備済み直播 0.17hr/ 俵であった 整備済み移植は 未整備移植の約 60% の減を示し 区画整理による省力化が確認できた また 整備済み直播は 整備済み移植の約半分近い減となったことから 直播栽培が省力化技術であることを表している 6. 営農作業時間削減に伴う経営規模拡大の可能性について区画整理後ほ場毎の営農労働時間の節減効果に着目し 営農労働時間の節減よる経営規模拡大の可能性について検討した 妹背牛地区では 地域の営農指導により移植適期が 5/20~5/31 とされており 移植前の代かき作業は2 回 ( 粗がきと仕上げ ) 行われている例が多く 代かき2 回には約 10 日を要すると予想される (1 日あたり3~4ha と仮定 ) 現状で 春先の営農作業時間を鑑みると家族経営による水稲移植栽培の限界値は20haと想定される しかし 前述のとおり今後は 戸当たり耕作面積 30ha 以上の大規模経営農家が増加することが予想される このような状況に対し 前章で調査した区画整理による作業時間の削減から 区画整理後の営農労働時間削減効果によって 水稲栽培面積及び畑作面積についてさらなる拡大の可能性について検討した (1) 検討手法検討の条件は以下のようにした 1 現況の経営規模を上記 20ha と想定する 2 春先作業 (3 月から 5 月の融雪 基肥 耕起 代かき ゴミ上げ 移植 ) の削減時間による面積拡大は水稲栽培に振替る 3 春作業以降の削減時間による面積拡大は畑作物 ( 麦 豆類 ) に振替る 4 作付体系は現行のままとする ( 現有の設備で対応可能な作物とする ) 5 以上の算定は 削減した労働時間の面積換算を目的とし 期別労働力の過不足 他作物との労働競合は考慮しない (2) 区画整理による経営規模拡大の可能性春先の作業時間は 未整備移植 26.76hr/ha 整備済み移植 20.19hr/ha である これらから水稲作付面積は 表 -4 の通り想定現況面積 20ha に対して 26.51ha まで拡大可能と試算した 差分 6.51ha が春先作業時間の削減によりさらなる水稲作付が可能となった面積である 春作業以降の作業時間は 未整備移植 12.98hr/ha 整備済み移植 11.66hr/ha である 同様に算定した結果 想定現況面積 20ha に対して 22.26ha まで拡大可能となり 差分 2.26ha が麦 豆類作付可能面積である したがって 上記試算によれば現況水稲移植面積 20ha に加えて 水稲栽培 6.51ha 麦 豆類 2.26ha 合計 28.77ha( 約 44% 増 ) まで拡大可能と試算した 表 -4 経営規模拡大面積の試算 未整備移植 整備済み移植 想定現況面積 拡大可能面積 (hr/ha) (hr/ha) (ha) (ha) (a) (b) (c) (d)=(c) (a)/(b) 春作業時間 26.76 20.19 20 26.51 春作業以降の作業時間 12.98 11.66 20 22.26 計 28.77 (3) 妹背牛地区における経営規模拡大の可能性検討の結果 区画整理後の作業時間削減により作付面積は 水稲が 6.51ha 畑作が 2.26ha それぞれ拡大可能となった 特に水稲栽培においては 地区内における耕作者の高齢化を考えると 代かき作業の省力化 省略化は必然であり 水稲直播栽培のさらなる導入が求められる 本地区は事業によるほ場の大型化 排水改良により直播栽培に適した環境となっていることから 直播栽培拡大をさらに後押しするものと考える また 調査対象ほ場である S 氏の作付面積の推移を見てみると 現段階で工事前後の作付面積が約 10ha 増加している その内訳を見ると 水稲移植が減少しているのに対し 水稲直播 小麦 大豆が増加している ( 図 - 11) 作付面積を増加するにあたり 春の作業が集中する水稲移植中心の作付から 期別の労働力分散を目的に 水稲直播 小麦 大豆を増やしたとうかがえる これは 本地区における将来の理想的な経営体系を現しているといえる 工事前 工事後 0 10 20 30 40 50 作付面積 (ha) 水稲移植水稲直播小麦大豆地力増進作物 図 -11 S 氏作付面積の推移 31.18ha 40.87ha

7. 妹背牛町での取組み 妹背牛町では 戸当たり 30ha 規模の大規模経営の実現には 限られた労働力環境で従来よりも農作業時間の短縮やコストや縮減が必要不可欠であることから 種もみを水田に直接播く水稲の直播や情報通信技術 (ICT) の利用による新たな取組が行われている (1) 直播栽培の推進妹背牛町では 水稲栽培における新たな栽培技術として 水稲直播栽培を推進している 直播栽培に向く良食味品種 ほしまる の普及や本事業の実施に伴い 平成 19 年度以降 直播作付戸数 面積はともに増加傾向にある 平成 25 年度は直播栽培面積約 175ha のうち 湛水直播が約 160ha( 平成 22 年度の約 3 倍 ) となっている ( 図 -12) また 乾田直播栽培は 本事業により大区画化したほ場のみでの栽培となっており 今後も直播栽培面積は増加していくことが想定される 直播栽培の推進に向けては 主として町内の農家で構成する妹背牛町水稲直播研究会において 栽培技術に関する情報交換や技術の研鑽等が行われている (2) 衛星測位利用システム (RTK-GPS) の導入大区画化したほ場の不陸解消や水稲直播ほ場の均平化が求められている中 妹背牛町では役場屋上に GPS 基地局 ( アンテナ ) を設置して 衛星測位利用システム (RTK-GPS) を活用した均平システムを導入している これにより GPS 基地局からの補正信号を発信することで トラクターの位置情報の誤差が 2 cm程度に大幅に向上して 精度の高い営農作業が町内全域で利用が可能となった GPS ガイダンス画面 図 -13 RTK- GPS を活用した農作業 図 -14 RTK- GPS を利用した代掻き作業 写真 -2 区画整理後のほ場で水稲直播 また 妹背牛町土地改良センターを事務局とした地区促進期成会による国営期成会 GPS 研究会も設立され 営農時間及び肥料 農薬の減少などについて効果検証が行われている 8. あとがき 本年度の調査結果から区画整理後の事業効果が期待されるとともに 地域の将来を見据えた新たな取組みにより更なる相乗的な効果が期待される 謝辞 : 効果検証にあたっては 関係農家はじめ地元関係機関及び調査研究機関並びにコンサルタント等多くの方々のご支援とご協力を頂戴している 末筆ながら 関係者の皆様に対し 深く感謝申し上げる 図 -12 妹背牛町における直播作付面積 戸数の推移