平成 26 年 5 月に 顧客との契約から生じる収益 (IASB においては IFRS 第 15 号 ( 平成 30 年 1 月 1 日 以後開始事業年度から適用 ) FASB においては Topic606( 平成 29 年 12 月 15 日後開始事業年度から適 用 )) を公表しました これらの

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収益認識に関する会計基準

労働基準法が改正されます

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

このため 法人税法の取扱いでは 収益の計上時期について各法人の任意の取扱いに委ねるのではなく 課税の公平の観点からこれを統一的に取扱うこととしている すなわち 法人が商品等を販売した場合には それによる収益は商品等の 引渡しがあった日 に収益に計上することとしている つまり 商品等の買主への引渡しと

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ことも認められています 施行日前 ( 平成 26 年 3 月 31 日以前 ) にリース契約を締結し リース資産の引渡しを行ったリース取引についてこの特例により賃貸借処理を行っている場合には 旧税率の 5% が適用されます 3. 資産の貸付け に関する経過措置指定日の前日 ( 平成 25 年 9 月

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

1 本会計基準等の概要以下の概要は 本会計基準等の内容を要約したものです 本会計基準等の理解のために 本会計基準等の基本となる原則である収益を認識するための 5 つのステップについて 別紙 1 に取引例及びフローを含めた説明を示しています また 本会計基準等と従来の日本基準又は日本基準における実務と

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【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

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1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

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投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

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(1) 契約の識別契約の識別にあたって 厳密な法律上の解釈まで必要とするのか あるいは過去の商慣習等で双方の履行が合理的に期待される程度の確認で済むのかが論点となります 基本的に新しい収益認識基準では 原則として法的な権利義務関係の存在を前提とします また 業界によっては 長年の取引慣行のみで双方が

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(10) 顧客による検収 80 (11) 返品権付きの販売 工事契約等から損失が見込まれる場合の取扱い 重要性等に関する代替的な取扱い 91 (1) 契約変更 91 (2) 履行義務の識別 92 (3) 一定の期間にわたり充足される履行義務 94 (4) 一時点で充足される履

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ならないとされている (IFRS 第 15 号第 8 項 ) 4. 顧客との契約の一部が IFRS 第 15 号の範囲に含まれ 一部が他の基準の範囲に含まれる場合については 取引価格の測定に関する要求事項を設けている (IFRS 第 15 号第 7 項 ) ( 意見募集文書に寄せられた意見 ) 5.

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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平成20年2月

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

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五有価証券 ( 証券取引法第二条第一項に規定する有価証券又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう ) を取得させる行為 ( 代理又は媒介に該当するもの並びに同条第十七項に規定する有価証券先物取引 ( 第十号において 有価証券先物取引 という ) 及び同条第二十一項に規定する有価証券先

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余金の額の減少に伴うものを除きます 以下同じです ) 若しくは利益の配当又はいわゆる中間配当 ( 資本剰余金 の額の減少に伴うものを除きます 以下同じです ) を した場合には その積立金の取崩額を 減 2 に記載するとともに 繰越損益金 26 の 増 3 の金額に含まれることになります なお この

き県が負担する負担金の額 ( 当該負担金の額が他の法令の規定により軽減される場合にあつては, その軽減されることとなる額を控除した額 以下 県負担額 という ) から当該事業に要する費用の額 ( 加算額がある場合にあつては, 加算額を控除して得た額 ) に100 分の25 以内で規則で定める割合を乗

別表六 ( 一 ) 所得税額の控除に関する明細書 1 この明細書の用途この明細書は 法人が当期中に支払を受ける利子及び配当等並びに懸賞金等及び償還差益について課された所得税の額について 法第 68 条第 1 項 (( 所得税額の控除 ))( 復興財源確保法第 33 条第 2 項 (( 復興特別所得税

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スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

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コニカミノルタ ( 株 ) (4902) 2019 年 3 月期決算短 4. 連結財務諸表及び主な注記 (1) 連結財政状態計算書 資産 流動資産 前連結会計年度 (2018 年 3 月 31 日 ) ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 (2019 年 3 月 31 日 ) 現金及び現金同等物

租税特別措置法 ( 昭和三十二年法律第二十六号 ) 第十条の二 第四十二条の五 第六十八条の十 租税特別措置法 ( 昭和三十二年法律第二十六号 ) ( 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除 ) 第十条の二青色申告書を提出する個人が 平成三十年四月一日 ( 第二号及

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

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できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決

「資産除去債務に関する会計基準(案)」及び

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定期金に関する権利の評価(定期金給付事由が発生しているもの)

課税売上割合 消費税の課税売上割合の計算は 次の算式により計算します 課税売上割合が 95% 以上と未満では 仕入税額 控除の計算方法が変わってくるため算定する必要があります 課税売上割合 = 課税売上 ( 税抜 )/( 非課税売上 + 課税売上 )( 税抜 ) 消費税の課税売上割合が 95% 以上

( ロ ) 出資等減少分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る出資等減少分配 ( 所得税法第 24 条に定めるものをいいます 以下 本 ( ロ ) 出資等減少分配に係る税務 において同じです ) のうち本投資法人の税務上の資本金等の額に相当する金額を超える金額がある場合には みなし配当 ( 計

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精算表 精算表とは 決算日に 総勘定元帳から各勘定の残高を集計した上で それらに修正すべき処理 ( 決算整理仕訳 ) の内 容を記入し 確定した各勘定の金額を貸借対照表と損益計算書の欄に移していく一覧表です 期末商品棚卸高 20 円 現金 繰越商品 資本金 2

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貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

試験研究費 9,, 7,, Check7 14,, 14,, Check8 7,, 2,, 14,, 6,, 6,, 税務弘報

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Ⅳ 収益認識に関する会計基準に対応する改正 1 収益認識に関する会計基準への対応 制度の概要 ⑴ 法人税法上の収益の認識時期と額法人の各事業年度の所得の金額は その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする こととされています ( 法 221) その所得の金額の計算上 益金の額に算入すべき金額は 別段の定めがあるものを除き 資産の 販売 有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供 無償による資産の譲受けその他の取引で資 本等取引以外のものに係るその事業年度の収益の額とされ その収益の額は一般に公正妥当と認め られる会計処理の基準に従って計算されるものとされています ( 法 2224) ( 注 ) 具体的な収益の認識時期について 法人税基本通達において 例えば棚卸資産の販売による収益の額は その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入することとされています ( 法人税基本通達 2-1 -1) ⑵ 返品調整引当金制度 出版業等の事業を営む法人で 販売する棚卸資産の大部分について買戻しの特約を結んでいるも のが その買戻しによる損失の見込額として 各事業年度の終了の時において損金により返品 調整引当金勘定に繰り入れた金額のうち 繰入限度額に達するまでの金額はその各事業年度の損金 の額に算入することとされています ( 旧法 531) ( 注 ) 繰入限度額の計算 (*) (*) 繰入限度額の計算は 出版業 出版に係る取次業等の事業の種類ごとに行うことになります イ事業年度終了の時の売掛金残高返品調整引当金 or 棚卸資産の = 繰入限度額ロ事業年度終了の日以前 2ヶ月間返品率の販売額の合計額 なお 返品調整引当金勘定の金額は 翌事業年度において全額を取り崩して 益金の額に算入することとされています ( 旧法 537) ⑶ 長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属年度の特例 法人が 長期割賦販売等に該当する資産の販売等に係る収益の額及び費用の額について その資 産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の日の属する事業年度以後の各事業年度の確定 した決算において延払基準の方法によりした場合には そのした収益の額及び費用の額は その各事業年度の所得の金額の計算上 益金の額及び損金の額に算入することとされています ( 旧 法 631) ( 注 ) 長期割賦販売等とは 資産の販売等で次の要件に適合する条件を定めた契約に基づき行われるもの及びリース譲渡 ( 法第 64 条の 2 第 3 項に規定するリース取引による同条第 1 項に規定するリース資産の引渡しをいいます ) をいいます ( 旧法 636 旧法令 127) イ 3 回以上に分割して対価の支払を受けることロ最後の賦払金の支払期日までの期間が 2 年以上であることハ目的物の引渡しの期日までに支払期日が到来する賦払金の額の合計額が対価の額の 3 分の 2 以下となっていること 改正の内容 売買利益率 ⑴ 収益認識に関する会計基準の概要我が国においては 企業会計原則の損益計算書原則に 売上高は 実現主義の原則に従い 商品 等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る とされているものの 収益認識に関する 包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした 一方 国際会計基準審議会 (IASB) 及び 米国財務会計基準審議会 (FASB) は 共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い - 29 -

平成 26 年 5 月に 顧客との契約から生じる収益 (IASB においては IFRS 第 15 号 ( 平成 30 年 1 月 1 日 以後開始事業年度から適用 ) FASB においては Topic606( 平成 29 年 12 月 15 日後開始事業年度から適 用 )) を公表しました これらの状況を踏まえ 我が国の会計基準策定主体である企業会計基準委員会は 平成 30 年 3 月 30 日に収益認識に関する包括的な会計基準となる企業会計基準第 29 号 収益認識に関する会計基準 及び企業会計基準適用指針第 30 号 収益認識に関する会計基準の適用指針 ( 以下 新会計基準 と いいます ) を公表しました 新会計基準では 約束した財又はサービスの顧客への移転を 当該財又はサービスと交換に企業 が権利を得ると見込む対価の額 ( 以下 取引価格 といいます ) で描写するように収益を認識する ことを基本原則としており その収益を認識するために 5 ステップを適用して 顧客との契約にお いて財又はサービスを顧客へ移転する約束 ( 以下 履行義務 といいます ) を充足した時に又は充 足するにつれて 取引価格のうち当該履行義務に配分した額について収益を認識することとされて います また 取引価格を算定する際に変動対価等の影響を考慮することとされています なお 新会計基準の適用時期は 平成 33 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から強制適用とされて いますが 平成 30 年 4 月 1 日以後開始する事業年度又は同年 12 月 31 日以後終了する事業年度から任 意適用できることとされています ( 注 ) 中小企業 ( 監査対象法人以外 ) については 引き続き企業会計原則に則った会計処理も可能とされています イメージ図 < 基本原則に従って収益を認識するための 5 ステップ > ステップ 1 顧客との契約を識別 ステップ 2 契約における履行義務 ( 収益認識の単位 ) を識別 ステップ 3 取引価格の算定 値引き リベート 返金等 取引の対価に変動性のある金額が含まれる場合は その変動部分の金額を見積り その部分を増減して取引価格を算定 ステップ 4 契約における履行義務に取引価格を配分 ステップ 5 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識 ( 注 ) 割賦販売における割賦基準に基づく収益認識は認められません 5 ステップの適用例 ( 設例 ) 商品の販売と保守サービス (2 年間 ) を提供する契約の場合商品の引渡し : 当期首保守サービス : 当期首から翌期末 設例契約書上の対価の額 :12,000 千円 契約 履行義務 ( 商品の販売 ) 配分された取引価格 10,000 千円 一時点 当期の収益 10,000 千円 履行義務 ( 保守サービスの提供 ) 取引価格 12,000 千円 配分された取引価格 2,000 千円 一定期間 当期の収益 1,000 千円 翌期の収益 1,000 千円 ステップ 1 ステップ 2 ステップ 3 ステップ 4 ステップ 5 収益の認識 - 30-1

⑵ 資産の販売等に係る収益の認識時期について資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供 ( 以下 資産の販売等 といいます ) に係る収益の額は 原則としてその資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日 ( 以下 引渡し等の日 といいます ) の属する事業年度の所得の金額の計算上 益金の額に算入することが明確化されました ( 法 22 の21) ただし 資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準 ( 以下 公正処理基準 といいます ) に従って引渡し等の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益としてした場合には その資産の販売等に係る収益の額は その事業年度の所得の金額の計算上 益金の額に算入することとされました ( 法 22 の22) なお 引渡し等の日に近接する日の属する事業年度の確定書に収益の額の益金算入に関するの記載をした場合 ( 公正処理基準に従って引渡し等の日又はその近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益としてしている場合を除きます ) には その近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益としてしたものとみなすこととされました ( 法 22 の2 3) イメージ図 資産の販売等に係る収益の額は 次のいずれかの日の属する事業年度の所得の金額の計算上 益金の額に算入します ( 例 :3 月決算法人 ) 引渡し等の日に近接する日 ( 公正処理基準における収益認識の日 ) に収益 その近接する日の属する事業年度で益金算入 引渡し等の日に近接する日 ( 公正処理基準における収益認識の日 ) の属する事業年度の確定書において調整をした場合には その日の属する事業年度に収益をしたものとみなして その事業年度で益金算入する - 31 -

資産の販売等に係る収益の額は 引渡し等の日又はその近接する日において収益している場 合には 調整によりこれらの日以外の日に変更することはできません ⑶ 資産の販売等に係る収益の額について 資産の販売等に係る収益の額として所得の金額の計算上 益金の額に算入する金額は 原則とし て その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通 常得べき対価の額 ( 以下 引渡し等の時における価額 といいます ) に相当する金額とすることが 明確化されました ( 法 22 の 24) その引渡し等の時における価額は 貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においても その可能 性がないものとした場合における価額とされます ( 法 22 の 25) ( 注 ) 値引き及び割戻しについて客観的に見積られた金額を当初の契約上の対価の額から控除した額も引渡し等の時における価額とされます イメージ図 値引き 割戻し 貸倒れや買戻し等対価に変動性のある金額 新会計基準上の 取引価格 900 変動対価 割戻し 30 貸倒れ 70 値引き及び割戻しについて 客観的に見積もられた金額 当初の契約上の対価の額 1,000 割戻し 30 貸倒れ 70 収益の額 益金算入 ( 貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合でもその可能性がないものとした場合の価額 ( 法 22 の 25)) 引渡し等の時における価額 ( 時価 )970 ( 法 22 の 24) - 32 -

⑷ 収益の額に係る修正のについて資産の販売等に係る収益の額について 公正処理基準に従って 引渡し等の日の属する事業年度後の事業年度の確定した決算において修正の ( 法第 22 条の2 第 5 項各号に掲げる貸倒れ及び買戻しの事実が生ずる可能性の変動に基づく修正のを除きます 以下同じです ) をした場合に その引渡し等の日の属する事業年度において所得の金額の計算上益金の額に算入された金額にその修正のにより増加した金額を加算し 又はその益金の額に算入された金額からその修正のにより減少した金額を控除した金額がその資産の販売等に係る引渡し等の時における価額に相当するときは その修正のにより増加し 又は減少した金額は その修正のをした事業年度の所得の金額の計算上 益金の額又は損金の額に算入することとされました ( 法 22の27 法令 18の 212) また 引渡し等事業年度においてその収益の額につき適正に益金算入された場合で 上記の適用がない場合において 資産の販売等に係る収益の額について 引渡し等の日の属する事業年度後に生じた事情によりその資産の販売等に係る引渡し等の時における価額が変動したときは その変動により増加し 又は減少した価額は その変動することが確定した事業年度の所得の計算上 益金の額又は損金の額に算入することとされました ( 法 22の27 法令 18の23) イメージ図 ( 例 :3 月決算法人 ) 値引き及び割戻し等対価に変動性のある金額 値引き及び割戻しについて 客観的に見積もられた金額 変動対価 見積りの不確実性が解消される新たな事実 その時点で修正 新会計基準上の 取引価格 当初の契約上の対価の額 引渡し等の時における価額 ( 時価 ) ( 法 22 の 24) ⑸ 現物配当等に係る収益の額について 無償による資産の譲渡に係る収益の額は 金銭以外の資産による利益又は剰余金の分配及び残余 財産の分配又は引渡しその他これらに類する行為としての資産の譲渡に係る収益の額を含むことと され これらの取引についても法人税法上の 収益の額 が生ずることが明確化されました ( 法 22 の 26) 契約締結日引渡し等の日新たな事実 3/31 修正の ( 例 ) 値引き額が確定 ⑹ 返品調整引当金制度の廃止 制度の概要 ⑵ は 経過措置を講じた上 廃止されました ( 旧法 53) ⑺ 長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属年度の特例 制度の概要 ⑶ のうち リース譲渡に係る部分以外の部分 ( 資産の販売等で一定の要件に適合 する条件を定めた契約に基づき行われるもの ) が 経過措置を講じた上 廃止されました ( 旧法 63) 適用時期 改正の内容 ⑵ から ⑺ までは平成 30 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度から適用されます ( 改正法附則 19) - 33 -

経過措置の内容 ⑴ 改正の内容 ⑹ については 平成 30 年 4 月 1 日において返品調整引当金制度の対象事業を営 む法人の平成 33 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度について 改正前の規定による損金算入 限度額による引当てが認められるとともに 平成 33 年 4 月 1 日から平成 42 年 3 月 31 日までの 間に開始する各事業年度については改正前の規定による損金算入限度額に対して 1 年ごとに 10 分の 1 ずつ縮小した額の引当てが認められる等の経過措置が講じられています ( 改正法附則 25) なお 返品することができる権利が付された販売 ( 以下 返品権付き販売 といいます ) につい て 新会計基準を適用した場合には 返品調整引当金勘定に繰り入れる処理はできないこと となりますが 経過措置事業年度において設けている返金負債勘定の金額から返品資産勘定の金 額を控除した金額に相当する金額は その経過措置事業年度において損金により返品調整引 当金勘定に繰り入れた金額とみなして経過措置を適用することとされています ( 改正法令附則 9 3) 経過措置事業年度 ( 平成 30 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度で 平成 42 年 3 月 31 日以前に開始する事業年度をいいます ) における損金算入限度額は次に掲げる事業年度の区分に応じてそれぞれ次のとおりとされています 平成 33 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度 改正前の規定による損金算入限度額 平成 33 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度 改正前の規定による損金算入限度額 9/10 翌事業年度の益金の額に算入 ( 旧法 537) 平成 34 年 4 月 1 日から平成 35 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度 改正前の規定による損金算入限度額 8/10 翌事業年度の益金の額に算入 ( 旧法 537) 平成 41 年 4 月 1 日から平成 42 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度 改正前の規定による損金算入限度額 1/10 平成 42 年 4 月 1 日以後最初に開始する事業年度の益金の額に算入 ( 改正法附則 252) 返品権付き販売の処理イメージ図 引当金 改正前 ( 会計 = 税 ) 原価 粗利 ( 会計 = 税 ) 収益 収益に係る原価の額 損金算入 ( 法 223 一 ) ( 会計 ) 原価 返品資産 ( 税 ) 原価 粗利 改正後 ( 税 ) 収益 ( 会計 ) 収益 返金負債 収益の額 益金算入 ( 法 222) 買戻しが生ずる可能性がないものとした場合の引渡しの時における価額 ( 法 22 の 25 二 ) 買戻しが見込まれる資産の返金負債 返品調整引当金 ( 損金 ) 損金算入 ( 旧法 53) 損金により返品調整引当金勘定に繰り入れたものとみなされます ( 改正法令附則 93) 買戻しが見込まれる資産を回収する権利 ⑵ 改正の内容 ⑺については 平成 30 年 4 月 1 日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等を行った法人の平成 35 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度について 改正前の規定による延払基準の方法により収益の額及び費用の額をした場合には 従前どおり認められることとされています なお 平成 30 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度において延払基準の方法によりしなかった場合の長期割賦販売等に該当する資産の販売等に係る未計上収益額及び未計上費用額については そのしなかった事業年度以後の各事業年度に10 年均等で計上する等の経過措置が講じら - 34 -

れています ( 改正法附則 28) 経過措置の適用を受ける法人の長期割賦販売等に該当する資産の販売等に係る収益の額及び費用の額が次に掲げる場合に該当する場合には 未計上収益額及び未計上費用額を一括して それぞれ次の事業年度の所得の金額の計算上 益金の額及び損金の額に算入することとされています ( 改正法附則 282) イ経過措置事業年度 ( 平成 30 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度で 平成 35 年 3 月 31 日以前に開始する事業年度をいいます ) の確定した決算において延払基準の方法によりしなかった場合 そのしなかった決算に係る事業年度ロ平成 35 年 3 月 31 日以前に開始した各事業年度の所得の金額の計算上益金の額又は損金の額に算入されなかったものがある場合 同日後最初に開始する事業年度ただし 上記イ又はロの場合に該当する場合において 未計上収益額が未計上費用額を超える場合には 未計上収益額及び未計上費用額を 10 年均等で 上記イ又はロの事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上 益金の額及び損金の額に算入することができます ( 改正法附則 283 4) イメージ図 ( 例 :3 月決算法人がH32.4.1に延払基準によるをやめた場合 ) H30.4.1 H32.4.1 H35.4.1 経過措置事業年度 H33.3 期 H34.3 期 H42.3 期 1 年目 2 年目 10 年目 未計上費用額 未計上収益額 12 120 損金算入 12 120 益金算入 延払基準の方法により計上済の部分 未計上収益額 > 未計上費用額 未計上収益額 未計上費用額の場合 基準事業年度 ( 上記イ又はロの事業年度 ) の益金及び損金に算入 2 その他 その他 次の改正が行われました 改正事項改正の内容適用時期等 ⑴ 金銭債権計上差額の取扱い ( 法令 18 の 24 改正法令附則 1 2) 資産の販売等の対価として受け取る金額のうち 法第 22 条の 2 第 5 項各号 ( 資産の販売等に係る収益の額 ) に掲げる事実 ( 貸倒れ 返品 ) が生ずる可能性があることにより売掛金等の金銭債権の勘定としていない金額 ( 以下 金銭債権計上差額 といいます ) がある場合は その対価の額に係る金銭債権の帳簿価額は その金銭債権計上差額を加算した金額とすることとされました 平 30.4.1 以後に終了する事業年度分の法人税について適用されます ⑵ 貸倒引当金勘定に繰り入れた金額等とみなす金額 ( 法令 99 改正法令附則 1 2) 収益認識基準に関する改正に伴い 法第 52 条第 1 項各号 ( 貸倒引当金 ) に規定する内国法人が行った資産の販売等に係る対価について 貸倒れの事実が生ずる可能性があることにより売掛金勘定等の金額としていない金額がある場合は その金額を損金により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額又はその設けた期中個別貸倒引当金勘定若しくは期中一括貸倒引当金勘定の金額とみなして貸倒引当金制度を適用することとされました 同上 - 35 -