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て 弥生時代に起こったとされています 結核は通常の肺炎とは異なり 細胞内寄生に基づく免疫反応による慢性肉芽腫性炎症であり 重篤な病変では中が腐って空洞を形成します 結核は はしかや水疱瘡と同様の空気感染をします 肺内に吸いこまれた結核菌は 肺胞マクロファージに貪食され 細胞内で増殖します 貪食された

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1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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STEP 1 検査値を使いこなすために 臨床検査の基礎知識 検査の目的は大きく 2 つ 基準範囲とは 95% ( 図 1) 図 1 基準範囲の考え方 2

されており これらの保菌者がリザーバーとして感染サイクルに関与している可能性も 考えられています 臨床像ニューモシスチス肺炎の 3 主徴は 発熱 乾性咳嗽 呼吸困難です その他のまれな症状として 胸痛や血痰なども知られています 身体理学所見には乏しく 呼吸音は通常正常です HIV 感染者に合併したニ

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査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

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全例市販後調査のためのバリシチニブ使用ガイドライン バリシチニブはヤヌスキナーゼ (JAK) ファミリーの JAK1 及び JAK2 分子に高い選択性を有する JAK 阻害薬であり 複数のサイトカインシグナルの伝達抑制による免疫抑制作用により抗リウマチ作用を示す薬剤である 1) 2017 年 7 月に本邦で RA の適応が承認された 欧州においても 2017 年 2 月に承認されている 一方 米国では静脈血栓症の発症数にプラセボとの不均衡がみられたことから 追加データが必要とされ 承認には至っていない [ ガイドラインの目的 ] バリシチニブは 関節リウマチ患者の臨床症状の改善 関節破壊進行の抑制 身体機能の改善が臨床試験により証明された薬剤であるが 投与中に重篤な有害事象を合併することがある 2-7) 本指針は国内外で実施された臨床試験の結果を基に 市販後調査におけるバリシチニブ投与にあたって その適応や 有害事象の予防 早期発見 治療のための注意点を示し 薬剤の適正使用を促すことを目的とした 本ガイドラインは 現時点における臨床試験の成績に基づき作成されたものである 今後 市販後臨床試験調査の成績を反映した [ 実地臨床における適正使用のためのガイドライン ] を策定する予定である [ 対象患者 ] 1. 過去の治療において メトトレキサート (MTX)8 mg/ 週を超える用量を 3 ヶ月以上継続投与してもコントロール不良の関節リウマチ患者 現時点において安全性の観点から MTX を投与できない患者 ( 感染症リスクの高い患者 腎機能障害 間質性肺炎のため MTX を投与できない患者など ) は原則として対象としないことが望ましい 疼痛関節 6 関節以上 腫脹関節 6 関節以上 CRP 2.0 mg/dl 以上あるいは ESR 28mm/hr 以上 上記 3 項目を満たさなくても患者において DAS28-ESR, SDAI, CDAI で Moderate activity 以上のいずれかを認める場合も使用を 考慮する 1

2. さらに 日和見感染に対する安全性を配慮して以下の 3 項目を満たすことが強く推奨される 末梢血白血球 4000/mm 3 以上 末梢血リンパ球 1000/mm 3 以上 血中 β-d-グルカン陰性 [ 用法 用量 ] 成人にはバリシチニブとして 4mgを 1 日 1 回経口投与する 治療効果が認められた際には 本剤 2mg1 回投与への減量を検討する 合併症 ( 腎障害 肝障害など ) がある場合は 患者の状態に応じて 2mgに減量すること 用法 用量に関する使用上の注意点 バリシチニブの主な排泄経路は腎臓であるため 腎機能障害を有する患者ではクリアランスの低下により 本剤の血中濃度が上昇する 8) 高齢者や罹病期間の長い関節リウマチ患者では筋肉量の減少を反映して血清クレアチニン値が低値となるために 必要に応じて 性別 年齢 体重を加味した推算 GFR 値 (egfr) やシスタチン C の値と参考にしながら腎機能を評価する egfr (ml/ 分 /1.73 m 2 ) < 60 の症例では 1 日 1 回 2 mg を投与し egfr<30 の症例では投与しないこと また 高度の脱水を引き起こす発熱 熱中症 食欲低下 嘔吐 下痢を認める場合は一時休薬するように前もって患者に指導すること 本剤と抗リウマチ生物学的製剤や他のヤヌスキナーゼ(JAK) 阻害薬との併用はしないこと [ 投与禁忌 ] 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者 重篤な感染症( 敗血症など ) の患者 活動性結核の患者 重度の腎機能障害を有する患者 好中球数が 500/mm 3 未満の患者 リンパ球数が 500/mm 3 未満の患者 ヘモグロビン値が 8g/dl 未満の患者 妊婦または妊娠している可能性のある婦人 授乳婦 悪性腫瘍を有していると診断された患者 [ 慎重投与 : 次の患者には慎重に投与すること ] 2

感染症の患者又は感染症が疑われる患者 結核既感染の患者 易感染性の状態にある患者 好中球減少 リンパ球減少 ヘモグロビン値減少のある患者 中等度 軽度の腎機能障害を有する患者 肝機能障害を有する患者 高齢者 腸管憩室のある患者 間質性肺炎の既往歴のある患者 静脈血栓塞栓症のリスクを有する患者 [ 要注意事項 ] 1. リウマチ専門医等の生物学的製剤治療の経験を十分に有する医師が勤務し 重篤な 副作用が出現した際に 緊急かつ十分な対応が可能な施設で投与を行うこと 2. 感染症本剤は免疫反応に関与する JAK ファミリーを阻害するので 感染症に対する宿主免疫反応に影響を及ぼす可能性がある 国内外の臨床試験においても 結核 肺炎 敗血症 ウイルス感染などによる重篤な感染症および死亡例が報告されている 本剤の投与に際しては慢性感染症 ( 慢性副鼻腔炎 歯周感染症 痔瘻など ) に注意すること 治療中は十分な観察を行い 投与中に重篤な感染症が発現した場合は速やかに適切な処置を行い 感染症のコントロールができるまでは投与を中止すること また 患者に対し 発熱 倦怠感が出現した場合は 速やかに主治医に相談するよう指導すること なお 呼吸器感染はその頻度と生命予後への影響から重要であり 副作用対策の観点から以下の項目に注意をして投与を行う必要がある また 本剤投与中に発熱 咳 呼吸困難などの症状が出現した場合は 細菌性肺炎 結核 ニューモシスチス肺炎 薬剤性肺障害 原疾患に伴う肺病変などを想定した対処を行う フローチャートおよび 生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き ( 日本呼吸器学会 ) 等を参照のこと 1) 呼吸器感染症 胸部 X 線撮影が即日可能であり 呼吸器内科専門医 放射線科専門医による読影所見が得られることが望ましい サイトカインシグナル伝達を阻害する事によって CRP などの炎症マーカーや 発熱 倦怠感といった症状が 感染症合併時に抑制される可能性があるため 特に臨床症候の変化に注意が必要である サイトカインを標的とする生物学的製剤の市販後調査で明らかにされた肺炎 重篤感染症危険因子が重複する患者 ( 高齢 肺合併症 副腎皮質ステロイド投与 糖尿 3

病 など ) への本剤の使用は 治療上の有益性が危険性を大きく上回ると判断される場合にのみ投与する また 本剤の特徴に関して 家族にも十分注意するよう指導する必要がある 呼吸器感染症予防のために インフルエンザワクチンは可能な限り接種すべきであり 65 歳以上の高齢者には肺炎球菌ワクチンの接種も積極的に考慮すべきである 2) 結核 非結核性抗酸菌症 国内外の臨床試験 2-7) で 播種性結核 ( 粟粒結核 ) 及び肺外結核 ( 脊椎 リンパ節など ) を含む結核が報告されており 結核 非結核性抗酸菌症に注意が必要である スクリーニング時には問診 インターフェロン-γ 遊離試験 ( クオンティフェロン T-SPOT) またはツベルクリン反応 胸部 X 線撮影を必須とし 必要に応じて胸部 CT 撮影などを行い 肺結核を始めとする感染症の有無について総合的に判定する 結核の既感染者 胸部 X 線写真で陳旧性肺結核に合致する陰影 ( 胸膜肥厚 索状影 5 mm以上の石灰化影 ) を有する患者 インターフェロン-γ 遊離試験あるいはツベルクリン反応が強陽性の患者は潜在性結核を有する可能性があるため 必要性およびリスクを十分に評価し慎重な検討を行った上で 本剤による利益が危険性を上回ると判断された場合には本剤の開始を考慮してもよい 潜在性結核の可能性が高い患者では 本剤開始 3 週間前よりイソニアジド (INH) 内服 ( 原則として 300mg/ 日 低体重者には 5mg/kg/ 日に調節 ) を 6~9 ヶ月行なう 非結核性抗酸菌感染症に対しては確実に有効な抗菌薬が存在しないため 同感染患者には原則として投与すべきでない 3) ニューモシスチス肺炎 ニューモシスチス肺炎は 諸外国に比較して本邦関節リウマチ患者での発現頻度が非常に高く 本剤投与中においても報告例が存在する 危険因子 ( 高齢 肺合併症 副腎皮質ステロイド投与 糖尿病 末梢血リンパ球減少など ) を複数有する患者では ST 合剤などの予防投与を考慮する 4) ヘルペスウイルスを含むウイルス感染症 これまでの臨床試験で 日本人関節リウマチ患者で認められた重篤な感染症のうち多くが重篤な帯状疱疹であったこと 播種性帯状疱疹も認められたことから ヘルペスウイルスなどの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること また 投与開始前に初発症状と早期受診を患者に説明し 重篤化を防止する 特に 帯状疱疹の既往のある患者では 治療上の有益性が危険性を大きく上回ると判断される場合にのみ 投与することが望ましい このほか Epstein-Barr ウイルス サイトメガロウイルスの再活性化なども報告されている 5)B 型肝炎および B 型肝炎ウイルス再活性化国内外の臨床試験で B 型肝炎および B 型肝炎ウイルス (HBV) 再活性化が報告されている HBV 感染者 ( キャリアおよび既往感染者 ) に対しては 日本リウマチ学会による B 4

型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言 および日本肝臓学会 B 型肝治療ガイドライン を参考に対処する C 型肝炎ウイルス (HCV) 感染者 ( キャリア ) への本剤の投与例は少なく 一定の見解は得られていない したがって 現時点ではキャリアへの投与は避けるのが望ましい 3. 悪性腫瘍因果関係は明らかでないものの 固形癌 悪性リンパ腫 リンパ増殖性疾患の発現が国内外の臨床試験で報告 2-8) されている 2016 年 9 月 1 日時点において 国内外で報告された 52 例の悪性腫瘍 ( 非黒色腫皮膚癌を除く ) のうち 4 例が死亡し 17 例は投与開始後 48 週以内に発現したと報告された これらの点を踏まえたリスク ベネフィットを十分考慮し 患者に十分説明した上で 適応を慎重に判断すること 悪性腫瘍の既往歴 治療歴を有する患者 前癌病変 ( 食道 子宮頚部 大腸など ) を有する患者への投与は避けることが望ましい 4. 血液およびリンパ系障害本剤投与中は 定期的に 好中球数 リンパ球数 ヘモグロビン値を測定し 好中球 1000/mm 3 未満 リンパ球 500/mm 3 未満 ヘモグロビン 8g/dl 未満または 2g/dl 以上の低下を示した場合は 本剤の投与を中止し 原因を精査する 5. 代謝および栄養障害本剤投与によってコレステロール値 中性脂肪値等の脂質系の検査項目の上昇が報告されている 本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認すること 異常値を認めた場合は 必要に応じて日本動脈硬化学会動脈硬化性疾患予防ガイドラインなどにのっとり脂質異常症治療薬の投与を行うこと 6. 肝機能障害 肝機能障害が出現することがあるため 本剤投与中は 定期的にトランスアミナーゼ値 を測定するなど慎重に観察し 異常が認められた場合は適切な処置を行う 7. 筋肉痛 筋攣縮本邦の臨床試験 2-8) において CPK の増加 (7.8%) ならびに筋攣縮 筋肉痛がみられることがあるので 定期的に血中 CPK 値を測定するなど 慎重に観察し 異常がみられた場合は適切な対処を行う 8. 腸管憩室炎 本剤投与中に消化管穿孔を起こした症例の報告がある 憩室炎の既往 合併例には慎重 5

な投与が必要である なお 消化管穿孔が疑われる症状が認められた場合には 腹部 X 線検査 CT 検査等を実施する 9. 間質性肺炎本邦で本剤投与中に間質性肺炎を起こした症例の報告 8 がある 治療開始前に KL-6 値測定 胸部 X 線検査 ( 必要であれば CT 検査 ) 等を行い 間質性肺炎の既往 合併 65 歳以上の高齢 喫煙歴などのリスク因子を考慮する 投与中の患者で発熱 咳 呼吸困難等の呼吸器症状がみられた場合には 速やかに経皮的酸素濃度測定 KL-6 値測定 胸部 X 線検査 ( 必要であれば CT 検査 ) 等を実施する 10. 周術期の管理本剤投与中の周術期リスク また 手術後の創傷治癒に関するエビデンスは十分でない 現段階では 周術期には本剤の休薬を含む慎重な対応を行い 局所症状に注意して手術部位感染の早期発見に努める その診断においては CRP 白血球数も参考とするが 休薬による関節リウマチの再燃との鑑別が必要である 手術後は創がほぼ完全に治癒し 感染の合併がないことを確認した後の再投与が望ましい 11. 高齢者高齢者において 重篤な有害事象の発現率の上昇が認められている 本剤は主として腎臓から排泄されるが 高齢者では腎機能が低下している場合が多いので 用量に留意して 患者の状態を観察しながら 患者の状態に応じて本剤 2mg を1 日 1 回など 減量を考慮すること 12. 静脈血栓塞栓症国内外臨床試験 2-7) で 3492 例中 24 例 (0.7%) 国内の臨床試験で 2 名 (0.4%) の患者に深部静脈血栓症 肺塞栓症が発現している 8) 因果関係は不明であるが 治療開始前に静脈血栓塞栓症のリスクを評価し 観察を十分に行いながら慎重に投与すること 異常が認められた場合には適切な処置を行うこと 13. 薬剤相互作用 8) 本剤の主たる排泄経路は腎で有り 有機アニオントランスポーター (OAT)3 の基質である プロベネシドは OAT3 を阻害することにより 本剤の血中濃度を上昇する可能性がある 本剤にプロベネシドを併用する場合は 本剤の減量を考慮すること 14. ワクチン接種 帯状疱疹 ( 水痘 ) 麻疹 風疹 おたふくかぜ BCG などの生ワクチン接種は, 本剤投 6

与中は禁忌である また, 生ワクチン接種は 本剤投与中止後 一定の間隔を空けるこ とが望ましい 接種に際しては併用薬剤や年齢 肝 腎機能障害など患者背景を考慮す る必要がある 15. 妊婦 産婦 授乳婦臨床試験において催奇形性が疑われる症例はないが 生殖発生毒性試験において催奇形性が認められている 8) また ラットで乳汁への移行が報告されているので 妊婦 産婦 授乳婦への投与はしないこと 妊娠可能な婦人には本剤投与中 投与終了後 少なくとも 1 月経周期は適切な避妊を行うように指導すること 一般社団法人日本リウマチ学会調査研究委員会生物学的製剤使用ガイドライン策定小委員会委員長杉山英二 (2017.8.20) 文献 1. Journal of Immunology 2010;184:5298-307. 2. Annals of the Rheumatic Diseases 2017;76:88-95. 3. Arthritis & Rheumatology 2017;69:506-17. 4. The New England Journal of Medicine 2016;374:1243-52. 5. Annals of the Rheumatic Diseases 2015;74:333-40. 6. The Journal of Rheumatology 2016;43:504-11. 7. The New England Journal of Medicine 2017;376:652-62. 8. 医薬品インタビューフォームオルミエント錠. 日本イーライリリー株式会社 2017 7

生物学的製剤 JAK 阻害薬投与中における発熱 咳 呼吸困難に対するフローチャート 発熱 咳 呼吸困難 (PaO2,SpO2 の低下 ) 胸部 X 線 CT 身体所見 臨床検査 生物学的製剤 JAK 阻害薬一旦中止 呼吸器内科医 放射線専門医の読影 実質性陰影 間質性陰影 喀痰培養 血液培養 抗酸菌染色 培養 いずれかで陽性 抗菌薬治療が無効 ないし悪化で病原体不明 すべて陰性 血中 β D グルカン (β DG) 測定可能なら誘発喀痰ないし BAL で Pneumocystis 菌体染色 PCR インフルエンザ マイコプラズマ クラミジア レジオネラの検査 β DG,PCR とも陰性 細菌性肺炎 または結核 β DG,PCR および他の病原体すべて陰性 薬剤性肺炎リウマチ肺など β DG または PCR 陽性 ニューモシスチス肺炎 (PCP) 他の病原体検査で陽性 PCP 以外の非定型肺炎 8