山陽学園短期大学紀要第 40 巻 (2009) 少ない そこで 本研究では 料理レベル でとらえる食事バランスガイド 19) を活用し 栄養士養成 課程における学生の食事バランスの実態と在籍中の食事バランスの変化を観察し 献立作成に対する意 識との関連について明らかにすることを目的とした 研究方法

Similar documents
Sanyo Gakuen University 山陽学園短期大学紀要第 41 巻 (2010) 原著論文 栄養士養成課程にある学生の食行動と生活習慣の関連 Relationship between eating behavior and lifestyle in students attending

P013-2‘Í


ウ食事で摂る食材の種類別頻度野菜 きのこ 海藻 牛乳 乳製品 果物を摂る回数が大きく異なる 例えば 野菜を一週間に 14 回以上 (1 日に2 回以上 ) 摂る人の割合が 20 代で 32% 30 代で 31% 40 代で 38% であるのに対して 65 歳以上 75 歳未満では 60% 75 歳以

Microsoft Word - ☆5章1栄養.doc

hyoushi

次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

実践女子短期大学紀要第 34 号 (2013) Ⅰ 緒言 BMI. BMI. Ⅱ 調査の方法 P.

<4D F736F F D E9197BF A B83678C8B89CA8A5497AA2E646F63>

青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 目 次 1. 目的 1 2. 携帯食事手帳システムの概要 1 (1) システムの基礎データ 1 (2) 利用方法 1 (3) 確認できる情報 1 3. 携帯食事手帳利用の手引き 2 (1) 携帯食事手帳 (QRコード) 3 (2) 料理選択の仕方 4 (

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

(Microsoft Word - \217\254\212w\202U\224N\201i\216R\217\343\201j.doc)

小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

2214kcal 410g 9.7g 1 Point Advice

第 4 章 地域における食育の推進 1 栄養バランスに優れた 日本型食生活 の実践 ごはんを中心に 魚 肉 牛乳 乳製品 野菜 海藻 豆類 果物 茶など多様な副食などを組み合わせて食べる 日本型食生活 は 健康的で栄養バランスにも優れている 農林水産省では 日本型食生活 の実践等を促進するため 消費

小学校 第○学年 学級活動(給食)指導案

2 夜食 毎日夜食をとっている者は では 22.5%( 平成 23 年 23.9%) であり で % と割合が高い では 18.3%( 平成 23 年 25.2%) であり 40 歳代で割合が高い 図 夜食の喫食状況 (15 歳以上 性別 年齢階級別 )

比治山大学紀要, 第 23 号,2016 Bul. Hijiyama Univ. No.23, 大学生の朝食内容と生活習慣 健康状態 食生活との関連 The Relationship Between Breakfast Content and Lifestyle Habits, t

H22-syokuiku.xls

1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

Ⅵ ライフステージごとの取り組み 1 妊娠期 2 乳幼児期 (0~5 歳 ) 3 学童期 (6~12 歳 ) 4 思春期 (13~19 歳 ) 5 成年期 (20~39 歳 ) 6 壮年期 (40~64 歳 ) 7 高年期 (65 歳以上 ) ライフステージごとの取り組み ( 図 )

Ⅳ 第 2 次計画の目標 : 第 2 次計画で新たに設定した項目 府民主体 府民と行政と団体 行政と団体 1 内 容 新 規 栄養バランス等に配慮した食生活を送っている府民の割合 2 朝食欠食率 第 1 次計画策定時 35 現状値 第 2 次計画目標 第 2 次基本計画目標 24% 15% 60%

活実態と関連を図りながら重点的に指導していきたい また, 栄養教諭による給食献立の栄養バランスや食事によるエネルギー量を基盤として, グループごとに話合い活動を取り入れるなどの指導の工夫を行いたい また, 授業の導入にアイスブレイクや, カード式発想法を取り入れることにより, 生徒が本気で語ることが

[ 原著論文 ] メタボリックシンドローム該当者の年齢別要因比較 5 年間の健康診断結果より A cross primary factors comparative study of metabolic syndrome among the age. from health checkup resu

< F2D905690EC8C9F8FD88EF68BC68E7793B188C42E6A7464>

高校生の心と体~報告書.indd

高校生の心と体~報告書.indd

<4D F736F F D E682528FCD814088A490BC8E E C7689E682CC8E7B8DF482CC93578A4A>

私の食生活アセスメント

第2次帯広市食育推進計画(名古屋市パクリ)

女子高校生の生活習慣や健康に対する意識調査と発育状況 10 年前との比較検討 cm 160 a) 身長当校 全国平均 cm +1.5cm kg 54 b) 体重 当校 全国平均 kg -1.3kg 51

日常的な食事に関する調査アンケート回答集計結果 ( 学生 ) 回収率 平成 30 年 12 月 1 日現在 134 人 問 1 性別 1 2 男性女性合計 % 97.0% 100.0% 3.0% 男性 女性 97.0% 問 4 居住状況 家族と同居一人暮らし

4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

結果の概要

(3) 生活習慣を改善するために

食育に関する意識調査の結果について ( 速報 ) 基本目標 1 毎日きちんと朝ごはんを食べます 規則正しい生活を心がけ, 毎日朝ごはんをしっかり食べて充実した 1 日を過ごす 1 朝ごはんを毎日食べる人の割合 (1) 一般問 6 朝食を食べていますか ( は1つだけ) 0% 10% 20% 30%

食育に関するアンケート

特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会 報告書46~63ページ

PowerPoint プレゼンテーション

<91E631388D D8689A191672E6D6364>

第 3 部食生活の状況 1 食塩食塩摂取量については 成人男性では平均 11.6g 成人女性では平均 10.1gとなっており 全国と比較すると大きな差は見られない状況にあります 図 15 食塩摂取量 ( 成人 1 日当たり ) g 男性

スライド 1

3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

10.Z I.v PDF.p

よく登場する主食メニューは 家庭ではカレー 和風めん類 単身男性はカレー チャーハン 単身女性は和風めん類 パスタ あらかじめ 65 項目のメニューの選択肢を挙げ 月に 1 回以上 食卓に登場するメニューを聞きました 主食メニューをみると 主婦の回答では カレー 和風めん類 ( そば うどん等 )

食育って, ご存知ですか? 食育とは 生きる上での基本であって, 知育, 徳育及び体育の基礎となるべきもの 様々な経験を通じて 食 に関する知識と 食 を選択する力を習得し, 食育の推進に取り組んでいます! 28 年 ( 平成 2 年 )3 月に 福山市食育推進計画,213 年 ( 平成 25 年

<4D F736F F D B92B78EF58BB38EBA939982CC8A8893AE82C6955D89BF DC58F4994C52E646F6378>

お子さんの成長にあわせ お母さんの食生活を見直してみませんか? お子さんの成長にあわせて あなたの食生活をかえるチャンスがあります 3 か月 か月 か月

16 緒言 近年, 健康日本 21 1) や 食事バランスガイド 2) な ど, 自己管理による健康増進が重要視されている し 3) かしながら, 食生活指針 食育認知度調査 において 栄養成分表示を見て, 食品や外食を選ぶ習慣を身に つける 項目の達成度は, 食生活指針の中で非常に低 い 食の多様

1 食に関する志向 健康志向が調査開始以来最高 特に7 歳代の上昇顕著 消費者の健康志向は46.3% で 食に対する健康意識の高まりを示す結果となった 前回調査で反転上昇した食費を節約する経済性志向は 依然厳しい雇用環境等を背景に 今回調査でも39.3% と前回調査並みの高い水準となった 年代別にみ

平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

<4D F736F F D B835C83694E6F2E BE0914B8AB48A6F82C692998BE082CC8EC091D E646F63>

平成 27 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査愛媛県の結果概要 ( 公立学校 ) 調査期間 : 調査対象 : 平成 27 年 4 月 ~7 月小学校第 5 学年 ( 悉皆 ) 中学校第 2 学年 ( 悉皆 ) 男子 5,909 人男子 5,922 人 女子 5,808 人女子 5,763 人 本

高校生の心と体~報告書.indd

<8A DFB8E712E786C73>

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

<4D F736F F D C835894AD955C8E9197BF EE CC B83678E9E8E96816A8F4390B38CE32E646F63>

ニュースリリース

98 関 池田 柴﨑 山口 丸岡 丸山 澤山 平澤 君羅 2 対象者は, 東京都内 T 大学管理栄養士 栄養士養成課程 3 年次学生 165 名で, 平成 23 年 5 6 月に調査を実施した 回収数は 109 名で回収率は 66.1 % であった このうち記入不備のものを除き, 居住形態が 家族と


Taro-①概要.jtd

生活習慣改善へのアプローチ -知識と技術

表 5-1 機器 設備 説明変数のカテゴリースコア, 偏相関係数, 判別的中率 属性 カテゴリー カテゴリースコア レンジ 偏相関係数 性別 女性 男性 ~20 歳台 歳台 年齢 40 歳台

各推進主体の具体的な取り組み 家庭 幼稚園 保育所 関係団体 家族で一緒に朝 早寝 早起き 朝 朝食の大切さを 食を食べる日を ごはんを推進し 伝えていきまし 増やしま ま ょう 朝食の大切さ 早寝 早起き 朝 園便りや給食便 簡単に作れる朝 の推進 ごはんを心がけ りで食育推進を 食のメニューを

睡眠調査(概要)

10.Z I.v PDF.p

<4D F736F F D CB48D655F94928D95445F90488E9690DB8EE68AEE8F802E646F63>

食育に関するアンケート

FastaskReport

東北文化学園大学看護学科紀要第 4 巻第 1 号 2015 年 3 月東北文化学園大学看護学科紀要第 4 巻第 1 号 2015 年 3 月 報告 産後 10 か月女性の体重復帰と母乳率 食習慣及び美容意識の関連 木村涼子 1) 1) 東北文化学園大学医療福祉学部看護学科母性看護学領域 要旨 本研究

Microsoft Word 栄マネ加算.doc

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

平成 21 年循環器疾患登録の年集計について 喫煙習慣の割合は 男性で約 4 割 女性で約 1 割である 週 1~2 回以上の運動習慣のある割合は1 割程度と 男女共に運動習慣のある者の割合が低い 平成 21 年における循環器疾患登録者数 ( 循環器疾患にかかった人のうち届出のあった人 ) について

スライド 1

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

初めて親となった年齢別に見た 就労状況 ( 問 33 問 8) 図 97. 初めて親となった年齢別に見た 就労状況 10 代で出産する人では 正規群 の割合が低く 非正規群 無業 の割合が高く それぞれ 22.7% 5.7% であった 初めて親となった年齢別に見た 体や気持ちで気になること ( 問

札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

結果の概要 1 栄養 食生活に関する状況 (1) 野菜の摂取状況 20 歳以上における 1 日の野菜摂取量の平均値は 288.1g 性別にみると男性 297.1g 女性 281.1g 年齢階級別にみると 男女ともに 40 歳代で最も少ない 図 1 野菜摂取量の平均値 (20 歳以上 性 年齢階級別

②肥満 やせの状況 3 歳児における肥満児の割合は減少していました 成人男性の肥満は横ばいで 代女性の肥満は増加傾向がみられました 一方 20 代女性のやせは倍増しており 肥満だけでなく 子どもを産み育てる世代への支援が必要となります 20代 60代の肥満 BMI 25以上 の割合 肥満

(2) 朝食の内容について Q2. 普段 ( 月 ~ 金曜日 ) どのような朝食を食べていますか あてはまる番号をすべて で囲んでください アンケート結果 小学生 中学生とも傾向は似ており 1 主食 が最も多く 次いで 4 牛乳 乳製品 7 飲み物 2 主菜 の順となっています 主食の割合に対して

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

<4D F736F F D E93785F8A7789C895CA5F8A778F438E9E8AD481458D7393AE814588D3977E5F8C8B89CA322E646F6378>

< F2D338FC194EF8ED292B28DB C93FA967B89658BBF2E6A74>

Microsoft Word 年度入学時調査報告.docx

平成 29 年度食育活動の全国展開委託事業報告書 ( 食生活と農林漁業体験に関する調査 ) 平成 30 年 2 月

第 3 4 学年 ( 複式学級 ) 学級活動指導案 平成 26 年 6 月 11 日 ( 水 ) 第 5 校時指導者教諭 ( 学級担任 ) 養護教諭 1 題材 バランスよく食べよう ( 第 3 学年及び第 4 学年 (2) 日常の生活や学習への適応及び健康安全キ食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい

6. 調査結果及び考察 (1) 児童生徒のスマホ等の所持実態 1 スマホ等の所持実態 54.3% 49.8% 41.9% 32.9% % 78.7% 73.4% 71.1% 76.9% 68.3% 61.4% 26.7% 29.9% 22.1% % 中 3 中 2 中 1

肥満と栄養cs2-修正戻#20748.indd

過去の習慣が現在の習慣に与える影響 インターネットの利用習慣の持ち越し 松岡大暉 ( 東北大学教育学部 ) 1 問題関心本研究の目的は, インターネットの利用の習慣について, 過去のインターネットの利用習慣が現在のインターネットの利用の習慣に影響を与えるかを検証することである. まず, 本研究の中心

title

芥川小学校5年家庭科 学習指導案

平成 30 年度広島県立庄原特別支援学校食に関する年間指導計画小学部重複障害学級 食べ物と健康との関わりについて知ろう 給食について知ろう 学習 遊びの指 導 生活単元 給食の食材や献立について知る 正しい手洗いを身に付ける 協力して配膳ができる 食後の片付けができる しっかりかむ習慣を身に付け,

Ⅰ はじめに

宗像市国保医療課 御中

<4D F736F F D20926A8F9782CC88D38EAF82CD82B182F182C882C988E182A F C98CA982E782EA82E9926A8F9782CC8DB72E646F63>

04_清心紀要40_食品_逸見2016_P40-49.indd

学校給食摂取基準の策定について(報告)

Transcription:

山陽学園短期大学紀要第 40 巻 9-16(2009) 論 文 栄養士養成課程における学生の食事バランスと献立作成に関する意識との関連 Relationship between Meal Balance and Consciousness about Menu Planning in Dietician College Students 西村美津子 Mitsuko Nishimura キーワード : 食事バランス栄養士養成課程の学生献立作成食事バランスガイド Keyword:meal balance,dietician college students, menu planning,japanese food guide spinning top 緒 言 日本の食生活は 約 30 年前までは家庭内で食事をする 内食 が中心であったが 経済構造の変化による女性の社会進出などにより食の外部化が進み 外食 が急激に拡大した 1,2) さらに近年 調理済み食品などを購入して家庭内で食べる 中食 が増加し 3-5) 食事形態の簡便化に伴う食事内容の偏り 家庭での調理経験の乏しさなど多くの問題が指摘されるようになった また 平成 19 年国民健康 栄養調査結果 6) によると女性 20 歳代の やせ の割合は25.2% と4 人に1 人は やせ であり 若い女性の やせ 願望の問題も拡大している 7,8) 食習慣や食行動は 乳幼児期からの食生活習慣 食環境が大きく影響する 9-11) とされるが 外食の普及や若年女性の やせ の問題などを含む 現代の食環境における大学生の食生活の乱れは顕著 12,13) であり 栄養士養成課程の学生にも 食事の乱れや家庭での食事づくりの体験の乏しさなどが問題となっている 14,15) このような現状のなか 栄養士養成課程の学生は 将来 栄養 食事教育を行うものとして 2 年の養成期間のなかで 対象者の状況に応じた栄養 食事計画作成能力 食事計画を具現化する調理技術などが求められることとなる 筆者は 栄養士養成課程の学生を対象とした先行研究の中で 食事のバランスに気を配っているものは 献立作成に対しても意欲的に取り組み 得意であると感じているという結果を得ている 16) そこで 栄養士養成課程の学生は 専門教育を通して食事に対する意識を改善させ 食事バランスを変容することにより 献立作成能力向上に繋げることができるのではないかと考えた しかし 栄養士養成教育における 献立作成の実態と教育について検討した報告 17,18) や 家庭での食事作りと献立作成能力の関連を検討した報告 14) はあるが 日常の食事バランスと献立作成に関する意識との関連を検討したものは 食物栄養学科 :Department of Food and Nutrition, Sanyo Gakuen College - -

山陽学園短期大学紀要第 40 巻 (2009) 少ない そこで 本研究では 料理レベル でとらえる食事バランスガイド 19) を活用し 栄養士養成 課程における学生の食事バランスの実態と在籍中の食事バランスの変化を観察し 献立作成に対する意 識との関連について明らかにすることを目的とした 研究方法 1. 調査対象調査対象は 2008 年度入学の本学食物栄養学科 1 年生の全学生 61 名であった 対象者に対し 研究の意義と 研究への参加は自由意志に基づくものであることを説明した 2 回の意識調査と食事調査の結果は 個人を番号で特定し変化を見た しかし 番号と個人の特定はできないよう配慮し 個人情報の保護と成績などには無関係であることを保証した 分析対象は 2 回の意識調査と食事調査を行った39 名であった 1 回目の調査時には 調査対象者は2 年の栄養士養成課程のうち1 年間の課程をほぼ終了しており 2 回目の調査時には学年は2 年次となり全課程の1 年半をほぼ終えていた また 2 回目の調査時には 2 週間の校外実習を終えていた 2. 調査方法 2009 年 1 月 第 1 回目の調査を行った 内容は 食事バランス及び献立作成に関する意識調査をアンケート方式で行うとともに 食事バランスガイドを用いて平日の3 日間の食事調査を行った その約 6ヶ月後の2009 年 7 月に 第 2 回目の調査を行った 内容は 1 回目と同様の意識調査と食事調査を行い 加えて 食生活改善と食事バランスガイドについての意識調査を行った 調査内容は 食事バランスガイドを活用して食生活改善の必要性を感じたか 食事バランスガイドが食生活において参考になったか 食生活改善が実行できたか について質問を行った 食事バランス及び献立作成に関する意識調査の質問項目は先行研究 16) の項目を用いた 食事バランスに関する意識は 主食 主菜 副菜を整えて食事をしている 多種類の食品を組み合わせて食べている 調理法が偏らないようにしている の 3 項目を 献立作成に関する意識は 実習で行う献立作成は得意である 実習で行う献立作成の作業は好きである 実習で行う献立作成の作業は熱心に取り組んでいる の3 項目であり それぞれ5 件法 ( 全くあてはまらない 少しあてはまらない どちらともいえない 少しあてはまる よくあてはまる ) で評定してもらい 回答は点数化 (1~5 点 ) し 意識調査の3 項目の合計点を意識得点として分析に用いた 食事バランスガイドによる食事調査は 自記式で行った 記入方法については 厚生労働省ホームページの食事バランスガイドのチェックブックを用いて説明した 食事調査は平日の3 日間行い 3 日間の平均値を料理区分 ( 主食 副菜 主菜 牛乳 乳製品 果物 ) の調査結果とした 食事バランスの検討は 近藤らの研究の食事バランスの評価方法 20) を参考に行った 食事バランスガイドの料理区分ごとの目安量 (SV) と実際の摂取量 (SV) との差を求め 料理区分別のバランス得点として評価した 目安量は 食事バランスガイド を参照し 性 年齢 身体活動レベルにより決定して用いた 3. 分析方法統計学的分析方法は 2 群間の平均値の差の比較には t 検定を行った 関連性については Pearson の積率相関係数を用いた 統計学的有意水準は 5% 未満とし 統計解析ソフトは SPSS15.0J for Windows を使用した - 10 -

西村美津子 : 栄養士養成課程における学生の食事バランスと献立作成に関する意識との関連 結 果 1. 対象者の概要調査対象者の属性を表 1に示した 年齢は19.0±1.0 歳であり 全員女性であった BMI は平均 20.1kg / m2であり 身体活動レベルは79.5% のものがふつうであった 居住形態は 家族と同居が最も多く 61.5% であった アルバイトの状況は アルバイトをしているものは46.2% であった 2. 日常の食事バランスの検討 1 食事バランスガイドを用いた食事調査結果食事バランスガイドを用いた食事調査結果を表 2に示した 1 回目と2 回目の調査結果を比較すると 果物において朝食と間食で有意な減少 (p<0.05) が見られた 1 日 ( 朝食 昼食 夕食 間食 ) の合計では 副菜と主菜に増加が見られたが 有意な差ではなかった 果物については 有意に減少 (p<0.05) していた 2 食事のバランス得点食事のバランス得点を表 3に示した 全ての料理区分においてマイナス値となり 不足していた 副菜は 1 回目の調査では -2.43±1.87と低かった 2 回目の調査では -2.17±2.15と少し改善され 表 1 対象者の属性 平均値 ± SD 年齢 ( 歳 ) 19.0 ± 1.0 身長 ( cm ) 157.9 ± 6.6 体重 ( kg ) 50.0 ± 6.3 BMI ( kg / m2 ) 20.1 ± 2.5 人数 ( 人 ) (%) 身体活動レベル 居住形態 アルバイトの状況 低い 7 17.9 ふつう 31 79.5 高い 1 2.6 合計 39 100.0 家族と同居 24 61.5 アパートに一人暮らし 9 23.1 寮生 4 10.3 その他 2 5.1 合計 39 100.0 している 18 46.2 していない 20 51.3 無回答 1 2.6 合計 39 100.0 BMI(body mass index)= 体重 [ kg ]/( 身長 [m]) 2 表 3 食事のバランス得点 (n=39) 1 回目 2 回目 平均値 ±SD 平均値 ±SD 1 主食 -0.13 ±1.68-0.14 ±1.33 日 副菜 -2.43 ±1.87-2.17 ±2.15 合 主菜 -0.56 ±1.78-0.04 ±1.64 牛乳 乳製品 -0.90 ±0.94-0.98 ±0.97 計 果物 -1.55 ±0.67-1.78 ±0.43* 得点が正であれば摂取量が目安量を上回っており 負で あれば摂取量が目安量を満たしていないことを示す 対応のある2 変数 t 検定 *p<0.05, **p<0.01 表 2 食事バランスガイドによる食事調査結果 (SV) 1 回目 2 回目 平均値 ± SD 平均値 ± SD 主食 0.87 ±0.37 0.84 ±0.39 朝 副菜 0.28 ±0.43 0.34 ±0.48 食 主菜 0.15 ±0.32 0.28 ±0.37 牛乳 乳製品 0.55 ±0.64 0.55 ±0.60 果物 0.15 ±0.31 0.07 ±0.23* 主食 1.41 ±0.64 1.41 ±0.40 昼 副菜 0.92 ±0.60 0.84 ±0.67 食 主菜 1.05 ±0.97 0.97 ±0.68 牛乳 乳製品 0.16 ±0.27 0.90 ±0.21 果物 0.10 ±0.28 0.02 ±0.08 主食 1.28 ±0.54 1.30 ±0.43 夕 副菜 1.34 ±0.87 1.56 ±0.93 食 主菜 1.39 ±0.80 1.72 ±1.05 牛乳 乳製品 0.12 ±0.25 0.13 ±0.30 果物 0.10 ±0.29 0.09 ±0.25 主食 1.19 ±0.41 1.18 ±0.25 間 副菜 0.85 ±0.47 0.91 ±0.53 食 主菜 0.86 ±0.45 0.99 ±0.41 牛乳 乳製品 0.28 ±0.23 0.26 ±0.24 果物 0.11 ±0.17 0.06 ±0.11* 1 主食 4.75 ±1.64 4.73 ±1.02 日 副菜 3.39 ±1.86 3.65 ±2.10 合 主菜 3.44 ±1.78 3.96 ±1.64 牛乳 乳製品 1.11 ±0.92 1.03 ±0.95 計 果物 0.45 ±0.67 0.23 ±0.43* 対応のある2 変数 t 検定 *p<0.05, **p<0.01(n=39) - 11 -

山陽学園短期大学紀要第 40 巻 (2009) たが有意な差はなかった また 果物も不足しており 1 回目の調査では -1.55±0.67 と低く 2 回 目の調査では -1.78±0.43 と有意に減少 (p<0.05) した 3. 食事バランスと献立作成に関する意識との関連 食事バランスと献立作成に関する意識との相関係数を表 4 に示した 2 回の調査共に 食事バランスに 関する意識と献立作成に関する意識とに有意な相関は見られなかった しかし それぞれの意識の 1 回 目と 2 回目の関連を見ると有意な強い正の相関 (p<0.01) が見られた 表 4 食事バランスと献立作成に関する意識の相関係数 1 回目2 回目食事バランスに関する意識献立作成に関する意識食事バランスに関する意識献立作成に関する意識 Pearson の積率相関係数 食事バランスに関する意識 1 回目 2 回目 献立作成に関 食事バランス する意識 に関する意識 献立作成に関する意識 1.000 0.061 0.605** 0.121 *p<0.05, **p<0.01 1.000-0.118 0.442** 1.000 0.156 1.000 4. 食事のバランス得点と食事バランス及び献立作成に関する意識との関連食事のバランス得点と食事バランス及び献立作成に関する意識との相関係数を表 5に示した 1 回目の食事バランスに関する意識は 1 回目の副菜に有意な正の相関 (p<0.05) が見られ また 2 回目の副菜と主菜に有意な正の相関 (p<0.01) が見られた 献立作成に関する意識は 1 回目の主食と主菜に有意な正の相関 (p<0.05) が見られ また 2 回目の副菜に有意な正の相関 (p<0.05) が見られた 2 回目の食事バランスに関する意識は副菜と主菜に有意な正の相関 (p<0.05) が見られたが 献立作成に関する意識に相関は見られなかった 表 5 する意識バランス得点1 回食事のバランス得点と食事バランス及び献立作成に関する意識との相関係数 目1 回目 2 回目 食事バランスに関する意識 献立作成に関する意識 食事バランスに関する意識 献立作成に関 主菜 0.229 0.318* 主食 0.063 0.355* 副菜 0.400* 0.299 牛 乳 乳製品 0.144-0.130 果物 0.249 0.143 2 回副菜 0.408** 0.344* 0.367* 0.299 目主菜 0.450** 0.230 0.377* -0.004 主食 0.232 0.180 0.150 0.091 牛 乳 乳製品 0.248-0.100 0.136 0.208 果物 -0.063 0.055-0.161-0.005 Pearson の積率相関係数 *p<0.05, **p<0.01-12 -

西村美津子 : 栄養士養成課程における学生の食事バランスと献立作成に関する意識との関連 5. 食生活改善と食事バランスガイドについての意識食生活改善と食事バランスガイドについての意識調査結果を表 6 7に示した 食生活改善の必要性を感じたものは76.9% であったが そのうち 食事バランスガイドが参考になると答えたものは50.0% であった さらに 食生活改善が実行できたと答えたものは3.3% と低かった 食生活改善できなかった理由は 改善が必要と思っても強い意志がもてないと答えたものが30.8% と最も多く 次いで食事の用意が面倒であると答えたものが23.1% であった 表 6 食生活改善と食事バランスガイドについての意識調査結果質問項目回答人数 ( 人 )(%) はい 30 76.9 食生活改善の必要性いいえ 9 23.1 を感じたか合計 39 100.0 はい 15 50.0 食事バランスガイドが参考になったか 食生活改善が実行できたか どちらともいえない 13 43.3 いいえ 2 6.7 合計 30 100.0 はい 1 3.3 どちらともいえない 23 76.7 いいえ 6 20.0 合計 30 100.0 表 7 食生活改善の困難な理由 ( 複数回答可 ) 人数 ( 人 )(%) アルバイトで時間がない 6 15.4 体重減量のため 3 7.7 部活で時間がない 2 5.1 通学が遠くて時間がない 1 2.6 朝起きるのが遅くて時間がない 8 20.5 経済的に食費を節約している 3 7.7 食事の用意が面倒 9 23.1 食欲がない 4 10.3 改善が必要と思っても強い意志が持 12 30.8 てない その他 4 10.3 合計 52 133.3 考 察 栄養士の仕事は 人々の健康の保持 増進 QOL の向上を目的とし 栄養 食事教育を行うことである したがって 対象者にとって適切な食事の提供を行う ( メニューの提案をする ) ための献立作成能力は 栄養士に求められる重要な技能の一つである 栄養士養成課程における学生の献立作成に対する意識を高め その能力向上に資する目的で 学生の食事バランスの実態を明らかにし 献立作成に関する意識との関連について調査研究を行った 食事の状況は 食事バランスガイド全ての料理区分において不足しており 食事として全体的に摂取量が目安量に対して不足していた これは 木村らの調査結果 18) と同じであり 栄養士養成課程の学生においても食事の乱れは顕著であった 特に 副菜と果物において不足していたが 副菜は 1 回目の調査に対し2 回目で改善が見られたが 有意差はなかった また 果物は1 回目の調査より2 回目において有意に減少していた このことについては 果物摂取の意識低下が原因とも考えられるが 調査時期の違いや 食品の物価の違いにより減少したとも考えられた また 今回の調査は対象が39 名と少なく 比較検討に限界があるとも考えられた 今回の調査では菓子類 嗜好飲料など間食の内容については詳細な調査は行っていないが 木村らの調査 18) によると 女子大学生の食事摂取が間食に依存しており その内容は 菓子類 コーンフレーク ポテトチップス類 カステラ チョコレート類 嗜好飲料 炭酸飲料などの嗜好品であったと報告している 本調査も同様に 食事の全体的な不足は 間食の菓子や嗜好飲料などで補給されていると推測され 間食についても検討の必要性が示唆された 食事バランスに関する意識は 1 回目と2 回目の調査結果の関連を見ると 強い正の相関が見られ 1 年次に意識の高いものは 2 年次でも高い意識を持っていた そして 献立作成に関する意識についても同様の結果であった このことから 食事バランスや献立作成に対する意識を高める教育は 1 年次の早い時期から行うことが効果的であると思われた - 13 -

山陽学園短期大学紀要第 40 巻 (2009) 食事バランスに対する意識と実際の食事のバランスの関連については 1 回目の食事バランスに関する意識と1 2 回目の調査結果ともに副菜のバランス得点とに関連が見られ 食事のバランスに気をつけているものほど 副菜を良く摂っているという結果であった また その傾向は 2 回目の調査結果の方に強い相関が見られたことから 1 年次よりも2 年次に意識が高まっていることが示唆された 岸田らの調査 21) によると 女子学生の食行動パターンは コンビニ中心中食派 外部化派 内食派 コンビニ以外中食派の4つの食行動に分類され 内食派以外の割合は 約 7 割程度であった 本調査対象者もこのような食行動パターンであると推測するならば 食事バランスガイドの料理区分のうち主食や主菜は比較的摂りやすいが 野菜を主とした副菜や 牛乳 乳製品 果物などは積極的に摂取するという意識を持たなければ摂りにくい食事であると考えられる 1 年次から2 年次にかけて 食事のバランスに気をつけているものは 野菜などの副菜を積極的に摂るという食行動の変化が示唆された 1 回目の献立作成に関する意識は 1 回目のバランス得点の主食と主菜に 2 回目のバランス得点の副菜と関連していた 献立作成に対して意識の高いものは 1 年次では主食 主菜を良く摂っており 2 年次になると副菜を良く摂っていたという結果であった また 2 回目の献立作成に関する意識と食事のバランス得点とに関連が見られなかったことから 2 年次になると献立作成に対する意識向上に伴う 望ましい食事の実践がなされていないと推察された 2 年次では 校外実習も終え 栄養士への意識も高まり 自らの食生活改善が意識のみならず食行動として現れる時期であると推測されるが 実際には異なる結果であった その理由としては 2 年次では 卒後の進路が決まる者も徐々に増え そのなかには栄養士としての進路を選択しない学生もおり 献立作成に関する意識と 実際の食行動とに関連が認められなくなったのではないかと推察された あるいは 今回の調査は対象が39 名と少なく 2 年次の教育効果をみることには限界があった 今後は対象を広げ検討していく必要性があると考えられた 食事バランス及び献立作成に関する意識は 副菜のバランス得点と関連が見られた このことは 栄養士養成の専門教育のなかで 野菜摂取の重要性の認識が高まったことが原因と推察された しかし 食事バランスガイドにおける 料理レベル の目安量を満たす有意な改善にまでは至っていないことから 今後は 2 年間という限られた栄養士養成教育のなかで 適正な質や量の食事の摂取に結びつくための食教育が必要であると考えられた 食事バランスガイドを活用して 食生活改善の必要性を感じたものは 76.9% であり そのうち食生活改善に食事バランスガイドが参考になったと答えたものは50.0% であった また 食生活改善が実行できたと答えたものは3.3% と少なかった 食生活改善が実行できなかった理由としては 改善が必要と思っても強い意志が持てないというものが最も多く30.8% であった 本調査結果から 23.1% の学生が一人暮らしをしており 何らかのアルバイトをしているものは46.2% であった このような現状のなか学生達は 日常生活のなかで朝食の欠食やアルバイトによる昼食や夕食の欠食をしたり 食事の準備の面倒さなどを感じていると推測される 不規則な生活習慣や食事に対する意識の低さなどにより 健康のための食事改善を実行する強い意思を持つことが困難であると考えられるが 今回の調査では 学生の詳細な生活習慣の調査は行われていない 今後は 学生の生活習慣 ( 生活リズム 欠食の状況 睡眠時間など ) や食事に対する意識調査を行い 健康行動への妨げとなる要因についても明らかにし それらを考慮した食教育の必要性が示唆された 要 約 本研究では 栄養士養成課程の学生の食生活改善による献立作成能力向上に資するため 食事バランスの実態と変化を観察し 食事バランスと献立作成に関する意識との関連を検討した 献立作成と食事バランスに関する意識はアンケート調査を行い 食事調査は食事バランスガイドを用いて3 日間行った - 14 -

西村美津子 : 栄養士養成課程における学生の食事バランスと献立作成に関する意識との関連 そして 半年後同様の調査をして検討した 食事バランスを評価したバランス得点は 全ての料理区分においてマイナス値を示し 特に副菜と果物において不足していた また 1 回目の食事バランスに関する意識と 1 2 回目の副菜のバランス得点とに有意な相関が見られたことから 食事バランスに気をつけているものほど 副菜を多く摂る傾向であることがうかがわれた また 1 回目の献立作成に関する意識は 1 回目の主食 主菜のバランス得点と 2 回目の副菜のバランス得点とに関連が見られた しかし 2 回目の献立作成に関する意識はどの料理区分とも関連が見られなかったことから 2 年次になると献立作成に対する意識向上に伴う望ましい食事の実践が行われていないことが示唆された また 食事バランス及び献立作成に関する意識は副菜のバランス得点と関連が見られ 2 年間の栄養士養成教育のなかで野菜摂取の重要性の認識がうかがわれた 以上より 2 年間の限られた栄養士養成教育の中で献立作成能力向上に繋げるためには 1 年次早期からの食教育が効果的であり 適正な質や量の食事を実践するための食教育プログラムの必要性が示唆された 参考文献 1) 江原絢子, 石川尚子, 東四柳祥子 : 日本食物史, 吉川弘文館, 東京 (2009) 2) 浅野真智子, 深蔵紀子, 尾立純子, 瓦家千代子, 難波敦子, 安田直子, 山本悦子 : 児童から大学生にいたる若年者層のファーストフードの利用実態調査, 栄養学雑誌,61,47-54(2003) 3) 堀田宗徳 : 最近の中食の動向, 日本調理科学会誌,40,104-108(2007) 4) 折間桂子, 青木智子, 津久井亜紀夫 : コンビニエンスストア市販弁当 おにぎり類の利用実態と食品成分表示について, 日本食生活学会誌,19,178-184(2008) 5) 諸井克英, 鈴木徹 : 中食 に関する意識と行動 - 予備的検討 -, 同志社女子大學學術研究年報,57, 115-120(2006) 6) 日本栄養士会雑誌( 栄養日本 ) 編集委員会: 日本栄養士会雑誌,52,No2,54(2009) 7) 加藤佳子 : 女子大学生のストレス過程および痩せ願望と食行動との関連 - 甘味に対する態度や食行動の異常傾向に注目して-, 日本家政学会誌,58,453-461(2007) 8) 池田順子, 福田小百合, 村上俊男, 河本直樹 : 青年女子の痩せ志向 - 栄養系短期大学学生の14 年間の推移, 日本公衆衛生雑誌,55,777-785(2008) 9) 平井滋野, 岡本祐子 : 家庭における過去の食事場面と大学生の父親および母親との心理的結合性の関連, 日本家政学会誌,57,71-79(2006) 10) 森脇弘子, 岸田典子, 上村芳枝, 竹田範子, 佐久間章子, 寺岡千恵子, 梯正之 : 女子学生の健康状況 生活習慣 食生活と小学生時の食事中の楽しい会話との関連, 日本家政学会誌,58,327-336(2007) 11) 松島悦子 : 母親と父親の調理態度が 家族の共食と中学生の調理態度に与える影響, 日本家政学会誌,58,743-752(2007) 12) 渡辺敦子, 飯田文子, 川野亜紀, 大越ひろ, 三輪里子 : 大学生の食事時間と食生活の実態, 日本食生活学会誌,10,45-52(2000) 13) 古橋優子, 八木明彦, 酒井映子 : 女子学生の料理レベルからみた食事形態と食生活状況との関連, 日本食生活学会誌,17,130-140,(2006) 14) 照井眞紀子, 鈴木久乃 : ある栄養士教育課程における学生の献立作成能力の要因 - 献立構成要素を用いての検討 -: 栄養学雑誌,58,77-84(2000) 15) 加藤千晶, 岩田香, 佐藤文代, 川野因 : 女子学生の日常昼食摂取状況の問題点と給食管理実習の役 - 15 -

山陽学園短期大学紀要第 40 巻 (2009) 割, 栄養学雑誌,59,71-77(2001) 16) 西村美津子 : 栄養士養成課程の給食管理実習における献立作成に関する要因について, 山陽学園短期大学紀要,38,11-19(2007) 17) 木村友子, 阿知和弓子, 亀田清, 菅原龍幸 : 給食管理実習における献立作成の実態調査と教育, 日本食生活学会誌,12,233-241(2001) 18) 木村友子, 井川千春, 鬼頭志保, 加賀谷みえ子, 内藤通考, 菅原龍幸 : 女子大学生の食事管理における献立作成の実態と教育効果, 日本食生活学会誌,19,224-231(2008) 19) 武見ゆかり, 吉池信男 : 食事バランスガイド を活用した栄養教育 食育実践マニュアル, 第一出版株式会社, 東京 (2006) 20) 近藤香奈恵, 李延秀, 川久保清, 中出麻紀子, 森克美, 赤林朗 : メタボリックシンドロームの食事の多様性とバランスの実態 -その評価方法に関する研究 -, 肥満研究,13,143-153(2007) 21) 岸田典子, 佐久間章子, 上村芳枝, 竹田範子, 寺岡千恵子, 森脇弘子 : 女子学生の食行動パターンと生活習慣 健康状況との関連, 日本家政学会誌,56,187-196(2005) - 16 -