02 第 2 章給与と税金 社会保険 給与明細をもとに社会制度をひもとく 本講での学習のゴール ( 講義後に学生は以下の事項ができるようになっている ) 自分の所得の内容について 給与明細書 や 源泉徴収票 を通して把握できる 所得税の計算方法について理解できる 税金 社会保険と自分の生活との関わりについて考えることができる 学習の狙い就職をして給与明細を手にすると手取り額 つまり自分の預金口座へ振り込まれる額と支給額の違いに驚く人も多いだろう 社会人経験が長くても 差し引かれている項目や計算方法について知らないままという人が意外に多い この差し引かれる項目である税金と社会保険について理解すると共に これらの費用が自分の将来にも大きく関係することを学ぶ この章の概要 給与明細書 や 源泉徴収票 の具体例を通して それらの見方と自分の所得の把握の仕方を学ぶ 給与から差し引かれる項目である税金と社会保険の意味と役割について理解する 所得税の簡単な計算問題を解くことによって 所得税の仕組みを理解する 最後に税金 社会保険と自分の生活との関わりについて 自分なりに考えをまとめる 給与明細書を見てみよう 11
[Case 2-1] 横浜さんは 首尾良く就職できて昨年 4 月から新社会人となり仕事をしている 学生の時よりは自由な時間は減ったが 毎月 まとまった給与がもらえて 学生の時よりはるかに自分の自由になるお金を得ることができた しかし給与明細を見ると 支給額は 215,000 円のはずなのに 実際の手取額は 127,895 円である 一体何が差し引かれているのだろう? [Case 2-2] 私たちの納めた税金は 具体的に何に使われているか いろいろとあげてみよう 日本の社会保険には何があるかあげて それぞれ私たちの生活とどのような関係があるか説明してみよう キー概念 所得 給与明細書 源泉徴収票 社会保険 社会保障 税 ( 特に所得税 ) 確定申告 キー概念解説 Quiz: 正答を一つ選びなさい 1. 給与の支給額合計と手取額の関係は 1 手取額は 支給額合計から貯蓄に回す額を差し引いた金額 2 支給額合計は 手取額から貯蓄に回す額を差し引いた金額 3 支給額合計は 手取額から各種の控除を差し引いた金額 4 手取額は 支給額合計から各種の控除を差し引いた金額 2. 松本さんは正社員としてある会社で働いている 誰が松本さんの健康保険料や雇用保険料を負担しているか 1 松本さんだけ 2 松本さんの雇用主だけ 3 松本さんと松本さんの雇用主 4 政府 解説 給与明細書 の見方 Question: 私たちの納めた税金は 具体的に何に使われているか いろいろとあげてみよう 12
まとめ : 財政の 3 つの機能 ( )( )( ) Question: 日本の社会保険には何があるかあげてみよう ( 保険 )( 保険 )( 保険 )( 保険 )( 保険 ) 所得 ( 個人所得 ) と収入 : 個人収入には 賃金 個人事業主収入 個人の賃貸収入 配当 利子 年金等の移転収入 その他を含む 私たちが日常生活を営むうえでの 経済的な基盤となるものである 個人収入から必要経費を引いたものを税法で 所得という また個人収入から所得税や社会保険料を差し引いたものを可処分所得という 可処分所得は 消費と貯蓄に回される 給与明細書 源泉徴収票 : 給与明細書は 図 給与支給明細書 を参照 毎月 給与支給日に渡される 総支給額 ( 額面 ) と そこから天引きされる社会保険料 ( 健康保険 年金保険 雇用保険等 ) 税金 ( 所得税 住民税 ) と実際の手取額 ( 振込額 ) が示されている 給与所得の源泉徴収票は 図 平成 年分給与所得の源泉徴収票 を参照 全国共通の書式になっている 1 月 1 日から 12 月 31 日までの 1 年分の給与の総額と年末調整に確定した各種控除の額などが示されている 特に確定申告の際などに使われる 源泉徴収票の主な項目 1 支払金額 : 1 年間の給料と賞与の合計額 いわゆる年収 2 給与所得控除後の金額 : 1から給与所得控除を引いた金額 給与所得控除は 必要経費 にあたるもの 会社員の場合は 給与等の収入金額に応じて一定の式で算出する 3 所得控除の額の合計額 : 2から引かれる社会保険料控除 基礎控除 ( 本人の控除分 ) 扶養控除 生命保険料控除などの合計額 4 源泉徴収税額 : 2から3を引いた額を課税所得と言い 課税所得に税率をかけて所得税の源泉徴収税額を算出する 下の計算問題を参照 社会保険 : 国が法律に基づいて運営する保険 強制加入と保険料の強制徴収が原則 保険なので 保険料を払い 必要な時に給付を受けるのが原則 日本では国民皆保険制度をとっている 具体的なものは上の Question であげた 社会保障 : 国民の生存権を保障するための制度 政策 社会保障には 社会保険 公的扶助 社会福祉 公衆衛生がある 日本の社会保障は 自助を基本とした上で 共助が補完し 自助 共助では対応できない困窮に対して公助を行う 13
自助 : 自分で働き自分の生活を自分で支え 自分の健康は自分で維持する 共助 : お互いに助け合う 病気やけが 死亡などのリスクについて 保険などで助け合う ( 保険金を出し合って リスクにあった人が受け取る ) 公助 : 自助や共助では対応できない困窮の状況に対して国が援助を行う 例 ( ) 税 ( 特に所得税 ): 国の財政活動のために納めるお金 所得税は 個人の年間所得の総額に応じて課される 給与の場合 毎月 天引きされて納められる所得税は 年末に過不足が調整され 払いすぎていた分は還付される ( 年末調整 と呼ばれる) 確定申告 : サラリーマンで給与から所得税等が自動的に天引きされている場合 特に所得税の申告は必要ない しかし 例えば 2 カ所以上から給与を支給されたり 給与以外の所得があったりした場合は 税務署に確定申告が必要になる 時期は 毎年 2 月 16 日から 3 月 15 日まで また 本人と生計を同じにする配偶者 親族のために支払った医療費 (1 月 1 日から 12 月 31 日まで ) がある場合 翌年の 3 月 15 日までに確定申告をすると税金が戻ってくること ( 還付 ) がある 源泉徴収票と医療費の明細書を税務署に提出する ( 支払った医療費の合計額が概ね 10 万円以上の場合 ただし詳細は国税庁 HP などを参照 ) 14
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源泉徴収票を見てみよう [Work 2-1] 2 人で協力して挑戦してください (1) 源泉徴収票 ( 図 : 別紙 ) を見て 支払い金額 給与所得控除後の金額 所得控除の額の合計額 源泉徴収税額 の関係をつかもう (2) 所得税額表を見て 次の人の源泉徴収税額の計算をしてみよう 1 ( 給与の ) 支払い金額が 500 万円の大野君下の表の空欄に数字を入れよう (1の D~H) 2 ( 給与の ) 支払い金額が 900 万円の二宮君下の表の空欄に数字を入れよう (2の D~H) 3 ( 給与の ) 支払い金額が 1,300 万円の櫻井君下の表の空欄に数字を入れよう (3の D~H) (3) 累進課税とは? 支払金額 給与所得控 所得控除の 課税所得金 税率 控除 源泉徴 実 際 除後の金額 額の合計額 額 額 収税額 の 税 負 担 率 (%) 例 5,725,000 4,039,200 2,246,520 1,792,000 5% 0 円 89,600 A B C D E F G H 注 B-C 下の 下の D E- G/A 千円未満切り捨て 表から 表から F 100 1 5,000,000 3,460,000 820,000 2 9,000,000 6,900,000 900,000 3 13,000,000 10,650,000 650,000 16
税額の計算 所得税額表 ( 平成 27 年分以降 ) 課税される所得金額税率控除額 195 万円以下 5% 0 円 195 万円を超え 330 万円以下 10% 97,500 円 330 万円を超え 695 万円以下 20% 427,500 円 695 万円を超え 900 万円以下 23% 636,000 円 900 万円を超え 1,800 万円以下 33% 1,536,000 円 1,800 万円を超え 4.000 万円以下 40% 2,796,000 円 4,000 万円超 45% 4,796,000 円 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に発生した所得税に 復興特別所得税が加算されることになった その税額は 全ての所得に対する所得税額 2.1% となる 所得の 2.1% ではなく 所得税額の 2.1% であることに留意しよう 17
[Work 2-2] 1 社会保険や税金と自分のこれからの生活 について本講で印象に残ったことを簡単にメモしてグループ内で発表しよう 自分が疑問や不安に思っていることを書いてもよい 2 社会保険や税金と自分のこれからの生活 について 今後 知りたいことや学びたいことなどを考えてメモしてグループ内で発表しよう 漠然とした疑問や不安でもいいので それらを課題として 本当はどうなっているのか これからの Session の中で自分の課題として追究しよう 1 メモ 2 メモ 18
Student ID: 名前 : 提出期限月日 [Homework-2-1] 自分または自分の家族の健康保険と年金保険の両方について調べよう 1どういう種類の健康保険と年金保険か 2それらの保険の加入者はどのような人か 3 健康保険か年金保険について 今何が問題になっているのか あるいは いままでどのようなことが問題になっただろうか 文献や資料などを参考にして 400 字程度で簡単にまとめてみよう 最後に必ず参考文献や資料を明記すること 19