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栃木県 宇都宮市北部に分布する花崗岩質岩の岩石学的研究 ( 西川 清水 川野 ) 粗粒の岩石で 節理面に沿って茶褐色の着色が認められるが内部は新鮮であり 中粒 ~ 粗粒の斜長石 粗粒の黒雲母を特徴的に含む 宇都宮花崗岩質岩南部型は 最大面積を有する岩体の南側 および調査地南部の小規模岩体から構成され 露頭規模での産出が多い 試料は淡灰色を呈する細粒 ~ 中粒の岩石で 表面付近はやや茶褐色に変色しているものの 内部は比較的新鮮である 中粒の黒雲母を特徴的に含み 稀にカリ長石の巨晶が認められる 小河川の露頭では方状節理が発達しており 節理面に茶褐色の酸化物が沈着している 第 1 図地質概略図高橋 吉川 (2008) を一部改変 図中の黒丸は北部型 白丸は南部型の試料採取位置を示し 記号に添えられている数値 記号は試料名を表す の全岩 K-Ar 年代がそれぞれ得られている ( 吉川,1998; 吉川ほか,2001) そして 主として段丘堆積物や沖積層からなる第四系がこれらの基盤岩 新第三紀火山岩類を覆っている ( 吉川ほか,2010) 3. 野外および鏡下観察 本地域に分布する花崗岩質岩は 後述するように化学成分に組成間隙が認められることから北部型と南部型に区分される ただし 野外においては両者の関係は明瞭ではない 以下 この区分に基づき宇都宮花崗岩質岩の特徴を述べることとする 3.1 野外観察宇都宮花崗岩質岩北部型は 本調査地域において最大の面積を有する岩体の北側を占めている 大規模な露頭としては確認することができないが 産状から現地性の転石と判断される試料を採取した 尾根付近から採取した試料は 暗灰色を呈する細粒 中粒の岩石で やや粗粒の石英 斜長石 中粒の黒雲母を特徴的に含む 表面は僅かに風化するが 内部は極めて新鮮である 谷間の小河川沿いから得られた試料は 暗灰色を呈する中粒 ~ 3.2 鏡下観察宇都宮花崗岩質岩北部型は 鏡下では完晶質で 斑状組織 シリイット組織を呈する 主要構成鉱物は石英 斜長石 カリ長石 黒雲母であり 副成分鉱物として褐簾石 ジルコン 不透明鉱物を含む 石英はほとんど他形を呈し 粒径が0.1mm から3mm まで変化する 稀に融食形を示す結晶も含まれ またジルコンを包有するものも認められる 斜長石は自形から半自形を呈し 長径は0.3mm から4.6mm で 稀に5.8mm に達するものもある アルバイト式双晶や累帯構造が顕著で カリ長石を包有したものや集片状に産するものも認められる カリ長石は他形を呈し 粒径は0.1mm から3.5mm である パーサイト構造が顕著であり 稀に石英との微文象連晶が認められる 黒雲母は褐色から茶褐色の多色性を示し 他形を呈する 結晶は部分的に緑泥石に変質している 褐簾石は他形を呈し 淡褐色の多色性を示す 粒径は 0.6mm で 周縁部に赤鉄鉱を伴う 宇都宮花崗岩質岩南部型は 鏡下では斑状組織 シリイット組織を呈する完晶質の岩石である 石英 斜長石 カリ長石 黒雲母を主要構成鉱物とし 褐簾石 ジルコン 不透明鉱物が副成分鉱物として含まれる 石英はほとんど他形で 多くは0.2mm から0.5mm の粒径を呈し 最大で4mm に達する 稀に融食形を呈する場合があり カリ長石と共に微文象連晶が認められる 斜長石は自形の柱状で その長径は1mm から3.8mm を呈する 双晶や集片状をなしているものも認められる カリ長石は他形で 2.3mm から2.5mm の粒径を呈し アルバイト カールスバッド双晶が顕著である 黒雲母は他形を呈し 粒径は0.1mm から0.8mm のものがほとんどで 稀に2mm に達する 一部は緑泥石に変質している 28

地球環境研究,Vol.17(2015) 4. 全岩化学組成 前述のように宇都宮花崗岩質岩に含まれる有色鉱物は黒雲母であり 角閃石は含まれない 吉川ほか (2010) は 宇都宮花崗岩質岩と周辺の酸性火砕岩類を足尾山地に分布する中禅寺型酸性岩類と対比しているが 中禅寺型酸性岩類に分類される花崗斑岩 中禅寺アダメロ岩 古峯ヶ原花崗閃緑岩 皇海アダメロ岩はいずれも角閃石を含んでいるため ( 矢内,1973) 比較検討の対象には相応しくない 本論では 活動時期が93 86Ma に遡るが (Shibata and Miller, 1963; 河野 植田,1964;Sudo et al., 1998;Uto et al., 1997) 足尾山地の後期白亜紀 古第三紀酸性岩類の中で有色鉱物として黒雲母のみを含有する沢入花崗閃緑岩 ( 川野,2011) と化学的特徴の比較検討を行う 全岩化学組成は 立正大学地球環境科学部環境システム学科設置の蛍光 X 線分析装置 ( リガク社製 ZSX Primus Ⅱ) を用いて求めた 分析方法は 基本的に川野 (2010) に基づいているが 理論マトリックス補正計算は de Jongh モデルを用い L.O.I. (loss on ignition) を含む補正計算 ( 山田,2010) を施した 測定した元素は 主成分元素である Si Ti Al Fe Mn Mg Ca Na K P と微量元素である Ba Cr Co Cu Ga Nb Ni Pb Rb Sr Th V Y Zn Zr の合計 25 元素である 川野 (2010) では取り扱っていない Co Ga Th Zn については 産業技術総合研究所が提供する18 個の岩石標準試料の Co-Kα Ga-Kα Th-Lβ 1 Zn-Kα 線の計数値を用いた検量線を作 第 2 図ノルム An-Ab-Or 三角図 (O Connor, 1965). To; トーナル岩 Gd; 花崗閃緑岩 Ad; アダメロ岩 Gr; 花崗岩 成し 分析を行った なお すべての元素について 検量線の相関係数は0.99 以上である 得られた分析値をノルム Ab An Or 三角図に点示した ( 第 2 図 ) 図に明らかなように 宇都宮花崗閃緑岩は北部型から南部型にかけて An 成分が減少し Or 成分が増加する変化傾向が認められる 北部型では 3 試料が花崗閃緑岩 1 試料が花崗岩の領域に点示される 花崗岩の領域に点示される試料は14031904であり 採取位置が南部型の試料と近接している ( 第 1 図 ) 一方 南部型は全てが花崗岩の領域に点示される 第 3 図 SiO 2に対する主成分元素の変化沢入花崗閃緑岩の分析値は川野 (2011) による 29

栃木県 宇都宮市北部に分布する花崗岩質岩の岩石学的研究 ( 西川 清水 川野 ) 分析結果を SiO2に対する各酸化物図に点示した ( 第 3 図 ) この図には比較のために足尾山地の沢入花崗閃緑岩体の値も示した 北部型の SiO2は67 70wt% 南部型は 73 75wt% を示し 3wt% ではあるが組成差が認められる TiO2 Al2O3 Fe2O3 MgO CaO P2O5は SiO2の増加と共に北部型から南部型へと減少する傾向を示す MnO は SiO2の増加と共に北部型から南部型へと微減している Na2O は SiO2の増加による変化傾向は認められない K2O は SiO2の増加と共に北部型から南部型へと増加する傾向が顕著であり このことは南部型にカリ長石の巨晶が含まれることと調和的である 沢入花崗閃緑岩体と比較した場合 宇都宮花崗岩質岩の TiO2 MnO MgO CaO P2O5の変化傾向は沢入花崗閃緑岩体のそれと重複し 有為の差は認められない Al2O3や Na2O は沢入花崗閃緑岩体に比してやや乏しく Fe2O3は富む傾向がある 沢入花崗閃緑岩体の K2O は SiO2の増加と共に微減する傾向が認められるが 宇都宮花崗岩質岩は増加の傾向が認められ 大きな違いとなっている 第 4 図に SiO2に対する A.S.I.(aluminum saturation index) の関係を示す 宇都宮花崗岩質岩は全試料の A.S.I. が1.0を越えており パーアルミナスな特徴を有し 第 4 図 SiO 2 に対する A.S.I. (aluminum saturation index) の変化沢入花崗閃緑岩の分析値は川野 (2011) による ている 特に 南部型では A.S.I. が1.20を越える試料も認められる 北部型 南部型共に SiO2の増加につれ A.S.I. が上昇する傾向が見られるが 後者の A.S.I. の増加傾向は顕著である 言い換えれば 北部型の変化傾向と南部型のそれは一致しておらず それぞれが別々の傾向を示している また 宇都宮花崗岩質岩は沢入花崗閃緑岩体よりも全体的に A.S.I. が大きい特徴が認められる 第 5 図に SiO2に対する各微量元素の変化傾向を示す 第 5 図 SiO 2に対する微量元素の変化沢入花崗閃緑岩の分析値は川野 (2011) による 30

地球環境研究,Vol.17(2015) 南部型の Cr は 5 試料中 3 試料で低濃度のため定量で きなかった SiO2 の増加につれ Ba Co Ga Sr V Zn Zr は減少し Nb Ni Pb Rb Th Y は増加する Cr や Cu は明瞭な増減が認められない また 北部型では Cu V Zn の分散が著しい 南部型のみで見ると Cu Ni Th などは SiO2の増加と共に減少する傾向がある 沢入花崗閃緑岩体と比較した場合 Ba Cu Zn Zr はやや富み Cr Ni は乏しい傾向が認められる 他の微量元素では大きな差は認められない 特に Cu と Zn においては 沢入花崗閃緑岩体に比べ著しく富む特徴がある 5.Sr Nd 同位体組成 測定した試料は宇都宮花崗岩質岩南部型の12080904である 同位体比測定用試料の抽出は清水 川野 (2015) に従い 立正大学地球環境科学部棟のクリーンルーム内で行った 同位体比は新潟大学自然科学研究科の質量分析計 (Finnigan 社製 MAT262) を用いて測定した 測定方法は Miyazaki and Shuto(1998) に従った 試料の 87 Sr/ 86 Sr と 143 Nd/ 144 Nd 比は 86 Sr/ 88 Sr=0.1194と 146 Nd/ 144 Nd =0.7219でそれぞれ規格化した この研究期間中に測定した Sr 同位体標準試料 NBS987の 87 Sr/ 86 Sr 比は0.710201± 0.000011(n=2) であり Nd 同位体標準試料 JNdi-1の 143 Nd/ 144 Nd 比は0.512063±0.000014(n=1) であった 分析した試料について NBS987が0.710251 JNdi-1が 0.512106であるとして補正を施している なお 宇都宮花崗岩質岩の初生値やε 値の算出に際しては 沢入花崗閃緑岩体の平均値である90Ma を用いた 宇都宮花崗岩質岩の Sr 同位体比初生値は 0.707282であり 沢入花崗閃緑岩体の初生値 (0.7063 0.7074) の範囲内に含まれ 第 6 図 εsr εnd 図沢入花崗閃緑岩 筑波花崗岩類および八溝山地新期花崗岩類の分析値は川野ほか (1999) による る 第 6 図にε 図を示す この図には比較のために 沢入花崗閃緑岩 八溝山地新期花崗岩類 筑波花崗岩類 ( 川野ほか,1999) の値も点示した 宇都宮花崗岩質岩は 沢入花崗閃緑岩や筑波花崗岩類などと重複することはなく 沢入花崗閃緑岩体に比してεNd 値が小さい領域に点示される また 筑波花崗岩類は広い領域を占めているが 宇都宮花崗岩質岩はその変化傾向のやや左下方にずれて示される 八溝山地新期花崗岩類も広い範囲を占めるが 宇都宮花崗岩質岩はその範囲の中間位置に点示される 6. 考察 6.1 宇都宮花崗岩質岩北部型と南部型の関係まず 宇都宮花崗岩質岩の北部型と南部型の関係について検討を行う 野外において 両者の岩石を比較すると 北部型の岩石が暗灰色を呈するのに対し 南部型は淡灰色を呈している これは両者を区分する基準となった SiO2 量の違いを表している すなわち 北部型は南部型に比してやや SiO2に乏しいため暗色を呈し 南部型はより珪長質であるために淡灰色を呈するに至ったと考えられる また 両者は共に斑状組織 シリイット組織を呈しており 比較的浅所に貫入した岩体であることがうかがえる 石英とカリ長石による微文象連晶は急冷したことを示す代表的な組織であり それが両岩型に認められることも これらが浅所に貫入してきたことを示している 主成分元素組成の変化傾向を見ると SiO2に組成差はあるものの 北部型から南部型にかけてほぼ連続的に推移している しかしながら SiO2に対する A.S.I. の変化を見ると北部型と南部型の変化傾向は明らかに異なっている すなわち 前者の変化傾向が SiO2の増加に対して比較的緩やかなのに対して 後者の変化は極めて急である A.S.I. の増加は アルミニウムに富む堆積岩との反応や 分化によって残ったマグマ中に Al2O3が濃集していったことを示しており 北部型と南部型では堆積岩との反応や分化の様式に違いがあることを暗示している 南部型の Sr 同位体比初生値は0.707282であり 堆積岩と反応したマグマの値として矛盾はない しかしながら 南部型は SiO2 量が70wt% を越え マグマの温度が低下していたと推定されるため 急激な A.S.I. の上昇を引き起こすほどの大規模な堆積岩との反応が生じたとは考えがたい また マグマの粘性も上昇していたと考えられ 同化の影響が岩体全体に行き渡ることは困難である 結晶分化作用の違いについて検討を行うため 第 7 図 31

栃木県 宇都宮市北部に分布する花崗岩質岩の岩石学的研究 ( 西川 清水 川野 ) 第 7 図 Rb (Y+Nb) 図および Rb Sr 図 hbl; 角閃石 cpx; 単斜輝石 opx; 斜方輝石 pl; 斜長石 bt; 黒雲母 kf; カリ長石 沢入花崗閃緑岩の分析値は川野 (2011) による に Rb-(Y+Nb) 図および Rb-Sr 図を示す 図中の円の中心から伸びる直線は それぞれの鉱物の分別結晶作用による残液の組成変化方向を表している ( 村田 吉田, 1985; 田中ほか,1987; 川野,2009) 宇都宮花崗岩質岩について見ると 北部型から南部型にかけて顕著な変化傾向の屈曲が認められるが これは分化によって取り除かれる鉱物の種類が異なっていたと考えれば説明できる すなわち 宇都宮花崗岩質岩北部型の変化傾向は主として斜長石を分別した方向性と一致しており 南部型は主としてカリ長石を分別した変化傾向を示している さらに検討するため Rb に対する Rb/Sr 図を第 8 図に示す 通常の単一マグマでは Rb の増加に伴い Rb/Sr 比はなめらかに右上がりの変化傾向を示す 宇都宮花崗岩質岩第 8 図 Rb Rb/Sr 図沢入花崗閃緑岩の分析値は川野 (2011) による 北部型は Rb の増加に伴い 緩やかな右上がりの変化傾向を示し 沢入花崗閃緑岩体のそれと一致する しかしながら 南部型の Rb はほとんど変化しないものの Rb/ Sr 比は大きく変化し 北部型のそれと大きく異なっている これらの微量元素組成の図は 北部型と南部型で分別した鉱物種が異なっていたことを示唆しており 同一マグマであっても温度 圧力の変化によって分別する鉱物種が大きく変化したか あるいは それぞれが異なるマグマから導かれたことを意味している 両岩型は斑状からシリイット組織を示すことや微文象連晶の存在から浅所貫入が示唆され 貫入してきたマグマがその場で分化することなく固結したことを暗示している そのため 単一マグマ起源とした場合 地下深部で分化したマグマ上部から南部型が そのやや下方の僅かに分化が進んでいない部分から北部型がそれぞれ浅所に貫入したと考えられる その際 南部型にカリ長石の巨晶が見られることから 分化したマグマの上部にはカリ長石が濃集していた可能性があり それが微量元素の組成変化に大きく影響したと推定される 北部型と南部型で A.S.I. の変化が異なっていたことも 分化程度が異なっていたマグマから派生したとすれば説明が可能である 一方 両岩型が異なるマグマ起源とした場合は それぞれ化学的性質や分化の程度が異なっていたマグマからもたらされたために A.S.I. や微量元素図において北部型と南部型の変化傾向が異なったと考えられる 本研究では宇都宮花崗岩質岩が単一マグマ起源か複数マグマ起源かは断定でき 32

地球環境研究,Vol.17(2015) ないが 鉱物化学組成分析や同位体比分析を進めることで明らかにできるものと考えられる 6.2 宇都宮花崗岩質岩と周辺の花崗岩類との関係前述のように 足尾山地 八溝山地および筑波山地には後期白亜紀から古第三紀に活動した花崗岩類が分布している ( 矢内,1972; 河田,1951; 高橋,1982) この中で有色鉱物組み合わせが類似する足尾山地の沢入花崗閃緑岩と全岩化学組成について比較検討を行った 主成分元素組成では宇都宮花崗岩質岩が沢入花崗閃緑岩体に比して Fe2O3にやや富み Na2O にやや乏しい特徴を示し 両者のマグマが異なっていたことを暗示している 両者の A.S.I. も大きく異なっており 宇都宮花崗岩質岩の方がよりパーアルミナスな性格を有している 微量元素組成でも 宇都宮花崗岩質岩と沢入花崗閃緑岩体を比べると 前者が Cu Zn に富み Cr や Ni に乏しいといった違いが認められる このうち Cu や Zn に富む性質は本調査地域内にあった富井鉱山 ( 西原,1964) と関係があるのかもしれない このように 全岩化学組成の違いから 両者が同一の起源物質からもたらされたと考えることは困難である また 第 6 図に示したεSr εnd 値でも 宇都宮花崗岩質岩と沢入花崗閃緑岩体はそれぞれ異なる領域に点示され 同位体組成から見ても同源であるとは言いがたい また 筑波花崗岩類の同位体組成とも大きく異なり 関連性を見いだすことはできない 一方 宇都宮花崗岩質岩は八溝山地の新期花崗岩類の同位体組成の変化範囲内に点示され 起源物質の同位体組成が類似している可能性がある しかしながら 八溝山地の新期花崗岩類には有色鉱物として角閃石が含まれており 同位体組成は類似していてもマグマの化学的性質が異なっていたと考えられ 成因的に関連があるとは言いがたい これらの事実から 宇都宮花崗岩質岩は 周辺に分布する後期白亜紀 - 古第三紀花崗岩類とは異なる起源をもつ火成岩体であると結論される ただし 同位体比分析は南部型の試料しか行っていないため 北部型についても測定が望まれる 7. まとめ宇都宮市北部に分布する花崗岩質岩について岩石学的研究を行った 野外 鏡下観察 全岩化学分析の結果から 岩石は北部型と南部型に区分される 両岩型は 斑状組織 ~シリイット組織を呈し 微文象連晶が認められることから浅所貫入した岩体である また 北部型は南 部型に比して A.S.I. の変化が著しく 微量元素組成においても大きく組成が変位することから 両者は異なる結晶分化作用を経て形成されたものか 別々のマグマから派生した可能性がある 全岩化学組成や Sr Nd 同位体組成の検討から 宇都宮花崗岩質岩は関東北縁に分布する後期白亜紀 - 古第三紀花崗岩類とは異なる起源を有すると推定される 今後 鉱物化学組成分析や同位体比分析を行うことによって その成因が明らかにされると考えられる 謝辞本研究では 全岩化学分析において立正大学地球環境科学部環境システム学科の蛍光 X 線分析装置 (ZSX Primus II) を用いた 環境システム学科関係者各位には機器の導入および保守管理に関して日頃よりご協力いただいている 同位体比測定用試料の抽出に際しては 本学科の清水洋教授 本学地球環境科学研究科の大久保悠花氏に便宜を図っていただいた 同位体比の測定に関しては 新潟大学理学部のサティッシュ クマール教授 高橋俊郎准教授 今中里華子氏にご協力頂いた 以上の方々に謹んでお礼申し上げる 引用文献端山好和 (1991) 古領家古陸の復元. 地質雑,97, 475-491 石原舜三 (1981) 花崗岩活動からみた東北日本と西南日本. 構造地質研究会誌,26, 67-70. 石原舜三 (1982) 地球化学的見地よりみた棚倉構造線. 月刊地球,4,141-144. 川野良信 (2009) 足尾山地, 白亜紀松木深成岩体の Sr,Nd 同位体岩石学的研究.MAGMA,90,1-19. 川野良信 (2010) 蛍光 X 線分析装置による珪酸塩岩石および堆積物の定量化学分析. 地球環境研究,12,85-97. 川野良信 (2011) 蛍光 X 線分析による足尾山地, 沢入花崗閃緑岩体の全岩化学組成. 地球環境研究,13,25-31. 川野良信 加々美寛雄 端山好和 矢内桂三 (1999) 足尾帯に産する後期白亜紀 古第三紀花崗岩類の Sr Nd 同位体組成. 地質学論集,53,287-297. 河野義礼 植田良夫 (1964) 本邦火成岩の K-A dating(1). 岩石鉱物鉱床学会誌,51,127-148. 河田喜代助 (1951) 八溝 鷲ノ子 鶏足各山塊における火成活動. 地質雑,57, 439-448. 河田喜雄 (1966) 奥日光流紋岩類 - 足尾山地北方における白亜紀火山岩類. 地球科学,84,6-13. Miyazaki, T. and Shuto, K. (1998)Sr and Nd isotope ratios of twelve GSJ rock reference samples. Geochem. J., 32, 345-350. 村田守 吉田武義 (1985) 紀伊半島中部, 大峯地域の中新世 I タイプおよび S タイプ花崗岩質岩の微量化学組成. 岩鉱,80,227-245. 33

栃木県 宇都宮市北部に分布する花崗岩質岩の岩石学的研究 ( 西川 清水 川野 ) 西原元男 (1964) 栃木県富井鉱山における鉱脈の帯状分布についての考察. 鉱山地質,14,22-28. O Connor, J. T.(1965)A classification for quartz-rich igneous rocks based on feldspar ratios, in Geological Survey research. U.S. Geol. Surv. Prof. Paper 525B, 79-84. Shibata, K. and Miller, J. A.(1963)Potassum-argon ages of the Sori granodiorite, Ashio Mountain block. Bull. Geol. Surv. Japan, 14, 102. 清水隆一 川野良信 (2015) 立正大学における Sr Nd 同位体比測定用試料の調整. 地球環境研究,17,17-25. Sudo, M., Uto, K., Anno, K., Ishizuka, O. and Uchiumi, S. (1998)SORI93 biotite : A new mineral standard for K-Ar dating. Geochem. J., 32, 49-58. 高橋雅紀 吉川敏之 (2008)3.5.2 宇都宮地域. 日本地質学会編 日本地方地質誌 3 関東地方,234-241. 高橋裕平 (1982) 筑波地方のカコウ質岩類の地質. 地質雑, 88, 177-184. 田中久雄 吉田武義 青木謙一郎 (1987) 阿武隈山地, 田人岩体の地球化学的研究. 核理研研究報告,20, 85-98. Uto, K., Ishizuka, O., Matsumoto, A., Kamioka, H. and Togashi, S.(1997)Laser-heating 40 Ar/ 39 Ar dating system of the Geological Survey of Japan : system outline and preliminary results. Bull. Geol. Surv. Japan, 48, 23-46. 山田康治郎 (2010) 鉱石 岩石分析等で有効なガラスビード法を用いた蛍光 X 線分析法. リガクジャーナル,41,24-32. 矢内桂三 (1972) 足尾山地北部の後期中生代酸性火成岩類その1 - 地質 -, 岩石鉱物鉱床学会誌,67,193-202. 矢内桂三 (1973) 足尾山地北部の後期中生代酸性火成岩類その2 - 岩石並びに造岩鉱物の記載とその考察 -, 岩石鉱物鉱床学会誌,68,6-29. 吉川敏之 (1998) 栃木県宇都宮地域に分布する新第三系の地質と層序. 地質雑,104,346-356. 吉川敏之 (2006) 栃木県北部に分布する中新世珪長質火山岩の形成年代. 地質雑,112,760-769. 吉川敏之 (2007) 栃木県宇都宮市付近の第三系から得られたフィッション トラック年代. 日本地質学会第 114 年学術大会講演要旨,85-85. 吉川敏之 高橋雅紀 岡田俊典 (2001) 足尾山地東縁に分布する中新世火山岩の K-Ar 年代. 地質雑,107,41-45. 吉川敏之 山元孝広 中江訓 (2010) 宇都宮 地域の地質. 地域地質研究報告 (5 万分の1 地質図幅 ), 産総研地質調査総合センター,79p. Petrological study of granitic rocks in northern part of Utsunomiya City, Tochigi Prefecture NISHIKAWA Kohtaroh *, SHIMIZU Ryuichi ** and KAWANO Yoshinobu * * Faculty of Geo-environmental Science, Rissho University ** Graduate School of Geo-environmental Science, Rissho University Abstract : Granitic rocks occurring in northern part of Utsunomiya City, Tochigi Prefecture were studied. The rocks were divided into two types : northern-type and southern-type. Both rock types show porphyritic and seriate textures with micrographic intergrowth, indicating that the granitic rocks intruded at shallow level. The northern-type has remarkable changing of aluminum saturation index and trace elements compared with the southern type. It can be considered that both types were derived from different magmas, respectively. Furthermore, the granitic rocks have different origin from late Cretaceous to Paleogene granitic rocks distributed in northern Kanto area based on their petrological features. Key Words : Tochigi Prefecture, Utsunomiya City, granitic rocks, chemical composition, Sr and Nd isotope 34