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標準偏差 < 試験合格へのポイント > 士補試験における標準偏差に関する問題は 平成元年が最後の出題となっており それ以来 0 年間に渡って出題された形跡がない このため 受験対策本の中には標準偏差に関して 触れることすら無くなっている物もあるのが現状である しかし平成 0 年度試験において 再び出題が確認されたため ここに解説し過去に出題された問題について触れてみる 標準偏差に関する問題は 基本的にはその公式に当てはめて解けば良いため 難易度は低いが公式をどのように当てはめればよいのかを見極めることが大切である ( : 最重要事項 : 重要事項 : 知っておくと良い ) 標準偏差に関する基本事項 標準偏差とは別名平均二乗誤差や中等誤差とも呼ばれ 簡単に言えば 観測 ( 値 ) データのバラつきの度合を表す値 である つまり 標準偏差 ( データのバラつきの度合 ) が大きければ 精度が悪い 小さければ 精度の良い 観測であると言え 標準偏差は測量において 観測値の精度 を比較するための材料として用いられている ここで一例を挙げてみると GPS 測量機を用いた基準点測量 (1 級 ) における許容範囲の標準は 新点水平位置の標準偏差 =10cm 新点標高の標準偏差 =0cm となっている ( 公共測量作業規程の準則 43 条 3 の二のハ ) 次に標準偏差の求め方について 具体的に数値を挙げて考えてみる いま A,B の 人が 30m の距離をそれぞれ 5 回観測した場合 次のような観測値を得ることができた この場合どちらが精度の良い ( バラつきの少ない ) 観測を行っているかを考えてみる A 回数 観測値 (m) 偏差 [ 偏差 ] 1 30.00 +0.00 0.040 30.100 +0.100 0.010 3 30.000 0.000 0.000 4 9.900-0.100 0.010 5 9.800-0.00 0.040 [ 偏差 ] の合計 = 0.100 B 回数 観測値 (m) 偏差 [ 偏差 ] 1 30.50 +0.50 0.065 30.050 +0.050 0.005 3 30.000 0.000 0.000 4 9.950-0.050 0.005 5 9.750-0.50 0.065 [ 偏差 ] の合計 = 0.130 ~ 1 ~

ここで A,B の観測値の平均をとると A=30.000m B=30.000m となり どちらがより正確な ( バラつきの少ない ) 観測を行っているかが不明である そこで ( 観測値 )-( 真値 )=( 偏差 ) として求めてみると上表の通りとなるが この値を見ても正負の符号があるため そのバラつきは明確ではないし これを合計しても 0 となってしまう そこで 偏差を 乗しその合計を観測回数で割り その平方根を取ると 次のようになる 観測者 A([ 偏差 ] の合計 ) /( 観測回数 )= 0.100/5 = 0.00 0.00 = 0.141m 観測者 B([ 偏差 ] の合計 ) /( 観測回数 )= 0.130/5 = 0.06 0.06 = 0.161m よって 観測者 A のほうが観測値のバラつきが少なく 精度のよい観測であると言え この時の数値を標準偏差と言う まとめると m= Σ 1 ここで : 偏差 Σ : 偏差の二乗の合計 : 観測回数 m: 標準偏差となる 測量における標準偏差の利用 標準偏差の考え方は上記に示した通りであるが 測量作業により得られた数値は あらかじめ分かっている 真値 ではなく 観測された 最確値 であると言うことである 最確値について簡単に触れると 測量とは 未知の値を観測作業によって決定する 作業であり その値には常に 誤差 が含まれている よって観測作業により得られる値とは 最も確からしい値 ( 真値に近い値 ) すなわち 最確値 と言うことである この事から測量で考える標準偏差とは 最確値の精度 ( 標準偏差 ) であると言える 以下は読み飛ばしてかまわない ------------------------------------------------------------------------ 1) 観測値の標準偏差 いま 観測値と真値の差 ( 偏差 : ) と 観測値と最確値の差 ( 残差 :δ) の関係について考えると次のようになる 前項より 偏差 ( ) は L( 観測値 )- X( 真値 ) によって 求められた しかし 真値 (X) は求めることはできない未知の数であるため 真値 (X) の代わりに 最確値 (x) を用いる事となり その残差は δ=l-x として表わされる ここで 観測値 (L) は真値 (X) に偏差 ( ) を加えたもの L=X+ であるため これを残差 (δ) の式に代入すると δ=(x+ )-x となる これを移項して =δ+(x-x) とし 両辺を二乗し 個分 ( 観測回数分 ) 合計すると次のようになる Σ = +(x-x)+(x-x) ここで 残差 (δ) は正負に等しく発生すると考えられ は近似的に 0 と考えられるため 第二項は 0 となり 上式は Σ = +(x-x) と表される また (x-x) は 最確値に対する真値の偏差であるが これを ~ ~

(x-x) ΣL = -X と置き換え展開すると次のようになる (x-x) ΣL = -X 1 = ΣL-X ここで L-X= となるため 1 Σ (x-x) = となる 次に 偏差 ( ) は正負に等しく発生すると考えられるため (Σ ) Σ となり 1 (x-x) = Σ Σ 1 Σ これを変形すると 3 と表される これを 式に代入すると 次のようになる Σ 4 (-1) よって 観測値と真値の偏差 ( ) は 4 式により表される事になる 次に 4 式を 1 式に代入すると m= Σ Σ より m = 1 = = (-1) -1 よって m= 5 となり -1 これは 観測値と最確値の差で考えているため 観測値の標準偏差 を表す式である ) 最確値の標準偏差 ここでは 最確値と観測値の標準偏差について考えてみる いま 真値と最確値の偏差について見るとその関係は M=(x-X) の式で表す事ができる ここで 観測値の標準偏差をmとすると 3 式の関係より次のような式が得られる (x-x)= これより M =m m これを変形すると M = これに 観測値の標準偏差を求める式を代入すると 次のようになる -1 M = = よって M= 6 となり (-1) (-1) これは 最確値の標準偏差を求める式となる ここまで読み飛ばしてかまわない ----------------------------------------------------------------------- ~ 3 ~

標準偏差に関する式をまとめると 次のようになる 1つの観測値に対する標準偏差を求める式 ( 観測値の標準偏差 ) m= (1) -1 ここで m: 観測値に対する標準偏差 δ:( 観測値 )-( 最確値 ) : 観測回数 最確値 ( 算術平均 ) に対する標準偏差を求める式 M= () (-1) ここで M: 最確値に対する標準偏差 δ:( 観測値 )-( 最確値 ) : 観測回数 最確値 ( 重量平均 ) に対する標準偏差を求める式 Σpδ ( ) M= (3) 証明省略 Σp ( -1) ここで M: 最確値に対する標準偏差 p: 重量 δ:( 観測値 )-( 最確値 ) : 観測回数 上記の (1)~(3) までの3 式は必ず覚える必要がある 以下に 例題を用いて上記公式の活用を解説する < 例題 > 右表は AB 点間の距離を光波測距儀を用いて同様の方法により 3 回観測した結果である AB 点間の最確値とその標準偏差を求めよ ただし 光波測距儀に関する誤差は全て補正済みであるものとする 観測回数 観測値 (m) δ δ 1 60.46-0.038 0.001444 60.8-0.00 0.000004 3 60.34 0.04 0.001600 合計 60.84 0.003048 1 最確値を求める 問題文より 同様の方法により求めているため 単に算術平均でよい 0.46+0.8+0.34 よって 60.000+ =60.84m 3 残差 (δ) 及びδ を求める 残差 (δ) 等は 上のように直接表に書き込むようにすると良い ~ 4 ~

3 観測値に対する標準偏差を求める 観測値に対する標準偏差は 公式 (1) によって求められる よって 0.003048 m= = = 0.00154 0.0390m -1 3-1 よって 各測定値は 最確値から ±0.0390m の範囲にあると言える 3 最確値に対する標準偏差を求める 最確値に対する標準偏差は 公式 () によって求められる よって M= = -1 ( ) 0.003048 ( 3 3-1) 0.003048 6 よって 真値は最確値から ±0.05m の範囲にあると言える また 最確値の標準偏差の書き方は 次のようにすると良い 観測結果 60.84m ± 0.05m 0.000508 0.05m ~ 5 ~

過去問題にチャレンジ!(S60-1-D: 士補出題 ) トランシットを用いて水平角を 5 回観測し 表の結果を得た この結果を平均して得られる最確 値の標準偏差はいくらか 次の中から選べ 1 30 06 00 30 05 59 3 30 06 05 4 30 06 03 5 30 05 58 1. 1.0 秒. 1.7 秒 3. 3 秒 4. 8.5 秒 5. 3.5 秒 ~ 6 ~

< 解答 > 1 まず 最確値を求めると次のようになる 60 + 59 + 65 + 63 + 58 30 05 + =30 06 01 5 次に各観測値の残差を求める 回数 観測値 残差 (δ) (δ ) 1 30 06 00 00-01 = -1 1 30 05 59 59-61 = - 4 3 30 06 05 05-01 = 4 16 4 30 06 03 03-01 = 4 5 30 05 58 58-61 = -3 9 3 標準偏差を求める M= より M= - ( 1) 1+ 4+16+4 +9 = 5(5-1) 1.7 ここで 求めるのは 最確値の標準偏差 であるため 用いる式に注意が必要である よって 解答は となる 解答 : ~ 7 ~

過去問題にチャレンジ!(H1-1-C: 士補出題 ) 表は 5 人の観測者 (A,B,C,D,E) が一つの角を各 5 回ずつ観測して得た観測値の残差である 観 測者をその観測値の標準偏差の小さいものから順に並べたものはどれか 次の中から選べ A B C D E 1 回目の残差 +6 秒 -3 秒 0 秒 + 秒 0 秒 回目の残差 - 秒 +3 秒 +6 秒 -5 秒 +4 秒 3 回目の残差 -3 秒 +4 秒 -1 秒 - 秒 -4 秒 4 回目の残差 +1 秒 -3 秒 -6 秒 +5 秒 +3 秒 5 回目の残差 - 秒 -1 秒 +1 秒 0 秒 -3 秒 1. A B E C D. B E A C D 3. B E A D C 4. E B A D C 5. E B A C D ~ 8 ~

< 解答 > 各観測者の観測値の標準偏差を計算しこれを比較する A B C D E 1 回目の残差 +6 秒 -3 秒 0 秒 + 秒 0 秒 回目の残差 - 秒 +3 秒 +6 秒 -5 秒 +4 秒 3 回目の残差 -3 秒 +4 秒 -1 秒 - 秒 -4 秒 4 回目の残差 +1 秒 -3 秒 -6 秒 +5 秒 +3 秒 5 回目の残差 - 秒 -1 秒 +1 秒 0 秒 -3 秒 54 44 74 58 50 順位 3 1 5 4 これを並べると B E A D C となる 解答 :3 本来ならば 標準偏差まで求めるべきであろうが が求まれば 計算式中の後の数値は 全て同じであるため の小さいものから順に並べれば良い ~ 9 ~

過去問題にチャレンジ!(S63-1-A: 士補出題 ) 次の文は トランシットを用いたきょう角の観測について述べたものである 間違っているものはどれか ただし 観測対回数は3 対回 平均値 α = 30 0 10 平均値の標準偏差を 6 とし この観測に定誤差 ( 系統誤差 ) は無いものとする 1. このきょう角の最確値は 30 0 10 である. 平均値の標準偏差は 対回数を増すと 6 より小さくなる事が期待できる 3. 観測されたきょう角の値は 30 0 04 ~ 16 の間にあるとは限らない 4. このトランシットを用いて改めて3 対回の観測を行えば 平均値の標準偏差は必ず 6 となる 5. 1 対回目 対回目 3 対回目の観測値をそれぞれ a,b,c とすると 平均値の標準偏差は 次の式で求められる (a -α) +( b α) +( c α) 3 (3-1) ~ 10 ~

< 解答 > 問題各文について考えると次のようになる 1. 正しい 最確値の意味を理解していれば この場合 平均値 = 最確値と言うことが分かる. 正しい 同じ観測者が観測を行うと考えると 一般的に観測回数が多ければ多いほど その最確値の精度は上がると考えられる 精度が上がると言う事は 標準偏差の大きさは小さくなる 3. 正しい 標準偏差はあくまで 観測値のバラつき を表す数値である 最確値 ±6 の中に真値が存在する確立は高いが 必ずあると断言する事はできない 4. 間違い 同じ観測を 同一人物が同じ器械を用いて行っても 同じ誤差が出現する保証は無い もっと精度の良い観測が行える場合もあるし 精度が悪くなる可能性もある 5. 正しい 残差 (δ) の計算方法について理解できていれば解る 解答 :4 標準偏差に関する この当時にしては珍しい説明問題である 選択肢 3を選びたいところではあるが 4は明らかに間違っている記述である 現在では 明らかに間違っているもの と問題文中に入れる必要があると思われる 標準偏差についてその内容をしっかりと理解していなければ解く事ができないため 良問になるのであろうか? ~ 11 ~