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1. 経時的反復測定データ 臨床試験や実験などである処理に対する反応を検証するとき 同じ対象に対して繰り返してデータを測定する場合があります このように繰り返して測定されたデータを反復測定データ 繰り返し測定データ repeated measurement data などと呼びます 反復測定データのうち 特に 時間の経過に沿って観察されたデータのことを経時的測定データ 縦断的測定データ longtudnal data などと呼びます 経時的ではない反復測定データは 繰り返し実験のように測定の順序をランダムに変更出来るのに対して 経時的測定データは測定の順序を変更出来ないのが特徴になります 例 :Orthodont- 歯列矯正の成長データ小児 7 名 ( 男子 16 名 女子 11 名 ) の脳下垂体と翼突上顎裂の距離の成長を 8 歳から 14 歳まで追ったデータ dstance: 脳下垂体中心と翼突上顎裂の距離 (mm) age: 計測時の被験者の年齢 ( 歳 ) Subect: 被験者識別コード Sex: 被験者の性別図 1 Orthodont data

dstance 0 5 30 8 9 10 11 1 13 14 age Orthodont データからは : 女子 : 男子 男女とも age が上昇すると共に dstance も増える 正の相関がある 各群の中では age と dstance の関係は線形で近似出来そう 男子のほうが 女子より dstance の値が大きい age の上昇に伴い 男子のほうが女子に比べて dstance の増え方が大きい ( 男子のほうが 直線の傾きが大きい ) などの傾向が見られます 出典 : Potthoff, R. F. and Roy, S. N. (1964) A generalzed multvarate analyss of varance model useful especally for growth curve problems, Bometrka 51: 313-36 Pnhero, J. and Bates, D. (000) Mxed-Effects Models n S and S-PLUS, Sprnger 一般に 経時的測定データによる実験は 以下の目的と方法により計画されま す 目的 : 応答変数の経時的な変化の有無を測定する あるいは 複数の群 ( 例えばプラセボ群 vs. 処置群 男性 vs. 女性など ) の経時的な作用の比較を行う 対象 : 複数の群が存在する場合は サンプルを各群にランダムに割り付ける 測定 : まず処置を行う前の値 (baselne 値 ) を測定する さらに 処置後定め 3

られた時間間隔で継続して応答変数の値を測定する このようにして集められた経時的測定データは 目的に応じて以下のような方 法で群間比較されていきます. 各時点における群間比較 実験の目的が 測定時点ごとに独立に処置の効果を比較することである場合 時点ごとの検定を繰り返すことになります 検定方法 : 二群の比較であれば Welch s t-test もしくは Mann-Whtney U test 三群以上であれば一元配置分散分析 (One-way ANOVA) か Kruskal- Walls test を用います もちろん データの分布が正規分布であると見なせるときは t-test や ANOVA 正規分布とは異なる歪んだ分布であるときは Mann-Whtney test や Kruskal-Walls test を用います 図 Orthodont data( 時点ごとの群間比較 ) 図 に Orthodont データの各時点における Welch s t-test の結果を示します Baselne の時点で すでに有意ではありませんが男子のほうが値が大きい傾向が見られます そして 後半の 1 歳 14 歳時点では dstance の値に有意な差があることが分かります 3. 各時点における群間比較の問題点と注意点 4

前節で示した 各観測時点における応答変数の比較は単純で理解しやすいものです また 仮に観察の途中でサンプルが脱落して群ごとにサンプル数が異なってしまうような場合でも, 時点ごとに比較をすれば良いので応用面での利点もあります 一方で 上記のような各時点における群間比較には 以下に述べるような問題 点も存在します 経時測定データは baselne の値に依存する 各群が無作為に割り付けられた場合 baselne の値は誤差を除いて一定のはずです 例えば Orthodont データでの男女間の比較では 後半 1,14 歳時点で dstance に有意差が認められますが これは baselne 時に最初から存在した性差によるものなのか それとも性別により時間経過に伴う dstance の成長の程度に差があるからなのかは, 明らかではありません もし baselne に無視出来ない差があるときは 個体差を考慮した効果指標が必要になります たとえば baselne からの差 (change from baselne) baselne からの比 (percent change from baselne) 図 3 Orthodont data(baselne からの差の群間比較 ) 図 3 に Orthodont データの baselne からの差の群間比較を示します 図 3 から明らかなとおり 10 歳時 ( 時点差 ) 1 歳時 (4 時点差 ) において有意 差は認められず 14 歳時 (6 時点差 ) において初めて有意差が認められます 5

図 において 1 歳時までに見られた dstance の差は 成長に伴う性差の影響と言うより baselne 時の dstance の差を示したものに過ぎず むしろ 14 歳時において baselne 時の個体差を除いた上でまだ性別による差が認められたことにこそ注目すべきであると思われます 多重比較の問題 複数の時点の検定を同時に行う際は, 検定の多重性を考慮するために多重比較を行う必要があります 多重比較の方法としては, 次のような方法が考えられます Bonferron の多重比較 :k 回の検定を同時に行うとき 同時有意水準をα にするるためには 個々の検定の有意水準をα/k とします 図 3 の例であれば 検定の数は k=3 ですから 全体の有意水準をα=0.05 とするには, 個々の検定の有意水準をα/k=0.05/3= 0.0167 とする必要があります この Bonferron の多重比較の立場からすると 14 歳時の p=0.041 は有意とは言えなくなります ただし Bonferron の多重比較は一般に 保守的 と言われ 個々の有意水準を厳しくとりがちであるとされていますので 他の検定方法を検討すべきかもしれません 時点ごとの群間比較は経時測定データの特性を生かしていない つまり 時点ごとの群間比較では, それぞれのサンプルが時点を変えて 繰り返して測定される という経時測定データの特徴を全く使っていません 当然のことながら baselne において高い値をとるサンプルはそれ以降の時点においても高い値をとる傾向があるはずで有り こうした情報を生かしていない点で時点ごとの群間比較は 切れ味の悪い 検定になっています この点を考慮して検定の精度を上げるのが 次に取り上げる反復測定による分散分析による解析になります 4. 反復測定による分散分析 4.1 反復測定による一元配置分散分析 まず 議論を単純にするために, 群が一つしかない経時測定データの解析を考えます 例えば Orthodont データの場合であれば 男子のみのデータに対して, 時点間で dstance に有意な差があるかを検定します その際 baselne の個体差を考慮に入れるためサンプルのインデックスも主効果に含めます X, ~ N 0, 6

ただし, 1, n : 各サンプルの母数効果, 0, T : 時点の母数効,, 果 を示しています 各時点において各サンプルの観測値は一つしかありませんから 上記のモデルは 繰り返しのない二元配置分散分析 と呼ばれます 図 4 Orthodont データ ( 男子のみ ) dstance 0 5 30 8 9 10 11 1 13 14 age 反復測定の分散分析における多重比較には 第 1 回でも取り上げた Dunnett の多重比較を考えます Dunnett の多重比較 :Dunnett の多重比較については第 1 回にも取り上げた通 り baselne とその他の時点との比較のみを行います SPSS による反復測定の分散分析 : 1. orthodont_male.sav を読み込む. 分析 一般線型モデル 1 変量 3. 従属変数 :dstance 応答変数を入力 固定因子 :age, Subect 固定因子 7

( ここでは age は数値ではなく文字列として扱っていることに注意 Sex は Male しかいないので 選択しない ) 4. モデル ボタンを押して 以下を選択モデルの指定 : ユーザーによる指定 age と Subect の二つの主効果をモデルに入れる モデルに切片を含む 続行 ( 繰り返しのない二元配置分散分析 では 交互作用項は選択しない) 8

5. その後の検定 ボタンを押して 以下を選択 その後の検定 に, 時点のインデックス age を選択 Dunnett の検定を選択 対照カテゴリ で 最初 を選択 続行 6. OK SPSS による反復測定による一元配置分散分析の結果 従属変数 : dstance 被験者間効果の検定 ソース タイプ III 平 方和 自由度平均平方 F 値有意確率 修正モデル 401.19 a 18.90 7.793.000 切片 39900.06 1 39900.06 13949.039.000 age 00.531 3 66.844 3.369.000 Subect 00.687 15 13.379 4.677.000 誤差 18.719 45.860 総和 40430.000 64 修正総和 59.937 63 a. R 乗 =.757 ( 調整済み R 乗 =.660) Dunnett の多重比較 多重比較 9

従属変数 : dstance Dunnett の t ( サイドの ) (I) age (J) age 平均値の差 (I- 標準誤差有意確率 95% 信頼区間 J) 下限 上限 10 8.938.5980.84 -.516.391 1 8.844 *.5980.000 1.390 4.97 14 8 4.594 *.5980.000 3.140 6.047 観測平均値に基づいています 誤差項は平均平方 ( 誤差 ) =.860 です *. 平均値の差は 0.05 水準で有意です a. Dunnett の t- 検定は対照として 1 つのグループを扱い それに対する他のすべて のグループを比較します 8 歳時点と 10 歳時点の間には有意差はない (p=0.84) が 1,14 歳時点では有 意差が認められる 4. 反復測定による二元配置分散分析 本節では, 前節の反復測定による一元配置分散分析を拡張して 反復測定による二元配置分散分析を考えます Orthodont データの場合であれば 時点と性別の二つの主効果を考え さらに時点と性別の交互作用を考えます X k, ~ N 0, k ただし, 1, n : 各サンプルの母数効果, 0, T : 時点の母数効, 果, k 1, : 性別の母数効果 k k k k, k : 時点と性別の交互作用を示していま す ( 性別以外の主効果 例えば薬剤 A, B, C などを考えるときは その主効果に従い水準の数が変わります ) 反復測定による二元配置分散分析を考える際 問題になるのは次の二点です 1. 主効果の有意性を考えるとき, 問題となるのは交互作用 k であって 性別 10

の母数効果 k, k 1, ではない k, k 1, は baselne における性別による 差を示しているが 本当に必要なのは時間経過と共に性別によって応答変 数 dstance の成長に差が出るかどうか (= 交互作用 ) の有無にあるから. 交互作用の有意性検定は, 交互作用があるかないか を検定するのみであ って 交互作用がどちらの方向に働くのか ( 男性のほうが成長が早いのか 否か ) は検定出来ない SPSS による検定の方法は 前節と同様ですので省略します 詳細は以下を参 照 対馬栄輝 SPSS で学ぶ医療系データ解析 分析内容の理解と手順解説 バラ ンスのとれた医療統計入門 東京図書 (007/09) 石村貞夫 石村光資郎 SPSS による分散分析と多重比較の手順第 4 版 東 京図書 (011/9/5) 分散分析の枠組みでは 時間はあくまでも順序を持った水準としてのみ扱われます 逆に言えば, 分散分析では時間は実数値としては扱われないので (0, 1,, 3) と言う時点の取り方でも (0,10,100,1000) と言う時点の取り方でも全く同じ答えが出てきてしまいます 時間の量的な効果を評価するには, 次項に述べる正規線型混合モデルを考えなくてはなりません 5. 正規線型混合モデル 前項で述べた, 反復測定による分散分析は経時的反復測定データの解析手法と して古典的に用いられるものですが いくつかの欠点も持っています 1. 分散分析モデルでは, サンプル一つ一つを主効果の別の水準とするので サンプル数が多くなるに従って推定すべきパラメターの数が多くなる 多くのものを一度に推定しなければならない分 検定の 切れ味 が悪くなる. 前ページに書いたとおり 時間は時点の主効果の水準の一つとして扱われるため 順序は持つが実数としての意味は持たないものとして扱われる 3. 前ページで 反復測定による二元配置分散分析で主効果の影響を見るのに重要なのは, むしろ交互作用であると指摘しました しかし 交互作用の 11

検定で分かるのは交互作用の有無だけであって 交互作用の方向までは検 定出来ない 本稿で述べる混合モデル (Mxed-effects model) は 上記の欠点を克服するため 各個体の経時的データにはそれぞれ個体差があるが その個体差は, 各群ごとの平均的なトレンドからのランダムな乖離 (= 変量効果 ) としてモデル化するものです 母数効果のみからなる線形回帰モデルは, 以下のようになります y x k x t 0 1: female, t 0 : male 1 : tme, x t, ~ N0, x : nteracto n k k ただし x は性別を表すダミー変数で 男女の別によりモデルは次のようになります また は時間と性別の交互作用項で, 回帰直線の性別による傾き x の違いを表します y y k k 0 t 0 0 1 t 0 k k : male : female つまり 性別によって 切片も傾きも異なる回帰直線を当てはめることになります ただし 混合効果モデルでは 上の性別ごとの回帰直線は各群の平均的なトレンドとしてとらえられ 個体差を持つ各個体の経時測定データは, この平均的トレンドから変量効果分の乖離を持ったものとして解釈されます この無視出来ない個体差をランダムな変量効果に吸収することによって 真の トレンドの推定の 切れ味 を挙げる, と言うのが混合効果モデルのアイデア になります SPSS による正規線型混合効果モデルの当てはめ 1. orthodont.sav を読み込む. 分析 混合モデル 線型 を選択 1

3. 被験者および反復測定の定義で, 被験者にサンプルのインデックスである Subect を選択する 続行 4. 従属変数 :dstance 因子 :Subect, Sex 共変量 :age OK 離散変数 実数値をとる連続変数 13

5. 固定 ボタンを押し モデルを選択する 主効果 Sex, age の他に Sex, age の交互作用 Sex*age を選択するのを忘れないようにする 続行 6. 変量 ボタンを押し 変量効果として Subect を選択する 続 行 14

7. 推定すべき統計量として パラメータ推定量 共分散パラメータ推定 量 を選択 8. 線型混合モデル ウィンドウで OK 15

推定と検定の結果 まず 変量効果を無視した固定効果のみの母数モデルを推定してみる Estmate Std. t Pr(> t ) Error value (Intercept) 16.3406 1.416 11.538 < e-16 *** age 0.7844 0.16 6.17 1.07E-08 *** SexFemale 1.031.188 0.465 0.643 age:sexfemale -0.3048 0.1977-1.54 0.16 y y k k x t 0 16.34 1.03x 1 0.78 xt k, k ~ N0,, b ~ N0, b t 0.3x t 時間 age に対する係数が0.78と正の値で有意であることから 時間の経過と共に応答変数 dstance が増加することが分かります また Sexが有意ではない (p=0.643) ことから 登録時 (8 歳 ) において性別による有意差はなかったことが分かる 交互作用項の係数は-0.3048で負の値であることから, 女性の場合の応答変数 dstanceの増加率は, 男性より小さい傾向が認められる. ただし交互作用項は有意ではないことから 傾きの性差ははっきりしない SPSSによる混合効果モデルの推定 固定効果の推定 a パラメータ推定値標準誤差自由度 t 有意 95% 信頼区間 下限 上限 切片 16.34065.98131 103.986 16.65.000 14.394643 18.86607 [Sex=Female] 1.0310 1.53741 103.986.671.504 -.016666 4.080870 [Sex=Male] 0 b 0..... age.784375.077501 79.000 10.11.000.630113.938637 [Sex=Female] * age -.304830.1141 79.000 -.511.014 -.54651 -.063147 [Sex=Male] * age 0 b 0..... a. 従属変数 : dstance b. このパラメータは冗長であるため 0 に設定されています 16

共分散パラメータの推定 a パラメータ推定値標準誤差 Wald の Z 有意 95% 信頼区間 下限 上限 残差 1.9055.30581 6.85.000 1.407116.65438 Subect 分散 3.98634 1.071635 3.078.00 1.74507 6.3545 a. 従属変数 : dstance y x k x t 0 1: female, t 0 : male 1 : tme, x t b, ~ N0,, b ~ N0, x k : nteracton k b y k 16.34 1.03x 0.78t 0.30 x t まず 係数の推定値そのものは, 固定効果モデルと全く同じであることが分かります また 交互作用項の係数が-0.3 と負の値で有意であることから 女子のトレンドの傾きの方が小さいことが分かります 交互作用が有意であることから dstance の成長に対して性別が有意な影響を与えていることが分かりますが これは変量効果を含めることで無視出来ない個体差をモデルのランダムな効果に吸収したことで, 検定の精度が上がったことを示しています 混合効果モデルの, その他の使い方 今回は, 経時データに対して被験者の baselne の値に変量効果を入れた 他 に 混合効果モデルの使い方には以下のようなものがある 反復測定データあるいは同じ被験者 ( 検体 ) に異なる介入を行った場合 例えば 何回か繰り返して同じ実験をした場合や 脳の異なる部分で測定を行った場合など その場合 時間の概念は入らないが被験者の baselne に混合効果を入れることが出来る 被説明変数が実数で正規分布に従う場合だけでなく 二値の二項分布に従う場合 ( ロジスティック回帰 ) や 正の整数値に従う場合 ( ポワソン回帰 ) など その他の分布に従う場合でも変量効果を考えることが出来る Generalzed Lnear Mxed-effect Model (GLMM) 生存時間データと混合効果モデル 17

生存時間データの多変量解析には Cox 比例ハザードモデルが用いられる Cox モデルの共変量は, 基本的には登録時のもののみを用いる しかし 観察期間中も身長 体重等の値を継続的に測定する場合がある 経時的に得られた共変量の値を生存時間と会わせて解析するには 被験者に対して変量効果を考える必要がある このようなモデルとして Jont Model と呼ばれるものがある ここでは詳細は述べないが 統計解析ソフト R には拡張パッケージ JM として 実装されている 以上 Take Home Message 1. 反復測定データ. 各時点における群間比較 3. 反復測定データの分散分析 4. 正規混合効果モデル 18