2016/3/20 と動物の つの衛 を 指すシンポジウム 医療分野で問題となる 耐性菌感染症とその対策 抗菌薬適正使 を中 に 東北 学病院総合感染症科 東北 学 学院医学系研究科 具 芳明 総合感染症学講座
Alexander Fleming (1881 1955) 不 分な濃度のペニシリンにさらすことによって容易にペニシリン耐性菌を作ることができます 同じことは 体でも時に発 します ( ノーベル医学 理学賞受賞記念講演, 1945 年 ) http://www.time.com/time/specials/2007/article/0,28804,1677329_1677708_1677828,00.html
1941 1943 1945 ペニシリン臨床実験に成功 ペニシリンの製造法改良と 量 産 市中病院でもペニシリンを使 ロンドンの病院内で分離されたペニシリン耐性 ブドウ球菌 1946 年 14% 1947 年 38% 1948 年 59% Lancet. 1948;2(6530):641 4.
新たな抗菌薬の開発は滞っている WHO The evolving threat of antimicrobial resistance Options for action (2012)
2050 年には耐性菌による死亡が悪性腫瘍を超える 薬剤耐性菌 :1000 万 薬剤耐性菌現在は 70 万 悪性腫瘍 :820 万 Resistance: Tackling a crisis for the health and wealth of nations The Review on Antimicrobial Resistance Chaired by Jim O Neill (December 2014)
ボーダーレス時代の 薬剤耐性菌
さまざまな耐性菌 グラム陽性菌 MRSA, VRE, PRSP など グラム陰性菌 腸内細菌科 :ESBL 産 菌, カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE), キノロン耐性菌など 多剤耐性緑膿菌 多剤耐性アシネトバクター
ブドウ球菌に占める MRSA の割合 State of the World s Antibiotics, 2015. CDDEP: Washington, D.C.
全国サーベイランス (JANIS) における ブドウ球菌に占める MRSA の割合 (%) 70 60 50 40 30 20 10 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 JANIS 検査部門公開データを用いて作成 http://www.nih janis.jp/report/kensa.html
接触予防策強化による MRSA 検出例の減少 Am J Infect Control 2013;41:1105 1106.
病院感染型 (HA) と市中感染型 (CA)MRSA HA MRSA CA MRSA 薬剤感受性多剤耐性比較的多くの抗菌薬に感性 主な SCCmec の遺伝子型主に type II 主に type IV 毒素種々の毒素 PVL が特徴的 ( 日本ではまれ ) 流行の場所院内学校 幼稚園 家庭 感染 ( 保菌 ) 者の年齢主に高齢者主に若年者 小児 感染部位各種臓器主に皮膚 軟部組織 治療経過 難治性 反応良好 ( ただし肺炎は重症化 ) MRSA 感染症の治療ガイドライン (2013) より一部改変 学 以下の 6.25% が保菌環境感染誌 2008;23:245 250. 児の 4.3% が保菌 J Clin Microbiol 2005;43:3364 72.
腸菌に占める ESBL 産 菌の割合 2011 2014 年の各国のデータを使用第 3 世代セファロスポリン耐性率を元に集計 State of the World s Antibiotics, 2015. CDDEP: Washington, D.C.
カルバペネム系抗菌薬の販売状況 パキスタンエジプトインド Lancet Infect Dis 2013;13:1057 98
メタロ β- ラクタマーゼ産 菌の広がり WHO: The evolving threat of antimicrobial resistance, Options for action (2012)
肺炎桿菌に占めるカルバペネム耐性菌の割合 State of the World s Antibiotics, 2015. CDDEP: Washington, D.C.
輸 感染症としての持ち込みリスク 院内での集団発 のリスク プラスミド伝達による複数菌種への拡散リスク http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/1726 source/drug resistance/idsc/iasr news/5213 pr4182.html http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr sp/2302 related articles/related articles 418/5215 dj4186.html
耐性菌が 生まれる原因は 抗菌薬への耐性化 ( 細菌 / ばい菌が抗生物質に効かなくなる現象 ) は細菌 / ばい菌そのものが突然変化したり 病院などの医療機関で処方される抗菌薬 ( 抗生物質 ) が身体に投与されることで起こります 抗菌薬の過剰投与 / 過剰処方 患者が処方された抗菌薬を途中でやめてしまう 畜産業 養殖などにおける抗菌薬の過剰投与 医療機関における不十分な院内感染対策 手指衛生や環境整備が不十分 新しい抗菌薬の開発の遅れ WHO のポスターを根井貴仁先生 ( 日本医科大学附属病院感染制御部 ) が日本語訳
本での抗菌薬使 状況
本の病院における抗菌薬使 量 Japan 1) US 2) Netherland 3) Penicillins (J01C) 4.27 25.28 29.8 Cephalosporins (J01DB E) 6.5 17.18 6.1 Carbapenem (J01DH) 1.6 0.69 0.35 Quinolines (J01M) 0.41 0.935 5.5 Glycopeptides (J01XA) 0.49 3.33 0.46 Total (J01) 15.49 61.18 54.7 Investigation period 2010 1998 2004 2001 No of hospitals 193 74 59 1. Infection 2013;41:415 423. 2. Am J Infect Control 2004;32:470 485. 3. J Antimicrob Chemother 2005;55:805 808. DDDs/100 bed days
日本における抗菌薬の消費状況 注射薬 + 内服薬 2009 YR 2011 YR 抗菌薬消費の 部分は内服薬 全国で毎 200 万 に投与されている 2013 YR 注射薬 2009 YR 2011 YR 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 全国で毎 15 万 に投与されている 2013 YR 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 テトラサイクリン (J01A) ペニシリン (J01C) スルフォンアミド トリメトプリム (J01E) アミノグリコシド系薬 (J01G) 他の抗菌薬 (J01X) DDDs/1000 inhabitant/day アンフェニコール (J01B) セファロスポリン及び他のβラクタム系薬 (J01D) マクロライド リンコサマイド及びストレプトグラミン (J01F) キノロン (J01M) 村 優 先 ( 三重 学医学部附属病院薬剤部 ) 提供
他国との 較が可能になったことで える我が国の特徴 テトラサイクリン (J01A) セファロスポリン及び他のβラクタム系薬 (J01D) マクロライド リンコサマイド及びストレプトグラミン (J01F) 他の抗菌薬 (J01X) ペニシリン (J01C) スルフォンアミド トリメトプリム (J01E) キノロン (J01M) 計 (J01B, J01G and J01R) DDDs/1000 inhabitant/day ギリシャルーマニアベルギーフランスキプロスルクセンブ イタリアアイルランドポルトガルマルタアイスランドクロアチアスペインイギリススロバキアポーランドフィンランドブルガリアチェコ共和国ノルウェーデンマークリトアニアドイツスロベニアスウェーデンオーストリアハンガリーラトビアエストニアオランダ 本 我が国では ペニシリン系の使 量が少なく 第 3 世代セファロスポリン系 キノロン系 マクロライド系の使 率が い 0 5 10 15 20 25 30 35 Surveillance report: ecdc 2012 の外来区分を引用し 作図 村 優 先 ( 三重 学医学部附属病院薬剤部 ) 提供
年齢群別外来抗菌薬使 量 ( 仙台市 葉区 宮城県 崎市 ) 25 20 DID 15 10 5 0 0 4 5 9 10 14 15 19 20 24 25 29 30 34 35 39 40 44 45 49 50 54 55 59 60 64 65 69 70 74 total 20 15 DID 10 5 0 0 4 5 9 10 14 15 19 20 24 25 29 30 34 35 39 40 44 45 49 50 54 55 59 60 64 65 69 70 74 total Tetracyclines (J01A) Cephalosporins and other beta lactams (J01D) Macrolides, lincosamides and streptogramins (J01F) Beta lactams, penicillines (J01C) Sulfonamides and trimethoprim (J01E) Quinolones (J01M) Other J01 classes 24th European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases (Barcelona) にて発表
本の抗菌薬使 の現状 1) 総量は多くない 2) より新しい広域抗菌薬が多く処 されている 3) 外来では 児への処 機会が多い
私たちに何ができるのか
耐性菌が 生まれる原因は 抗菌薬への耐性化 ( 細菌 / ばい菌が抗生物質に効かなくなる現象 ) は細菌 / ばい菌そのものが突然変化したり 病院などの医療機関で処方される抗菌薬 ( 抗生物質 ) が身体に投与されることで起こります 抗菌薬適正使 市 教育 抗菌薬の過剰投与 / 過剰処方 患者が処方された抗菌薬を途中でやめてしまう 畜産業 養殖などにおける抗菌薬の過剰投与 院内感染対策の充実 市 教育 抗菌薬開発迅速診断法の開発 医療機関における不十分な院内感染対策 手指衛生や環境整備が不十分 新しい抗菌薬の開発の遅れ WHO のポスターを根井貴仁先生 ( 日本医科大学附属病院感染制御部 ) が日本語訳
抗菌薬適正使 とは
感染症治療 予防の効果を最 にしつつ 薬剤耐性菌増加 副作 コストなどの問題を最 にするために 不適切な抗菌薬使 を制限するだけでなく 抗菌薬の選択 投与量 投与経路 投与期間を最適化することである Infectious Diseases Society of America and the Society for Healthcare Epidemiology of America Guidelines for Developing an Institutional Program to Enhance Antimicrobial Stewardship. Clin Infect Dis. (2007) 44 (2): 159 177
病院で う 抗菌薬適正使
抗菌薬適正使用の推進 各患者に対する適切な感染症診療 抗菌薬適正使用を支える仕組み photo: humblebee
抗菌薬適正使 推進のための推奨事項 (SHEA/IDSA ガイドライン ) 注射から経 薬への変更 (A-Ⅰ) PK-PD 理論などに基づいた抗菌薬投与の最適化 (A-Ⅱ) De-escalation やターゲットを絞った抗菌薬の合理化 (A-Ⅱ) Cycling 療法 (C-Ⅱ) 教育の実施 (A-Ⅲ) 採 品 の制限届出制許可制 (A-Ⅱ) 積極的介 とフィードバック (A-Ⅱ) Core strategies ガイドラインと Local data の活 (A-Ⅰ) 抗菌薬オーダーシートの利 (B-Ⅱ) 特定の感染疾患に対する併 療法 (A-Ⅱ) Timothy H, et al: Clin Infect Dis. 2007;44:159 村 優 先 ( 三重 学医学部附属病院薬剤部 ) 提供のスライドを改変
感染症専 医の積極的介 感染症専 医が介 することで ブドウ球菌菌 症の予後が改善するとの報告多数 1-5) 感染症専 医の有効活 としてコンサルテーションシステムや地域で共有しての活 1. Clin infect Dis 1998;27:478 486. 2. Clin Infect Dis 2008;46:1000 1008. 3. Journal of Infection 2009;59:232 239. 4. Am J Med 2010;123:631 637. 5. Eur J Clin Microbilol Infect Dis 2012;31:2421 2428.
薬剤師の役割は きい 提供 : 岐阜県総合医療センター感染症内科鈴木純先生
外来で う 抗菌薬適正使
本の外来診療において 上気道炎患者の60% において抗菌薬が処 されていた 第 3 世代セフェム系 46%, マクロライド系 27%, キノロン系 16% 上気道炎 : 感冒 急性気管 炎 急性副 腔炎 急性咽頭炎 ( 細菌性と同定されたものを除く ) 急性咽喉頭炎 急性上気道感染症 Intern Med 2009;48:1369 1375.
1. 気管 炎 : 検査や抗菌薬治療は不要 2. 急性咽頭炎 :A 群溶連菌と確定診断したときのみ抗菌薬を投与 3. 急性 副 腔炎 : 重症や 峰性のときのみ抗菌薬を投与 4. 普通感冒 : 抗菌薬を処 してはならない Ann Intern Med. Published online 19 January 2016 doi:10.7326/m15 1840
プライマリ ケアにおける抗菌薬使 ガイドライン 外来診療 のシンプルなガイドラインが必要 公的機関の作成が望ましい スウェーデンベルギー 港
外来でのグラム染 活 前田雅子, 前田稔彦, 松元加奈, 森田邦彦 耳鼻咽喉科診療所でのグラム染色検査によってもたらされた抗菌薬の選択 使用の変化 : 予備的検討 日本プライマリ ケア連合学会誌 2015;38:335-339
処 動への介 プライマリ ケア医に上気道炎診療ガイドラインを教育した上で4 群に割り付け 1. コントロール群 ( 観察のみ ) 2. コンピュータが抗菌薬以外の代替処 を提 3. カルテに抗菌薬処 理由を必ず記載する 4. 抗菌薬処 率を他の医師と 較した成績が送付される 理由記載群と成績 較群で抗菌薬処 が有意に減少した JAMA. 2016;315:562 570.
市 教育 患者教育
抗菌薬に関する市 の知識と意識についてのインターネット調査 抗菌薬は細菌に効く 抗菌薬はウイルスに効く はいいいえわからない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 第 89 回日本感染症学会総会 ( 京都 2015 年 4 月 ) で発表
抗菌薬に関する市 の知識と意識についてのインターネット調査 風邪で受診したら必ず抗菌薬を処方してほしい 常備薬として処方箋なしで抗菌薬を購入したい 強くそう思うそう思うわからないそうは思わないまったくそうは思わない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 第 89 回日本感染症学会総会 ( 京都 2015 年 4 月 ) で発表
11 18 欧州抗菌薬啓発デー 11 16 22 世界抗菌薬啓発週間
http://antibioticawarenessjp.jimdo.com/
http://antibioticawarenessjp.jimdo.com/
Take Home Message 薬剤耐性菌の増加は世界的な問題であり 本も例外ではない 本の耐性パターン 抗菌薬処 の特徴を踏まえ 外来診療も視野に抗菌薬適正使 を 涯教育プランに組み込むことが望まれる 市 教育も合わせて っていく必要がある