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平成20年5月 協会創立50年の歩み 海の安全と環境保全を目指して 友國八郎 海上保安庁 長官 岩崎貞二 日本船主協会 会長 前川弘幸 JF全国漁業協同組合連合会 代表理事会長 服部郁弘 日本船長協会 会長 森本靖之 日本船舶機関士協会 会長 大内博文 航海訓練所 練習船船長 竹本孝弘 第二管区海上保安本部長 梅田宜弘

Transcription:

WIF-7-3:January 27 インフラストラクチャー投資の戦略的価値 高森寛, 高嶋隆太

インフラストラクチャー投資の戦略的価値 A Sragic Valu of Infrasracur Planning 高森寛, 高嶋隆太 2* Hiroshi AKAMORI and Ryua AKASHIMA 早稲田大学大学院ファイナンス研究科 2 東京大学大学院工学系研究科 要旨不透明な未来に向けて インフラ投資の計画は 通常 不確実性やリスクの要因に関連しての期待シナリオをベースにして 計画案の価値評価が行われる リスク要因の未来展開が 期待から乖離する事態に すなわち サプライズに対応できる可能性と能力は その本質はオプション価値である ある一つのインフラ投資が創造するそのようなリスク対応力を ここでは そのインフラの戦略的価値を呼ぶ 不確実で リスクに満ちた未来の便益ほど 大きな割引率で割り引くマーシャル流の伝統的な投資基準は そのような戦略的価値を見落しがちである. この研究では 国のレベルでのインフラ計画は そのようなオプション的な また 戦略的な価値をこそ明示的に取り上げるべきであることを主張する 国土幹線ガスパイプラインの例を取り上げて そのような戦略的な価値を陽表的に評価する簡単なモデルを示す キーワード : リスクと保険の価値, サプライズ対応能力, オプションと戦略. はじめにインフラストラクチャの建設は 通常 巨額の投資支出を必要とし また さらに 数年から十余年の建設期間を必要とする. その建設に着手するべきかどうかの政策決定は 将来の不確実性やリスク要因に直面しての公的な意思決定である. この主の投資案件の評価の手続きとしては 伝統的には 将来の不確実要因をできるかぎりの精度での予測を試み その期待シナリオをよりどころとして インフラストラクチャ完了後の便益が 投下資本コストに見合うかの価値評価が試算される. このような基本的手続きを ここでは 期待シナリオベースの投資評価と呼ぶことにする この研究は インフラストラクチャの建設のような大規模の支出と長い建設期間中の不確実性の大きい投資案件の評価には キーとなる不確実要因が期待シナリオから乖離したとき どの程度 対処できる可能性を有している か が重要な評価のポイントであるという認識に立つ. ここでは 国土幹線ガスパイプラインの産業政策的な価値を エネルギー セキュリティという視点から 評価する枠組みで分析したい. 2. エネルギー インフラ計画を例として 2.. エネルギー危機指標 わが国の 時点におけるエネルギーの総消費量を Q とし, また その消費量 Q のうち 石油消費による比率 すなわち 石油依存度を α をとする. 国土幹線ガスパイプライン ( 以下では ガス P/L と記す.) 建設を 現時点 = で 着工して = 年の時点で完成するものとする. ここでは 国土幹線ガスパイプライン ( 以下では ガス P/L と記す.) 建設は 石油価格指数の変動に反応して エネルギー消費のうちの石油依存度を軽減し そ

れは また エネルギー費用の軽減という形で どのような便益をもたらすかを分析したいので エネルギーの総消費量は一定 すなわち Q = Q と想定する. 本研究では わが国の 時点で 消費するエネルギー総量 Q は 石油 で消費するか それ以外の燃料で消費するものとして 石油以外の燃料をすべて 簡略的に天然ガスと総称し その価格を P として, しか も 一定 P = P とする. 図 投資案のサプライズへの対応価値 以上のような仮定をおいて 分析をすすめる理由は 将来のエネルギー危機に直面して 国土幹線ガスパイプラインというインフラスト チャーの存在が どのような価値の違いをもたらすかを明らかにしたいからである. 2

2.2. エネルギー危機指標 ここで エネルギー価格危機要因を表現する指数として O 石油価格指数 : = P / P なるものを定義する. いまは 石油以外の燃 料の価格は変わらない すなわち P = P と O しているので = P / P は 石油価格の変動を直接に表している. ガス P/L が完成する 年目には 石油価格指数は μ 石油価格期待 : [ ] E = () になると期待される. わが国の石油依存度 すなわち 総エネルギー消費のうち石油燃料の占める比率 α は 石油価格が () 式で推移するという期待にもとづく合理的行動として 時間 とともに η 合理的石油依存行動 : α = α (2) で減少していく. また インフラ完成後は より大きな減衰係数 η 2 に従い η 2 α = β α, = (3) で 減少していくものとする. ここで β は インフラ完成時 において 石油価格指数が 当初の期待 () 式から乖離したことによる緊急対応度を示し 後に (6) 式で記述するものである. 現時点で インフラ建設に着手しなければ 自動的に β = であり 危機対応はない. 2.2. リスクに対応できるインフラの価値 価格指数 は現時点 での値からスタートして 時間の経過につれて y 2 ( μ σ / ) + W =, y = 2 σ (4) に従って不確実な変動をするものとする. この場合 時点 = からみて 時点の 石油価格指数の期待値は [ ] る. E μ = であ 石油価格指数 = の 時点での実現値を とする. ここで インフラ建設が完成する時点 において 石油価格が その期待値 (}) 式から乖離した度合いは 石油価格サプライズ : E[ ] y = で表現できる. ただし K = μ, γ y K = y γ (5) K である. この期待値からの乖離は ショックとも呼ばれる. インフラ建設が完成した時点 での価格 が その期待値 E[ ] γ に等しいとき すなわち y = K であるときは サプライズは に等しく 価格 が その E[ ] より大きいときは サプライズは に等しい. 完成時点 でのサプライズがより大きいときは わが国産業の石油依存度は それまでの μ 価格期待 () 式の [ ] E = にもとづいた 合理的石油依存度の行動 α = α η から離れて 新しい危機対応を迫られることになる. ここで 図 に示すように ガス P/L が完成した時 = 以降の時点 = に関して 石油依存度緊急度 : γ a ( ), a > β = (6) なる概念を考える. この β は ガス P/L が完成しているときに (5) 式に従う確率事象となる. 現時点 = で ガス P/L 建設に着手しないのであれば 時点 では 何も起こらず β = である. いま 考えている問題状況では 不確実でリスクの根源となる確率変数は 石油価格指数 y = であり 時点 において 何らか y の値 = が実現する. その実現値が, μ 当初の予想 E[ ] = を上回っているとしてみよう. このとき もし 現時点 = で ガス P/L 建設に着手していたのであれば この 3

時点 年目において β はモデル (5) 式により より小さく わが国の産業は (3) 式に従って 石油依存度をより大きく引き下げることが可能となる. このことは 図 に示すように 現時点 = で ガス P/L に着手するという意思決定が わが国の産業に 危機指数 y = の予期しない上昇に対応できるオプション権利を与えることを表現している. 計量経済学 ファイナンス予測理論などの分野では このような危機指数の予想値を超えた量 y K あるいは (5) 式は サプライズとか ランダム ショックと呼ばれている. ガス P/L などの国家的インフラ建設は 当初は その価値を具体的に認識にくい. また そのようなインフラが完成する遠い将来においても そのような危機的事態が ほんとうに到来するのかは 不透明である. しかし 危機的事態が 現実に 到来した場合には いま 着工していることが 時点での危機に対処することを可能にする. 本研究での基本的な視点は インフラストラクチャー計画のオプション価値を 危機に対応しての戦略的価値として把握し 図 の一番下に示すように その価値を定量的に評価することを試みることである. わが国の石油依存度は (3) 式に従って変動し ガス P/L が存在しない状況のもとで わが国が 将来 消費する総エネルギー費用は 時点での価値に割り引いて 換算した値は r 割引率として ( 総エネルギー消費量は一定 すなわち Q = Q の仮定のもとで ) J = r O [ α QP + ( α ) QP ] d (7) さらに C = QP とする これは わが国 のエネルギー消費量 Q = Q をすべて石油以外 ( 天然ガス ) のものの投入でまかなったときのエネルギー総費用である. ガス P/L が 存在しない世界では (7) 式 は J C η η [ α ( α )] + d r. = C ただし 石油価格指数は 時点 以降も y 2 =, y = μ σ d + dw 2 で不確実変動を続ける. 一方 ガス P/L の建設に現時点 = で着手したとすれば (7) 式は 以下のように評価される. J η η [ β α ( β α )] + d G r C = (8) 以上から ガス P/L の建設がもたらす便益は それによるエネルギー削減費であり 上記の差 V C G = J J である. この V の期待値 E [ V ] が 危機要因に対処できるインフラの戦 略価値である. 3. まとめと課題 インフラの戦略的価値は E [ V ] は シミ ュレーション等によって 求めることができ その特徴として 将来の不透明性が大きいほど その価値は大きくなる 参考文献 [] 日本リアルオプション学会編 リアルオプションと経営戦略の新潮流 第 章 リアルオプションの基礎 シグマベイズキャピタル 26 [2] Dixi, A.K., and Pindyck, R.S., 994. Invsmn undr uncrainy. Princon Univrsiy Prss, Princon, J. 4