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関節リウマチ(踏)に対するTNF阻害療法施行ガイドライン(改訂版)

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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「             」  説明および同意書


ぶどう膜炎 TNF阻害薬 使用指針マニュアル(第1.1版)

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

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腫脹関節数 6 関節以上 CRP 2.0mg/dl 以上あるいは ESR 28mm/hr 以上これらの基準を満たさない患者においても 画像検査における進行性の骨びらんを認める DAS28-ESR が 3.2(moderate disease activity) 以上のいずれかを認める場合も使用を考慮

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

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70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

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3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

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入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物ある

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関節リウマチ (RA) に対するトシリズマブ使用ガイドライン (2012 年改訂版 ) トシリズマブは IL-6 のシグナル伝達を阻害することによって抗リウマチ効果を示す薬剤である 2008 年 4 月に本邦で RA の適応が承認された 欧州においては 2009 年 1 月に 米国においても 2010 年 1 月に承認された この度 トシリズマブの製造販売後全例調査の最終解析結果がまとまったため ガイドラインの一部改訂を行った ガイドラインの目的 トシリズマブは 関節リウマチ患者の臨床症状の改善 関節破壊進行の抑制 身体機能の改善に有効であることが本邦での臨床試験により証明された薬剤であるが 投与中に重篤な有害事象を合併する可能性がある 本ガイドラインは 国内で実施された治験の結果を基に トシリズマブ投与中の有害事象の予防 早期発見 治療のための対策を提示し 各主治医が適正に薬剤を使用することを目的とする 対象患者 註 1) 1. 既存の抗リウマチ薬 (DMARD) 通常量を3ヶ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者 コントロール不良の目安として以下の 3 項目を満たす者 疼痛関節数 6 関節以上 腫脹関節数 6 関節以上 CRP 2.0mg/dL 以上あるいは ESR 28mm/hr 以上 これらの基準を満たさない患者においても 画像検査における進行性の骨びらんを認める DAS28-ESR が 3.2(moderate activity) 以上のいずれかを認める場合も使用を考慮する 2. さらに 日和見感染に対する安全性を配慮して以下の 3 項目も満たすことが望ましい 末梢血白血球 4000/mm 3 以上 末梢血リンパ球数 1000/mm 3 以上 1

血中 β-d- グルカン陰性註 1) 既存の抗リウマチ薬とは 本邦での推奨度 A の抗リウマチ薬であるメトトレキサート サラゾスルファピリジン ブシラミン レフルノミド タクロリムス 生物学的製剤のインフリキシマブ エタネルセプト アダリムマブ ゴリムマブ アバタセプトのいずれかを指す 用法 用量 体重 1kgあたり 8mgを 100~250mLの日局生理食塩水に加え希釈し 4 週間隔で点滴静注する 投与開始時は緩徐に点滴静注を行い 患者の状態を十分に観察し 異常がないことを確認後 点滴速度を速め 1 時間程度で投与する 投与禁忌 1. 活動性結核を含む, 重篤な感染症を合併している 明らかな活動性を有している感染症を保有する患者においては その種類に関係なく感染症の治療を優先し 感染症の治癒を確認後に本剤の投与を行う 本剤は CRPなどの炎症マーカーや 発熱などの症状を著明に抑制するため 感染症の悪化を見過ごす可能性がある 慢性活動性 EBウイルス感染 (CAEBV) を伴う関節リウマチ患者に本剤の投与がなされ その急激な悪化により死亡した症例の報告 1) があり CAEBVを伴う患者への本剤の投与は避ける B 型肝炎ウイルス (HBV) 感染者 ( キャリアおよび既往感染者 ) に対しては 日本リウマチ学会による B 型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言を参考に対処する 2 B 型肝炎ウイルス (HBV) 感染者に対しては 安全性が確立されていないため投与すべきではない 2. 本剤は トシリズマブに過敏症を示した患者には投与すべきではない 要注意事項 1. 本邦での本剤の臨床試験 製造販売後全例調査最終解析結果において 感染 症が最多の重篤有害事象である 3), 4) 今回の最終解析の結果から重篤感染症の危険因子として以下が認められた 本剤投与期間中の併用副腎皮質ステロイドが 5mg/ 日を超える場合 ( プレドニゾロン換算 ) 呼吸器系疾患の既往 合併 罹病期間 10 年以上 65 歳以上の高齢者なお 呼吸器感染はその頻度と生命予後への影響から重要であり 副作用対策の観点から以下の項目に注意をして投与を行う必要がある また トシリズマブ投与中に発熱 咳 呼吸困難などの症状が出現した場合は 細菌性肺炎 結 2

核 ニューモシスチス肺炎 薬剤性肺障害 原疾患に伴う肺病変などを想定した対処を行う ( フローチャート参照 ) 1) 肺炎などの感染症 胸部 X 線撮影が即日可能であり 呼吸器内科専門医 放射線科専門医による読影所見が得られることが望ましい IL-6は 炎症性疾患 感染 悪性腫瘍などで高産生となることが知られている IL-6は CRPなどの炎症マーカーを上昇させるのみでなく 発熱 倦怠感といった症状とも関連する 従って 本剤の投与によって 感染症 悪性腫瘍に伴う IL-6 依存性の症状 検査所見の出現が抑制されるためにそれらの合併を見逃す可能性があり 特に臨床症候の変化に注意が必要である ショックあるいは呼吸困難を示した重症肺炎症例があり 前日まで症状がなくイベントの起きた日に来院し肺炎と診断されている 5) このような症例では, 感染の早期の症状が抑制され 重症化して初めて診断された可能性がある このため 本剤投与中には 軽微な感染症状でも主治医に相談するよう患者に指導する 上記の重篤感染症危険因子が重複する患者への本剤の使用は 治療上の有益性が危険性を大きく上回ると判断される場合にのみ投与する また 本剤の特徴に関して 家族にも十分注意するよう指導する必要がある 呼吸器感染症予防のために インフルエンザワクチンは可能な限り接種すべきであり 65 歳以上の高齢者には肺炎球菌ワクチンの接種も積極的に考慮すべきである 2) 結核 非結核性抗酸菌症 胸部 X 線写真で陳旧性肺結核に合致する陰影 ( 胸膜肥厚 索状影 5mm 以上の石灰化影 ) を有する患者 ツベルクリン反応が強陽性の患者については 定期的に胸部 X 線撮影を実施し 結核症状の発現に十分注意をする スクリーニング時には 問診 ツベルクリン反応 胸部 X 線撮影を必須とし 必要に応じて胸部 CT 撮影などを行い 肺結核を初めとする感染症の有無について総合的に判定する その他 インターフェロンγ 遊離試験キット ( クオンティフェロン ) は結核スクリーニングの補助的診断として有用である 結核感染リスクが高い患者などでは 本剤投与開始 3 週間前よりイソニアジド (INH) 内服 ( 原則として 300mg/ 日 低体重者には 5mg/kg/ 日に調整 ) を少なくとも 6~9ヶ月行うことが望ましい 非結核性抗酸菌感染症に対しては有効な抗菌薬が存在しないため 同感染患者には原則として投与すべきでない 3) ニューモシスチス肺炎 ニューモシスチス肺炎は 頻度は多くないが本邦関節リウマチ患者での合併が近年重要視されており 本剤投与中においても報告例が存在する 3

リスクが多い患者 ( 高齢 肺合併症 副腎皮質ステロイド投与 末梢血リンパ球減少など ) では ST 合剤などの予防投与を考慮する 4) ウイルス性肝炎 C 型肝炎ウイルス (HCV) 感染者 ( キャリア ) への本剤の投与例は少なく 一定の見解は得られていない したがって 現時点ではキャリアへの投与は避けるのが望ましいが 治療上の有益性が危険性を大きく上回ると判断される場合には 慎重な経過観察を行いながら投与を実施してもよい 4) 2. 製造販売後全例調査最終解析結果において 虚血性心疾患 心不全 不整脈などの心機能障害の発現 (0.5%) が認められている 発現例においては 心機能障害の既往 合併をもつ患者が多く含まれていた このため 心機能障害の合併 既往のある患者に投与する場合には 必要に応じて循環器内科専門医にコンサルテーションし あるいは心筋梗塞二次予防に関するガイドラインなどを参考にして慎重に管理する 6) また 全例調査の最終解析結果で虚血性心疾患の発現例において 脂質関連検査値の異常を認める症例はなかったものの 本剤投与により コレステロール 中性脂肪等の脂質系の検査項目の上昇がしばしば認められる 7) ため 必要に応じて 日本動脈硬化学会動脈硬化性疾患予防ガイドラインなどにのっとり脂質異常症治療薬の投与を行うことが推奨される 4) 3. 製造販売後全例調査最終解析結果において肝機能障害の危険因子として 肝機能障害の既往 合併 MTX 併用 抗結核薬併用 BMI 値として 25kg/m 2 以上の肥満が認められたため これらの患者では定期的に肝機能検査を実施することが望ましい 4) 4. 製造販売後全例調査最終解析結果において間質性肺炎の危険因子として 間質性肺炎の既往 合併 65 歳以上の高齢 喫煙歴が認められた これらの患者の投与に際しては発熱 咳 呼吸困難等の呼吸器症状に十分注意し 異常が認められた場合には 速やかに胸部 X 線検査 CT 検査等を実施する 5. 本剤投与中に消化管穿孔を起こした症例の報告がある 憩室炎の既往 合併例には慎重な投与が必要である なお 消化管穿孔が疑われる症状が認められた場合には 腹部 X 線検査 CT 検査等を実施する 6. 副腎皮質ステロイドは 感染症発症の重要な危険因子であることが示されており トシリズマブが有効な場合には減量を進め 可能であれば中止することが望ましい 7. 本剤投与により アナフィラキシーショックを含む重篤な infusion reaction が起こる可能性があることを考慮し 点滴施行中のベッドサイド 4

で気道確保 酸素 エピネフリン 副腎皮質ステロイドの投与など 緊急処置が直ちにできる環境が必要である 8. 本剤が血中に残っている間に手術が施行されると 術後 CRP 上昇が認められない 更に WBC 上昇も正常範囲に留まることが指摘されている 7)8) 従って 本剤投与中に手術を施行する場合には CRP や白血球数に依存せず 局所症状に注意して手術部位感染 (SSI) の早期発見に努める 9) また 手術後に創傷治癒が遅延する可能性がある 9. ヒト IgG は胎盤 乳汁へ移行することが知られており 本剤も同様である 従って 胎児あるいは乳児に対する安全性は確立されていないため 投与中は妊娠 授乳は回避することが望ましい ただし 現時点では 動物実験およびヒトへの使用経験において胎児への毒性および催奇形性についての報告は存在しないため 意図せず胎児への暴露が確認された場合は ただちに母体への投与を中止して慎重な経過観察のみ行うことを推奨する 10. 本剤の投与により悪性腫瘍の発生頻度が上昇するというデータは現時点で示されていない 10) 今後 製造販売後の調査にて長期的な検討が待たれるところであるが 現時点では 悪性腫瘍の既往歴 治療歴を有する患者 前癌病変 ( 食道 子宮頸部 大腸など ) を有する患者への投与は避けるのが望ましい 参考文献 1) Ann Rheum Dis 2006: 65: 1667 2) http://www.ryumachi-jp.com/info/news110926.html 3) Mod Rheumatol 2010:20:222 4) アクテムラ点滴静注用 80mg, 200mg, 400mg 全例調査最終報告 関節リ ウマチ 多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎 5) Mod Rheumatol 2009:19:64 6) http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/jcs2011 7) Arthritis Rheum 2004: 50 : 1761 8) Ann Rheum Dis. 2009:68:654 9) Modern Rheum 2012: June 10 on line 10) Ann Rheum Dis 2007: 66(Suppl): 122 一般社団法人日本リウマチ学会調査研究委員会生物学的製剤使用ガイドライン策定小委員会委員長竹内勤 (2012.6.30) 5

PaO2, SpO2 X CT β-dg, PCR PCP β-d (β-dg) BAL Pneumocystis PCR β-dg PCR β-dg PCR PCP