レトロゾール錠 2.5mg アメル を服用される患者さんへ 監修 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授勝俣範之先生
はじめに この冊子は レトロゾール錠 2.5mg アメル による乳がんのホルモン療法を受ける患者さんが 安心して治療に取り組めるように 乳がんのホルモン療法や薬の効果 副作用について解説しています 冊子を読んでもわからないことや 不安に感じることがありましたら 担当医師や看護師 薬剤師に遠慮なくご相談ください 目 次 乳がんのホルモン療法とは 3 ホルモン療法に使われる薬剤の種類と特徴 4 ホルモン療法の開始時期と治療期間 5 レトロゾール錠 2.5mg アメル とは? 6 レトロゾール錠 2.5mg アメル の主な副作用 7 お薬を正しく服用していただくために 11 乳がんの手術後の検診について 13 2
乳がんのホルモン療法とは 乳がんの約 7 割は エストロゲン ( 女性ホルモン ) の働きによってがん細胞が増殖する ホルモン感受性乳がん です このタイプの乳がんには エストロゲンの産生や働きを抑え 乳がん細胞の増殖をおさえる ホルモン療法 が有効です ホルモン感受性があるかどうかは 乳がん細胞を調べて 女性ホルモンの働きを感知するホルモン受容体 ( エストロゲン受容体かプロゲステロン受容体 ) の有無を確認します 乳がんの薬物療法には ホルモン療法 のほかに 化学療法 分子標的療法 があり がんの性質や再発リスク 本人の希望などを考慮して選択されます 乳がん細胞 エストロゲン ( 女性ホルモン ) エストロゲン受容体 増殖 エストロゲンが乳がん細胞のエストロゲン受容体に結合することにより 乳がん細胞が増殖します 3
ホルモン療法に使われる薬剤の種類と特徴 閉経前と閉経後でエストロゲンが作られる場所が違い 有効な薬剤が異なります そのため ホルモン療法に使われる薬剤は患者さんの状態に合わせて選択されます 閉経前 後のいずれにも使用される薬剤 抗エストロゲン剤 エストロゲンが乳がん細胞のエストロゲン受容体に結合するのを妨げます 閉経前に使用される薬剤 LH-RH アゴニスト製剤 脳の視床下部から放出される性腺刺激ホルモン放出ホルモン (LH-RH) の働きを妨げ 卵巣でエストロゲンが作られるのを抑えます 閉経後に使用される薬剤 アロマターゼ阻害薬 副腎から分泌されたアンドロゲン ( 男性ホルモン ) を材料に エストロゲンを作るアロマターゼという酵素の働きを抑えます (6ページで詳しく説明します ) 4
ホルモン療法の開始時期と治療期間 ホルモン療法は ホルモン感受性乳がんの手術の後や再発した場合に行われます 手術の後に行われるホルモン療法は 手術で取りきれなかった目に見えない小さながんを取り除き 乳がんの再発を防ぐことが目的です 閉経後の場合は アロマターゼ阻害薬を5 年間服用するのが標準治療です 5
レトロゾール錠 2.5mg アメル とは? 乳がん細胞を増殖させるエストロゲンは 閉経前には主に卵巣から分泌されます しかし 閉経後は卵巣の機能が低下し 代わりに副腎から分泌されるアンドロゲンが 脂肪組織や乳がん組織内に存在しているアロマターゼという酵素によってエストロゲンが作られるようになります レトロゾール錠 2.5mg アメル は そのアロマターゼの働きを阻害してエストロゲンが作られるのを抑え 乳がん細胞の増殖を抑制するアロマターゼ阻害薬です 副腎 腎臓 アンドロゲン ( 男性ホルモン ) 脂肪組織など 乳がん細胞 アロマターゼ アロマターゼ レトロゾールの作用アロマターゼの働きを阻害し エストロゲンが作られるのを抑制 エストロゲン ( 女性ホルモン ) 乳がん細胞の増殖を抑制 6
レトロゾール錠 2.5mg アメル の主な副作用 発現しやすい副作用 関節痛 手指 ひじ 肩 ひざの関節が痛んだりこわばったりすることがあります 関節痛を和らげるためのお薬やサプリメント 痛み止め ( 飲み薬 貼り薬 ) 漢方薬桂枝加朮附湯 ( ケイシカジュツブトウ ) ビタミン E 関節痛を和らげる日常生活の工夫 血流を促す温浴をする ストレッチやエクササイズを行う 同じ姿勢を長く続けない 肥満にならないように気をつける 7
ストレッチの例 胸の前で両手を合わせて押し合う運動 ゆっくりと無理をせず 痛くなる直前で止めましょう ボールをにぎる運動 毎日少しずつ続けることが大切です 続けることでボールを握れるようになってきます 8
ほてり 突然 かっと熱くなったり 汗をかいたり 胸から顔にかけて赤くなったりすることがあります ほてりを和らげるためのお薬 選択的セロトニン再取込み阻害薬 ( パロキセチンなど ) 降圧薬 ( クロニジンなど ) 抗てんかん薬 ( ガバペンチンなど ) 漢方薬桂枝茯苓丸 ( ケイシブクリョウガン ) 加味逍遥散 ( カミショウヨウサン ) など 上記には保険適応外の薬剤もありますので 担当医に確認して下さい 9
その他注意していただきたい副作用 骨粗鬆症 ( こつそしょうしょう ) 骨折 骨量を維持する働きを持つエストロゲンが減少すると 骨密度が低下して骨粗鬆症や骨折を起こしやすくなることがあります 治療中は定期的に骨密度の検査を受けて骨の状態を観察します 健康な骨の断面 骨粗鬆症の骨の断面骨がスカスカ 日常生活では 骨を強くするためにカルシウムやビタミン D を多く含む食品の摂取や 定期的な運動を心がけると良いようです 10
お薬を正しく服用していただくために 服用方法 服用量 レトロゾール錠 2.5mg アメル は 通常 1 日 1 回 1 錠を毎日服用します 服用する際には コップ1 杯程度の水またはぬるま湯と一緒にお飲みください 朝 昼 夜 また食前 食後にかかわらず いつ服用しても効果に変わりはありません 服用する時間を決めておくと 飲み忘れを防げます お薬を服用し忘れてしまった場合 もし服用を忘れた場合 同じ日のうちに気がついた時はできるだけ早く服用してください 翌日になって気がついた時は 忘れた分を服用せずに 1 回分のみ服用してください 忘れてしまったからといって 一度に2 回分を服用しないでください また 誤って多く服用してしまった場合には すぐに担当医師や看護師 薬剤師にご相談ください 11
他に服用しているお薬がある場合 複数のお薬を一緒に服用すると お薬によっては必要以上に効き目が強くなったり 反対に弱まったりすることがあります 市販のお薬も含めて レトロゾール錠 2.5mg アメル 以外に服用しているお薬がある場合は 必ずそのお薬について 担当医師や看護師 薬剤師に伝えてください その他の服用時の注意点 肝臓や腎臓に病気がある方は 事前に担当医師にご相談ください 他の医療機関を受診する場合には レトロゾール錠 2.5mg アメル を服用していることを医師や薬剤師にお伝えください 疲れやめまい 眠気があらわれることがありますので 自動車の運転や危険を伴う機械を操作するときにはご注意ください レトロゾール錠 2.5mg アメル は直射日光を避け 子どもの手の届かないところに保管してください 12
乳がんの手術後の検診について 定期検診 手術が終わり退院をしたら 外来での定期検診を受けます 術後 1~3 年目は3~6ヶ月ごと 術後 4~5 年目は6ヶ月 ~ 1 年ごと 術後 6 年目以降は年 1 回を目安に 視 触診が行われます また 年に1 度の対側乳房マンモグラフィ撮影が勧められています 必要に応じて 血液検査 腫瘍マーカー 胸部 X 線検査 各種画像検査等が行なわれます 乳がんの場合 術後 5 年以上経ってから再発することがありますので 術後 10 年間は安全確認の期間とお考えください 手術 チェック項目 問診 視触診 : 手術部位 周辺のリンパ節 対側乳房 対側乳房マンモグラフィ必要に応じて 血液検査 : 腫瘍マーカーなど 胸部 X 線 骨シンチ CT MRI などを追加 定期検診 3~6 ヶ月ごと 6~12 ヶ月ごと 年 1 回 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10( 年 ) 病気の状態や検査項目によって検査の間隔が異なることがあります 13
自己検診 乳房の手術部位や温存した乳房に異常がないかどうかは ご自分でもチェックできます 乳がんにかかった方は 手術していない側の乳房 ( 対側乳房 ) にも乳がんができやすいので 毎月 1 回 日を決めて ご自分で検診するようにしてください 少しでも気になるところがあったら 担当医師にご相談ください 自己検診のチェック項目 a 鏡に向かい 腕を上げて 乳房の変形や左右差がないか b 渦を描くように手を動かして 指で乳房にしこりがないか c 仰向けになって外側から内側へ指を滑らせ しこりがないか 14
気になる症状を記録しましょう 治療中に気になる症状があらわれた場合に記録して 受診時の相談にお役立て下さい 症 状 月月月月月月月月月月月月月 日日日日日日日日日日日日日 15
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病医院名 担当医師名 共和薬品工業株式会社共和クリティケア株式会社 LTR-P-1(1) 2015 年 9 月作成