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医学研究における 次世代シーケンサ技術の活用 大阪府立成人病センター研究所 久木田洋児 IBISW2011

医学研究における次世代シーケンサーの用途 個人ゲノム解読 (Personal Genomics) のための技術 human genome re-sequencer 研究 一般的な疾患の遺伝素因探索 全ゲノム相関解析の検出限界以下 ( 付近 ) の稀な疾患変異探索 単遺伝子疾患原因遺伝子探索 (>3000 については未だ原因遺伝子が不明 ) 連鎖解析では解析不能な稀尐疾患の小家系の解析 診断 既知疾患 / 遺伝病発症予測 出生前後診断 ( 血中遊離 DNA を用いたダウン症の出生前診断 ) がんの分子診断 癌組織や血中遊離 DNA 中の体細胞変異 ( 癌組織の突然変異 ) の検出 解析

塩基配列変異 ( 突然変異と多型 ) 突然変異 (mutation) はゲノム中の塩基配列の違いで 稀であり ある個人に特異なものであったりする 一般的に表現型に病的影響を与えるものを指すことが多い 多型 (polymorphism) は一般集団に見られる塩基配列の違いである 疾患を引き起こす変異ではないが 身長や髪色などの身体的特徴や疾患への感受性 薬剤への応答などに影響している事がわかってきている 多型も始まりは ある個体に生じた突然変異で 個体の生存に深刻な悪影響を及ぼさなかった場合 集団中に広まり定着したものである

ヒトゲノム上の塩基配列変異 1 塩基が他の塩基に置き換わっているもの - 1 塩基置換 (1 塩基の多型のことを SNP,single nucleotide polymorphism という ) 1 から数十塩基以上の欠失 / 挿入 - 2 塩基から数十塩基を 1 単位とする配列が並んで繰り返すマイクロサテライト,VNTR (variable number of tandem repeat) - 数 kb 以上の配列 ( 領域 ) の数が個人間で異なるコピー数多型 (CNV, CNP) 配列の向きがレファレンスゲノムと逆になっているもの - 逆位 (e.g., ヨーロッパ人集団に見られる 17q21.31 の 900 kb 領域 ) 染色体が途中から切れて 別の染色体につながる - 転座

一塩基多型 (SNP) とハプロタイプ 複数人の染色体 The International HapMap Consortium, Nature 2003

全ゲノム相関解析 genome-wide association study (GWAS) 糖尿病や高血圧などの common な疾患は その疾患集団に高頻度で存在する common な遺伝多型で説明できる という仮定が基になっている 対照群 糖尿病 AAGTCAGTCAAG AAGTCACTCAAG 5 95 : 15 60 P=4.47E-6 : アレル ( 対立遺伝子 ) 頻度

GWAS では遺伝素因の殆どは説明できない 検出された SNP の多くは 疾患に対する寄与率が低い 稀な遺伝病 Illumina 社資料次世代 GWAS 研究

疾患関連稀尐アレル ( 変異 ) の検出 従来の GWAS 次世代の GWAS 5% 1% 0.5% アレル頻度 10-8 % HapMap project (~2007) (3M SNPs, 270 人 ) 1000 genomes project (2008~) (Whole genome, 2500 人 ) Detection limit of GWAS 稀尐変異 1) 遺伝素因の強い症例の解析 2) 症例を絞った既知遺伝子の配列解析 表現型に対する寄与度 ( 疾患の場合は生存に不利 -> 次の世代に残りにくい )

1000 Genomes Project 5 大陸 29 集団 ( ヨーロッパ人 (5), 東アジア人 (6), 西アフリカ人 (6), アメリカ人 (7), 南アジア人 (5)) 計 2500 人の全ゲノム配列を決定する 各集団において95% 以上の多型変異 ( 頻度 0.5-1% 以上 ) を検出する Pilot 研究 (Nature, 2010), Phase1データが公開され始めている

医学研究における次世代シーケンサーの用途 個人ゲノム解読 (Personal Genomics) のための技術 human genome re-sequencer 研究 一般的な疾患の遺伝素因探索 全ゲノム相関解析の検出限界以下 ( 付近 ) の稀な疾患変異探索 単遺伝子疾患原因遺伝子探索 (>3000 については未だ原因遺伝子が不明 ) 連鎖解析では解析不能な稀尐疾患の小家系の解析 診断 既知疾患 / 遺伝病発症予測 出生前後診断 ( 血中遊離 DNA を用いたダウン症の出生前診断 ) がんの分子診断 癌組織や血中遊離 DNA 中の体細胞変異 ( 癌組織の突然変異 ) の検出 解析

解析対象 66 歳 60 歳 肺癌 (BAC, 多発 ) 肺癌 (BAC, 多発 ) BAC: 細気管支肺胞上皮癌

Exome Sequencing 全遺伝子配列シーケンス gene A gene B ヒトゲノムレファレンス配列 エキソン イントロン エキソン bwa (Li and Durbin, 2009, 2010) でマッピング 冗長度 (50~ x) リード配列 (76 bases x 2) samtools (Li et al., 2009) による変異 ( 塩基置換, 挿入, 欠失 ) の検出 公共データベース (dbsnp b130, 1000 genome project Pilot1) を参照した既知多型の除去 アミノ酸変化を伴う新規変異の抽出

全エキソン配列の抽出 Sure Select Human All Exon Kit (Agilent Technologies) Target regions: 38 Mb (1% of human genome) ~180,000 exons (coding regions) >700 mirnas >300 non-coding RNA input: ~3 ug of genomic DNA http://www.opengenomics.com/products/sureselect_target_enrichment_system

Variants Identified by Exome Sequencing FL1( ) FL2( ) SNVs (novel) (novel) synonymous 8,687 (247) 8,674 (236) non-synonymous 7,350 (388) 7,493 (445) nonsense 45 (9) 45 (9) splice site 57 (2) 55 (5) small indels coding indel 210 (74) 207 (66) splice site 33 (7) 31 (5) アミノ酸変化を伴う新規変異を持つ遺伝子数は FL1( ) が 427 遺伝子 FL2( ) が 486 遺伝子 その内 233 遺伝子には両者に共通の変異があった

患者には広いホモ接合領域が検出された FL1L chr22 12.8 Mb ホモ接合 ヘテロ接合 ホモ接合 FL2L 13.4 Mb 染色体上での塩基位置 Assayed using Omni1 BeadChip (Illumina). BAF: B allele frequency = intensity of B allele / (intensity of A allele + intensity of B allele) Total length of homozygous regions (detected by plink software, Purcell et al., 2007) - FL1L (male): 278 Mb (chr1-22) - FL2L (female): 210 Mb (chr1-22, X) 親以上の世代で近親婚が行われている ( いとこ婚?) - shared homozygous regions: 72 Mb (chr1-22, X. 612 genes) -> 原因変異の存在が疑われる領域 - 4 homozygous variants/ 4 genes in shared homozygous regions between patients

タンパク質変異機能予測プログラム 遺伝子産物であるタンパク質のアミノ酸配列や構造の保存度をもとに 塩基変異によるアミノ酸変化が与える機能への影響を予測する ( 影響が無いのか 不活化するのか ) Kumar P et al., Nature Protocols, 4:1073-1082, 2009

マッピング / アラインメント時の障害 短いリード配列 ( 今回は 76 塩基 ) - 低い特異性 -> 間違った領域にマップされる 不完全なレファレンスゲノム配列 - ギャップ 357 か所 (GRC37) - 個人間の違い ( 多様性 未知配列の存在 ) - 塩基置換 欠失 挿入 逆位などのゲノム構造変化 -> 解決策として de novo アライメントがあるが ゲノム中の相同配列の存在 ( ゲノムの約半分を占めるトランスポゾンなどのリピート配列 遺伝子ホモログ 重複領域 ) が障害になっている

医学研究における次世代シーケンサーの用途 個人ゲノム解読 (Personal Genomics) のための技術 human genome re-sequencer 研究 一般的な疾患の遺伝素因探索 全ゲノム相関解析の検出限界以下 ( 付近 ) の稀な疾患変異探索 単遺伝子疾患原因遺伝子探索 (>3000 については未だ原因遺伝子が不明 ) 連鎖解析では解析不能な稀尐疾患の小家系の解析 診断 既知疾患 / 遺伝病発症予測 出生前後診断 ( 血中遊離 DNA を用いたダウン症の出生前診断 ) がんの分子診断 癌組織や血中遊離 DNA 中の体細胞変異 ( 癌組織の突然変異 ) の検出 解析

個別化医療

代表的な分子標的薬 肺癌は日本人の癌種別死亡率の 1 位 患者の約 1/4 には 癌組織の EGFR 遺伝子に活性化型突然変異が見つかる

活性化及び耐性 EGFR 変異 T790M (50%) 耐性変異 L858R (>45%) 活性化変異 de746-a750 (>45%) Sarma SV et al. Nature Reviews Cancer 7: 169, 2007 - 活性化型突然変異の約 90% はエキソン 19 の欠失変異とエキソン 21 の塩基置換 - 耐性患者の半数に T790M が見つかる 3 か所の調査で大部分の患者を判別可

肺癌における非侵襲性遺伝子検査の重要性 1. 他臓器の癌に比べて腫瘍組織採取が難しい -> 気管支鏡検査 CT ガイド下肺生検 ( 気胸などの合併症 ) 2. チロシンキナーゼ阻害剤 ( イレッサやタルセバ ) 適用症例選択のため遺伝子検査は必須

血液中遊離 DNA Schwarzenbach, H. Nature Review Cancer, 11, 426, 2011.

半導体シーケンサー Life Technology 社 Ion Torrent PGM

Ion Torrent PGM でのシーケンス 血漿由来 DNA を鋳型にした EGFR エキソンの PCR Emulsion PCR 水 - 油エマルジョン中の 1 つの水滴中にプライマーの付いたビーズ 1 個 鋳型 DNA1 個が入るように調整して行う Rothberg JM et al., Nature, 475:348-352, 2011

Massive Amplicon Sequencing (MAS) 正常細胞由来 腫瘍由来 cagcacgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggccg gctaatctgc tggctgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgagtgcgga cagcatgtca acatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggctg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggcgg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtaa agatcacaga ttttgggcgg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggcgg gccaaactgc tgggtgcgga cagcatgtca agatcacaga ttttgggcgg gccaaactgc tgggtgcgga L858R 読み取りエラー変異

塩基置換読み取りエラー率 塩基置換読み取りエラー (PGM) 塩基読み取り位置

挿入欠失読み取りエラー率 挿入欠失読み取りエラー (PGM) 塩基読み取り位置

読み取り塩基部位 (%) 読み取りエラー ( 塩基置換と挿入欠失 ) 40 30 塩基置換エラー 20 挿入欠失エラー 10 0 10-6 10-6 - 10-5 10-5 - 10-4 10-4 - 10-3 10-3 - 10-2 10-2 - 10-1 >10-1 読み取りエラー率

Ion Torrent PGM でのシーケンス 水素イオン量の検出 塩基への変換 Rothberg, J. et al. Nature 2011, 475, 348.

読み取りエラー率 Exon 20 (T790M) patient no.4 T790M (C2369T) Total read, 98,816; BEAMing( 別の検出方法 ), 0.08%; Sequencing, 0.17%

読み取りエラー率 Exon 21 (L858R) patient no.4 L858R (T2573G) Total read, 157,201; BEAMing, 0.13%; Sequencing, 0.15%

読み取りエラー率 Exon 19 (deletion) patient no.6 insertion/deletion deletion region Total read, ~262,000; BEAMing, 1.03% ; Sequencing, ~1.4%

まとめ 次世代シーケンサーは集団及び個人レベルでの疾患原因変異の検出 ( 疾患の診断 ) に有効である 次世代シーケンサーは機種によって塩基配列決定法が異なる そのためデータの特徴 品質について注意が必要である 情報系解析手法が必要な部分は 検出システムに依存するものでは - 検出器で検出されたシグナルを塩基配列データに変換部分 塩基配列データ解析に関しては - レファレンスゲノム配列の整備に依存する面もあるが エラーを含んだ配列を正確にマッピング / アライメントする部分 - 変異部位の影響を知るための変異タンパク質機能予測する部分 - エラーを含む配列集団中に存在する低頻度だが真の変異を検出する部分

共同研究者 大阪府立成人病センター研究所 加藤菊也, 谷口一也 呼吸器外科 兒玉憲, 岡見次郎, 東山聖彦 呼吸器内科 今村文生, 内田純二, 西野和美, 熊谷融, 奥山貴子 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科加藤順也, 加藤規子, 中前伊公子 大阪大学蛋白質研究所 川端猛 東京大学大学院 新領域創成科学研究科菅野純夫, 鈴木穣