卓球部員数を増やす手立てについて - いかにして卓球を継続させるか - 卓球専門部山形県立新庄北高等学校阿部真直
1 1 はじめに 2016 年に開催されたリオ オリンピックにおいて日本の卓球選手たちが目覚ましい活躍を見せた 12 月現在でも世界大会で十代選手の活躍があり スポーツ界年度男子女子合計において卓球は最も注目されている競技であろう こう 2012( 平成 24) 年 113 50 163 した日本の若手選手の活躍を見た子どもたちが中学校の 2013( 平成 25) 年 117 45 163 部活動として卓球を選ぶ 卓球部に所属している中学生 2014( 平成 26) 年 114 43 157 が高校でも卓球を続けることが期待されるが 私自身は 2015( 平成 27) 年 127 48 175 来年度の新入部員がどれだけ集まるのかと不安を抱いて 2016( 平成 28) 年 102 50 152 いる それは 右に示した最北地区における卓球部員の人数の変遷による 過去 5 年間のデータであるが 2012 年から 2014 年まで横ばいの状況であった卓球部員数が 2015 年に増加し 今年度は特に男子で減少して過去 5 年間で最低人数となっている 少なくとも 最北地区においてはこの5 年間卓球部員の大幅な増加という現象は起きてはいない 最北地域における少子化の影響もあるが 卓球部員数が増えない理由にはその他の要因が絡んでいるのではないだろうか 部員数の減少によって県大会出場のチャンスは増えるだろうが しのぎを削るような地区大会ではなくなることで競技力の向上が見込めなくなる 最北地区における卓球の競技力向上のためにも部員数を増やしていく何らかの手立てが必要である その手立てを考えるべく 以下の研究を行った 2 研究の方法 (1) 調査方法アンケート (2) 調査対象最北地区高等学校卓球部員 (3) 調査機関平成 28 年 11 月 ~12 月 (4) 調査内容以下の記述内容による 3 結果と考察 (1) アンケートの内容最北地区各校の卓球部員を対象に調査を行った 79 名からの回答が得られたが 以下はその調査結果をグラフ化し 傾向を分析したものである アンケートの内容は以下の通り 1 中学校から卓球を継続している生徒のみなさんにお聞きします 1なぜ 高校でも続けようと思ったのですか? 2 高校で卓球を続けて良かったと思いますか? 32でアを選んだ人に聞きます 続けて良かったと感じるのはどのような時ですか? 42でイを選んだ人に聞きます 続けるべきではなかったと感じるのはどのような時ですか? 2 高校から卓球を始めたみなさんにお聞きします なぜ 卓球を始めようと思ったのですか? 3 あなたは学校外 ( 地域のチームなど ) で卓球の練習をしていますか? 4 3でア イを選んだみなさんにお聞きします 学校外で練習する理由は何ですか?
2 (2) アンケート結果と考察 1 中学校から卓球を継続している生徒のみなさんにお聞きします 1 なぜ 高校でも続けようと思ったのですか? 1なぜ 高校でも続けようと思ったのですか? 卓球が好きだったから 6% ア卓球が好きだったから イもっとうまくなりたいと考えたから ウ先輩の部活紹介を見てエ友達に誘われてオ親に勧められてカその他 9% 6% 10% 14% 55% もっとうまくなりたいと考えたから 先輩の部活紹介を見て 友達に誘われて 親に勧められて その他 考察 最北地区の高校生が卓球を継続する主たる理由は上級生の働きかけや友人 保護者の勧めという外的な要因ではなく 卓球というスポーツそのものの魅力 即ち内的な要因が大きいことがわかる 2 高校で卓球を続けて良かったと思いますか? ア続けて良かった イ続けるべきではなかった 2 高校で卓球を続けて良かったと思いますか? 8% 続けて良かった 92% 続けるべきではなかった 考察 高校でも卓球を継続していることを後悔している生徒はほとんどおらず 前向きに部活動に取り組んでいると言えるだろう 32でアを選んだ人に聞きます 続けて良かったと感じるのはどのような時ですか? ア試合で勝った時イ競技力が向上した時ウ仲間との絆が深まった時エ指導者に認められた ( 褒められた ) 時オその他 32でアを選んだ人に聞きます 続けて良かったと感じるのはどのような時ですか 3%? 22% 29% 46% 試合で勝った時 競技力が向上した時 仲間との絆が深まった時 指導者に認められた ( 褒められた ) 時その他
3 42でイを選んだ人に聞きます 続けるべきではなかったと感じるのはどのような時ですか? ア試合で負けた時イ競技力が向上しない時ウ仲間との関係が悪くなった時エ指導者に認められない ( 褒められない ) 時オその他 42 でイを選んだ人に聞きます 続けるべきではなかったと感じるのはどのような時ですか? 33% 67% 試合で負けた時 競技力が向上しない時 仲間との関係が悪くなった時指導者に認められない ( 褒められない ) 時その他 考察 3の結果をみると ア試合で勝った時 イ競技力が向上した時 を選んだ生徒が多い また 4の結果を見るとその逆にあたる ア試合で負けた時 イ競技力が向上しない時 が多い この2つの結果は 生徒にとって継続して良かったと感じられる要因が自己実現による満足感や達成感を得たときであることを示している 2 高校から卓球を始めたみなさんにお聞きします なぜ 卓球を始めようと思ったのですか? ア面白そうだと思ったからイ先輩の部活紹介を見てウ友達に誘われてエ親に勧められてオその他 なぜ卓球を始めようと思ったのですか? 50% 50% 面白そうだと思ったから先輩の部活紹介を見て友達に誘われて親に勧められてその他 考察 初心者で回答した生徒はわずか2 名であり データとしての信頼性は低いが 面白そうだと思ったから 入部した生徒がいることは確かである これは 1-1の結果である卓球の魅力そのものが部活動継続の理由となっていることと共通するものである このことから 新規加入部員を増やす際には 部活で活躍できる 初心者でも強くなれる といった勧誘よりも 卓球の面白さを伝えていくような勧誘が有効であると考えられる 3 あなたは学校外 ( 地域のチームなど ) で卓球の練習をしていますか? ア学校外のチームに所属して練習している イ正式に所属していないが 練習に参加している ウ学校外のチームには所属せず 学校でのみ練習している エその他 あなたは学校外 ( 地域のチームなど ) で卓球の練習をしていますか? 6% 4% 63% 27% 学校外のチームに所属して練習している 正式に所属していないが 練習に参加している 学校外のチームには所属せず 学校でのみ練習している その他
4 考察 この結果は1-3 1-4とつながる結果である 試合で勝てることが卓球を続ける要因であることから 学校外で練習を行う生徒が3 割以上存在するのだろう ただし 6 割以上は学校のみで練習している生徒である 学校外で練習している生徒との競技技術の開きが生じてくることは否めない このことから 学校のみで練習する生徒は試合で勝つことが出来ず 卓球を継続する意欲を失ってしまうことが危惧される 生徒が卓球を継続するためには 普段の部活動でいかに効果的な練習を行っていくかが重要となる 4 3でア イを選んだみなさんにお聞きします 学校外で練習する理由は何ですか? ア競技力を向上させるためイ学校だけでは練習時間が少ないためウ友達に誘われてエ親に勧められてオその他 ア イを選んだみなさんにお聞きします 学校外で練習する理由は何ですか? 17% 8% 競技力を向上させるため 75% 学校だけでは練習時間が少ないため友達に誘われて 親に勧められて その他 考察 学校外で練習する生徒の7 割以上が競技力を向上させ 試合で勝つために練習をしている 他の項目でも見られるように 試合で勝つ ということが卓球継続に不可欠な要因であることは間違いない 5 その他 より各質問項目に その他 として自由に記述できる項目を設けた その中の興味深い回答をいくつか紹介したい 1 中学校から卓球を継続している生徒のみなさんにお聞きします 1なぜ 高校でも続けようと思ったのですか? ⅰ 自分には卓球しかできないと考えたから ⅱ 他に入る部がなかった 42でイを選んだ人に聞きます 続けるべきではなかったと感じるのはどのような時ですか? ⅲ 審判などで間違えたときに目立ってしまうから ⅰとⅱの回答は1 年生が入学して2 週間ほどで部活動を決定しなければならない状況が影響しているのではないだろうか 地区高校総体が5 月上旬に開催されることを考えれば どうしても4 月中旬には1 年生の部活動を決定しなければならない しかし 中には決定を迫られているという印象を持つ1 年生もいるのである 学校説明会や中学校訪問 学校ホームページ上での部活動情報の定期的な更新などによって 各学校にどのような部活動があり どのような活動 戦績をおさめているかといった積極的な情報公開が必要であると考える ⅲの回答は大会等で審判をする際に多くの生徒が抱く不安を言葉にしたものである 県大会などで審判を務めた際に誤審や判断の難しい状況に直面した際に選手や監督からクレームを受けることがある こうした状況は生徒に心理的負荷を与えるものであるが 誤審をゼロにするのは容易なことではない ただし 練習
5 試合や普段の練習の中で審判の経験を積むことで 誤審を減らし 的確な判断もできるようになっていくであろう 技術の向上のみではなく 選手のルール理解も日頃の部活動の中で実践していかねばならない 4 まとめ高校入学後も卓球を継続させようとするならば 普段の部活動が 勝てる練習 となるように指導者側の指導スキル向上が不可欠である 手立ての一つとして 山形県高体連卓球専門部による指導者講習会の参加を促し 顧問の指導力向上を図っていくことは必須である 私はこれまで平成 18 年度 24 年度 28 年度の3 回の指導者講習会に参加してきたが 最北地区顧問の参加は他地区に比べて多くはない 地区理事として次回講習会への参加を積極的に呼び掛けていきたい また 社会人選手による小 中 高生への指導の機会を設けている地区もあるという 卓球経験のない顧問にとってこうした機会は指導のノウハウを得る上で有益である 本地区の卓球協会とも連携を取りながら顧問の指導力向上を図っていきたい また 新たな選手を増やすには卓球という競技の持つ魅力を生徒にしっかりと伝えつつ 練習によって勝てるようになるという実感を持たせることも求められる 中学生のころに勝てなかったから卓球を続けないと考えている生徒も こうした勧誘と指導体制の充実によって継続の意思を持つようになり 最北地区における卓球部員の人数も増えていくことだろう