ʼ18. 10 2 日本における人材の不足 グローバル化 激変の日本企業 この時代の課題を解決し 生き残り そして成長を実現するために 整備事業を含む自動車関連会社は外国人の活用にもっと真剣に目を向ける時期にきた 100万人を超える外国人材に依存する日本日本で働く外国人労働者の数が 2016年10 月に初めて100万人を超えて108万人に達した さらに2017年10 月には約128万人 1年間で約20 万人の外国人労働者が増えたことになる 日本で働く外国人労働者の内訳は 大きく4つに区分される在留資格となる 全体の35 9%を占める1番多い在留資格は 日本に永住する外国人(日系人)や 日本人の配偶者をもつ外国人等 身分に基づく在留資格 だ 彼らは労働活動の制限はない 2番目に多いのが 資格外活動 と呼ばれる いわゆる留学生のアルバイトだ 彼らを労働者として数えること自体どうかと思うが コンビニエンスストアや居酒屋チェーン店などを見てもらえば判るように 最も身近な外国人労働者として我々の周りに存在している 留学を目的に日本に来ている外国人のはずだが 最近では就労目的で来日する出稼ぎ留学生が増え続けている 留学生は1週間に就労できるのが28 時間以内と 図 1 在留資格別外国人労働者の割合
3 自動車販売 18. 10 特集外国人整備人材の可能性されているが 不法でそれ以上働くケースも増えている 留学生と同じ規模で大きな割合を占めているのが 技能実習 だ 就労時間に制限がある留学生に比べて この技能実習ではフルタイムで働くことができ 残業も認められている しかしながら 本質的にはこの前述の資格外活動と技能実習は就労ではないことを強調しておきたい だが この2つは前年比の伸び幅が多く また全体の4割以上を占めている 技能実習制度の目的は 開発途上国などにおいて経済発展 産業復興を担って行く人材が 日本の技能 技術 知識を習得するために設立された制度である つまり彼らはあくまで研修生であって 労働者として日本に来ている訳ではない 但し 日本では人材不足解消のための労働力を研修生という名を活用して受け入れてきたのが実態だ 技能実習制度は少し複雑なので後で詳細を改めてご紹介したい このように 資格外活動 技能実習は労働者として受け入れられていないが 現在の人手不足に悩む日本では不可欠な労働力となっている 最後の18 6%は 専門的 技術的分野で在留許可を持って働く外国人の累計だ 彼らは4区分の在留資格の中で唯一 労働者の資格を法的に認められ 日本で働いている人たちということになる いわゆる高度外国人材が対象となり ポイント制によって高度専門職と認められる外国人や 企業の経営 管理者 企業内勤者 教授 医師 スポーツ選手等が含まれる この資格の中で7割以上が技術 人文知識 国際業務の分野に該当し 後述する スカイブルー人材 となる外国人だ 100万人を超える外国人はどのような職種 そしてそのような規模の会社で働いているのだろう その割合を見てみると 最も多いのが製造業22 2%だ 殆どが技能実習生だ 製造業についで多いのが コンビニやスーパーなどを含む 卸売業 小売業 で17 1% そして 宿泊業 飲食サービス業 (14 3%)と続いている サービス業 (他に分類されないもの)というのは 労働派遣業やビルメンテナンス業などが含まれる さらに外国人労働者が働く就業先企業の従業員数のデータを見ると 30 人未満の会社が57 5%と最も多い これは外国人労働者は既に大企業だけのものではなく 中小企業でも働いているということだ いや むしろ激動する経営環境の中で人材問題に悩む中小企業は既に外国人材に頼らなくてはいけない状況になっている そして誤解を恐れずに言えば 日本経済は既に外国人労働力がいなければ成り立たない構造なっている このことをしっかりと日本人は理解をすべきであろう 図 2 日本で働く外国人労働者の業種
自動車販売 18. 10 4 求められる外国人整備人材日本における認定工場としての自動車整備会社は約9万2000社である 日整連の自動車整備白書によると 約5割の整備事業会社で整備士が不足しており 約1割の事業者が既に運営に支障が出ている 整備士を採用できなかったと答えた割合が 整備専業会社では約4割 ディーラーの1割に比べて非常に大きな差がある 特に専業の整備会社では人手不足は深刻な課題だ 特に自動車整備会社は 中小零細が多く従業員数10 人以下の企業が約8割を占める 大規模な採用活動などが困難な状況という問題もある 少子化や若者の車離れの進展などにより 自動車整備士を目指す若者が10 年間で半減した さらに 整備士の高齢化が進展しており(平均年齢43 8歳で 約2割が55 歳以上) 近い将来車社会の安全 安心に直結する自動車整備を支える人材不足がさらに顕在化することになる 独自に行った自動車整備会社の経営者へのアンケートでも 整備の外国人技能実習生について検討している 自社の課題として整備人材の採用は課題であり その解決の一助が海外からの人材の受け入れにある可能性を感じている 外国人を受け入れたいが マネジメントやコミュニケーションがきちんとできるか不安というのが外国人雇用における大きな壁となっている などの声が出ている 外国籍の人材が整備事業を含む自動車関連業界で活躍していくために求められていることは何なのか これからは 外国人整備人材の可能性をもっと広く捉えて考えていくことが重要だ さらに日本の外国人を受け入れる企業が自ら それぞれの制度や仕組みを理解し 採用から育成 定着に向けた対応をしていくことが必要となるだろう 整備士候補市場として有望なアセアン我々 アセアンカービジネスキャリアでは 整備士不足と言う課題を抱える自動車業界を舞台に アセアン諸国からの外国人整備人材の招致を提案している 日本の自動車市場は既に飽和状態となっている そのような中において 日本の整備士人口が増えていくかというと 若者の車離れなどから 整備士不足は深刻な社会課題となる 日本の整備士の数は約32 万人 日本の自動車保有台数は6 7千万台で 1人の整備士が安全を担保する台数は単純計算すると約200台 これを世界で保有されている日本車の台数というところまで視野を広げると この数はさらに大きくなる 継続的に日本の自動車産業が成長していくためには 海外が重要な市場となり整備人材が鍵となる 日本の自動車産業が海外進出する際の強みの1つが 安全性 だ 整備士の人材不足が進出を遅らせるだろう さらに 成長市場であるアセアンにフォーカスすると 同エリアの経済状況などから整備業務を担う人材に日本と同等の賃金を払うのは困難であり 現地の人材に担ってもらうのが唯一といってもよい方策と言える アセアンの整備人材は 将来のアセアンの自動車市場の活性化に向けて大きな意義を持つ可能性が高い なぜなら アセアンにおける自動車市場は急成長を続けている アセアンにおける日本車メーカーの自動車シェアは8割を超え 各日本車メーカーは獲得すべき巨大な市場と
5 自動車販売 18. 10 特集外国人整備人材の可能性して捉えている しかも アセアン諸国では 自動車産業が拡大していた頃の日本がそうだったように 車を所有している 車を修理できる 人が憧れであり 整備士を目指したい潜在層の規模は大きい こうした状況から アセアンの整備士候補者たちに日本における就労及び実地教育の機会を提供していくことに大きな意義があると考えている 外国人整備人材 3つの受け入れ方法整備職種として 外国人を受け入れるには大きく3つの方法がある 1つ目の受け入れ方法は外国人の 技能実習 の制度を活用することだ 技能実習制度の研修ビザの形で 技能 技術 知識を習得するため ある一定期間の整備工場で研修(労働)を行える 2つ目3つ目の受け入れ方法は共に 前述の4区分の在留資格の中で唯一 労働者の資格を法的に認められた就労ビザを取得する方法となる 誤解を恐れずに違いを言えば 元留学生として日本に来ていたか否か ということになる つまり大きくは 就業系と研修系に別れることになり 違いを図に記載してみた 学歴で言えば 就業系は大学卒業若しくは専門学校卒業(日本の専門学校に限る)となり 技能実習は一般的に高校卒業程度となる ビザの種類は 就業ビザと研修ビザという違いがある 受け入れ人数 期間に制限がない就業系に比べて 研修系は制限がある 話を戻すと 2つ目の受け入れ方法による外国人整備人材は 一般的に日本へ留学し最初 日本語学校に通う 日本語学校を卒業した後 日本で自動車専門学校に入学し自動車整備関連の技術を学んだ学生となる 3つ目の受け入れ方法による外国人整備人材は アセアンの各国の理工系大学図 3 日本の自動車保有台数推移図 4 就業系 ( スカイブルー / 元留学生 ) と研修系 ( 技能実習 ) の違い
自動車販売 18. 10 6 (自動車学部 機械学部 工学部など)を卒業し 自国で日本語を学んだエンジニアとなる 雇用前は日本にはいないため 日本にある受け入れ企業との雇用が確認できた後に 就労ビザの申請を行う 就労ビザが取得できた後 日本へ入国し就業開始となる 彼らのことを スカイブルー と称し 今後の日本の整備業界で活躍する外国人整備人材の中でも重要なエリート外国人だと考えている 色々な受け入れ方法を紹介してきたが 在留資格別に 業務の専門性 と 日本への定着度合い を整理してみたのが下の(図5)だ 1つ目の受け入れ方法である 技能実習 は 専門性は低く 定着性も低い 2つ目と3つ目の元留学生 スカイブルーは 一般的に専門性 定着性は高い 一点 補足をすれば 図5に記載されている留学生とは多くは日本語学校で学びアルバイトを行う外国人をイメージしている 外国人技能実習制度(自動車整備職種)国内で自動車整備人材の不足が深刻化する中 外国人人材の雇用を検討する中小企業が出てきている 特に外国人技能実習生の受け入れが整備会社を中心に広まっている 2017年の年末頃から ベトナムやフィリピンからの技能実習生が自動車整備の研修生として日本の自動車整備会社で働き始めた 技能実習制度とは 発展途上国の外国人を日本で一定期間受け入れてOJTを通じて技術や技能 知識の移転を図る制度である その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので 日本の国際協力の重要な一翼を担っている 現地の送り出し機関(仲介業者)を通じて 地域や業種など組合単位で受け入れた実習生を 各企業に送るシステムとなっている 制度の概要を簡単に説明する 技能実習生を受け入れる方式には2つのタイプがある 1つは実習を行う企業が 海外(送り出し国)の企業や支店から直接スタッフを受け入れる 企業単独型 で 実習生の人数を多く確保したい大企業などは直接受け入れを進めている もう1つが 団体監理型 と言って 実習先(日本の受け入れ企業)が農家や 縫製工場 整備工場と言った規模の小さな事業所の場合だ 現地の送り出し機関(仲介業者)を通じて 地域や業種など組合単位で受け入れた実習生を 各事業所に割り振る形式だ 現在 自動車整備会社で一般的に活用されているのは後者である そのため 今回説明するのも後者である 2016年4月1日より外国人技能実習生制度において 自動車整備 が職種に追加された これによって外国人技能実習生が自動車整備の研修生として日本図 5 在留資格別の 専門性 と 定着性
7 自動車販売 18. 10 特集外国人整備人材の可能性企業で働くことができるようになった 現在 ベトナムやフィリピン カンボジアなどから20 代の若い人材を中心に 約350名(含入国予定)が日本全国の自動車整備会社で働いていると言われている 入国管理局の許可が下りて来日すると 一般的には日本で1か月ほどの講習を受ける その後 実習先に派遣され働くことになる 滞在期間のうち 決められた時期に技能検定を受けて在留資格を更新し 最大5年(2017年11 月の新制度実施に伴い)滞在できる仕組みだ 優良な団体や企業を認定し 今まで3年だった研修期間を最長5年間へ延長 受け入れ人数枠の拡大も進めていくことで今後の活用メリットは広がりそうだ (次号に続く) 川崎大輔プロフィール 1975 年生まれ経済学修士 MBA( 経営学修士 ) 京都大学大学院経済学研究科東アジア経済研究センター外部研究員 香港の会社に就職後 アジア各国に 10 年以上駐在し帰国 大手中古車会社にて日系自動車関連企業のアジア進出をサポート アセアンの人材ソリューション事業を行うアセアンカービジネスキャリアも立ち上げ 循環型グローバルビジネスモデル を提案 図 6 技能実習制度の受け入れ機関別のタイプ図 7 技能実習新制度の流れ ( 団体監理型 )