<4D F736F F D EC969E82C582E0939C C982C882E882C982AD82A295FB964082F094AD8CA A2E646F63>

Similar documents
Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

<4D F736F F D DC58F4994C5817A C A838A815B83588CB48D F4390B3979A97F082C882B5816A2E646F6378>

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

H24_大和証券_研究業績_p indd

Microsoft Word - 手直し表紙

スライド 1

Microsoft Word - 【最終】Sirt7 プレス原稿

Microsoft Word Webup用.docx

15K00827 研究成果報告書

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

第124回日本医学会シンポジウム

1. はじめに C57BL/6J マウスは食餌性肥満 (Diet-Induced Obesity) モデルで最も一般的に使用される系統です このモデルは, 肥満に関する表現型の多くを発現し, ヒトに類似した代謝疾患, 高脂血症, 高インスリン血症, 高レプチン血症を発症します 本モデルは, 主に肥満

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

Microsoft Word - プレスリリース最終版

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

Microsoft Word - ★z基盤B seika島野仁.doc

シトリン欠損症説明簡単患者用

背景 近年, コンピューター, タブレット, コンタクトレンズなどの使用増加に伴い, 国民の約 10 人に 1 人がドライアイだと言われています ドライアイの防止に必要な涙 ( 涙液 ) は水だけでできていると思われがちですが, 実は脂質層 ( 油層 ), 水層, ムチン層の三層で形成されています

2011年度版アンチエイジング01.ppt

スライド 1

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症


本文/YA6280C

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

Microsoft PowerPoint - 6篁准教授.ppt

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

0724

エネルギー代謝に関する調査研究

Microsoft Word - 01.doc

<4D F736F F D EA95948F4390B3817A938C91E F838A838A815B835895B68F F08BD682A082E8816A5F8C6F8CFB939C F

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

生活習慣病の増加が懸念される日本において 疾病の一次予防はますます重要性を増し 生理機能調節作用を有する食品への期待や関心が高まっている 日常の食生活を通して 健康の維持および生活習慣病予防に努めることは 医療費抑制の観点からも重要である 種々の食品機能成分の効果について数多くの先行研究がおこなわれ

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

作成要領・記載例

スライド 1

2

別紙様式 (Ⅵ)-2 商品名 : エクササイズダイエット 届出食品に関する表示の内容 科学的根拠を有する機能性関与成分名及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性一日当たりの摂取目安量 本品には 3% グラブリジン含有甘草抽出物が含まれます 3% グラブリジン含有甘草抽出物は 肥満気味の方

PowerPoint プレゼンテーション

第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

<4D F736F F F696E74202D CA48B8689EF8D E9197BF332E31302E B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

Untitled

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

平成13年度研究報告

橡ボーダーライン.PDF

Microsoft Word - tohokuniv-press _01.docx

スライド 1

HAK2906.mcd

(Microsoft Word \203v\203\214\203X\203\212\203\212\201[\203X\216\221\227\2772.doc)

図 1 マイクロ RNA の標的遺伝 への結合の仕 antimir はマイクロ RNA に対するデコイ! antimirとは マイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドである マイクロRNAに対するデコイとして働くことにより 標的遺伝 とマイクロRNAの結合を競合的に阻害する このためには 標的遺伝

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

「肥満に伴う脂肪組織の線維化を招く鍵分子を発見」【菅波孝祥 特任教授】

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

PowerPoint プレゼンテーション

Powered by TCPDF ( Title 非アルコール性脂肪肝 (NAFLD) 発症に関わる免疫学的検討 Sub Title The role of immune system to non-alcoholic fatty liver disease Author

次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

糖尿病予備群は症状がないから からだはなんともないの 糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには まだ糖尿病になったわけじゃないから 今は食生活を改善したり 運動をしたりする必要はない と思っている人がいるかもしれません 糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので そう考えるのも無理はないです しか

PowerPoint プレゼンテーション

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

<4D F736F F D20824F B678DE897B294565F95F18D908F912E646F6378>

Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

PowerPoint プレゼンテーション

Q2 はどのような構造ですか? A2 LDL の主要構造蛋白はアポ B であり LDL1 粒子につき1 分子存在します 一方 (sd LDL) の構造上の特徴はコレステロール含有量の減少です 粒子径を規定する脂質のコレステロールが少ないため小さく また1 分子のアポ B に対してコレステロールが相対

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効


スライド 1

研究成果報告書

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

Microsoft Word - ç€fl究拒果倱å‚−æł¸ã…»æœłæœ‹å™„æ¨¹(ã‡µã……ã…šã…Ł)


生研ニュースNo.132

病気のはなし48_3版2刷.indd

PowerPoint プレゼンテーション

第124回日本医学会シンポジウム


Table 1 Characteristics of the study participants in Imari municipal hospital


Untitled


標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

Microsoft Word _nakata_prev_med.doc

Transcription:

解禁日時 ( テレビ ラジオ インターネット ): 平成 19 年 1 月 1 日 ( 月 ) 午前 2 時 ( 新聞 ) : 平成 19 年 1 月 1 日 ( 月 ) 付け朝刊 平成 19 年 9 月 28 日筑波大学 肥満誘導性インスリン抵抗性における長鎖脂肪酸伸長酵素 の重大な役割を発見 Crucial role of a long-chain fatty acid elongase,, in obesity-induced insulin resistance 筑波大学附属病院内分泌代謝 糖尿病内科診療グループ 病院教授 ( 准教授 ) 助教 教授 ( 附属病院長 ) 島野仁松坂賢 山田信博 インスリン抵抗性はしばしば肥満に合併し 2 型糖尿病を発症要因となる これまでのところ知られているインスリン抵抗性を改善する治療法のほとんどでは 肥満や脂肪肝の改善が先行します 今回我々は この法則が必ずしも必須ではないことを示します すなわち インスリン抵抗性と高血糖は 肥満と脂肪肝が持続的に存在していても肝臓の脂肪酸組成を変化させることにより改善されることがわかりました パルミチン酸からステアリン酸への変換を触媒する伸長酵素をコードする遺伝子 I /I を欠損するマウスを作製しました この欠損マウスと正常マウスを高脂肪食で飼育したり レプチンが欠損する肥満モデル I ob/ob /I マウスと交配させると ともに肥満になり脂肪肝を呈しました ところが 欠損マウスのみは正常マウスと異なり高インスリン血症 高血糖 および高レプチン血症を発症しませんでした このインスリン抵抗性の改善は 肝臓において インスリンシグナル分子 IRS-2の回復と阻害分子プロテインキナーゼCε 活性の抑制を伴っており 結果としてAktリン酸化の回復が見られました 得られた結果を総合すると 肝臓の脂肪酸組成は 細胞のエネルギーバランスやストレスとは独立して作用するインスリン感受性の新たな決定因子であると考えられます この伸長酵素の阻害は 肥満が持続した状態においてもインスリン抵抗性 糖尿病 心血管病リスクを改善する新たな治療法となる可能性があります ( 以上論文要旨の訳 ) 現在メタボリックシンドロームや糖尿病の治療の中心は 肥満の改善すなわち脂肪組織の量の低下におかれていますが 今回の結果は 蓄積する脂肪の質を改善すれば太ったままでも病気にならない可能性を示し 肥満や代謝疾患の新しい概念を示唆します

9/28/27 Crucial role of a long-chain fatty acid elongase,, in obesity-induced insulin resistance Takashi Matsuzaka, Hitoshi Shimano, & Nobuhiro Yamada Insulin resistance is often associated with obesity and can precipitate type 2 diabetes. To date, most known approaches that improve insulin resistance must be preceded by the amelioration of obesity and hepatosteatosis. Here, we show that this provision is not mandatory; insulin resistance and hyperglycemia are improved by the modification of hepatic fatty acid composition, even in the presence of persistent obesity and hepatosteatosis. Mice deficient for, the gene encoding the elongase that catalyzes the conversion of palmitate to stearate, were generated and shown to become obese and develop hepatosteatosis when fed a high-fat diet or mated to leptin-deficient ob/ob mice. However, they showed marked protection from hyperinsulinemia, hyperglycemia and hyperleptinemia. Amelioration of insulin resistance was associated with restoration of hepatic insulin receptor substrate-2 and suppression of hepatic protein kinase C ε activity resulting in restoration of Akt phosphorylation. Collectively, these data show that hepatic fatty acid composition is a new determinant for insulin sensitivity that acts independently of cellular energy balance and stress. Inhibition of this elongase could be a new therapeutic approach for ameliorating insulin resistance, diabetes and cardiovascular risks, even in the presence of a continuing state of obesity.

発表者 筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授島野仁 ( しまのひとし ) ( 附属病院病院教授内分泌代謝 糖尿病内科診療グループ長 ) 筑波大学大学院人間総合科学研究科助教松坂賢 ( まつざかたかし ) ( 代謝 内分泌制御医学分野 ) 取材に関する窓口 筑波大学総務 企画部広報課電話 :29-853-24 FAX:29-853-214

肥満により引き起されるインスリン抵抗性における長鎖脂肪酸延長酵素 Elovl-6 の重大な役割 筑波大学大学院人間総合科学代謝内分泌糖尿病内科 松坂賢島野仁山田信博 肥満における脂質の量的でなく質的影響 脂肪酸合成経路 ブドウ糖 アセチル CoA マロニル CoA アセチル CoA 脱炭酸酵素 脂肪酸合成酵素 パルミチン酸 (C16:)? 長鎖脂肪酸延長酵素 Elovl-6 ステアリン酸 (C18:) ステアリン脱飽和酵素 オレイン酸 (C18:1) トリグリセリド 1

酵素活性とノックアウトマウスにおける脂肪酸組成の変化 Glucose C12:-CoA 肝臓 ACC FAS C14:-CoA 増加減少 C16: ACS C16:-CoA C16:1-CoA (n-7) C18:-CoA C18:1-CoA (n-9, n-7) SCD-1 ( 細胞質 ) ( 小胞体膜 ) Elovl-6-/- マウスは高脂肪食負荷では正常マウスと同様に肥満にも脂肪肝にもなる 体重増加率 (%) 12 1 8 6 4 2 体重増加率 / 野生型 2 4 6 8 1 12 高脂肪食飼育期間 (weeks) 普通食 WT 高脂肪食 WT 普通食 脂肪肝 高脂肪食 脂肪細胞の増大普通食高脂肪食 正常 Elovl-6 2

しかし太ったにもかかわらずこのマウスはインスリン抵抗性にならず血糖も正常 血中インスリン値 1 8 6 4 2 普通食 高脂肪食 Elovl-6 正常 Elovl-6 血糖値 (mg/dl) 24 22 2 18 16 14 12 1 8 インスリン感受性テスト 15 3 6 9 12 正常 インスリン注射後の時間 ( 分 ) 脂肪酸伸長酵素 欠損マウスは高脂肪食により肥満になるがインスリン抵抗性にならない (Nature Med 27 in press) の酵素活性と脂肪酸組成の変化肝臓 ACC FAS Glucose 5 脂肪酸の割合 (%) 4 3 C16: 2 ACS 1 細胞質 C12:-CoA 野生型マウス マウス C14:-CoA C16:-CoA C16:1-CoA C18:-CoA C18:1-CoA SCD 16: 16:1 18: 18:1 小胞体膜 高脂肪食による肥満血漿インスリン値インスリン感受性 体重増加率 (%) 12 1 8 6 4 2 WT 2 4 6 8 1 12 / 野生型 高脂肪食飼育期間 (weeks) インスリン (ng/ml) 1 8 6 4 2 普通食野生型普通食 高脂肪食野生型高脂肪食 血糖降下率 (%) 11 1 9 8 7 6 5 4 高脂肪食野生型高脂肪食 15 3 6 9 12 インスリン投与後の時間 ( 分 ) 3

旧来のコンセプト : メタボ の治療には肥満の改善が必要 通常の治療 Elovl-6 欠損 エネルギー代謝の変化 ( 脂肪燃焼活性化 炎症の抑制 ) 肥満の改善脂肪量の減少 脂肪酸組成の変化量的変化 ではなく 質的変化 新しいメカニズム (IRS-2 発現増加 PKCε 抑制 ) 肥満 脂肪肝変化なし インスリン抵抗性改善 インスリン抵抗性改善 肥満の改善を必要としない新しい生活習慣病治療薬の可能性 (Nature Med 27 in press) 4