平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 2 4. 外国子会社合算税制の適用フローチャート 改正前 合算課税の適用対象となる内国法人等の判定 用語解説 丸数字は左のフローチャートと対応 合算対象法人における判定 1 外国法人の株式を 10% 以上保有しているか? 合算所得な

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税制改正大綱―外国子会社合算税制の見直し

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タックスヘイブン対策税制 年度税制改正 -

KPMG Insight Vol.2_税務01

恒久的施設(PE)と外国子会社合算税制の見直し

第4回税制調査会 総4-1

新規文書1

新設 ( 大法人により発行済株式等の全部を保有される場合の適用対象金額の計算 ) 66 の 6-10 の 2 措置法令第 39 条の 15 第 1 項第 1 号の規定により特定外国子会社等の適用対象金額につき本邦法令の規定の例に準じて計算するに当たり 特定外国子会社等の発行済株式等の全部を直接又は間

税法実務コース 海外勤務者と外国人の出国 入国 滞在時の国際税務 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 1 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 第 7 章 第 8 章 テーマ 1 居住者 非居住者判定テーマ 2 課税範囲についてテー

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

外国子会社合算税制 (CFC 税制 ) の改正と今後の海外投資 M&A に与える影響 PwC 税理士法人国際税務 /M&Aタックスグループパートナー山岸哲也 はじめに 2016 年 12 月 22 日に閣議決定された 2017( 平成 29) 年度税制改正の大綱 ( 以下 2017 年度税制改正大綱

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

PE 帰属所得計算の実務と課題 平成 28 年 7 月 4 日公開草案事例を検討する 平成 29 年 7 月 11 日 ユナイテッド パートナーズ会計事務所代表取締役西村善朗 1. 平成 28 年 4 月 1 日以後開始事業年度に 報告対象となるもの (3 月決算法人である内国法人については 平成

税が課税される所得を生み出す事業活動に使われているか否かを基準に損金算入規制を設けていると考えられます 株式などの出資の取得のために資金を使った場合, 株式から生じる配当やキャピタルゲインは資本参加免税により非課税となります このケースでは, オランダでの課税所得を生じないことが想定されるため, 出

公募株式投資信託の解約請求および償還時

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

2 2 上場株式等 の範囲の拡大 上場株式等には 上場株式 上場投資信託の受益権 (ETF) 上場不動産投資法人の投資口 (REIT) 公募株式等証券投資信託の受益権が含まれていた 今回の租税特別措置法の改正により 発行者の情報が一般に公開され その商品内容を入手することが容易に可能な公社債を 上場

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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新しい非居住者債券所得非課税制度の概要 < 平成 22 年度税制改正前の制度の概要 > 非居住者等が受ける振替国債及び振替地方債のについては 一定の手続要件を満たせば非課税とされていました しかし 非居住者等が受ける振替社債等のについては 原則 15% の税率により源泉徴収課税がなされていました 非

( 外国 ) 同上 ケース ( ) 相続人が取得した全 2 財産に対して課税 ( 外国 ) 国内財産に対しての み課税 ケース ( ) 相続人が取得した全 3 財産に対して課税 ( 外国 ) 同上 ( 平成 25 年度税制改正より ) ケース ( ) 被相続人 相続人いず 4 れも 5 年超居住の場

Microsoft Word - NO.2 株式の譲渡 2.docx

[Q1] 復興特別所得税の源泉徴収はいつから行う必要があるのですか 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際 復興特別所得税を併せて源泉徴収しなければなりません ( 復興財源確保法第 28 条 ) [Q2] 誰が復興特別所

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

2. 改正の趣旨 背景 国内に住所を有しないことにより相続税 贈与税の課税を免れる租税回避行為を抑制するため 平成 12 年度改正 ( 相続人 受贈者の国籍による納税義務判定の導入 ) 平成 25 年度改正 ( 相続人 受贈者が日本国籍なしの場合の課税強化 ) が行われてきた 平成 29 年度改正で

株式等の譲渡(特定口座の譲渡損失と配当所得等の損益通算及び翌年以後への繰越し)編

別紙 平成 30 年 1 月 ( 平成 30 年 8 月改定 ) 国税庁 平成 29 年度及び平成 30 年度改正外国子会社合算税制に関する Q&A 特定外国子会社等に係る所得の課税の特例 ( 外国子会社合算税制 ) については 平成 29 年度改正において 外国子会社の経済実態に即して課税すべき

「恒久的施設」(PE)から除外する独立代理人の要件

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

株式等の譲渡(前年からの繰越損失を譲渡所得及び配当所得等から控除)編

【表紙】

平成30年公認会計士試験

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

 

上場株式等の譲渡益に係る課税 上場株式等の税金について 上場株式等の譲渡益に係る税率は以下の通りです 平成 25 年 1 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 31 日 平成 26 年 1 月 1 日 ~ 平成 49 年 12 月 31 日 平成 50 年 1 月 1 日 ~ % (

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

平成23年度税制改正の主要項目

外国法人課税とAOAの適用開始④

第4回税制調査会 総4-1

PowerPoint プレゼンテーション

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給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

スライド 1

24年度税制改正(案)の解説

?? TAX LAW NEWSLETTER 2017 年 1 月号 (Vol 合併号 1 ) 外国子会社合算税制 ( タックスヘイブン対策税制 ) の総合的見直し < 平成 29 年度税制改正大綱 > Ⅰ. はじめに Ⅱ. 外国子会社合算税制とは Ⅲ. 本改正案の概要 1. 合算対象とさ

労働基準法が改正されます

~ 改正の変遷 ~ (1) 平成 12 年度改正前相続人 受贈者がの場合には 国内財産のみ課税 (2) 平成 12 年度改正後 平成 25 年度改正前平成 12 年度改正 : 相続人 受贈者について国籍主義を導入 H12 年度改正 : 国内財産 国外財産ともに課税 相続人 受贈者 相続人 受贈者 被

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

平成 30 年分給与所得者の扶養控除等 ( 異動 ) 申告書 ( マル扶 ) の手引き 平成 29 年末に記載する際は 平成 30 年 1 月 1 日時点の情報を書きましょう 平成 30 年の年末調整にて再度記入する際は 平成 30 年 12 月 31 日時点の情報に書き換えます X A 9/19

海運関係事項

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22 特定項目に係る十五パーセント基準超過額 うち その他金融機関等に係る対象資本調達手段のうち普通株式に該当するものに関連するものの額 うち 無形固定資産 ( モーゲージ サービシング ライツに係るものに限る ) に関連するものの額 うち 繰延税金資産 ( 一時差異に係るものに限

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平成20年2月

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連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

国外転出時課税制度(出国税)の導入

e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

Z-64-A 簿記論〔第一問〕-解 答-

相続の基礎 ~ 「相続」を学ぼう!! ~ 生前贈与①有価証券

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

税額控除限度額の計算この制度による税額控除限度額は 次の算式により計算します ( 措法 42 の 112) 税額控除限度額 = 特定機械装置等の取得価額 税額控除割合 ( 当期の法人税額の 20% 相当額を限度 ) 上記算式の税額控除割合は 次に掲げる区分に応じ それぞれ次の割合となります 特定機械

シティジャパン 租税条約等の実施に伴う所得税法 法人税法及び地方税法の特例等に関する法律に基づく届出書 ( 事業体のお客様用 ) 手順 本届出書にご記入いただく前に 以下の手順を注意深くお読みください 共通報告基準 (CRS:Common Reporting Standard) が採用されている国に

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49 年 12 月 31 日までの間 源泉徴収される配当等の額に係るの額に対して 2.1% の税率により復興 特別が源泉徴収されます b. 出資等減少分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 分割型分割及び株式分配並びに組織変更による場合を除く 以下本 1において同じ

投資主が受け取る配当等の額については 原則どおり配当等の額を受け取る際に20%( 所得税 )( 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までは復興特別所得税とあわせて20.42%) の税率により源泉徴収された後 総合課税の対象となります ( ロ ) 出資等減少分配に係る税

実務特集1. 寄附修正 Ⅰ はじめに グループ法人税制 100% グループ内の法人間での譲渡損益の繰り延べ 100% グループ内の法人間の寄附 ( 以上 2010 年 11 月号 ) 100% グループ内の法人間の寄附 ( 寄附修正 ) 支配関係 完全支配関係の判定 100% グループ内の法人のステ

源泉徴収票不交付の届出書 源泉徴収票不交付の届出書 源泉徴収票不交付の届出書 ( 英語版 ) 公的年金等の源泉徴収票 ( 及び同合計表 ) 平成 年分公的年金等の源泉徴収票 平成 年分公的年金等の源泉徴収票合計表 公的年金等の源泉徴収票 ( 及び同合計表 )( 平成 28 年 1 月 1 日以後提出

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

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(ⅲ) 源泉徴収選択口座への受入れ 源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

上場株式等の配当等に対する課税

2017年度税制改正速報

概要 平成 27 年までと平成 28 年以後の証券税制の比較 平成 27 年までは 上場株式等 と 公社債等 の税制上の取扱いが異なっています 平成 28 年以後は 金融所得課税の一体化 により 上場株式等 と 公社債等 の税制上の取扱いが統一されます 平成 27 年まで 上場株式等 上場株式 公募

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( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

株式等の譲渡(前年からの繰越損失を譲渡所得及び配当所得から控除)編

目次 Ⅰ タックス ヘイブン対策税制の概要 3 Ⅱ 非課税所得の範囲 連結納税を適用している場合の取扱い 1 非課税所得の範囲 2 連結納税を適用している場合の租税負担割合の算定方法 Ⅲ 各国の事例に基づく検討 1 米国 ( 現物分配 連結納税 LLC) 2 英国 ( グループリリーフ ) 3 ドイ

1 基本項目 ⑴ 所轄税務署長給与の支払者の所在地 ( 住所 ) の所轄税務署名を入力します 所轄税務署が不明な場合 国税庁ホームページ にある 税務署を検索 で郵便番号等による検索ができますので 参照してください ⑵ 給与の支払者の法人番号この欄には 申告書を受理した給

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平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 1 1. 外国子会社合算 ( タックスヘイブン対策 ) 税制の概要 軽課税国の外国子会社等を通じて日本国内における税負担の軽減を図る行為を防止するために 一定の要件を満たす外国子会社の所得を その株主である日本親会社の所得に合算して課税する制度です 2. 改正の背景 改正前の制度では以下のような問題点があるため 制度の総合的な見直しが行われることになりました 外国子会社の税負担水準が 20%( トリガー税率という ) 以上であれば経済実体を伴わない所得であっても合算されない 税負担水準が 20% 未満になると 経済実体がある事業から得た所得でも合算されてしまう場合がある 資本関係のない SPC を実質的に支配することで 本制度を回避するケースがある また BEPS プロジェクト ( 行動 3) に歩調を合わせて多国籍企業の租税回避をより的確に抑制することが求められている一方で 日本企業の健全な海外展開を阻害しないように 制度の見直しが検討されました 3. 改正のポイント 内容 課税への影響 1 外国関係会社の判定における実質支配基準の導入と間接保有割合の算定方法の見直し強化 ( 一部緩和 ) 2 ペーパーカンパニー 事実上のキャッシュボックス ブラックリスト国所在 に対する課税を新設強化 3 トリガー税率を廃止する一方 事務負担軽減のために 制度適用免除基準 として税率基準を残存 - 4 外国子会社における 適用除外基準 を 経済活動基準 とし 各要件の見直し緩和 ( 一部強化 ) 5 部分合算対象となる 資産性所得 を 受動的所得 とし その対象範囲を見直し強化 6 二重課税調整の項目の追加緩和 1

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 2 4. 外国子会社合算税制の適用フローチャート 改正前 合算課税の適用対象となる内国法人等の判定 用語解説 丸数字は左のフローチャートと対応 合算対象法人における判定 1 外国法人の株式を 10% 以上保有しているか? 合算所得なし 当該外国法人について 2 外国関係会社に該当するか? 3 特定外国子会社等に該当するか? 5 資産性所得を有するか? 資産性所得のみ合算 4 適用除外基準を満たすか? すべての所得を合算 合算は会社単位で行い 会社間の所得と欠損の相殺はしない 2 外国関係会社 外国法人のうち 日本の株主 ( 居住者 内国法人等 ) に合計で 50% 超保有されているもの 間接保有分の持株割合は 掛け算方式 ( 子会社保有割合 子会社の孫会社保有割合 ) により判定 3 特定外国子会社等 次のいずれかに該当する外国関係会社 所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店を有するもの 所得に対する税負担割合が 20% ( トリガー税率 ) 未満のもの 4 適用除外基準 事業基準 実体基準 管理支配基準 所在地国基準又は非関連者基準 があり 全てを満たすと適用除外となる 5 資産性所得 投資による運用益や知的財産権等の提供のみで得られる対価など 実質的な事業活動を伴わない所得 2

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 3 5. 外国子会社合算税制の適用フローチャート 改正後 合算課税の適用対象となる内国法人等の判定 合算対象法人における判定 1 外国法人の株式を 10% 以上保有等しているか? 当該外国法人について 改正 ( 範囲の変更 ) 2 外国関係会社に該当するか? 改正 ( 適用対象者の拡充 ) 改正点 1 適用対象者 2 外国関係会社 丸数字は左のフローチャートと対応 改正 ( 適用対象者の拡充 ) 外国法人のおおむね全ての残余財産請求権を保有する場合等も 当該外国法人を実質に支配しているものとして対象者に追加 改正 ( 範囲の変更 ) 間接保有分の持株割合を 掛け算方式 から 50% 超の連鎖の有無による判定に改正 上記 1 の実質支配関係にある外国法人を対象範囲に追加 合算所得なし 3 租税負担割合 30% 以上か? 4 特定の外国関係会社として ペーパーカンパニー 事実上のキャッシュボックス ブラックリスト国所在 のいずれかに該当するか? 改正 ( 実質改正前と同様 ) 5 租税負担割合 20% 以上か? ( 制度適用免除基準 ) 7 受動的所得を有するか? 改正 ( 内容変更 ) 6 経済活動基準を満たすか? 受動的所得のみ合算 改正 ( 新設 ) 改正 ( 内容変更 ) 改正 ( 新設 ) すべての所得を合算 4 特定の外国関係会社改正 ( 新設 ) ペーパーカンパニー事務所等の固定施設を持たず 本店所在地国 地域において事業の管理 支配を自ら行っていないもの 事実上のキャッシュボックス B/S 上の総資産に占める受動的所得 ( 異常利益 ( 新設 P5) は除く ) の割合が30% を超えるもの ( 総資産の額のうち有価証券 貸付金及び無形固定資産等の合計額が50% 超を占める外国関係会社に限る ) ブラックリスト国所在租税情報交換等に非協力的として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有するもの 5 制度適用免除基準 事務負担軽減のため改正前のトリガー税率と同様の判定を維持 6 経済活動基準 事業基準 実体基準 管理支配基準 所在地国基準又は非関連者基準 の枠組みは維持しつつ 内容について一部改正 ( 改正点の詳細は P4 参照 ) 7 受動的所得 改正 ( 実質改正前のトリガー税率と同様 ) 改正 ( 適用除外基準からの変更 ) 改正 ( 資産性所得からの変更 ) 部分合算の対象となる所得の改正 ( 改正点の詳細は P5,6 参照 ) 3

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 4 6. 適用除外基準の見直し 以下 4 つの基準を全て満たす場合には 外国で事業を行うことに合理性があるとして 会社単位での合算課税が免除されます 本改正により改正前の 適用除外基準 を 経済活動基準 として新たに定義付けるとともに 要件の内容が一部変更されます No. 基準改正前の内容 ( 適用除外基準 ) 改正における変更点 ( 経済活動基準 ) 1 事業基準 主たる事業が株式等の保有 知的財産権の提供または船舶 航空機の貸付ではない 航空機貸付事業については 本店所在地国において役員等が貸付を行うために必要な業務全てに従事しているなど一定の要件を満たすときは基準を満たすこととする 2 実体基準 本店等の所在する国又は地域において 主たる事業を行うために必要と認められる固定施設を有している 実体基準の要件を満たす一定の保険業者に保険業務を委託する 現地法令による保険免許を受けている外国関係会社は 自らは左記の要件を満たさない場合でも実体基準の要件を満たすこととする 3 管理支配基準 本店等の所在する国または地域において 事業の管理 支配及び運営を自ら行っている 管理支配基準の要件を満たす一定の保険業者に保険業務を委託する 現地法令による保険免許を受けている外国関係会社は 自らは左記の要件を満たさない場合でも管理支配基準を満たすこととする 4 右記のいずれか 非関連者基準 主たる事業が 卸売業 銀行業 信託業 金融商品取引業 保険業 水運業又は航空運送業の場合 : 親会社 子会社等の関連者以外の者との取引 ( 非関連者取引 ) が全体の50% を超えている < 例 > 非関連者 関連者 要件充足 70% 30% 仕入 外国関係会社 20% 80% 売上 非関連者 関連者 全体の売上のうち非関連者に対する売上の占める割合又は全体の仕入のうち非関連者からの仕入の占める割合が 50% を超える 対象業種に航空機貸付事業を追加 保険業を主たる事業とし保険受託者である外国関係会社が その保険委託者との間で行う取引は非関連者取引とする 非関連者取引割合の判定において 関連者に移転又は提供することが予定されている資産 役務に関する非関連者との取引は関連者との取引とする 転売 外国関係会社非関連者関連者売上 関連者との取引が予定されている取引は関連者取引とみなされる 所在地国基準 主たる事業が上記以外の場合 : その事業を主として本店等の所在する国または地域において行っている 製造業を主たる事業とする外国関係会社について 本店所在地国において製造業を行っていない場合でも 製造の主要な業務に関与しているなど一定の要件を満たすときは所在地国基準を満たすこととする 4

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 5 7. 受動的所得の範囲部分合算の対象となる 資産性所得 を 受動的所得 とし その対象範囲が広がります 項目改正前 ( 資産性所得 ) 改正後 ( 受動的所得 ) イ 配当等 持分割合 10% 未満の法人から受ける剰余金の配当等 以下を除くすべての配当等 持分割合 25% 以上等の要件を満たす法人から受ける配当等 ( 支払法人において損金算入される配当等は除く 租税条約相手国にある化石燃料採取事業を行う法人からの配当等については持分割合 10% 以上 ) 所得グループ 1 ロ利子 債券の利子 ハ 二 ホ 有価証券の貸付けの対価 有形固定資産の貸付けの対価 無形資産等の使用料 債券の償還差益 - 有価証券の貸付けの対価 船舶又は航空機の貸付けによる所得 特許権 実用新案権 意匠権 商標権 著作権の使用料 ( 外国関係会社が自ら行った研究開発に係るものなどを除く ) 以下を除くすべての利子 グループファイナンスに係る一定の貸付金利子 貸金業を営み 役員等が必要業務に従事するなど一定の要件を満たす外国関係会社が得る貸付金利子 外国関係会社が行う事業の通常の過程で得る預金利子 以下を除く有形固定資産の貸付けの対価 主として本店所在地国において使用に供される有形固定資産の貸付けの対価 役員等が有形固定資産の貸付けのための必要業務に従事するなど一定の要件を満たす外国関係会社が行う貸付けの対価 無形資産等の使用料 ( 外国関係会社が自ら行った研究開発に係るものなどを除く ) へ 異常利益 - 利益の額からイ~ホ ト~ルの所得の合計額及び総資産の額 減価償却累計額及び人件費 の額の合計額の50% を控除した残額 ト 有価証券の譲渡損益 持分割合 10% 未満の法人の株式等の譲渡所得 債券の譲渡所得 以下を除く有価証券の譲渡損益 持分割合 25% 以上等の法人の株式等の譲渡損益 所得グループ 2 チ リ ヌ デリバティブ取引損益 外国為替差損益 無形資産等の譲渡損益 - 以下を除くデリバティブ取引損益 ヘッジ目的のデリバティブ取引損益 商品先物取引業を行い 役員等が必要業務に従事するなど一定の要件を満たす外国関係会社が得るデリバティブ取引損益 - 以下を除く外国為替差損益 外国関係会社が行う事業 ( 差損益を得ることが主目的でないもの ) の通常過程で生じるもの - 無形資産等の譲渡損益 ( 外国関係会社が自ら行った研究開発に係るものなどを除く ) ルその他 - イ ロ ハ ト チ リの所得を生ずべき資産から生じる類似の所得 ( ヘッジ目的のものを除く ) 5

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 6 8. 受動的所得の計算方法 合算する 受動的所得 の計算方法が見直されます 改正前 ( 資産性所得 ) 改正後 ( 受動的所得 ) 各資産性所得の合計金額 各所得の損失は通算しない 以下の合計金額とする (1)P5 の表 所得グループ 1 の合計額 (2)P5 の表 所得グループ 2 の合計額 (2) の損失は (1) と通算しない 過去 7 年以内開始事業年度に生じた (2) の欠損金額がある場合は (2) の合計額の計算上 控除する 9. 受動的所得の少額免除基準 受動的所得 の少額免除基準が見直されます 改正前 ( 資産性所得 ) 改正後 ( 受動的所得 ) 次のいずれかを満たす場合は合算しない 対象所得の収入金額の合計が 1,000 万円以下である場合 対象所得金額が当該事業年度の外国関係会社の所得金額の 5% 以下である場合 確定申告書に当該基準を満たす旨の書面の添付が必要 次のいずれかを満たす場合は合算しない 対象所得の収入金額の合計が 2.000 万円以下である場合 対象所得金額が当該事業年度の外国関係会社の所得金額の 5% 以下である場合 ( 変更なし ) 確定申告書に当該基準を満たす旨の書面の添付要件は廃止 10. 二重課税調整の追加項目 合算課税を受ける場合に 外国関係会社に対して日本で課された所得税等 ( 例えば利子に対する源泉所得税 ) の額のうち 合算課税対象金額に対応する金額について 合算課税を行う内国法人の法人税の額から控除する 11. 実務上の留意点 租税負担割合 20% 未満の国 地域に所在する外国子会社等で経済的基準を満たすものを保有する内国法人は 当該外国子会社等が受動的所得を有する否かの判定の事務負担が大きくなることが予想される 〇外国関係会社の平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から適用される 6

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 非永住者の課税所得の範囲の見直し 1. 改正の概要 非永住者 ( 1) の課税所得の範囲から下記の有価証券 ( 2) の譲渡により生ずる所得が除外されます 1 外国金融商品取引所において譲渡されるもの 2 国外において金融商品取引業等を営む者への売委託により国外において譲渡されるもの 3 国外において金融商品取引業等を営む者の国外営業所等に開設された有価証券の保管等に係る口座に受け入れられているもの 1) 非永住者とは 居住者のうち 日本の国籍を有しておらず かつ 過去 10 年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5 年以下である個人をいう 2) 平成 29 年 4 月 1 日以後に取得した有価証券で 過去 10 年以内において非永住者であった期間内に取得したものを除く 〇平成 29 年 4 月 1 日以後に行う有価証券の譲渡に適用される 2. 改正の趣旨 平成 26 年税制改正によって 外国法人に対する課税原則が 総合主義 から 帰属主義 に見直されたことに伴い 平成 29 年分以後の非永住者の課税所得の範囲が下表のように改正されました 非永住者の課税所得の範囲 平成 28 年分まで 国内源泉所得及びこれ以外の所得で国内において支払われ 又は国外から送金されたもの 平成 29 年分以後 国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ 又は国外から送金されたもの 国外源泉所得 に含まれる株式の譲渡に係る所得は 事業譲渡類似株式に相当する株式など特定の株式に係るものに限られるため 通常の外国上場株式などの譲渡に係る所得は 国外源泉所得以外の所得 に該当します したがって 非永住者の課税所得の範囲に含まれることになります 総合主義 から 帰属主義 への課税原則の見直しは 非永住者の課税所得の範囲を変更する趣旨ではなかったこと 及び平成 29 年分以後の課税所得の範囲の拡大が高度外国人材の呼び込みの阻害要因になっていることから 見直されます 非永住者が非居住者期間中に購入した株式を譲渡した場合 非居住者期間入国 株式購入 居住者 ( 非永住者 ) 期間 改正 ニューヨーク証券取引所で株式を譲渡 国外源泉所得以外の所得 に該当 非永住者の課税所得の範囲から除外 7