はじめに ディナゲスト錠 1mg は独イエナファーム社 ( 現バイエル シエーリング ファーマ社の子会社 ) にて合成されたプロゲスチン ( 一般名 : ジエノゲスト ) で バイオアベイラビリティーが 90.6% と高い経口投与可能な製剤です ジエノゲストはプロゲステロン受容体に対する選択的なアゴニスト作用を示し 卵巣機能抑制及び子宮内膜細胞の増殖抑制により子宮内膜症に対する有効性を示すと考えられています 持田製薬株式会社は ジエノゲストを子宮内膜症の薬物治療の新たな選択肢として提供すべく 2007 年 10 月にディナゲスト錠 1mg の販売名で製造販売承認を取得し 発売に至りました 本解説書は本剤の使用に際しまして 添付文書の使用上の注意を項目毎に解説しております つきましては 本剤をご使用いただく前に必ず本冊子をご精読の上 適正使用にご留意くださいますようお願いいたします
目次 効能 効果 1 用法 用量 1 用法 用量に関連する使用上の注意 1 禁忌 ( 次の患者には投与しないこと ) 3 使用上の注意 1. 慎重投与 5 2. 重要な基本的注意 9 3. 相互作用 15 4. 副作用 17 5. 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 23 6. 小児等への投与 25 7. 適用上の注意 27 別紙副作用発現頻度一覧 29 文献 35
効能 効果 子宮内膜症 用法 用量 通常 成人にはジエノゲストとして 1 日 2mg を 2 回に分け 月経周期 2~5 日目より経口投与する < 用法 用量に関連する使用上の注意 > 治療に際しては妊娠していないことを確認し 必ず月経周期 2~5 日目より投与を開始すること また 治療期間中は非ホルモン性の避妊をさせること 1
- 解説 - < 用法 用量に関連する使用上の注意 > 本剤は妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与禁忌であることから 投与開始にあたっては 妊娠していないことを確認するとともに 必ず月経周期 2~5 日目より投与開始することと設定しました また 妊娠の可能性を考慮し 投与中は避妊を行うこととしましたが ピル等のホルモン性の避妊薬では 本剤の効果が減弱する可能性があることから 非ホルモン性の避妊と設定しました ( 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 の項 (1)(p.23) 及び 相互作用 の項 (p.15) を参照 ) 2
禁忌 ( 次の患者には投与しないこと ) 1. 診断のつかない異常性器出血のある患者 [ 類似疾患 ( 悪性腫瘍等 ) のおそれがある ] 2. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 ( 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 の項 (1) 参照 ) 3. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 3
- 解説 - 1. 異常性器出血は 子宮体癌等に起因する場合があります 異常性器出血のある患者では適切な診断が行われない場合 悪性腫瘍等の発見が遅れ 増悪する可能性があることから設定しました 2. 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 の項 (1) を参照 (p.23) 3. 副作用 の項 (1) 重大な副作用 2) を参照 (p.19) 4
使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) (1) うつ病又はうつ状態の患者並びにそれらの既往歴のある患者 [ 更年期障害様のうつ症状があらわれるおそれがある ] (2) 肝障害のある患者 [ 代謝能の低下により 本剤の作用が増強することがある ] 5
- 解説 - (1) 臨床試験においてうつ症状に関連する副作用 ( うつ病 抑うつ気分 ) が 528 例中 6 例 (1.1%) に認められ その中で重度の症例も 1 例認められたことから設定しました 類薬の GnRH アゴニストでは 投与中に血清中エストラジオール濃度が閉経期レベルに維持され 更年期障害様のうつ症状があらわれることがあり その旨が使用上の注意に記載されています 本剤には卵巣機能抑制作用があり 本剤投与中も血清中エストラジオール濃度の低下が認められていることから GnRH アゴニストと同様に更年期障害様のうつ症状があらわれる可能性が考えられます なお プロゲスチン投与による副作用としてうつ状態が起こることが報告されていること 本剤投与中の血清中エストラジオール濃度の低下の程度は GnRH アゴニストよりは弱く 閉経期レベルを維持する程ではないことから 本剤投与中にみられるうつ症状は低エストロゲン状態に起因する更年期障害様のうつ症状の他に 本剤のプロゲステロン作用に基づくうつ症状の可能性も考えられます 以下に重度のうつ病が認められた症例の詳細を示します 性別年齢 使用理由 投与量投与期間 発現日経過転帰 投与 29 日目 うつ病 動悸 不眠症 不安 食欲減退 多汗症 女性 30 歳代 子宮内膜症 (*) 4mg/ 日 50 日 29 日目 投与 50 日目 発現 特にうつ病が著明である 消失 ため本剤中止 無処置 中止 6 日後 上記すべての症状消失 (*) 本剤の承認用量は 2mg/ 日です (2) 本剤は主に肝臓で代謝されるため 肝障害のある患者では代謝能の低下により本剤の血中濃度が上昇する可能性があることから設定しました 6
1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) つづき (3) 子宮筋腫又は子宮腺筋症のある患者 [ 出血症状の増悪のおそれがある ] ( 重要な基本的注意 の項 (4) 参照 ) 7
- 解説 - (3) 2009 年 1 月 9 日付の厚生労働省医薬食品局安全対策課 [ 事務連絡 ] に基づき記載しました 市販後において 重篤な不正出血の副作用 ( 平成 20 年 11 月末まで ) が 8 例集積され 患者背景として子宮筋腫 ( 粘膜下筋腫 ) のある患者が 2 例 子宮腺筋症のある患者が 7 例認められたことから 子宮筋腫 と 子宮腺筋症 を記載しました なお 承認時において 貧血の発現率は 子宮筋腫又は子宮腺筋症のある患者では ない患者に比べ高い傾向が認められている ことを既に 重要な基本的注意 の項 (4) に記載しています 子宮筋腫 ( 特に粘膜下筋腫 ) 子宮腺筋症の患者は 元々過多月経 * の場合があり 市販後において認められた 8 例においても 5 例は本剤投与前より過多月経又はその傾向がみられた症例であったことが報告されています 本剤の投与により出血症状が増悪するおそれがあるため慎重に投与して下さい ( 重要な基本的注意 の項 (4)(p.11) 及び 重大な副作用 の項 (p.17) を参照 ) *: 粘膜下筋腫は筋腫が充血したり 筋腫の発育につれ子宮内膜が引き伸ばされて薄くなったりして 出血しやすい状態になっているためと考えられています 参照 : 病気が見える vol. 9 婦人科 p116 また 子宮腺筋症では子宮の肥大により 子宮内膜表面積が増加し これが経血量の増加をもたらすと考えられています 参照 : 新女性医学大系 19 子宮内膜症 子宮腺筋症 p280 8
2. 重要な基本的注意 (1) 本剤の投与に際しては 類似疾患 ( 悪性腫瘍等 ) との鑑別に留意し 投与中に腫瘤が増大したり 臨床症状の改善がみられない場合は投与を中止すること (2) 卵巣チョコレート嚢胞は 頻度は低いものの自然経過において悪性化を示唆する報告があるので 定期的に画像診断や腫瘍マーカー等の検査を行い 患者の状態に十分注意すること (3) 本剤投与中は経過を十分に観察し 期待する効果が得られない場合には漫然と投与を継続せず 他の適切な治療を考慮すること 9
- 解説 - (1) 本剤の投与にあたっては子宮内膜症と診断することが前提となります 本剤を投与している期間中に卵巣癌等の発見が遅れ 増悪することのないように 本剤を投与する際に類似疾患との鑑別に留意する必要があります 本剤を投与している期間中に腫瘤が増大したり 臨床症状が改善しない場合には 類似疾患を有している可能性があるので注意が必要です 1) (2) 子宮内膜症取扱い規約には 卵巣のチョコレート嚢胞の悪性化について 1 卵巣のチョコレート嚢胞が卵巣癌の発生母地となっている可能性が注目されていること 2 卵巣癌検診の調査において卵巣のチョコレート嚢胞と診断された患者の 0.72% * (46/6,398 例 ) に卵巣癌が発見されていること 3 卵巣癌の合併率は年齢とともに高くなり また 嚢胞の大きい患者で高いことが報告されています したがって 卵巣癌の発生を見逃さないために 卵巣のチョコレート嚢胞を有する子宮内膜症患者では定期的に画像診断や腫瘍マーカー等の検査を行うことが必要と考えられます *: 卵巣のチョコレート嚢胞と診断されていない女性では 0.012%(7/57,165 例 ) に卵巣癌が発見されたと報告 2) されています (3) 本剤 (2mg/ 日 ) の有効性を評価した臨床試験 (4 試験 ) において 全般改善度の改善率は 66.7%~90.0% でしたが 少数例ながら悪化例も認められました また その中の長期投与試験において 効果は投与 52 週まで維持されましたが 一方で少数例ではあるものの 24 週時で悪化している症例では 52 週時でも効果不十分でした 以上のことから 本剤の効果が認められないにもかかわらず漫然と投与されることを防ぐために設定しました 10
2. 重要な基本的注意つづき (4) 本剤投与により不正出血がみられる その程度には個人差があり 投与中に出血が持続する場合もあるので 患者にはあらかじめ十分に説明し 出血量が多く持続日数が長い場合には 医師へ相談するよう指導すること このような患者には必要に応じて血液検査を実施し 貧血が認められた場合には鉄剤の投与又は本剤の投与中止等適切な処置を行うこと なお 貧血の発現率は 子宮筋腫又は子宮腺筋症のある患者では ない患者に比べ高い傾向が認められている 11
- 解説 - (4) 承認時までの臨床試験における不正出血の発現頻度は 60.6%(320/528 例 ) でしたが ほとんどが軽度又は中等度で 投与中止例は 1.5%(8/528 例 ) であり 重篤な副作用に該当するものはありませんでした 一方 投与中は不正出血が持続する場合もあり 不正出血に貧血 ( 赤血球数減少 ヘモグロビン減少 ヘマトクリット値減少を含む 以下 貧血と表記 ) を併発した症例が 4.0%(21/528 例 ) 認められました 貧血が認められた症例の多くは鉄剤が投与され いずれの症例も回復又は回復傾向が認められました 二重盲検比較試験及び長期投与試験において 出血の状況と貧血の発現率の関係を検討したところ 通常の月経程度 以上の出血が連続 8 日以上認められた症例では貧血の発現率が 18.2%(8/44 例 ) と高く それ以外の症例では 1.8% (4/220 例 ) でした これらのことから 出血量が多く持続日数が長い場合には貧血の発現に留意し 貧血の程度により鉄剤の投与又は本剤の投与中止等の止血処置を考慮すべきであると考え 設定しました なお 子宮筋腫又は子宮腺筋症を合併している症例の貧血の発現率は 9.3%(18/194 例 ) であり 合併していない症例の貧血の発現率 0.9%(3/334 例 ) に比べ高い傾向が認められました なお 止血処置として 臨床試験では抗プラスミン剤 ( トラネキサム酸 ) 血管強化 止血剤 ( カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム ) 子宮収縮止血剤( マレイン酸メチルエルゴメトリン ) 等の止血剤が使用されましたが その効果は明らかではありませんでした 一方 有効性の評価の観点から臨床試験では性ホルモン製剤の併用を禁止したため 不正出血に対する性ホルモン製剤の止血効果は確認されていません 参考 避妊目的でプロゲスチンを使用したときの不正出血に対して 海外ではエストロゲン エストロゲンとプロゲスチンの配合剤 NSAIDs 子宮収縮剤等が使用されており WHO 3) は本剤と同類のプロゲスチンである酢酸メドロキシプロゲステロン製剤の使用者において 長期間にわたる止血効果は認められないものの エチニルエストラジオールは短期間の止血には有効であったという試験成績を報告しています注 ) 注 ) 本剤の使用上の注意の [ 相互作用 ] の項に 併用注意 として卵胞ホルモン含有製剤の投与により本剤の治療効果が減弱する可能性があることを記載しています 12
2. 重要な基本的注意つづき (5) 本剤を長期投与する場合には以下の点に注意すること 1) 不正出血が持続的に認められている患者は 類似疾患 ( 悪性腫瘍等 ) に起因する出血との鑑別に留意し 定期的に画像診断等を行うなど 患者の状態に十分注意すること また 必要に応じ細胞診等の病理学的検査の実施を考慮すること 2) 本剤の 1 年を超える投与における有効性及び安全性は確立していないので 1 年を超える投与は治療上必要と判断される場合にのみ行い 定期的に臨床検査 ( 血液検査 骨塩量検査等 ) 等を行うなど 患者の状態に十分注意すること (6) 本剤の投与により更年期障害様のうつ症状を起こすことが報告されているので 本剤の使用に際しては患者の状態等を十分に観察すること 13
- 解説 - (5) 1) 本剤投与中は不正出血が持続的に認められる場合がありますが 長期間にわたる持続的な不正出血は子宮体癌等に起因する場合もあります 本剤投与後 このような出血が認められる場合には 定期的に超音波検査 CT 検査 MRI 検査等の画像診断を行うなど 出血が類似疾患 特に悪性腫瘍に起因するものでないことを確認する必要があります また 画像診断に加え必要に応じて細胞診等の病理学的検査を実施することにも考慮し 悪性腫瘍の発見が遅れないように注意することが重要です 2) 臨床試験では 52 週を超える投与における検討が行われていないことから 52 週 (1 年 ) を超えての投与は漫然と行うべきではないと考え設定しました なお 一般にエストロゲン低下作用を有する薬剤ではその作用の程度にもよりますが 投与期間の延長により累積的に骨塩量が減少するおそれがあります 本剤の二重盲検比較試験 (24 週間投与 ) では 骨塩量の減少は少なく 長期投与試験 (52 週間投与 ) においても累積的な減少は見られませんでしたが 本剤もエストロゲン低下作用を有することから 1 年を超えて投与するときに行われるべき臨床検査として一般的な血液検査の他に骨塩量検査を記載しました (6) 臨床試験においてうつ症状に関連する副作用が認められ その中で重度の症例も 1 例認められたことから設定しました ( 慎重投与 の項(1) 解説 (p.6) を参照 ) 14
3. 相互作用本剤は主として薬物代謝酵素 CYP3A4で代謝される ( 薬物動態 の項参照) 併用注意 ( 併用に注意すること ) 薬剤名等臨床症状 措置方法機序 危険因子 CYP3A4 阻害剤エリスロマイシンクラリスロマイシンアゾール系抗真菌剤イトラコナゾールフルコナゾール等 CYP3A4 誘導剤リファンピシンフェニトインフェノバルビタールカルバマゼピン等 卵胞ホルモン含有製剤エストラジオール誘導体エストリオール誘導体結合型エストロゲン製剤等 黄体ホルモン含有製剤プロゲステロン製剤メドロキシプロゲステロン酢酸エステル製剤ノルエチステロン製剤ジドロゲステロン製剤等 本剤の血中濃度が上昇するおそれがある ( 本剤とクラリスロマイシンの併用により 本剤の Cmax 及び AUC はそれぞれ単独投与時の 20% 及び 86% 増加した ) 本剤の血中濃度が低下することにより本剤の有効性が減弱するおそれがある 本剤の効果が減弱する可能性がある プロゲステロン作用が増強する可能性がある これらの薬剤が本剤の薬物代謝酵素である CYP3A4 を阻害することによると考えられる これらの薬剤が本剤の薬物代謝酵素である CYP3A4 を誘導することによると考えられる 子宮内膜症はエストロゲン依存性の疾患であることから 卵胞ホルモン含有製剤の投与により本剤の治療効果が減弱する可能性がある ともにプロゲステロン受容体に対するアゴニスト活性を示すことから プロゲステロン作用が相加的に増強する可能性がある 15
- 解説 - <CYP3A4 阻害剤 > in vitro 試験において 本剤は主として薬物代謝酵素 CYP3A4 により代謝され 4,5) エリスロマイシン クラリスロマイシン イトラコナゾール フルコナゾール等の CYP3A4 阻害剤が本剤の代謝を阻害することが確認されました 6,7) また 健康成人女性にクラリスロマイシン 200mg を 1 日 2 回 3 日間経口投与し 翌日 本剤 1mg とクラリスロマイシン 200mg を 1 回併用したとき 本剤の最高血漿中濃度 C max 及び血漿中濃度時間曲線下面積 AUC 0 - は本剤 1 mg 単独投与時に比し それぞれ 1.20 倍 1.86 倍に上昇しました 8) これらのことから CYP3A4 阻害剤との併用により本剤の血中濃度が上昇し 有害事象の発現頻度や重症度が高くなる可能性が否定できないことから設定しました <CYP3A4 誘導剤 > CYP3A4 で代謝される薬物の中には CYP3A4 誘導剤との併用により血中濃度が低下することが知られているものがあります 9) 主に CYP3A4 で代謝される本剤についても CYP3A4 誘導剤との併用により血中濃度が低下し本剤の作用が減弱する可能性が否定できないことから設定しました < 卵胞ホルモン含有製剤 > 子宮内膜症はエストロゲン依存性の疾患であり 卵胞ホルモン含有製剤との併用により本剤の治療効果が減弱する可能性があることから設定しました < 黄体ホルモン含有製剤 > 本剤と同様にプロゲステロン受容体に対するアゴニスト活性を示す黄体ホルモン含有製剤との併用により プロゲステロン作用が相加的に増強する可能性があることから設定しました 16
4. 副作用 総症例 528 例中 409 例 (77.5%) に副作用が認められている その主なものは不正出血 (60.6%) ほてり (16.3%) 頭痛 (13.6%) 悪心 (6.6%) 等であった ( 承認時 ) (1) 重大な副作用 1) 不正出血 貧血 ( 頻度不明 ) 本剤投与後に不正出血があらわれ 重度の貧血に至ることがある 出血量が多く持続日数が長い場合には 観察を十分に行い 必要に応じて血液検査を実施し 重度の貧血が認められた場合には本剤の投与中止等適切な処置を行うこと 17
- 解説 - 承認時までの臨床試験における副作用発現状況 ( 副作用発現頻度一覧は別紙 (p.29) 参照 ) に基づいて記載しました (1) 重大な副作用 1)2009 年 1 月 9 日付の厚生労働省医薬食品局安全対策課 [ 事務連絡 ] に基づき記載しました 承認時より不正出血及び貧血については 重要な基本的注意 (4) 及び その他の副作用 の項に記載し 注意喚起していましたが 市販後において重篤な不正出血の副作用が 8 例集積されたため 重大な副作用 の項を新設し 不正出血 を記載しました また 8 例の中には 重度の貧血 ( ヘモグロビン値が正常値から 8g/dL 未満へ低下 ) に至った症例も認められたことから 貧血 についても併せて記載しました 報告された 8 例はいずれも子宮筋腫 ( 粘膜下筋腫 ) 又は子宮腺筋症を有しており また本剤投与前より過多月経又はその傾向がみられ 本剤投与後に出血症状が増悪した症例も含まれていました ( 慎重投与 の項(3)(p.7) 及び 重要な基本的注意 の項 (4)(p.11) を参照 ) いずれの症例も本剤の投与を中止後に回復又は軽快しています 以下に重篤な不正出血及び重度の貧血が認められた症例の詳細を示します 性別年齢 使用理由 投与量投与期間 発現日経過転帰 本剤投与以前より 過多月経であり輸 血の既往あり リュープロレリンを半 年間投与 投与 5 日前 Hb 値 :13.0g/dL 投与 15 日目 少量の不正出血あり 投与 57 日目 Hb 値 :12.1g/dL 女性 40 歳代 子宮内膜症 子宮腺筋症 2mg/ 日 85 日 15 日目 投与 61 日目 月経より多い不正出血が持続 軽快 投与 85 日目 Hb 値 :5.4g/dL 本剤中止 し 鉄剤投与 中止 7 日後 MAP( 人赤血球濃厚液 )4 単位輸血 中止 14 日後 出血消失 Hb 値 :9.9g/dL 18
4. 副作用つづき (1) 重大な副作用 2) アナフィラキシー様症状 ( 頻度不明 ) アナフィラキシー様症状 ( 呼吸困難 血管浮腫 蕁麻疹 瘙痒感等 ) があらわれることがあるので このような症状があらわれた場合には投与を中止し 適切な処置を行うこと 19
- 解説 - 2)2010 年 8 月 10 日付の厚生労働省医薬食品局安全対策課 [ 事務連絡 ] に基づき記載しました 市販後においてアナフィラキシー様症状の副作用が集積されたため 重大な副作用 の項に アナフィラキシー様症状 を記載しました 併せて 禁忌 の項に 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 を記載しました 以下にアナフィラキシー様症状が認められた症例の詳細を示します 性別年齢 使用理由 ( アレルギー歴 ) 投与量投与期間 経過 転帰 10:00 10:15 本剤 1 錠を初めて内服 右眼瞼腫脹 発赤 呼吸困 難感が出現した 11:25 救急外来受診 喘鳴 (+) 11:30 酢酸リンゲル液 500mL 1 女性 30 歳代 子宮内膜症 ( 花粉症 アレ ルギー性鼻炎 ) 1 錠 ( 初回投与 ) ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム 300mg 1 生理食塩水 100mL 1 を点滴静注 軽快 12:00 点滴終了 13:00 右眼瞼腫脹も軽減 呼吸困難 症状の悪化もなく 軽快したた め 薬剤内服中止を指示し 帰宅可とした 20
4. 副作用つづき (2) その他の副作用以下のような副作用があらわれた場合には 症状に応じて適切な処置を行うこと 5% 以上 0.1~5% 未満 頻度不明 低エストロケ ン症状ほてり 頭痛 めまい 動悸 抑うつ 不安 不眠 発汗 子 宮 不正出血 腹痛 乳 房 乳房緊満感 乳房痛 乳汁分泌 皮 膚 痤瘡 外陰部かぶれ かゆみ注 1) 皮膚乾燥 脱毛 精神神経系 傾眠 いらいら感 しびれ 感 片頭痛 注 2) 過敏症 発疹等 肝 臓 γ-gtpの上昇 消化器 悪心 嘔吐 腹痛 胃部不快感 便秘 下痢 腹部膨満感 口内炎 血 液 貧血 白血球減少 筋骨格系 背部痛 肩こり 骨塩量低 下 関節痛 その他 倦怠感 疲労 体重増加 浮 腫 コレステロール上昇 発 熱 注 1) 不正出血の持続により このような症状があらわれることがある 注 2) このような症状があらわれた場合には投与を中止すること 21
- 解説 - (2) 承認時までの臨床試験における副作用発現状況 ( 副作用発現頻度一覧は別紙 (p.29) 参照 ) 及び市販後の自発報告に基づいて記載しました なお いらいら感 しびれ感 及び 片頭痛 ( 精神神経系 ) 嘔吐 及び 口内炎 ( 消化器 ) 腹痛 ( 子宮 ) については 報告が集積されたことから自主改訂により記載しました 22
5. 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 (1) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと [ 妊娠中の投与に関する安全性は確立していない また 動物実験 ( ラット ウサギ ) において 受胎阻害 胚死亡率の増加及び流産等が認められている ] (2) 授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること [ 動物実験 ( ラット ) において 乳汁中に移行することが報告されている ] 23
- 解説 - (1) ラット ( 経口 ) 及びウサギ ( 経口 ) を用いた生殖発生毒性試験において 催奇形作用は認められていませんが 親世代動物で受胎阻害 流産及び妊娠期間の延長 次世代動物で着床前及び着床後胚死亡率の増加 生殖能障害等が認められています 10-14) また 臨床試験では妊婦に対する使用経験はなく安全性は確立していません (2) 授乳期のラット ( 経口 ) において 本剤の乳汁中への移行が認められています 15) [ 参考 : 挙児を希望する患者における本剤投与終了後の妊娠に関する情報 ] 本剤投与終了後の妊娠については 海外で実施された 2 つの臨床試験において 以下の報告があります 1 年以上の不妊歴を有する子宮内膜症患者に本剤の 2mg/ 日を 6 ヵ月以上投与したとき 145 例中 20 例 (44.4%) が投与終了後から 22 ヵ月以内に妊娠しました 276 例中 23 例 (30.3%) が投与終了後から平均 8.4 ヵ月以内に妊娠しました 24
6. 小児等への投与 小児等に対する安全性は確立していない ( 使用経験がない ) 25
- 解説 - 臨床試験では 小児に対する使用経験がないため 安全性は確立されていません 26
7. 適用上の注意 薬剤交付時 PTP 包装の薬剤は PTP シートから取り出して服用するよう指導すること (PTP シートの誤飲により 硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し 更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている ) 27
- 解説 - PTP 包装の薬剤に共通の注意事項です 平成 8 年 3 月 27 日付の日薬連発第 240 号 PTP の誤飲対策について に基づき記載しました 28
別紙 副作用発現頻度一覧 副作用発現頻度一覧表 ( 承認時までの集計 ) 調査症例数 528 副作用発現症例数 409 副作用発現率 (%) 77.5 副作用の種類 発現例数 発現率 (%) 感染症および寄生虫症 10 1.9 腟カンジダ症 3 0.6 単純ヘルペス 2 0.4 腟感染 2 0.4 子宮頚管炎 1 0.2 毛包炎 1 0.2 真菌感染 1 0.2 胃腸炎 1 0.2 膿疱性皮疹 1 0.2 外陰部炎 1 0.2 良性 悪性および詳細不明の新生物 ( 嚢胞およびポリープを含む ) 2 0.4 乳房の良性新生物 1 0.2 子宮平滑筋腫 1 0.2 血液およびリンパ系障害 6 1.1 貧血 6 1.1 免疫系障害 1 0.2 季節性アレルギー 1 0.2 内分泌障害 1 0.2 亜急性甲状腺炎 1 0.2 代謝および栄養障害 8 1.5 食欲不振 3 0.6 食欲亢進 3 0.6 糖尿病 1 0.2 食欲減退 1 0.2 精神障害 23 4.4 うつ病 抑うつ 5 0.9 不安 4 0.8 不眠症 不眠 4 0.8 気力低下 3 0.6 リビドー減退 2 0.4 気分変動 2 0.4 精神障害 2 0.4 抑うつ気分 抑うつ 1 0.2 摂食障害 1 0.2 初期不眠症 不眠 1 0.2 副作用の分類名 副作用名は MedDRA/J(Ver.8.1) の器官別大分類 基本語を用いて表示 内の表記は 添付文書で使用している副作用名 29
別紙副作用発現頻度一覧つづき 精神障害 つづき 副作用の種類 発現例数発現率 (%) 神経症 1 0.2 睡眠障害 1 0.2 神経系障害 103 19.5 頭痛 72 13.6 浮動性めまい めまい 21 4.0 傾眠 11 2.1 感覚減退 3 0.6 片頭痛 3 0.6 体位性めまい めまい 2 0.4 自律神経失調 1 0.2 振戦 1 0.2 口の錯感覚 1 0.2 眼障害 3 0.6 結膜炎 1 0.2 眼乾燥 1 0.2 眼脂 1 0.2 耳および迷路障害 5 0.9 耳鳴 3 0.6 回転性めまい めまい 2 0.4 心臓障害 14 2.7 動悸 12 2.3 狭心症 1 0.2 心室性期外収縮 1 0.2 血管障害 87 16.5 ほてり 86 16.3 末梢冷感 1 0.2 呼吸器 胸郭および縦隔障害 8 1.5 鼻出血 5 0.9 発声障害 1 0.2 呼吸困難 1 0.2 鼻閉 1 0.2 アレルギー性鼻炎 1 0.2 胃腸障害 104 19.7 悪心 35 6.6 便秘 21 4.0 上腹部痛 15 2.8 胃不快感 胃部不快感 15 2.8 下腹部痛 14 2.7 下痢 12 2.3 腹部膨満 腹部膨満感 7 1.3 嘔吐 3 0.6 口内炎 2 0.4 副作用の分類名 副作用名は MedDRA/J(Ver.8.1) の器官別大分類 基本語を用いて表示 内の表記は 添付文書で使用している副作用名 30
別紙副作用発現頻度一覧つづき 胃腸障害 つづき 副作用の種類 発現例数発現率 (%) 腹部不快感 1 0.2 腹痛 1 0.2 アフタ性口内炎 1 0.2 口唇炎 1 0.2 消化不良 1 0.2 腸炎 1 0.2 胃炎 1 0.2 胃腸障害 1 0.2 歯肉出血 1 0.2 歯肉炎 1 0.2 痔核 1 0.2 腹膜炎 1 0.2 皮膚および皮下組織障害 61 11.6 ざ瘡 15 2.8 接触性皮膚炎 外陰部かぶれ 13 2.5 多汗症 発汗 5 0.9 蕁麻疹 5 0.9 面皰 痤瘡 4 0.8 湿疹 4 0.8 皮膚乾燥 3 0.6 そう痒症 3 0.6 脱毛症 脱毛 2 0.4 アレルギー性皮膚炎 外陰部かぶれ 2 0.4 寝汗 発汗 2 0.4 発疹 2 0.4 膿疱性ざ瘡 1 0.2 頭部粃糠疹 1 0.2 皮膚炎 1 0.2 紅斑 1 0.2 多毛症 1 0.2 丘疹 1 0.2 筋骨格系および結合組織障害 29 5.5 背部痛 17 3.2 筋骨格硬直 肩こり 6 1.1 関節痛 2 0.4 四肢痛 2 0.4 関節リウマチ 2 0.4 鼡径部痛 1 0.2 頚部痛 1 0.2 肩部痛 1 0.2 副作用の分類名 副作用名は MedDRA/J(Ver.8.1) の器官別大分類 基本語を用いて表示 内の表記は 添付文書で使用している副作用名 31
別紙副作用発現頻度一覧つづき 副作用の種類 発現例数発現率 (%) 腎および尿路障害 2 0.4 頻尿 2 0.4 尿閉 1 0.2 生殖系および乳房障害 337 63.8 不正子宮出血 不正出血 320 60.6 乳房不快感 乳房緊満感 25 4.7 月経過多 15 2.8 乳房痛 6 1.1 女性陰部そう痒症 外陰部かゆみ 6 1.1 子宮内膜症 5 0.9 乳汁漏出症 乳汁分泌 3 0.6 希発月経 3 0.6 性器分泌物 3 0.6 線維嚢胞性乳腺疾患 2 0.4 子宮肥大 2 0.4 乳房圧痛 1 0.2 子宮頚管ポリープ 1 0.2 子宮内膜増殖症 1 0.2 過少月経 1 0.2 不規則月経 1 0.2 乳頭痛 1 0.2 卵巣嚢胞 1 0.2 卵巣腫大 1 0.2 陰部そう痒症 外陰部かゆみ 1 0.2 子宮出血 1 0.2 外陰腟不快感 1 0.2 消退出血 1 0.2 子宮頚部出血 1 0.2 卵巣腫瘤 1 0.2 全身障害および投与局所様態 41 7.8 倦怠感 20 3.8 疲労 6 1.1 浮腫 6 1.1 末梢性浮腫 4 0.8 発熱 4 0.8 熱感 2 0.4 胸部不快感 1 0.2 胸痛 1 0.2 顔面浮腫 1 0.2 異常感 1 0.2 冷感 1 0.2 口渇 1 0.2 副作用の分類名 副作用名は MedDRA/J(Ver.8.1) の器官別大分類 基本語を用いて表示 内の表記は 添付文書で使用している副作用名 32
別紙副作用発現頻度一覧つづき 副作用の種類 発現例数発現率 (%) 臨床検査 103 19.5 体重増加 23 4.4 ヘモグロビン減少 19 3.6 ヘマトクリット減少 14 2.7 赤血球数減少 12 2.3 骨密度減少 骨塩量低下 11 2.1 活性化部分トロンボプラスチン時間延長 10 1.9 糖鎖抗原 125 増加 10 1.9 γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加 γ-gtpの上昇 9 1.7 体重減少 7 1.3 尿中 N-テロペプチド増加 6 1.1 アラニン アミノトランスフェラーゼ増加 5 0.9 血中コレステロール増加 コレステロール上昇 5 0.9 白血球数減少 白血球減少 5 0.9 血中フィブリノゲン増加 4 0.8 プロトロンビン時間延長 4 0.8 白血球数増加 4 0.8 尿中ピリジノリン増加 4 0.8 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 3 0.6 血中ビリルビン増加 3 0.6 血小板数増加 3 0.6 血中アルカリホスファターゼ減少 3 0.6 低比重リポ蛋白増加 2 0.4 血小板数減少 2 0.4 デオキシピリジノリン / クレアチニン比 2 0.4 血中コレステロール減少 1 0.2 血中コルチコトロピン増加 1 0.2 血中コルチゾール増加 1 0.2 血中クレアチニン増加 1 0.2 血中フィブリノゲン減少 1 0.2 血中乳酸脱水素酵素減少 1 0.2 血中乳酸脱水素酵素増加 1 0.2 血中カリウム増加 1 0.2 血中尿素減少 1 0.2 血中尿酸増加 1 0.2 体温上昇 1 0.2 尿中ブドウ糖陽性 1 0.2 ヘマトクリット増加 1 0.2 ヘモグロビン増加 1 0.2 高比重リポ蛋白減少 1 0.2 高比重リポ蛋白増加 1 0.2 眼圧上昇 1 0.2 低比重リポ蛋白減少 1 0.2 副作用の分類名 副作用名は MedDRA/J(Ver.8.1) の器官別大分類 基本語を用いて表示 内の表記は 添付文書で使用している副作用名 33
別紙副作用発現頻度一覧つづき 臨床検査 つづき 副作用の種類 発現例数発現率 (%) プラスミノーゲン増加 1 0.2 赤血球数増加 1 0.2 子宮頚部スミア異常 1 0.2 オステオカルシン増加 1 0.2 副作用の分類名 副作用名は MedDRA/J(Ver.8.1) の器官別大分類 基本語を用いて表示 内の表記は 添付文書で使用している副作用名 34
- 文献 - 1) 日本産科婦人科学会編. 子宮内膜症取扱い規約第 2 部治療編 診療編. 東京 : 金原出版.2004;p.81-82 2) 小林浩. 卵巣子宮内膜症の癌化に関する疫学調査 -17 年間の追跡調査による前方視的検討 -. 産婦人科の実際.2005;54(4):p.677-682 3) S. Said et al..clinical evaluation of the therapeutic effectiveness of ethinyl oestradiol and oestrone sulphate on prolonged bleeding in women using depot medroxyprogesterone acetate for contraception.human Reproduction.1996;Volume 11 Supplement 2: p.1-13 4) 持田製薬社内資料 ( 薬物動態試験 - 代謝に関与する CYP 分子種の検討 (1)-) 5) 持田製薬社内資料 ( 薬物動態試験 - 代謝に関与する CYP 分子種の検討 (2)-) 6) 持田製薬社内資料 ( 薬物動態試験 -ジエノゲストの代謝に対する他剤の影響(1)-) 7) 持田製薬社内資料 ( 薬物動態試験 -ジエノゲストの代謝に対する他剤の影響(2)-) 8) 持田製薬社内資料 ( 臨床薬物動態試験 -クラリスロマイシン併用の薬物相互作用 -) 9) 大森栄. 小腸 肝臓の薬物代謝過程 ( 誘導 ) における相互作用. 月刊薬事. 2000;42(4):p.939-946 10) 持田製薬社内資料 ( 毒性試験 -ラットにおける妊娠前投与試験-) 11) 持田製薬社内資料 ( 毒性試験 -ラットにおける妊娠初期投与試験-) 12) 持田製薬社内資料 ( 毒性試験 -ラットにおける胎児の器官形成期投与試験-) 13) 持田製薬社内資料 ( 毒性試験 -ウサギにおける胎児の器官形成期投与試験-) 14) 持田製薬社内資料 ( 毒性試験 -ラットにおける周産期および授乳期投与試験-) 15) 持田製薬社内資料 ( 薬物動態試験 - 乳汁移行性の検討 -) 35
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Drug Information f d a α