青色申告のメリットとは? 1. 青色申告の特徴 (1) 青色申告制度の概要青色申告という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか 日本のおける所得税は 法人税 消費税等と同様に 税金を負担する人が自ら税法にのっとって所得と税額を正しく計算し納税すると言う 申告納税制度 をとっています 国 都府県 区市町村の税務署 県税事務所等はその納税者が計算した申告をもとに最終的な税額を確定しています 1 年間の所得を正しく計算し 申告するためには 収入金額や必要経費に関する取引を日々記録し また一方で 取引に伴って作成したり受け取ったりした資料を保存しておく必要があります 正しく 質の高い記録 ( 様々な種類がありますが総称として帳簿といいます ) は正しい申告には欠かせません 正しい申告がなされれば 結果として 税務署等のチェック等の事務手間が大幅に省けることになります 従って 一定水準以上の記帳 ( 帳簿に記録することをいいます ) や関係書類を一定期間保存している納税者には様々な特典が与えられることになっています この制度のことを青色申告制度と言います 通常の申告を白色申告といいます 事業を行っている人にとって 事業の経営内容把握は 事業を伸ばすために必要なことです 経営内容把握の第一歩は帳簿をつけることに始まります 青色申告を行うことは事務手間は増えますが 税務上のメリットにも増して 自分の事業を客観的に見るために必要なことです 税務 会計まめ知識 税務署の 署 はどうして 所 ではないかご存知ですか? 署という文字の上についている 罒 はアミガシラといって鳥や魚をとる網をあらわしています そして この下に 者 をつけると署になって 網を仕掛けるために人を配置する という意味になるのだそうです 署がつく役所は他に警察署 消防署 労働基準監督署があります 法律で強い権限が認められている強面の役所が多いようです
( 2 ) 青色申告をするためには青色申告をすることが出来る人は 事業所得 不動産所得 ( 不動産等の貸付から生じる所得をいいます ) 山林所得( 山林の伐採 立木の譲渡から生じる所得をいいます ) のある人です まず 青色申告をする人は青色申告承認申請書を税務署長に申請し 承認を受ける必要があります 青色申告の承認を受けた人は その人の全ての申告が青色申告となります つまり 事業所得と不動産所得がある人が事業所得だけを青色申告するということは出来ません 次に 青色申告者は原則として帳簿を備えて日々の取引を正確に記録 ( 記帳 ) しなければなりません 青色申告が出来る記録 ( 記帳 ) の方法には以下の三つがありますが それぞれ特典 ( 青色申告特別控除 - 後述 ) に違いがあります (a) 複式簿記取引の全てを仕訳帳で仕訳し その結果を総勘定元帳に転記し 期末に総勘定の記録を基にして 貸借対照表 損益計算書を作成する方法をいいます ( 詳細は7 章を参照してください ) (b) 簡易帳簿取引について 現金出納帳 ( 家計簿やこずかい帳みたいなものです ) を中心に売掛帳 買掛帳 経費帳及び固定資産台帳に記録を行い 損益計算書 貸借対照表を作成する方法を言います (c) 現金式簡易帳簿現金出納帳に経費欄を一行加えた方式のもの一冊だけを記録すればそれで足ります 今は簡単な会計ソフトもありますし 控除額が多い複式簿記による方法を選択することをお勧めします 最後に 青色申告を行う要件として 申告にかかわる帳簿書類を原則 7 年間保管 ( 一部の書類は 5 年間 ) する必要があります 2. 青色申告と白色申告の違い青色申告と白色申告の違いは 2つの点にあります 1つは 上記で述べましたように記帳する手間が増えると言うことです もうひとつは 青色申告には白色申告に認められていない恩典が数多く認められているということです しかしながら 第一の点に関しては 白色申告者でも事業所得等の金額が 300 万円を超えてしまったときは記帳義務が生じますので 大きな違いは第二の点にあると言えます
( 1 ) 青色申告の主な特典 青色申告の特典は 40 以上あります 主なものは以下のとおりです 個別項目の説明は後述いたしますので概略をここではつかんでください 特典事項 青色申告 白色申告 青色申告 帳簿の記帳方法により 55 万円 適用はありません 特別控除 45 万円 10 万円の控除が受けられます 専従者給与 原則として全額経費算入できます 配偶者の専従者年間 1 人について 86 万円 その他専従者については 50 万円のみが損金算入できます 純損失の 翌年以降 3 年間の繰越控除が出 原則 出来ません 繰越控除 来ます 引当金の 貸倒引当金等の引当金を必要経 適用がありません 経費算入 費に算入できます その他 特別償却 税額控除の適用があります 適用がありません 以下主な項目について詳しく述べてゆきます (2) 青色申告特別控除青色申告特別控除とは 青色申告者の事業所得 不動産所得等からその所得金額を上限として一定金額を所得金額から控除できる制度のことをいいます 青色申告特別控除には 55 万円控除 45 万円控除 10 万円控除の三種類のものがあります 55 万円控除とは 事業所得者及び事業的規模の不動産所得者が申告期限内 (3 月 15 日 )... までに 複式簿記によって記帳し 作成した損益計算書及び貸借対照表を申告書に添付して提出した場合に最大 55 万円 ( いいかえれば 不動産所得及び事業所得の合計額が 55 万円以下のときはその合計額を上限とするということです ) の控除を受けられる制度です 45 万円控除とは 要件は殆ど 55 万円特別控除と代わらないのですが 複式簿記ではな... く簡易簿記によって記帳し 作成した貸借対照表を申告書に添付したときに最大 45 万円の控除を受けられるという制度です 最後に 青色申告者で 55 万円控除又は 45 万円控除の適用がないときには最大 10 万円の控除が受けられる 10 万円控除が適用されます (3) 青色専従者給与 事業者が一緒に生活をしている妻等の親族に対して支払う事業に従事した対価としての 給与は 原則 必要経費とはなりません 当然のことながらこの場合 親族に対して支払 った給与所得等は課税されることもありません 事業者が青色申告を行っているときは 青色専従者給与に関する届出書 に記載の範囲
で かつ 労働の対価として適正な金額であれば事業の必要経費には算入できるという制 度を青色申告専従者給与と言います この場合には その給与所得を支払った親族に課税 がなされることになります 青色申告特別控除と専従者給与を加味したときの青色申告と白色申告の比較 [ 前提 ] (a) 事業所得の総収入は6,000 万円で事業所得以外の所得は無い (b) 必要経費は3,600 万円とする (C) 配偶者控除以外の控除は150 万円とする (d) 青色専従者給与は400 万円とする (e) 青色特別控除は55 万円とする (f) 所得税額に定率減税は考慮しない ( 単位 : 万円 ) ケースⅠ ケースⅡ ケースⅢ 白色申告 青色申告 白色申告専従者給与を適用 青色申告専従者給与を適用しない 青色申告専従者給与を適用 夫 総収入金額 1 6,000 6,000 6,000 専従者給与 86 400 その他諸経費 3,600 3,600 3,600 必要経費合計 2 3,686 3,600 4,000 青色申告特別控除 3 55 55 総所得金額 (4=1-2-3 2,314 2,345 1,945 配偶者控除 38 その他所得控除 150 150 150 所得控除合計 5 150 188 150 課税所得金額 (6=4-5) 2,164 2,157 1,795 所得税額 7 552 549 416 妻 給与収入 86 400 課税所得金額 0 228 所得税額 8 0 23 合計所得税額 (7+8) 552 549 439 ( 4 ) 純損失の繰越控除純損失の繰越控除の制度とは 純損失が出たとき翌年以降 3 年間にわたり繰り越す制度のことをいいます この制度は青色申告者にしか認められていません 白色申告者の場合 災害にあって事業用資産が損害を受けた等の特別な事情が無い限り純損失の繰越控除の適用はありません 従って 原則として 白色申告者には純損失の繰越控除は認められないと考えていいでしょう 言葉で説明してもぴんと来ないでしょうから 下記設例でその差を理解してください
純損失の繰越控除有無による所得税額の相違 [ 前提 ] (a)x1 年に純損失 2,000 万円発生 (b)x2~x3 の課税所得金額は毎年 700 万円 繰越控除の適用が無いとき ( 単位 : 万円 ) X1 X2 X3 X4 合計 課税所得金額 2,000 700 700 700 所得税額 0 107 107 107 321 繰越控除の適用があるとき 繰越控除適用前の課税所得金額 X1 X2 X3 X4 合計 2,000 700 700 700 600 純損失の繰越 700 控除適用 700 課税所得金額 0 0 0 100 所得税額 0 0 0 10 10 ( 5) 青色申告のその他の特典白色申告と青色申告を比べたときのその他の税金の優遇措置は以下のとおりです 1 引当金の計上引当金とは 見積りによって経費算入されるもののことをいいます 原則 税務では見積りによる経費計上は認められていません なぜなら 見積りによる経費計上を無制限に認めるならば税金の金額を恣意的に減らすことが出来てしまうからです 従って 白色申告者の場合は原則にしたがって引当金の経費算入は認められていません 一方 青色申告者の場合には一定の計算によって計算された貸倒引当金等を経費に算入することが出来ます 2 様々な税額控除 特別償却の適用税額控除の税度とは 事業育成等の政策的観点から試験研究費が一定の条件を充たしたとき 或いは 一定条件を充たした設備投資を実施したときに 一定の計算によった金額の税金を減らすという制度をいいます その効果は単純に支払い税金が減ると言うことです 特別償却も同様の政策的観点から 一定の設備投資に関してその投資額を早期に償却することを認める制度です 固定資産は長い期間使用します 従って その取得額はその使用期間に渡って経費化されることになり このことを減価償却といいます 税務ではその使用期間はその設備毎に詳細に決められています 特別償却はその通常の減価償却 +αの償却を認める制度です その効果は 固定資産の早期経費化であり 課税の繰延が可能となります
ワンポイント 青色申告者になるときにまとめてやると便利な税務署への申請は以下のとおりです 1 青色申告承認申請書 承認を受けようとする年の 3 月 15 日までに提出する必要があります 但し その年の 1 月 16 日以降に開業したときには業務開始の日から 2 ヶ月以内に提出します 2 青色専従者給与に関する届出書 青色専従者給与の経費算入の特例を受けるために必要です 提出期限は 1に同じです 3 給与支払事業所等の開設届出書 青色専従者を含めた従業員に給与を支払うときに届け出る必要があります ( 但し 源泉徴収するほど支払わないときは必要ありません ) 提出していなければ同時に提出するのが良いでしょう 4 源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書 給与から源泉徴収した税金を 1 月 10 日 7 月 10 日の2 回払えばいいことから手間が省けますし 資金繰りも楽になりますので届け出ましょう 独立開業の場合には以下の申請もあわせて行うと良いでしょう 5 個人事業の開業届出書 また 従業員を採用したときには労働保険や社会保険の届出もお忘れなく!