に, 月次モデルの場合でも四半期モデルの場合でも, シミュレーション期間とは無関係に一様に RMSPE を最小にするバンドの設定法は存在しないということである 第 2 は, 表で与えた 2 つの期間及びすべての内生変数を見渡して, 全般的にパフォーマンスのよいバンドの設定法は, 最適固定バンドと最適可変バンドのうちの M 2, Q2 である いずれにしても, 以上述べた 3 つのバンド設定法は若干便宜的なものと言わざるを得ない 最後にフレックス モデルの構造をまとめると, 次の体系となる { (6.7) y = x g = sgn( y )min( y ΔP = sgn( λg)min( λg, δp P = P + ΔP G = G α + g + β ; = 1,2, L, J, γg ここで新しく現れた変数 G が外貨準備に対応する 先程, 最適固定バンドあるいは最適可変バンドを求める際に, パラメーター P α, β は既知とし, 実際にバンドを推定するときは, その最小二乗推定値 αˆ, βˆ を用いた しかし,(6.7) で表現された体系を仮定する限り, パラメーター α, β, γ, δ を同時に推定することが望ましい あるいは, それと同等の推定法を考える必要がある ) ) 第 7 節予測誤差の分析 7,1 予測期間の長さと予測誤差第 2 節から第 4 節までの予測誤差に関する理論的分析は, 単一方程式のモデルに関するものであり, しかも第 3 節の結果を除いてすべてラグを含まない静学モデルを前提にしていた しかし実際の計量モデルには複雑なラグ分布が含まれ, また動学的相互依存の体系になっている そこで, 第 5 節と第 6 節で説明された為替レート決定のための計量モデルを用いて, 動学的シミュレーションによる予測誤差の分析を, 月次と四半期の時間単位を比較する形で進めよう ここでは, 推定期間 1975 年 ~1981 年の全期間にわたる内挿を考え, 始点を順々にずらせながら最終テストを行う 月次モデルについては 3 ヶ月から 36 ヶ月までの 3 ヶ月毎の期間について, 四半期モデルについては 1 四半期から 12 四半期までの期間について, 始点をずらせてすべて可能な動学的シミュレーションを行い, 各期間の終点における予測値と実績値の乖離の絶対値を用いた誤差を求める すなわち, 誤差の基準として, 次の定義による平均絶対誤差率 (AAPE ) を用いる AAPE = 100 i 終点の予測値 終点の実績値 終点の実績値 予測期間数 為替レートの決定方程式としては, ここでは 3 つの代替的なバンドの与え方を考慮した結果を考察する 1 つは為替レートの全期間にわたる動学的パフォーマンスを最適にするようにバンドを決定する最適固定バンドの方式, 第 2は短期間毎の動学的パフォーマンスを最適にするようにバンドを決定する最適可変バンドの方式 ( 第 6 節における M 2 と Q2 の組合せ ), 第 3 は現実の変動率の頻度の高いものを選ぶ推定バンドの方式である 最適固定バンドによる為替レート決定の場合については, 月次と四半期のモデルによる予測誤差が, それぞれ表 7.1 と表 7.2 に示されている 若干の例外があるものの, 通常は, 予測期間が拡大されるにつれて誤差も大きくなる これは, 体系のラグ付き内生変数を通じて動学的シミュレーションの過程で誤差が累増するためである 特に, 銀行部門短資移動の誤差率の大きさとそ i / 55
表 7.1 月次モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* * 為替レートは最適固定バンドで決定 BANDX=0.02 BANDR=0.04 表 7.2 四半期モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* * 為替レートは最適固定バンドで決定 BANDX=0.04 BANDR=0.09 表 7.3 月次モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* * 為替レートは最適固定バンド (M2) で決定 の拡大が目立つが, 非銀行民間部門短資移動の誤差は目立つほどには累増しない 最適可変バンドによる為替レート決定方式の場合については, 表 7.3 と表 7.4 に示されている この場合には, 全期間にわってバンドを固定する場合よりも, ほとんどの変数で, 特に長期になるほど, 誤差 率が小さくなっている 推定バンドによる為替レート決定の場合については, それぞれ表 7.5 と表 7.6 に示されている この場合も, 一般に予測期間が拡大されるにつれて誤差が累増される また, 銀行部門の短 56
表 7.4 四半期モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* * 為替レートは最適可変バンド (Q2) で決定 表 7,5 月次モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* * 為替レートは最適固定バンドで決定 BANDX=0.05 BANDR=0.06 表 7.6 四半期モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* * 為替レートは推定バンド (M2) で決定 BANDX=0.08 BANDR=0.10 資移動の誤差はやはり大きい 次に, 月次と四半期のモデルに基づく予測誤差を比較するために, 相対誤差率を次のように 表 7.1 月次モデルによる平均絶対誤差率 (AAPE)* シミュレーション期間 :1975.1~1981.12 定義しよう 相対誤差率 (RPRAAPE) 月次のAAPE = 100 四半期のAAPE 57
表 7.7 は最適固定バンドによる為替レート決定の場合の相対誤差率を示している 全体としてみれば理論的分析が示唆したように四半期による予測誤差のほうが相対的に大きい もちろん例外もかなり多くの場合についてみられる しかし, 為替レート決定において重要な役割を果たす民間部門の短資移動 (KSNN と KSBC) 表 7.7 相対誤差率 (RPRAAPE)* については, すくなくとも 8 四半期までの予測で月次の方がパフォーマンスがよい また, 実際の予測期間としての特に関心のもたれる 4 ないし 5 四半期期間のところをみると, すべての変数の予測において月次モデルに基づく方が良い結果となっており, とりわけ短期資本移動については月次の方が圧倒的に良い 9 シミュレーション期間 :1975.1~1981.12 * 為替レートは最適固定バンド (M2) で決定 ( 表 7.1, 表 7.2 参照 ) 表 7.8 相対誤差率 (RPRAAPE)* * 為替レートは最適固定バンド (M2) で決定 ( 表 7.3, 表 7.4 参照 ) 表 7.9 相対誤差率 (RPRAAPE)* * 為替レートは最適固定バンド (M2) で決定 ( 表 7.5, 表 7.6 参照 ) 58
表 7.8 は最適可変バンドに基づいて為替レートを決定する場合, 表 7.9 は推定バンドで為替レートを決定する場合の相対誤差率を示している これらの場合も全般的に月次モデルに基づく誤差の方が小さいこと, 短資移動については圧倒的に月次モデルに基づく誤差の方が小さいこと,4 ないし 5 四半期間の予測では長期資本移動などに若干の例外がみられるものの, やはり月次モデルに基づく予測の方が相対的に良好な結果となっている 7.2 平方平均二乗相対誤差率でみた予測誤差 全内生変数の推定期間 1975 年 ~1981 年の全期間にわたる平方平均二乗誤差率 ( RMSPE ) を月次モデルと四半期モデルについて求め, それを用いた予測効果の尺度を次式によって定義しよう すなわち, 月次モデルと四半期モデルの予測の相対誤差率として, RMSPE M RPRRMSPE = ( ) 100 RMSPE Q を考え, これを平方平均二乗相対誤差率と定義する ここに, RMSPE M は月次モデルの平方平均二乗誤差率であり, RMSPE Q は四半期モデルの平方平均二乗誤差率である 表 7.10 は, 各内生変数の平方平均相対誤差率を示している 表 7.7~ 表 7.9 と同様に, 負値を 表 7.10 平方平均二乗相対誤差率 (RPRRMSPE) とれば月次モデルの予測誤差の方が四半期モデルのそれより小さいことを示す すべてのバンドの与え方に対して四半期モデルの誤差の方が小さいのは短期利子率だけであり, その他の内生変数に対しては圧倒的に月次モデルの方がパフォーマンスがよいことを示している 特に長短の資本移動や外貨保有高, 直物為替レートや先物プレミアム等では, 月次モデルの相対的優位性が顕著に現れている バンドの設定による違いでは, 推定バンドのときに月次モデルの優位性が一番明確に示されている 第 8 節乗数分析 時間集計が推定値や予測誤差に与える効果については上にみてきたが, この他にも, 乗数分析を通じて調べられるモデルの動学的特性にどのような影響をもつかを調べることも重要な課題である EPA 世界経済モデルのような大型非線型モデルでは, その動学的特性や政策効果を解析的に調べることは事実上不可能なので, それは動学的シミュレーションによる乗数分析に基づいてなされる その場合に, 四半期モデルに基づく乗数が特定の方向のバイアスをもつならば 乗数分析に基づいて得られる動学的特性や政策効果の解釈には特別な注意が必要となるであろう この節では, 本研究で用いられている小型のモデルを用いて, 同一の外生的撹乱に対して月次のモデルと四半期のモデルから得られる乗数に異なった影響がみられるか否かを調べる その場合に, 始点を違えたときの効果 ( いわゆる初期値テスト ) や撹乱の与え方をプラスとマイナスに違えたときの効果 ( いわゆる非対称性テ 59