2015/11/ ( 公財 ) 建築技術教育センター平成 27 年度普及事業第 4 回勉強会於 : 大垣ガスほんのりプラザ 近似応答計算の要点 (1 質点系の応答 ) 齋藤建築構造研究室齋藤幸雄 現行の耐震規定 ( 耐震性能評価法 ) 超高層建築物等を除いて 静的計算 (

Similar documents
Microsoft Word - 4_構造特性係数の設定方法に関する検討.doc

<5F5F4A AD690BC82A8926D82E782B981698F4390B3816A>

施設・構造1-5b 京都大学原子炉実験所研究用原子炉(KUR)新耐震指針に照らした耐震安全性評価(中間報告)(原子炉建屋の耐震安全性評価) (その2)

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

耐震性能評価 ( 耐震診断 の方法 近似応答計算により建築物の各階 各方向の応答層間変形角を求める ( 限界耐力計算と同等 応答層間変形角が ( 耐震 設計クライテリアを満足することを確認する ( 耐震設計クライテリア 入力地震動のレベルに応じて建築物に付与すべき耐震耐震性能 : 稀に発生する地震動

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 構造研究グループ荒木康弘 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~

text5

「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う島根原子力発電所3号機の耐震安全性評価結果中間報告書の提出について

Microsoft Word - ⑩建築2森清.doc

Microsoft PowerPoint - 5yamazaki.pptx

<4D F736F F F696E74202D D D4F93AE89F097E D F4390B32E B93C782DD8EE682E

別添資料 地下階の耐震安全性確保の検討方法 大地震動に対する地下階の耐震安全性の検討手法は 以下のとおりとする BQ U > I BQ UN I : 重要度係数で構造体の耐震安全性の分類 Ⅰ 類の場合は.50 Ⅱ 類の場合は.25 Ⅲ 類の場合は.00 とする BQ U : 地下階の保有

横浜市のマンション 耐震化補助制度について

施設・構造3-4c 京都大学原子炉実験所研究用原子炉(KUR)の耐震安全性評価の妥当性確認に係るクロスチェックについて(報告)

Super Build/FA1出力サンプル

を 0.1% から 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% まで増大する正負交番繰り返し それぞれ 3 回の加力サイクルとした 加力図および加力サイクルは図に示すとおりである その荷重 - 変位曲線結果を図 4a から 4c に示す R6-1,2,3 は歪度が 1.0% までは安定した履歴を示した

国土技術政策総合研究所 研究資料

目次構成

Slide 1

<88AE3289F188CF88F589EF E786264>

Microsoft PowerPoint - 構造設計学_2006

スライド タイトルなし

第6章 実験モード解析

<4D F736F F D20819A915391CC88CF88F589EF955D89BF8F E968CE3816A B78EFC8AFA2E646F63>

<4D F736F F D208E9197BF A082C68E7B8D A815B82CC8D5C91A28AEE8F C4816A2E646F63>

text6

が繰り返し生じる可能性がある 2011 年東北地方太平洋沖地震では 東北 関東地方のみならず震源から 700km ほど離れた大阪でも長周期地震動により超高層建築物などに長時間の揺れが観測された 建設地点による振幅の大小はあるものの 免震構造においても免震層の応答変位ならびに上部構造の絶対応答加速度が

集水桝の構造計算(固定版編)V1-正規版.xls

<4D F736F F D208C46967B926E906B82CC96C6906B8C9A95A8899E939A89F090CD>

国土技術政策総合研究所資料

<8E9197BF2D375F8DC489748FF389BB82CC8C9F93A295FB964081A695CF8D5882C882B52E786477>

構造力学Ⅰ第12回

建電協Template

<4D F736F F F696E74202D20906C8D488AC28BAB90DD8C7689F090CD8D488A D91E F1>

<4D F736F F D2096D88E4F BE095A88D C982E682E989A189CB8DDE8B7982D197C090DA8D878BE095A882CC8C9F92E8>

Microsoft Word - 技術資料Vol.2.docx

技術基準改訂による付着検討・付着割裂破壊検討の取り扱いについてわかりやすく解説

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

地震動予測手法の現状

説明書 ( 耐震性 ) 在来木造一戸建て用 ( 第二面 ) 基礎根入れ深さ深さ ( mm ) 住宅工事仕様書 適 基礎の 立上り部分 高さ ( mm ) 厚さ ( mm ) 基礎伏図 不適 各部寸法底盤の寸法厚さ ( mm ) 幅 ( mm ) 基礎詳細図 基礎の配筋主筋 ( 径 mm ) 矩計図

FC 正面 1. 地震入力 1-1. 設計基準 準拠基準は以下による 建築設備耐震設計 施工指針 (2005 年版 ): 日本建築センター FH = KH M G KH: 設計用水平震度 KH = Z KS W : 機械重量 FV = KV M G = 機械質量 (M) 重力加速度 (G) KV =

Microsoft PowerPoint - 解析評価説明(社外)rev18.ppt

[ 振動の発生 ] 第 1 章 土木振動学序論 [ 振動の発生 ] 外力と内力内力が釣り合って静止釣り合って静止した状態 :[: [ 平衡状態 ] 振動の発生振動の発生 :[ 平衡状態 ] が破られ 復元力復元力が存在すると振動が発生する つまり (1) 平衡 ( 静止 ) 状態が破られる (2)

杭の事前打ち込み解析

BR構-02-02

技術解説_有田.indd

Microsoft PowerPoint - fuseitei_6

Microsoft Word - ★その1a.doc

2009 年 11 月 16 日版 ( 久家 ) 遠地 P 波の変位波形の作成 遠地 P 波の変位波形 ( 変位の時間関数 ) は 波線理論をもとに P U () t = S()* t E()* t P() t で近似的に計算できる * は畳み込み積分 (convolution) を表す ( 付録

フジタ技術研究報告第 号. はじめに天井に生じる地震力を 吊りボルト上端と野縁受けの間に設置したブレースではなく周囲の壁等に負担させることで耐震性を確保するクリアランスなし天井については これまでいくつかの研究がなされている例えば ) が 特に的検討については例が少なく条件も限定的である このクリア

国土技術政策総合研究所 研究資料

ETABS 機能概要 お問い合せ先 株式会社ソフトウェアセンター 東京都千代田区岩本町 大和ビル6 階 TEL (03) FAX (03)

GEH-1011ARS-K GEH-1011BRS-K 1. 地震入力 参考 1-1. 設計基準 使用ワッシャー 準拠基準は以下による M10 Φ 30 内径 11 t2 建築設備耐震設計 施工指針 (2005 年版 ): 日本建築センター FH = KH M G KH: 設計用水平震度 KH =

Microsoft PowerPoint - H24 aragane.pptx

<4D F736F F F696E74202D F8AF991B B8A EA8EAE816A816990E096BE89EF8E5189C18ED C5816A>

公開小委員会 鉄筋コンクリート構造計算規準の改定案

日本地震工学会 大会 梗概集 建築基礎設計への利用を前提とした地盤変位の簡易評価法 新井洋 1) 1) 正会員国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部 主任研究官博士 ( 工学 ) 要約建築基礎設計への利用を前提に 主とし

070406

<4D F736F F D208D7E959A82A882E682D18F498BC78BC882B B BE98C60816A2E646F63>

建築支保工一部1a計算書

Microsoft PowerPoint - 知財報告会H20kobayakawa.ppt [互換モード]

<4D F736F F F696E74202D FCD814091CF906B814196C6906B814190A7906B E B8CDD8AB B83685D>


<4D F736F F D208D5C91A297CD8A7793FC96E591E6328FCD2E646F63>

第 3 回日本地震工学シンポジウム ( 対象建物モデル本研究の対象建物は, 図 に示す L 型平面を有する RC 造 3 階建ての学校建物とした これを平面的にブロック とブロック に分割し, それぞれを 質点モデルへ置換し, スラブバネにより接続した並列 2 質点モデルを構築した (

検討の背景 10Hz を超える地震動成分の扱いに関する日 - 米の相違 米国 OBE (SSE ) EXCEEDANCE CRITERIA 観測された地震動が設計基準地震動を超えたか否かの判定振動数範囲 : 1Hz - 10Hz (10Hz 以上は評価対象外 ) 地震ハザードのスクリーニング (Ne

Taro-2012RC課題.jtd

第 12 章構造特性係数の設定方法に関する検討 319

本日話す内容

7 章問題解答 7-1 予習 1. 長方形断面であるため, 断面積 A と潤辺 S は, 水深 h, 水路幅 B を用い以下で表される A = Bh, S = B + 2h 径深 R の算定式に代入すると以下のようになる A Bh h R = = = S B + 2 h 1+ 2( h B) 分母の

CLTパネル構法の構造性能と設計法に関する調査

PowerPoint Presentation

< B795FB8C6094C28F6F97CD97E12E786477>

新潟県中越沖地震を踏まえた地下構造特性調査結果および駿河湾の地震で敷地内の揺れに違いが生じた要因の分析状況について

PowerPoint Presentation

フジタ技術研究報告第 号 1. はじめに 吊り天井のこれまでの地震による被害を受け 1 年 月 1 日に新たな天井の耐震性に関する告示 1) が施行された 告示ではブレースにより水平力を負担し かつ天井の周囲に大きな隙間 ( クリアランス ) を設けて地震時の衝突を防ぐことを基本方針としている しか

Microsoft PowerPoint - zairiki_11

<4D F736F F D2095BD90AC E8D918CF08D9091E D862E646F63>

液状化判定計算(道示編)V20-正規版.xls

Microsoft Word - 01_はじめに

Microsoft Word - 第5章.doc

Microsoft PowerPoint - elast.ppt [互換モード]

Microsoft PowerPoint - 構造設計学_2006

. 軸力作用時における曲げ耐力基本式の算定 ) ここでは破壊包絡線の作成を前提としているので, コンクリートは引張領域を無視した RC 断面時を考える. 圧縮域コンクリートは応力分布は簡易的に, 降伏時は線形分布, 終局時は等価応力ブロック ( 図 -2) を考えることにする. h N ε f e

平成 23 年度 JAXA 航空プログラム公募型研究報告会資料集 (23 年度採用分 ) 21 計測ひずみによる CFRP 翼構造の荷重 応力同定と損傷モニタリング 東北大学福永久雄 ひずみ応答の計測データ 静的分布荷重同定動的分布荷重同定 ひずみゲージ応力 ひずみ分布の予測 or PZT センサ損

問題 2-1 ボルト締結体の設計 (1-1) 摩擦係数の推定図 1-1 に示すボルト締結体にて, 六角穴付きボルト (M12) の締付けトルクとボルト軸力を測定した ボルトを含め材質はすべて SUS304 かそれをベースとしたオーステナイト系ステンレス鋼である 測定時, ナットと下締結体は固着させた

Microsoft PowerPoint - シミュレーション工学-2010-第1回.ppt

FEM原理講座 (サンプルテキスト)

<4D F736F F F696E74202D F8D91918D8CA48D EF CF6955C F8E52816A2E >

第 14 章柱同寸筋かいの接合方法と壁倍率に関する検討 510

PowerPoint プレゼンテーション

止めを備え 一階正面は 一般的に入り口の大戸や出格子付きの腰付障子が設けられ 上部に出の小さい小庇を付ける 2 階の柱間には板連子又は板格子をはめ 一部を顕し貫付きの土壁とする このような町家が街路沿いに建ち並ぶことで町並みに統一感のある外観構成となっており 景観的価値を生みだしている 平面形状での

動的耐震性能計測器 DERIS 動的耐震診断システムによる調査報告書 高塙モデルルーム 計測日 : 2012 年 3 月 16 日 計測地 : 秋田県能代市字高塙 65 発注者 : 株式会社サンワ興建 計測担当 : 株式会社住宅地盤技術研究所

例 e 指数関数的に減衰する信号を h( a < + a a すると, それらのラプラス変換は, H ( ) { e } e インパルス応答が h( a < ( ただし a >, U( ) { } となるシステムにステップ信号 ( y( のラプラス変換 Y () は, Y ( ) H ( ) X (

05設計編-標準_目次.indd

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF A957A8E9197BF816A205B8CDD8AB B83685D>

強化プラスチック裏込め材の 耐荷実験 実験報告書 平成 26 年 6 月 5 日 ( 株 ) アスモ建築事務所石橋一彦建築構造研究室千葉工業大学名誉教授石橋一彦

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

-

Transcription:

2015.11.29 ( 公財 ) 建築技術教育センター平成 27 年度普及事業第 4 回勉強会於 : 大垣ガスほんのりプラザ 近似応答計算の要点 (1 質点系の応答 ) 齋藤建築構造研究室齋藤幸雄 現行の耐震規定 ( 耐震性能評価法 ) 超高層建築物等を除いて 静的計算 ( 地震時の応力計算や保有水平耐力の算定等 ) によっており 地震時の応答変位等を直接算定 ( 動的応答計算 ) するものではない 保有水平耐力計算では 静的荷重増分解析が一般的な手法として用いられている 2000 年の法改正で規定された限界耐力計算は地震時の応答 ( 変位 ) を近似的に求める手法で 時刻歴応答計算に次いで高度な計算方法である RC 造や S 造で限界耐力計算を行う場合は 一般に静的荷重増分解析に基づいた荷重増分法によっている 各種耐震診断における耐震性能評価の基本も同じで 建物の変形性能を直接評価できるものではない 2000 年 : 建築基準法の改正で伝統構法木造の合法的な設計が難しくなる耐久性規定を除いて告示に従わなくても設計可能な限界耐力計算が新たに規定される 2001 年 : 建築学会大会で 限界耐力計算を用いた伝統構法の設計法の提案 2002 年 ~2003 年 : 全国で講習会を開催 2004 年 : 限界耐力計算を用いた伝統構法に関する設計法出版 ( 耐震補強設計にも適用可能 ) 2007 年 : 法改正で確認申請の厳格化の一環として構造計算適合性判定が導入され 設計者の負担増大 2008 年 ~2009 年 : 伝統的構法の設計法作成委員会 2010 年 ~2012 年 : 伝統的構法の設計法作成委員会 ( 再 ) 標準設計法 ( 案 ) 詳細設計法 ( 案 ) の作成 耐震性能評価法 ( その 1) 伝統 ( 的 ) 木造建築物の耐震性能評価には 変形性能を考慮できる耐震性能評価法が必要このためには 地震時の応答変位を直接求める方法が有効である 地震時の応答変位を求める方法としては 1 時刻歴応答解析 : 入力地震動 1/100 秒刻みの加速度地震時の時々刻々の変位 加速度等が求まる ( 超高層建築物等に適用 ) 2 限界耐力計算に用いられている近似応答計算入力地震動 加速度応答スペクトル比較的簡易に最大応答変位が求まる スタート 2007.6.30 以降 耐震性能評価法 ( その 2) 第四号建築物 構造計算は不要 階数 2 延べ面積 500m2 かつ高さ 13m 軒高 9m 令 46 号 2 項ハの適用 ( 第 3 節木造 ) No 壁量計算令 46 条 伝統木造 Yes 第一号 限界耐力計算は性能型 ( 安全性を証明 ) 法 20 条 1 号 高さ 60m 超時刻歴解析 限界耐力計算令 82 条 5 第二号 法 20 条各号に応じた構造基準の適用 高さ 31m 超 法 20 条 2 号イ 保有耐力計算令 82 条ー 82 条 4 第三号 許容応力度計算や保有耐力計算は 仕様規定に基づいている 法 20 条 3 号イ 高さ 31m 以下 許容応力度計算令 82 条 6 近似応答計算 :1 質点系加速度応答スペクトルと等価線形化法により 非線形領域の応答を求める 1 質点系加速度応答スペクトル ( 告示 ) 固有周期と地盤種別から応答 ( 加速度 ) を求める 等価線形化法 ( 非線形を等価な線形として扱う ) 建物が弾性なら 固有周期は常に一定で 減衰 ( 内部粘性減衰 ) は 5% 建物が非線形 ( 損傷を受けた状態 ) の場合 固有周期 ( 変形に依存 ) は変化 ) 等価周期減衰 等価減衰 ( 履歴による減衰 ) 等価周期と等価減衰から弾性と同様の扱いで応答 ( 変位 ) が求まる 1

m 2 m 1 k 2 x 1 k 1 x 2 減衰を無視すると 振動数方程式 2 質点系の固有値計算 ( 固有周期 モードの計算 ) (k 11 1 質点系自由振動方程式固有周期 MX+CX+KX=0 T=2π m/k X= X 1 m 1 0 M= 0 m 2 11 ー m 1 ω 2 ) (k 22 -m 2 ω 2 )-k 12 22 12 k 21 =0 U 2 -k 11 +m 1 ω 2 = 1 階の変位を設定すれば U 1 k 12 2 階の変位が求まる X 2 X 1 =U 1 e iωt K= k k 11 12 k 11 k 21 k 22 11 =k 1 +k 2 k 22 =k 2 k 12 =k 21 =-k 2 応答加速度 (cm/s cm/s2) 入力地震動の加速度応答スペクトル 質量 ばねばねおよびおよび減衰減衰からなるからなる線形の 1 自由度系に地震動が地震動が作用作用したとき その応答の最大値を 1 自由度系の固有周期周期毎に求めてグラフ化したもの 500 1/100 秒刻み 減衰がパラメータ 減衰 5% 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 入力地震動 固有周期 (S) 1 質点系だと振動モードは一つしかなく 質量 ばね 減衰で応答計算 1 質点系へのモデル化 (1 自由度系 ) 最も基本になる振動系 記録波の加速度応答スペクトル 振動系 質量 バネ :Q/δ ダッシュポット :h ( 内部粘性減衰 ) バネ + ダッシュポット 1.0 1 秒より長周期では 告示のスペクトルは十分なレベル k m 固有周期 T=2π m/k 1 質点系の特徴 振動系として 固有周期は m( 質量 ) とばね (k) だけで決まる ( 減衰は小 ) モード 固有周期は一つしかない ばねが弾性であれば 固有周期は常に一定 入力が大きくなれば振幅が大きくなる 系が損傷を受けるとばねが小さくなるため 固有周期が長くなる 振幅の大きさは 入力地震動の大きさと系の固有周期や減衰に依存する 1 質点系加速度応答スペクトルは 減衰を設定すれば 簡単に求まる 加速度 (cm/s cm/s2) 1200 1000 500 加速度応答スペクトル ( 告示 ) 解放工学的基盤では全国どの場所でも同じ 解放工学的基盤 極めて稀に発生する地震動 2 種地盤 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 周期 (S) 解放工学的基盤稀地震 : 極稀地震 1:5 3.5 2

1 質点系の応答 地震時に質点に作用する加速度( 応答加速度 ) によって生じるせん断力 ( 応答せん断力 ) は 系の長周期化と履歴による減衰 ( エネルギー消費 ) により低減して行き やがてある変位時の耐力 ( 復元力 ) と一致する この時の変位が最大応答変位である ( 建物には耐力 ( 復元力 ) 以上のせん断力は作用しない 実大振動台実験では記録された最大応答せん断力がその建物の耐力である ) 計算値より大きい場合が多い 応答せん断力と耐力 ( 復元力 ) がどの変位で一致するか予測できないために 変位を少しずつ増加させ ( 変位増分法 ) 作用せん断力と耐力が一致する時の変位を求めている (RC 造等は荷重増分法による ) 変形モード算定方法 線形 ( 弾性 ) 時はその 1 階 2 階の剛性から固有値計算により変形モードを求める 非線形になると 1 階の変位増分を行う時 2 階の変位を求めるためには 1 前ステップの変形よりも大きい最も近傍の変位点の等価剛性を用いて変位を計算 (1 階と 2 階の剛性比で補正 :2004 年 : 伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル ) C 2 /C b 2 W 2 /W 1 0.7 なら精度よく求まる 2 前ステップの変形よりも大きい最も近傍の変位点の等価剛性を用いて固有値計算を行う ( 固有モードの算定 ) 固有モードから変位を計算 ( この場合は当該ステップの等価剛性と固有モード対応していない (JSCA 関西レビュー委員会 ) Qn = M u S A T SD S A 2 = π 応答加速度から応答変位へ 2 Q (Q n ) Q R 応答値の算出 加速度応答スペクトル ( 加速度と固有周期の関係 ) を応答せん断力と応答変位の関係に変換 応答加速度から応答せん断力へ Δ R M U S A -S D スペクトル 必要性能スペクトル (Qn-S D ) 真の応答値 建物全体の復元力 h eq-n h eq-1 h eq-2 Δ(S D ) 建物の変形が大きくなると等価減衰が大きくなり 応答加速度が小さくなる (Fhで低減) 等価剛性は応答変位から求まるので 3 精度を上げるためには 2 で求めた等価剛性を用いて固有値計算を行う この後 固有モードから応答変位を計算し 等価剛性を算定 固有モードと等価剛性がほぼ一致するまで繰り返し計算を行う ( 収斂計算 ) 4 収斂計算は 3 と同じ減衰の評価を等価 1 質点系ではなく 2 質点系の 1 階 2 階それぞれで行い ひずみエネルギーで重み付けをして 等価減衰を算定 k2 m1 k1 m と k により多くの組み合わせ 2 質点系の特徴とその扱い 1 階への影響は特に小さい 2 次 1 次 m2 1 次モードのみ対象 1 質点系として扱うために ( 変位増分法 :1 階の変位を増分 ) 特定変位での固有値計算 ( 収斂計算等 ):2 階の変位固有モードと固有周期の算定 ( 損傷限界以内であれば 1 階と 2 階の関係 ( モード ) は常に一定だが 損傷を受けると モードは変化する ) 等価な 1 質点系に置換 1 質点系としての応答変位 2 質点系に置換 (1 階 2 階の応答変位 ) K90 固有周期の長周期化例 K20 全面土壁のせん断応力度 固有周期の比 (K90/K20=4.5) T20/T90=2.12 (T: 固有周期 ) 固有周期の比復元力正勾配 : 小さくなる負勾配 : 大きくなる 3

Q 復元力特性と等価減衰 等価 ( 粘性 ) 減衰 (heq)=(1/4π) OAB 2/OAΔ 1/20rad 時 :0.124( 下図の場合 ) 減衰 :0.174(0.124+0.05) 0.05: 内部粘性減衰 A 損傷限界 :1/120rad の場合 減衰 :0.182 ( 初期剛性大の方が大きい ) 等価剛性 O 1/90 B 1/20 層間変形角 (rad) Δ 初期剛性と同じスリップ型 1 質点系として扱うための条件 1 京都市や大阪府の耐震診断 耐震改修に関する簡易計算マニュアル簡易に耐震性能評価ができるよう 1 質点系の応答を基本にしている ( 適応対象を 1 階 2 階の重量比や耐力比により規定 ) 条件 :2 階の剛性 耐力を大きくし 1 階のみが損傷を受ける 1 質点系の階高は 1 階の階高とする 2 大きな吹き抜け等で 1 階の重量が 2 階のおよそ 1/3 程度以下 (2 質点系との比較検討が望ましい ) 条件 :1 階と 2 階がほぼ同時降伏するよう補強 1 質点系の階高は (1 階 +2 階 ) の階高とする 低減率 減衰による加速度の低減率 減衰 1 質点系として評価するための条件 1:1 階 2 階同時降伏 1 階の重量が小さい場合 1 階と 2 階が同じ耐力であればOK 2:2 階はほぼ弾性 = 1 + 1 + 1が望ましい 1 + + 1 2 1の条件 1.2 R C0 C u2 =1.0の場合 1 階 2 階が同じ耐力 :0.5 =1.50 C u2 =3.0 :1.0 =1.33 C u2 =2.0 :2.0 =1.20 C u2 =1.5 :3.3 =1.14 C u2 =1.3 :5.0 =1.09 C u2 =1.2 :10.0 =1.05 減衰による応答加速度の低減 応答加速度の低減係数 (F h ) F h = 1.5/(1+10h) h=0.175(1/20rad 時 ) の場合 1.5/(1+1.75)= 0.55 固有周期の伸びによる低減係数を 0.6 とすると応答加速度の低減は 0.6 0.55=0.330 応答加速度 :1.2 0.330 p(0.85) q(1.0)=0.34(m/s 2 ) ( 第 2 種地盤 ) 1 階と 2 階の耐力バランス = 1 + 1 + 1 + + R C0 :R w や R h の値に対して 1 階と 2 階の層間変形角が同じになる時の C u2 R w :2 階の重量 /1 階の重量 R h :2 階の階高 /1 階の階高 C u2 1.2 R C0 C u2 4

金甚劇場の振動系 1 ①通りには2階の 水平力は伝達で きない 2 ロ ②通り 通り 通りには2階の 水平力の伝達は 可能 イ X方向は2質点系 Y方向は1質点系 と2質点系の振動 系が存在 金甚劇場の耐震補強設計クライテリア 積雪荷重を考慮しない場合 損傷限界層間変形角 代表層間変形角 1/90rad 安全限界層間変形角 代表層間変形角 1/20rad 安全限界層間変形角 最大層間変形角 1/15rad 積雪荷重 積雪量1m を考慮する場合 崩壊 倒壊限界層間変形角 代表層間変形角 1/15rad 崩壊 倒壊限界層間変形角 最大層間変形角 1/13rad 地盤種別 第2種地盤 1.5種地盤とする場合の根拠 地表面における加速度応答スペクトル 1質点系として扱う場合の質量 m2 地震ハザードステーション J-SHIS 防災科研 を 考慮 高山市伝建地区 表層30mの Vsが400m/s Tg g 0.3s m1+m2 1質点系の場合は 質量は m1 m2 とする m1 層の復元力の例 Ai せん断力係数分布 による検討 Ai 1 1/ αiーαi 2T/ 1+3T 1質点 m2+m1 系 Q1 m2 m1 0.2 A2 2階のせん断力係数算定用 固有周期 α2 2階の重量/ 2階 1階の重量 α2 0.9 0.7 0.5 0.5秒 1.06 1.20 1.36 1.0秒 1.08 1.25 1.45 m2 C2 1.08 0.2 Q2 m2 0.216 m1 C1 1.0 0.2 Q1 m2 m1 0.2 PΔ効果を考慮 層 せ ん 断 力 kn 合計 柱 横架材仕口 全面壁 小壁付き柱 柱ほぞ PΔ 層間変形角 10-3rad 5