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Ⅰ. 当院の現状 1999 年に日本看護協会が策定したガイドラインより転倒を予測するための転倒リスクアセスメントツールの有用性が示され 当院でも 転倒予防を目的に入院患者の転倒の危険度を予測し 2003 年から転倒アセスメントシートを使用していた しかし 年間転倒事象数は約 500 件あり 骨折等の

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3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

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第 8 部 精神科専門療法 通則 1 精神科専門療法の費用は 第 1 節の各区分の所定点数により算定する ただし 精神科専門 療法に当たって薬剤を使用したときは 第 1 節及び第 2 節の各区分の所定点数を合算した点数 により算定する ぼう 2 精神科専門療法料は 特に規定する場合を除き 精神科を標

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幻覚が特徴的であるが 統合失調症と異なる点として 年齢 幻覚がある程度理解可能 幻覚に対して淡々としている等の点が挙げられる 幻視について 自ら話さないこともある ときにパーキンソン様の症状を認めるが tremor がはっきりせず 手首 肘などの固縮が目立つこともある 抑うつ症状を 3~4 割くらい

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リスパダール1 セロクエル25 ベゲタミンB マイスリー 10 セルシン5 アリセプト5 1 回 1 錠 1 日 4 回 1 回 1 錠 1 日 4 回 1 回 2 錠 1 日 1 回就寝前 1 回 1 錠 1 日 1 回就寝前 1 回 1 錠 1 日 2 回夕食後 就寝前医 1 回 1 錠 1 日

また リハビリテーションの種類別では 理学療法はいずれの医療圏でも 60% 以上が実施したが 作業療法 言語療法は実施状況に医療圏による差があった 病型別では 脳梗塞の合計(59.9%) 脳内出血 (51.7%) が3 日以内にリハビリテーションを開始した (6) 発症時の合併症や生活習慣 高血圧を

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高齢者の適正な医薬品使用に向けた在宅医療の現状と課題 1. 在宅医療の役割 2. 在宅医療における薬剤治療 3. 高齢者の薬剤治療に関する在宅医療のエビデンス 東京大学医学部在宅医療学拠点山中崇 1 1. 在宅医療の役割 1 生活を支える医療 & 緩和ケア Home-Based Primary Care 2 生活の場での治療 Hospital at home (Home hospital) < 条件 >24 時間にわたり 病院レベルの治療 ケア 適切な診断 治療を受けることができることが必要 < 効果 > 医原性合併症の減少 ( 身体機能の低下 ケアに対する患者の希望を尊重 ) 医療費の抑制 点滴治療 早期退院モデル 疾患治療モデル COPD の急性増悪 (Cochrane Database of Systematic Reviews 2012;5:CD003573) 慢性心不全の非代償期 (PLOS ONE 2015;10(6); e0129282) 2

合的に評価 支援人生 在宅医療 : ひとりひとりの生き方を実現するための支援 配慮総生命 ( 生理学的健康 ) に対する支援 生活の支援 おいしいものを食べる? 趣味? 旅行? 生き方 ( 自己実現 ) に対する配慮 人生に納得できたか? 他者との関係をしめくくることができたか? 本人 家族の選択 3 生活を支える医療 としての在宅医療 病状の安定化 治療の継続 病態の悪化に対する治療 新たに生じた疾患の治療 生活の維持 改善 苦痛の緩和 症状の緩和 4

2. 在宅医療における薬剤治療 1 薬剤処方の適正化 2 服薬アドヒアランスの向上 3 在宅医療のメリット 5 1 薬剤処方の適正化 薬剤名 有害事象 1 スルピリド パーキンソニズム 2 メマンチン 傾眠 食欲低下 3 グリベンクラミド 低血糖 ( 意識障害 ) 4 抑肝散 偽性アルドステロン症 5 バルプロ酸 高アンモニア血症 6 リスペリドン ADL 低下 嚥下機能障害 深部静脈血栓症 7 セレコキシブ 腎機能障害 8 ワルファリン 抗菌薬との薬物相互作用 長期経管栄養療法微量元素欠乏症 6

在宅医療開始前の薬剤治療 在宅医療開始後の薬剤治療 認知症患者の BPSD に対する薬剤処方 不眠 疼痛 便秘に対する薬剤処方 7 2 服薬アドヒアランスの向上 服薬状況の把握 生活にあわせた薬剤処方の調整 図 8

9 3 在宅医療のメリット 薬剤処方が一元化されやすい ふだんの生活の様子がわかる 薬剤処方の適正化 生活の状況をふまえた薬剤処方 管理 服薬指導を行いやすい 服薬状況を把握しやすい 服薬状況に応じた処方見直しが可能 服薬アドヒアランス向上のための対策 10

3. 高齢者の薬剤治療に関する在宅医療のエビデンス エビデンスは少ない エビデンス構築の必要性 11 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015 Ⅳ 領域別指針 13 在宅医療 CQ: 多剤内服は在宅高齢者の有害事象と関連するか? 多剤内服は在宅高齢者の有害事象の発生と関連する ( エビデンスの質 : 不十分 推奨度 : 強 ) CQ: 処方の見直しはベンゾジアゼピン系睡眠薬 抗不安薬 抗精神病薬の減薬に寄与するか? 処方内容の見直しはベンゾジアゼピン系睡眠薬 抗不安薬 抗精神病薬の減薬に寄与する ( エビデンスの質 : 低 推奨度 : 弱 ) CQ: ベンゾジアゼピン系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高めるか? ベンゾジアゼピン系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高める ( エビデンスの質 : 低 推奨度 : 強 ) CQ: 抗コリン作用を有する薬剤は在宅高齢者の有害事象発生を高めるか? 抗コリン作用を有する薬物は在宅高齢者の有害事象発生リスクを高める ( エビデンスの質 : 不十分 推奨度 : 弱 ) 12

在宅医療特に慎重な投与を要する薬物のリスト 薬物 代表的な一般名 主な副作用 理由 推奨される使用法 エビデンスの質と推奨度 ベンゾジアゼピン系睡眠薬 抗不安薬 フルラゼパム ハロキサゾラム ジアゼパム トリアゾラム エチゾラムなどすべてのベンゾジアゼピン系睡眠薬 抗不安薬 過鎮静 認知機能低下 せん妄 転倒 骨折 運動機能低下 長時間作用型は使用エビデンスのすべきでない トリアゾ質 : 高ラムは健忘のリスクが推奨度 : 強あり使用すべきでない ほかのベンゾジアゼピン系も可能な限り使用を控える 使用する場合最低必要量をできるだけ短期間使用に限る 対象は 75 歳以上の高齢者および 75 歳未満でもフレイル ~ 要介護状態の高齢者 ( 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015) 13 在宅医療における PIMs PPOs 対象 : 定期的な訪問サービスを受けた 65 歳以上の高齢者 430 名 ( 女性 276 名 ) 85.0±8.3 歳方法 : STOPP, START criteria を用いた調査結果 : 平均処方薬剤数 6.1±3.0 1 種類以上の PIMs あり 34.0% PIMs のリスク因子 疾患 ( オッズ比 ) 便秘症 4.52 関節炎 4.20 高血圧症 4.09 最近の転倒の既往 3.37 6 種類以上の薬剤処方 2.97 心不全 2.75 糖尿病 2.17 1 種類以上の PPOs あり 60.0% PPOs のリスク因子 疾患 ( オッズ比 ) 冠動脈疾患 24.10 末梢閉塞性動脈疾患 19.16 骨粗鬆症 14.57 糖尿病 14.21 脳梗塞 / 一過性脳虚血発作 8.25 慢性腎臓病 4.15 高尿酸血症 / 痛風 3.90 6 種類以上の薬剤処方 3.33 (Hamano J, et al. General Medicine 2014;15(2):117-125.) 14

STOPP criteria の該当割合 慢性便秘症患者に対するカルシウム拮抗薬の使用 17.2% 関節炎に伴う軽度関節痛に対する 3 ヶ月を超える NSAIDs の使用 3.7% 長時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤の 1 ヶ月を超える使用 3.5% 中等症 ~ 重症高血圧症 心不全患者に対する NSAIDs の使用 3.3% 高血圧治療の第 1 選択薬としてのループ利尿薬の単剤処方 または足背浮腫のみに対するループ利尿薬の処方 3.0% (Hamano J, et al. General Medicine 2014;15(2):117-125.) 15 在宅患者における薬物治療に伴う副作用ー全国調査からの考察ー 対象者 :5,447 人 ( 全国 1,890 薬局 ) 男性 2,031 名 女性 3,377 名平均年齢 79.7 歳 薬剤師が訪問時に ADRs を発見した割合 14.4% ADRs として多かった症状 : めまい ふらつき 立ちくらみ等 消化器障害 臨床検査値異常 意識障害 皮膚症状 被疑薬として多かった薬剤 : 催眠鎮静剤 抗不安剤 精神神経用剤 その他の中枢神経系用薬 ADRs との関連要因 : 女性 自宅 7 剤以上の内服薬剤数 ( 恩田光子 他. 薬剤疫学 2016;21(1):1-11.) 16

在宅医療における残薬整理件数が多かった薬効中分類 対象 :3,590 件 (1,746 名 ) 男性 636 名 女性 1,101 名平均年齢 81.0 歳独居 40.4% 1. 制酸剤 8.2% 2. 消化性潰瘍剤 6.9% 3. 血管拡張剤 6.4% 4. 血圧降下剤 5.5% 5. 下剤 浣腸剤 5.5% 6. 催眠鎮静剤 抗不安剤 4.3% ( 恩田光子 他. Jpn J Drug Inform 2015;17(1):21-33.) 17 認知症を認める在宅療養患者における処方薬剤の減薬と QOL (Sakakibara M, et al. J Pharm Pharm Sci 2015;18(5):705-712.) 18

軽度認知機能障害を有する 75 歳以上の在宅療養患者では 介護者の状況が服薬アドヒアランスに影響する (Foebel AD, et al. Aging Clin Exp Res 2012;24:718-721. ) 19