PAF に対する治療 :Systema+c review 慈恵 ICU 勉強会 2015 年 11 月 10 日 横田泰佑
発作性心房細動 (PAF) PAF とは? 薬物療法 非薬物治療の有無にかかわらず 7 日以内 ( 多くは 48 時間以内 ) に洞調律に復するものであり 心房細動の長い慢性経過からみると早期の病期に相当する 日本循環器病学会 ICU で新規に発生した AF 患者や ER で初めて AF を指摘された患者は その時点で PAF か Chronic AF( 慢性心房細動 ) かどうかは不明である タイトルの PAF 重症患者に新規に発生した AF
ER における AF 重症患者の AF の分類 心外術後を除く ICU 患者の AF 心外術後を除く ICU 患者の上室性不整脈 (AF を含む ) 心外術後の ICU 患者の AF * 上記以外の AF 患者を非重症患者 ( 病棟 ) とする
文献の検索方法 2015 年 10 月に PubMed を検索 ER における AF [emergency department]+[atrial fibrilla+on] ICU 患者の AF [atrial fibrilla+on] +[cri+cal care] ICU 患者の上室性不整脈 [supraventricular arrhythmia]+[cri+cal care] 心外術後 ICU 患者の AF [cardiac surgery] +[atrial fibrilla+on] その他 [AF の薬剤名 ]+[atrial fibrilla+on] 上記に加えて 過去の勉強会の資料等を参考に文献を検索
目次 1.AF の一般論 2.ICU 患者の AF( 心外術後を除く ) 3.ICU 患者の上室性不整脈 ( 心外術後を除く AF を含む ) 4. 心外術後の ICU 患者の AF 5.AF 全般に対する薬剤の有用性
1.AF の一般論
AFのメカニズム 高血圧 肥満etc. 発生原因 心房の構造的異常 心房の電気生理学 レニン アンジオテン 的異常 またはその シン アルドステロン 組み合わせ 系活性化 自律神経系などの 外因性の要因も 多 くの場合で関与 虚血 肥大etc. 心房性頻拍 リモデリング 自動能の亢進etc. 炎症 酸化ストレス 自律神経系 活性化 遺伝子変異 Circula+on 2014 ;130:2071-104 AFの病態生理は 完全には理解されて いない JAMA 2015;314:278-288
ER における AF の治療 Acad Emerg Med 2012;19:1255-60 カナダ アメリカ イギリス オーストラリアの救急医療団体に ER の AF( 新規に発生した AF と再発した PAF) の治療についてメールで質問し 調査 回答率は 全体で 40.5% 調査結果はカイ 2 乗検定で 分析
結果 レートコントロール リズムコントロール * メトプロロールの注射薬は国内未承認
回答者 139 名 日本の ICU β 遮断薬 Ca 拮抗薬以外は 少数派 JSEPTIC 簡単アンケート第 33 弾 :ICU における不整脈の管理 (2014 年 1 月実施 )
AF のガイドライン レートコントロール ClassⅠ:β 遮断薬または非ジヒドロピチジン系 Ca 拮抗薬を用いる 緊急時は静脈内投与し 血行動態不安定な場合は電気的除細動を行う (B) ClassⅡa: 重症患者のレートコントロールにアミオダロンの静脈内投与を考慮してもよい (B) 薬剤によるリズムコントロール ClassⅠ: フレイカイニド ( タンボコール 器質的疾患がない場合 ) dofe+lide プロパフェノン ( プロノン 器質的疾患がない場合 ) 静注 ibu+lide が第一選択 (A) ClassⅡa: アミオダロンの経口も可 (A) Circula+on 2014;130:e199-e267 *AF に対するアミオダロンは 日本では 経口薬が肥大型心筋症に伴う心房細動にのみ保険適応あり
一般論のまとめ 病態生理は完全に解明されていない ER では レートコントロール目的でジルチアゼムとメトプロロール リズムコントロール目的で プロカインアミドとアミオダロンが多く使用される 日本の ICU では AF に対して レートコントロールで推奨されている β 遮断薬と Ca 拮抗薬が主に使用されている
2.ICU 患者の AF( 心外術後を除く )
ICU 患者の AF の一般論 ICU 患者における新規に発生した AF を対象としたシステマチックレビュー ( 心外術後を除く ) 病因とアウトカムに関する 10 研究 治療に関する 5 研究をまとめている
危険因子 既往 発生率 臓器不全 外傷 感染 敗血症性ショック 46%
術後 AF( 心外を除く ) に対する予防的薬剤 肺癌術後に関する 10 研究のシステマチックレビュー Ann Thorac Surg 2014;98:1989-97 ( 肺全摘 ) ( プラセボ or 投与なし ) * 術式は開胸術または VATS
結果 : アミオダロンが最も有効術後 AF 30.4% 9.6% に減少 (p < 0.001) 副作用 ( 低血圧と徐脈 ) は アミオダロンと Mg で少なかった ジゴキシン以外予防効果あり
ICU 患者の AF に対する治療 Crit Care Med 2008;36:1620-4 ICU 患者における新規に発生した AF のリズムコントロールに関する 4 つの RCT をまとめたシステマチックレビュー ( 心外術後を除く ) 1966~2006 年,n=89 3 研究で血行動態不安定患者を除外 洞調律に戻るまでの観察時間 :1~24 時間
レートコントロールとして使用される β 遮断薬と Ca 拮抗薬は リズムコントロールとしても効果あり Mg は 抗不整脈薬と同程度の効果あり
ICU 患者の AF の予後 コホート研究 Crit Care Med 2015;43:2104-11 対象 :2 日以上 ICU に入室した患者 1770 人 ( 除外 : 心外術後と外傷患者 ) 方法 :ICU 入室してからの 4 日間を調査 プライマリーアウトカムは AF( 新規発生と再発 ) と no AF 患者の院内死亡率の比較
新規発生 AF7% 再発 AF6% 結果 AF vs no AF: 院内死亡率 30% vs 17% (p<0.001) 85% の AF 患者に対して治療が行われた 治療群 vs 非治療群 : 院内死亡率 29% vs 34% (p=0.557)
ICU 患者の AF のまとめ ICU 患者で新規に発生する AF の発生率は 5~20% 程度 敗血症性ショックで高い 敗血症やカテコラミンの使用などが危険因子 肺癌術後の予防的薬剤はアミオダロンが最も有効と考えられる 予後不良因子であるが AF の治療を行うことで予後を改善できるかどうかは不明
3.ICU 患者の上室性不整脈 ( 心外術後を除く AF を含む )
ICU 患者の上室性不整脈 (SVA) の割合 AF AFL PSVT ヨーロッパの 26 の General ICU の 1 カ月で 24 時間以上 ICU に在室した患者, n=1341(76% が非術後患者 ) 上室性不整脈 :8%(113 人 ) AF:6.5%(87 人 ) 心室性不整脈 :2%(30 人 ) 刺激伝導系異常 :2%(30 人 ) Am J Respir Crit Care Med 2008 ;178:20-5
ICU における SVA 敗血症性ショックと診断されて ICU に入室した患者 71 人中 30 人 (42%) に SVA が新規に発生した Ann. Intensive Care 2015;527 心外を除く胸部外科手術の術後の SVA では 危険因子は年齢 心疾患の既往 肺切除の既往 Heart Surg Forum 2014;17:E308-12 Mg は胸部外科手術の術後の SVA に対して 予防効果はなかった Br J Anaesth 2011;106:785-91
ICU 患者の SVA の予後 イスラエル,General ICU, 前向き観察研究 Anesth Analg 2007;104:880-6 対象 : 術後患者と外傷患者を中心に 1 年間の ICU 入室患者 611 人 ( 除外 : 心外術後 最近胸部外科手術を受けた患者 胸部外傷 ) 9% (52 人 ) が新規に 30 秒以上続く SVA を発生 AF 患者は 6% (38 人 )
結果 :No SVA vs New onset SVA APACHE II スコア 16±8 vs 23±8 (P<0.05) 入院死亡率 18% vs 56% (P<0.05) 4 年後の死亡率 35% vs 71% (P<0.05) New onset SVA52 人中 50 人で治療が行われ 45 人で治療効果はあった
ICU 患者の SVA に対する治療 スペイン,RCT Intensive Care Med 1994;20:42-4 対象 :SVA を伴い かつ呼吸不全 ( 急性呼吸不全 or 慢性呼吸不全の悪化 ) のために ICU に入室した患者,n=30 ( 除外 :SVA による重症心不全患者 ) 方法フレカイニド (n=15)2mg/kg iv 1.5mg/kg/min div(1hour) ベラパミル (n=15)0.15mg/kg iv 0.005mg/kg/min div(1hour) 結果 : フレカイニド vs ベラパミル洞調律復帰率 80% vs 33.3% (P<0.01) * フレカイニド投与群のうち 11 人で iv により洞調律になった
Anesthesiology 1998;89:1052-9 RCT 対象 : アデノシン投与後でも SVA 継続する 心外を除く術後 ICU 患者,n=64 方法 ジルチアゼム投与群 (n=30) HR110/min 以下まで 20mg iv 10~20mg/h div エスモロール投与群 (n=34) HR110/min 以下まで 12.5~50mg iv 50~100μ g/min div 洞調律に戻るまでの観察時間は 2 時間 結果 : ジルチアゼム vs エスモロール 2 時間後の洞調律復帰率 27.3% vs 59.1% (P=0.067)
World J Crit Care Med 2015;4:251-7 日本の単施設の ICU,2006~ 2011 年, 後ろ向きコホート研究 対象 :HR120/min 以上かつ SVA(1 時間以上 ) を発症した敗血症患者,n=61 ( 除外 : 上室性頻拍の既往 入室時 SVA) * ランジオロールは 日本でしか使用されていない
結果 : ランジオロール vs コントロール 24 時間後の HR 90±20 vs 109±18 (P<0.05) 24 時間後の洞調律復帰率 69.7% vs 36.4% (P<0.05) HR145±14 HR136±21
ICU 患者の SVA のまとめ ICU 患者における AF を含む SVA は AF 単独と同様に敗血症や呼吸器疾患などが危険因子である 予後不良因子であり SVA の治療を行うことで予後を改善できるかどうかは不明 Ca 拮抗薬より Ic 群抗不整脈薬と β 遮断薬の方が有効の可能性がある 日本で開発されたランジオロールも他の β 遮断薬と同じような効果があるかもしれない
4. 心外術後の ICU 患者の AF
高血圧 肥満 etc. 心房構造基質 心外術後の AF のメカニズム J Am Coll Cardiol 2008;51:793-801 炎症 酸化ストレス 心房電気生理学的基質 Postopera+ve Atrial Fibrilla+on 手術因子外科的心房傷害 心房虚血 肺静脈孔 静脈カニュレーション 急性のボリューム変化 術後因子ボリューム過多 低血圧 後負荷増加 トリガー因子心房性期外収縮 電解質不均衡 自律神経系の不均衡
心外術後の AF の一般論 発生率術後 2~3 日後をピークに起こる 僧帽弁の手術を受けた患者では 30 50% バイパス手術は約 30% である 心疾患で関連するのは 左室肥大 心不全 高血圧 心筋梗塞 心膜炎 心筋炎 先天性心疾患である Cardiovasc Ther 2014;32:242-52 危険因子高齢 sleep Apnea 不整脈既往 うっ血性心不全 上 下大静脈カニュレーション 人工心肺長期化 Crit Care Med 2015;43:1477-97 危険因子として指摘されていた肥満患者のオッズ比は 1.12(95%CI:1.04-1.21;P=0.002) と リスクは中等度だった Ann Thorac Surg 2013;96.1104-16
心外術後 AF の予後 スコットランド,2001~2012 年心臓手術を受けた 49264 人のデータを解析 ( 除外 : 術前不整脈の既往 ) POAF と 死亡率 合併症 ICU 滞在日数 入院中コストなどの関連を調査 結果 :19%(9255 人 ) に新規に POAF が発生 Ann Thorac Surg 2014;98:527 33
死亡率, 再入院率 etc. POAF の方が全体で高い POAF の死亡率の調整オッズ比 2.04(P<0.001) 入院中のコスト 9000 ドル増加 (P<0.001)
心外術後の AF に対する予防的薬剤 Crit Care Med 2015;43:1477-97 第一選択は β 遮断薬 アミオダロンは β 遮断薬が禁忌のときに使用 ソタロールは毒性の増加と関連 適切な予防 POAF を約 50% 減少できる
double blind RCT の結果を再解析 Anesth Analg 2015;121.861 7 対象 : 心臓外科手術患者 363 人 ( 除外 : 術前 AF 精神疾患腎不全肝不全 etc.) 方法 Mg 50mg/kg iv Mg 50 mg/kg 術中 3 時間持続静注 (n=186) vs プラセボ (n=177) 結果 :AF 発生率 Mg 42.5% vs プラセボ 37.9% (p=0.40)
心外術後の AF に対する治療 Am Heart J 2000;140:176-80 RCT 対象 : 心外術後患者,HR100/min 以上の AF/AFL(5 分以上 ),n=30 方法 エスモロール :500μg/kg iv 25 50μg/kg/min div ジルチアゼム :0.25mg/kg iv 反応不良 0.35mg/kg iv,5~15mg/h div
結果 (HR<90) エスモロール vs ジルチアゼム 6 時間後の洞調律復帰率 67% vs 13% (p=0.03) 24 時間後の洞調律復帰率 80% vs 66% ( 有意差なし ) レートコントロールと副作用 : 両群で有意差なし
心外術後の AF に対するカルディオバージョン スイス, 心外術後 ICU,DC の成功率を検討後ろ向き観察研究,2013~2014 年 Crit Care Med 2015;43:2354-9 対象 : 新規に発生した心外術後 AF 患者 (7 日以内 ),n=72 ( 除外 : 慢性心房細動と上室性頻拍 )
200J のショックが 85% に施行 結果 :71% が DC 直後に洞調律 24 時間後の洞調律維持は 23% 退院時 :20% は薬剤介入なしに洞調律復帰 46% にアミオダロンが投与
心外術後 ICU 患者の AF のまとめ 心外術後の AF は 発生のメカニズムが一般的なものと異なり 発生率と死亡率も高い 心外術後の AF の予防的薬剤で有効なのは β 遮断薬で 次にアミオダロン 心外術後の AF は 予防的薬剤に関する研究が多く 治療薬は β 遮断薬と Ca 拮抗薬が有効と考えられるが 推奨するほどの情報はない DC では再発が多い
5.AF 全般に対する薬剤の有用性
抗不整脈薬の AF に対する作用機序 日本循環器病学会不整脈薬物治療に関するガイドライン (2009 年改訂版 ) Ic 群抗不整脈薬 :Na チャネル遮断作用を有し 房室伝導抑制と不応期を延長させる 副作用はリエントリーが大きくなり Ic flutter になる
抗不整脈薬の AF に対する作用機序 β 遮断薬 : 交感神経の緊張を減少させることにより 房室伝導速度が遅くなり 房室結節不応が増加する JAMA 2015;314:278-288 アミオダロン :K チャネル Na チャネル Ca チャネル遮断作用を有し 交感神経ブロックと Ca チャネルブロックで間接的に房室結節に作用する Ca 拮抗薬 : 洞結節 房室結節で主に働いている Ca チャネルをブロックし 房室伝導抑制と同時に洞性徐脈をきたす Mg:Ca 拮抗薬の作用の弱いものである 心拍数を下げるが Ca 拮抗薬の副作用である房室ブロックや徐脈 低血圧をきたさない Heart 2007;93:1433 40
Ic 群抗不整脈薬 日本循環器病学会心房細動治療 ( 薬物 ) ガイドライン (2013 年改訂版 )
Conversion of Recent-Onset Atrial Fibrilla5on by a Single Oral Dose of Pilsicainide (Pilsicainide Suppression Trial on Atrial Fibrilla5on) Am J Cardiol 1996;78:694-7 mul+center,double blind RCT 対象 :7 日以内発症の非重症患者の AF,n=75 方法ピルシカイニド (150mg 単回経口投与 ) vs プラセボ洞調律に戻るまでの観察時間は 90 分 結果 : ピルシカイニド vs プラセボ洞調律復帰率 45% vs 8.6% (p < 0.01) * ピルシカイニドは日本と韓国でしか使われていない
J Cardiol 2009;53:35-42 ランダムにピルシカイニド or シベンゾリン iv *1st DC と 2nd DC は同じエネルギー 日本の単施設研究,2003~2007 年 対象 :ER で DC を施行された PAF か Chronic AF 患者,n=253 洞調律に戻るまでの観察時間は 3 時間
結果 : ピルシカイニド vs シベンゾリン 洞調律復帰率 42% vs 77% (p<0.01) 洞調律に復帰した群は AF の持続時間が短い DC 後の PAF シベンゾリンの方がピルシカイニドより有効
Am J Cardiol 2000; 86: 950-953 スペイン,single blind RCT 対象 :ER で 48 時間以内に新規に発生した AF 患者,n=150 ( 除外 :EF<35% うっ血性心不全腎不全 etc.) 方法 アミオダロンとフレカイニドとプロパフェノンを それぞれ 2mg/kg iv (8 時間以内に AF が停止しない場合には 1mg/kg 追加 )
副作用:3 剤で有意差なし 結果: フレカイニド vs プロパフェノン vs アミオダロン 8 時間後の洞調律復帰率 82% vs 68% vs 42% (P<0.001) 12 時間後の洞調律復帰率 90% vs 72% vs 64% (P=0.008) * プロパフェノンは 国内では静注薬は未承認
β 遮断薬 prospec+ve,open label RCT 対象 :ER で HR100> かつ 1 時間以内に新規に発生した AF or PAF,n=50 ( 新規発生の AF は全体で 60% 程度 ) 方法ジルチアゼム投与群 (n=26) 0.25mg/kg iv 後 HR100> のときは 0.35mg/kg iv 追加 HR90< 5mg/h,HR90~120 10mg/h,HR>120 15mg/h div エスモロール投与群 (n=24) 0.5mg/kg iv 後 HR100> のときは 0.5mg/kg iv 追加 HR90< 0.1mg/kg,HR90~120 0.2mg/kg,HR>120 0.3mg/kg div
結果 ジルチアゼム vs エスモロール 24 時間後の洞調律復帰率 42% vs 39% (P=1.0) 24 時間後の HR 86±12 vs 91±14 (P=0.3) 平均累積投与量 131±89 mg vs 9627±1888 mg AF に対する治療に差はない エスモロールの方が コストがかかる可能性がある
RCT Dil5azem vs. Metoprolol in the Management of Atrial Fibrilla5on or FluDer with Rapid Ventricular Rate in the Emergency Department J Emerg Med 2015;49:175-82 対象 :ER で AF または AFL を呈する患者 ジルチアゼムとメトプロロールのレートコントロール率 ( 目標 HR<100) を比較 30 分間 収縮期血圧と拡張期血圧と心拍数を調査 結果 : ジルチアゼム vs メトプロロール 5 分後のレートコントロール率 50.0% vs 10.7% (P<0.005) 30 分後のレートコントロール率 95.8% vs 46.4% (P <0.0001) 2 群間で低血圧 ( 収縮期血圧 <90 mmhg) と徐脈 (HR <60) に対する有意差はなかった
アミオダロン Chest 2009;135:849-59 AF の治療薬に関する RCT とメタ解析をまとめた システマチックレビュー アミオダロンに関しては 7 研究をまとめている ( 心外術後 ICU1,ICU2,ER2, 非重症患者 1, 不明 1)
新規に発生した AF を対象とした研究で アミオダロンは経口薬と静注薬ともに洞調律復帰率が高い 経口薬は肺合併症などの副作用が問題 静注薬の副作用は 静脈炎 徐脈 低血圧
Ca 拮抗薬 香港,open label RCT,2004~2006 年 Crit Care Med 2009;37:2174-9 対象 ER で HR>120 かつ 48 時間以内に新規に発生した AF 患者,n=150 ( 除外 : うっ血性心不全ペースメーカー患者植え込み型除細動器患者 etc.) 方法 : ジルチアゼム ジゴキシン アミオダロンを静脈投与した群を 1:1:1 で割り付けプライマリーアウトカムは 24 時間以内に HR<90 に達すること
結果 : ジルチアゼム vs アミオダロン vs ジゴキシン 24 時間後のレートコントロール率 90% vs 74% vs 74% (p<0.0001) 24 時間後の洞調律復帰率 34% vs 36% vs 24% (p>0.05) ジルチアゼムは入院期間を短縮
Pharmacotherapy 1997; 17:1238-45 double blind,cross over,rct 対象 :HR120> かつ収縮期血圧 100mmHg 以上の非重症患者 n=17(af5,afl10,af と AFL2), 除外 : 心不全低血圧 etc. 方法 : ジルチアゼムかベラパミルをボーラス後 8 時間持続静注 結果 : ジルチアゼム vs ベラパミル平均 HR 96±11 vs 97±9 ( 有意差なし ) 副作用 : ベラパミルで 3 人低血圧
Mg( マグネシウム ) 1995~2005 年の 9 の RCT をまとめたメタ解析 (ER3,ICU1, 非重症患者 2, 不明 3) ( 方法 ) Am J Cardiol 2007;99:1726-32 ( 観察時間 )
Mg はレートコントロールとリズムコントロールの両方の治療で有効 死亡に関する報告はなし Mg 投与 血清 Mg 濃度 洞調律に復帰 というわけではない
1996~2006 年 10 の RCT (ER3,ICU2, 心外術後 ICU1, 非重症患者 3, 不明 1) 対象 :7 日以内に新規に AF を発生した患者,n=515 MgSO4 投与量 :1.5~5g 観察時間 :1~24 時間
結果 レートコントロール (HR<100 になる割合 ) Mg + ジゴキシン vs プラセボ 58.8% vs 32.6 (p<0.001) Mg vs Ca 拮抗薬 or アミオダロン 21.4% vs 58.5% (p<0.001) リズムコントロール Mg + ジゴキシンまたは ibu+lide vs プラセボ 25.3% vs 19.3% (p=0.61) Mg vs Ca 拮抗薬 or アミオダロン 36.2% vs 18.2% (p=0.17) Mg の副作用 (flushing,+ngling,dizziness) は 17% の患者にみられた
J Crit Care 2015;30:1349-58 心外術後を除外 1975~2014 年の ICU の研究 結果低 Mg 血症 (0.7mmol/ L 以下 ) 死亡リスク増加 ( オッズ比 1.85,95%CI1.31-2.60; I 2 =0) Mg の治療は アウトカムと関連なし
ジゴキシン Lancet 2015;385:2363-70 リバロキサバンとワーファリンを比較した RCT である ROCKET-AF でジゴキシンは多く使用されていた そのデータをコックス比例ハザード回帰モデルを使用して解析 対象 : 非重症の AF 患者 14171 人 (Chronic AF 81%,PAF 18%, 新規に発生した AF 1%)
結果 37%(5239 人 ) にジゴキシンは投与されていた ジゴキシンが投与された群で 総死亡率 血管系疾患による死亡率および突然死の頻度が高かった
レートコントロール薬の比較 Circula+on 2015;132:1604-12 目的 :AF のレートコントロール薬が予後を改善するかどうか 対象 : 台湾の国民健康保険研究のデータベースを使用し 退院時に AF と診断された患者 ER や ICU 患者の割合は不明 方法 :β 遮断薬か Ca 拮抗薬かジゴキシンが投与された群と未治療群を調査 臨床エンドポイントは 全死因の死亡率
結果 追跡期間は 4.9±3.7 年 死亡率は 32.7%(88263 人 ) β 遮断薬と Ca 拮抗薬 : 死亡率減少 ジゴキシン : 死亡率増加 サブグループ解析や propensity matching 後も結果は同じ β 遮断薬が最も死亡リスクを減少させ
薬剤のまとめ Ic 群抗不整脈薬 : ガイドラインの推奨通りフレカイニドとプロパフェノンの洞調律復帰率が高いが 副作用の問題がある ピルシカイニドの洞調律復帰率は高くはなく 予防効果を含め有効性が高いかどうかは不明 β 遮断薬 : メトプロロールよりエスモロールの方が洞調律復帰率も高く レートコントロールに適する アミオダロン : 洞調律復帰率が高く レートコントロールでも使用できるが 副作用の問題がある
薬剤のまとめ Ca 拮抗薬 : ジルチアゼムとベラパミルでレートコントロールに差はないが ジルチアゼムの方が洞調律復帰率が高く 低血圧も少ない Mg: レートコントロールとリズムコントロールの両方で使用できる 血清 Mg 濃度とリズムコントロールに関係はないが 低 Mg 血症の ICU 患者は 死亡リスクが上昇する ジゴキシン :AF に対して使用すると 予後不良の可能性がある
私見 日本の ICU では 新規に発生した AF に対して リズムコントロール目的で薬剤を投与することは少ないのかもしれない しかし AF の治療薬は 日本では未発売の薬剤や 静注薬が未発売の薬剤もあり 日本でしか使用されていない薬剤もある さらに アミオダロンも日本では保険適応の関係で使用に制限がある そのため 一概に海外と比較することは難しいかもしれない
私見 レートコントロールに関しては ジルチアゼムより β 遮断薬の方が有効な可能性があるが コストの問題は無視できない リズムコントロールに関しては 第一選択として使用する薬剤は決まっていない しかし 低 Mg 血症の ICU 患者は 予後不良の可能性があり ICU で AF+ 低 Mg 血症の患者をみたら まず Mg 投与 というスタンスでもいいかもしれない 心外術後以外にも AF が発生しやすい手術での予防的薬剤に関する研究に期待したい