ディスカッション ( データ同化相談会 ) 縮約モデルと粒子フィルタを用いた 低層風擾乱の流れ場予測 菊地亮太 ( 東北大学流体科学研究所 ) 1
研究背景低層風擾乱の運航影響 空港周辺での低層風擾乱による運航影響が問題となっている 着陸復行 代替地着陸 ハードランディング 地形や ビルなどの影響を強く受ける 小規模な気象現象 地形性乱気流 2 航空機運航において重要な課題となっている
研究背景低層風擾乱の解析 気象予測モデル (JMA-NHM) Large eddy simulation Hill Flight path 3 One-way ネスティングによる 5 段階のネスティング格子幅 5km 50m Two-way ネスティングによる 2 段階のネスティング格子幅 18m 6m 低層風擾乱発生時の気象条件を再現
研究背景低層風擾乱の解析 広帯域レーダ観測 ( 仰角 4.5 度 ) 丘 気象予測モデル +LES の高解像度計算 4 LES 結果 ( 仰角 4.5 度 ) 丘 LES 結果をレーダ観測と同様の形式にて出力 レーダ観測と同様の傾向を捉えることができた しかし 計算コストが高い 予測 は困難 どうにかしたい!!
発表内容 高解像度気象解析 計算コスト高い 航空安全 予測情報が欲しい 小規模な渦 乱流を考慮する計算を行いつつ さらにリアルタイム性を保持する予測が必要 5 リアルタイムデータ同化計算手法の提案 計算コスト 固有直交分解を用いた縮約モデルの利用観測との融合 データ同化手法である粒子フィルタの利用 悩み? 相談? (1) 本手法についての異分野の方からのご意見 (2) データ同化のセッティングなどについてのご意見
研究手法固有直交分解 (POD) 多次元データから低次元データを抽出する方法 複雑な流れ場から特徴的な構造をエネルギーごとに抽出することができる POD 6 流れ場 POD 基底ベクトル
固有直交分解 (1) X u... u 時間発展 1 1 1 n...... t 1... t n u u 格子点情報 (3) POD 基底ベクトル (2) XX 固有値問題 T u k k u k k Xu k k 7 第 41 期年会講演会 2010 年 4 月 15 日
研究手法縮約モデル (ROM) 非圧縮性ナビエストークス方程式を POD 基底ベクトルに射影することで 縮約モデルを構築する u t 1 2 u u p u, 0 k u( x, t) N ' k1 a k ( t) k ( x) k a k (x):pod 基底ベクトル (t):temporalco efficient 縮約モデルによって表現 計算量 CFD: 格子点の数 >> ROM:POD 基底ベクトルの数 8 縮約モデルは計算コストを大きく削減できる
研究手法縮約モデルとデータ同化 縮約モデルの利点 計算コストが大幅に削減できる 簡易モデルながら ナビエ ストークス方程式に従った流体計算を行うことができる 縮約モデルの欠点 モデル自体が不安定 ( 発散的になりやすい ) 一度 縮約化した計算に対してのみにしか利用できない この欠点を補うために データ同化を使う! リサンプルによって棄却するか修正して安定にする データ同化をして 別の条件にも使えるように拡張する 9
研究手法縮約モデルとデータ同化 事前 (1) 高解像度気象解析を使って 低層風擾乱の解析を行う (2) 固有直行分解を用いて 縮約モデルの構築を行う 予測 (1) 縮約モデルで予測計算 (2) 観測を実施 (3) 観測データを同化 (4) 縮約モデルのパラメータ修正 (5) 縮約モデルで予測計算 事前に計算しておいた情報を使って 未来を予測するのには限界がある 観測データを使って モデル自体を逐次修正して 予測を行う 10
研究手法解析領域 ( 庄内空港 ) 丘 ( 高さ約 60m) 空港ビル等 広帯域レーダ ( 大阪大学 ) 11 観測データ一定迎角におけるスキャンデータ ( 水平風速 ) 丘
研究手法データ同化問題の設定 ( ノイズの設定 ) データ同化手法 : 粒子フィルタ N ' u( x, t) ak ( t) k ( x) a1 1 a2 2 k1... Temporal coefficients に対して ノイズを発生させて初期粒子生成 正規乱数 N(0,2 a(0) ) 粒子の縮退を防ぐために データ同化後にシステムノイズを発生 正規乱数 N(0,5% of 2 a(0) ) ノイズのセッティングは 縮約モデルができる限り不安定にならない範囲で設定 12
研究手法データ同化問題の設定 ( 観測値など ) データ同化手法 : 粒子フィルタ 観測値は広帯域レーダ迎角 3 度のスキャンデータ (1 分間隔 ) 丘 狙っている乱気流の発達や衰退という現象を考えると 時間スケールは 1 分間では荒い? 観測行列によって 視線方向風速に変換する 計算に用いる粒子数は 1000 個 計算コストを考慮して 取れるほぼ限界 (?) 13
研究手法システムの流れ 融合解析による計算 低層風擾乱の解析 14 流れ場に POD を適用 縮約モデルを構築 シミュレーション 流れ場の特徴を抽出 粒子フィルタを用いたデータ同化計算 低計算コストの流れ場計算 観測 疑似観測値の作成
結果 POD による特徴成分の抽出 高解像度気象解析 高解像度気象解析の結果 POD を用いて 特徴抽出 縮約モデルの構築 Red iso-surface:0.0005 Blue iso-surface:-0.0005 (Vertical wind velocity) The first mode The third mode The tenth mode 43.9% 11.2% 0.9% 15
結果データ同化計算 Temporal coefficient a1 の時間発展 発散的な粒子はリサンプルで棄却できている 16 リサンプリングによって 修正されていることが確認できる
結果データ同化計算 リサンプリングを 10 回行った際の結果 融合解析 ( 観測値 ) リアルタイムデータ同化 気象予測モデルのみ 気象予測モデルだけでは 低層風擾乱は捉えることができない POD-PF によって 融合解析と類似した流れ場を得ることができた 17
結果データ同化計算 滑走路進入経路上の鉛直風の結果 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (1) から (6) のピークの位置が一致している 融合解析と POD-PF のそれぞれのピークの値自体には差は存在する POD-PF を用いることで 低層風擾乱によって発生した鉛直風の変化の特徴を捉えることができた 18
結果計算コスト 融合解析 OpenMP を用いて 32CPU による並列化演算を実施 10 分間の流体計算に約 5 日 POD-PF OpenMP を用いて 4CPU による並列化演算を実施 10 分間の流体計算に約 8 分 POD-PF reduces the computational time to approximately 0.3% 19 POD-PF はリアルタイムに解析することができることを確認した
まとめ (1) 低層風擾乱のデータ同化計算風速の最大値 最小値 平均値を融合解析の結果とほぼ同様の値を推定することができた また進入経路上の鉛直風速の特徴を捉えることができた (2) データ同化手法の計算コストリアルタイムに解析することができることを確認した 課題と目標 運航時の危険回避を考えると 10 分程度の予測が必要 双子実験である程度の結果は出ているが 予測性能はまだまだ さらに精度よく流れ場を予測したい 20
予備スライド 何かご意見やアドバイスなどありましたら 是非連絡いただければと思います 東北大学流体科学研究所大林研究室菊地亮太 rkikuchi@edge.ifs.tohoku.ac.jp 21
結果データ同化計算 融合解析 ( 観測値 ) POD-PF Method Maximum [m/s] Minimum [m/s] Average [m/s] Turbulent Intensity 融合解析 15.9 0.09 8.82 1.66 Turbulent intensity POD-PF 17.2 0.02 9.72 2.65 POD-PF によって風速の最大値 最小値 平均値が融合解析とほぼ同様の結果を得ることが出来た 22
研究手法固有直交分解 (POD) 多次元データから低次元データを抽出する方法 複雑な流れ場から特徴的な構造をエネルギーごとに抽出することができる 風速分布 (U) POD 基底ベクトル (U) 円柱周りの流体計算 : カルマン渦 23 流れ場 POD 基底ベクトル
24 結果 (1) 平均成分
研究手法縮約モデル (ROM) u( x, t) a 1 1 N ' k 1 a 2 a 2 k ( t)... k ( x) a の値を計算するだけで 計算領域の流れ場を再現することができる 25 計算量 CFD: 格子点の数 >> ROM:POD 基底ベクトルの数 縮約モデルは計算コストを大きく削減できる
26 結果 (1)POD 基底ベクトルの確認
Result(2) The energy ratio of POD The energy ratio of 15 principal POD basis vectors to the total energy The sum of the energy from the first to the 12th mode dominates more than 99% The POD basis vectors from the first to the 12th mode are used Red iso-surface:0.0005 Blue iso-surface:-0.0005 (Vertical wind velocity) The first mode The third mode The tenth mode 27 43.9% 11.2% 0.9% The POD basis vectors represent the coherent structure of the low-level turbulence
研究手法システムの流れ BCM による流体計算 Re=100 におけるカルマン渦 28 流れ場に POD を適用 縮約モデルを構築 シミュレーション 流れ場の特徴を抽出 粒子フィルタを用いたデータ同化計算 低計算コストの流れ場計算 観測 疑似観測値の作成
研究手法データ同化設定 観測値にノイズを加えることで 実際の観測を模擬 擬似観測 obs BCM N(0,0.1) 円柱後流に 3 点分の x,y 方向速度成分 u,v を抽出 カルマン渦の位相を意図的にずらしてデータ同化を行う 観測点の抽出 位相の設定 カルマン渦の周期を基準に等間隔に 3 点設定 29
結果 (1) データ同化計算 obs1 における水風速分布の時間発展 BCM(U) 同化計算 (U) 位相が修正された BCM(U) 同化計算 (U) 約 4 秒間のデータ同化を行うことで 位相情報を修正できた 30 位相がずれている
結果 (2) 誤差フィルタリング 誤差 u u BCM 4 秒まで同化計算のほうが誤差が大きい それ以後同化計算のほうが誤差が小さい 31 データ同化計算 疑似観測 平均誤差 [m/s] 0.044 0.086 観測に含まれる誤差をフィルタリングして流れ場を推定することができた